TNG エピソードガイド
第178話「永遠への旅」(後)
All Good Things..., Part II
本編
※1ワープ航行中のエンタープライズ。 ラフォージ:「信用できません。きっとこれも Q のイタズラですよ。思わせぶりなことを言っといて、我々の反応を楽しんでるんじゃないですか?」 ピカード:「いつもなら私もそう思うところだが…今回の Q はどこか違っていた。嘘を言ってるようなところがまるでなかった。もしかしたら…本当に私が何らかの形で、人類絶滅の原因を作るのかもしれない。」 クラッシャー:「作ったではなく作ると言ったんですね?」 トロイ:「現在と過去と未来で。」 データ:「艦長が体験した過去と未来と現在は、異なる時間の流れの中にあるようです。それを考えれば Q の言うこともありえない話ではない。」 ピカード:「ではどうすればいい。現在と過去と未来にいる私を、監禁するか?」 ライカー:「しかし艦長、そうやって何もしないことが原因になるのかもしれませんよ。大事な時に艦長がブリッジにいないことが。」 トロイ:「推測だけで話していても仕方がないわ。通常通りの行動をして、それぞれの事態に対処していくしかないでしょう。」 ピカード:「そうだな? そういえば Q に、私がタイムスリップするのはお前の仕業かと聞いた時、奴ははっきりそうだと認めていた。もしかしたら Q は…人類の滅亡を止めるチャンスを私にくれたのかもしれない。」 ライカー:「なぜそう思うんです。」 「Q は人間という生命体に興味をもっていた。特に私にはな? 私がどういう行動に出るか見たがっているはずだ。」 データ:「それは言えますね。Q は常に艦長を見守っていました。まるで、主人がペットを見守るように。あ…いや今のは単なる比喩表現です。」 通信が入る。『艦長。』 ピカード:「どうした。」 『間もなく中立ゾーンに着きます。』 「今そちらに行く。」 操舵席にはゲイツがいる。 ピカード:「停止。長距離スキャン、開始。」 データ:「…艦長。中立ゾーンのロミュラン側に、ウォーバードが 4隻待機しています。」 ウォーフ:「連邦側には U.S.S.コンコルド※2と、ボズマン※3が停泊しています。」 ライカー:「にらめっこですか。どちらが先に動くかですね。」 ピカード:「こちらだ。ウォーフ大尉、ロミュランの指揮官を呼び出せ。」 ウォーフ:「応答が来ました、テリックス号※4です。」 スクリーンに老けたウォーフが映っている。『ピカード艦長。』 艦長席のビヴァリー。「久しぶりね、会えて嬉しいわ?」 ウォーフ:『私も同感です。』 「こちらの要望はもう聞いてくれてる?」 『ええ。しかし私はもうクリンゴン最高評議会のメンバーではないんですよ?』 ピカード:「しかしまだ顔は利くだろう、どうしても中立ゾーンに行きたいのだ。…せめて国境を越える許可だけでも取ってくれ。」 『それはできません。…艦長の身を思えばこそです、中立ゾーンは非常に危険です。…ライカー提督が遮蔽機能のある船を貸してくれるというのならまだしも。…どうして彼が、艦長の頼みを断ったのか理解できませんね。』 「どんな船だろうが…そんなことはいい! デヴロン星系に行かねばならんのだ。」 『残念ですが、私はクリンゴン帝国の者です。国の規律を破るわけにはいきません。』 「…確かにこんな老いぼれでは助ける甲斐もなかろう! だが私の知っているウォーフは規則や規律などよりも、ああもっと忠誠心や名誉を重んずる男だった。…それも昔の話だ。お前はもう私の知ってるウォーフではない。」 ウォーフは机の上の物をぶちまけた。『ド・ショ ガ! 私にさせたいことがあると、あなたはいつもそうやってクリンゴン人の忠誠心につけ込む。』 ピカード:「それがお前には効果的だからだ。…たとえ利用されたとわかっていても断れないんだろ。そこまで名誉にこだわるのはお前の問題だ。…私を責めるのは筋違いだぞ。※5」 『わかりました。…許可を与えましょう。…ただし、私も連れて行くことが条件です。私なら中立ゾーンに詳しい。』 うなずくビヴァリー。 ピカード:「…願ったりだ。」 通信は終わり、クリンゴンの紋章が表示された。 ビヴァリー:「ウォーフ知事をお迎えするよう、第2転送室に伝えて。…一つだけはっきりさせておきたいの。中立ゾーンでクリンゴンと衝突したら、すぐに連邦の領域に引き返すわよ? この船の装備では戦うのはとても無理だわ。」 チルトン:「ウォーフ知事が乗船されました。」 「わかったわ。デヴロン星系にコースをセットして。ワープ13 よ。」 ビヴァリーは手を挙げたが、席を立った。「やってみる? 久しぶりに。」 ピカードは座った。「…発進。」 尋ねるオブライエン。「発進って、どこへですか。」 ピカード:「あ、えー…デヴロン星系へ向かってくれ。ワープ9 だ。」 ヤー:「デヴロン星系は中立ゾーンの中ですよ?」 「わかっている、言ったとおりにコースをセットしろ。」 オブライエン:「了解。」 トロイ:「艦長、外でお話しできませんか。」 ピカード:「…ああ、構わんよ? ファーポイント基地のライカー中佐を呼び出しておいてくれ。」 ヤー:「了解。」 作戦室に入るトロイ。「…クルーが戸惑いを感じ始めているので、お知らせしておきたかったんです。…艦長の命令がその…あまりにも突飛なので。」 ピカード:「わかっている。信用できないと思っているだろ。」 「一部には確かに…そういう者もいますが、新しい艦長とクルーが理解し合うのには時間がかかるものです。」 「それはそうだが、私はここのクルーの実力を誰よりもよく知っている。」 「せめて状況をクルーに説明してはいかがです?」 「…先の見えない不安はよくわかるが、今はこうするしか方法がないんだ。※6」 ヤー:『ピカード艦長。ライカー中佐と、連絡が取れました。』 「失礼? つないでくれ。」 コンソールを起動すると、ヒゲのないライカー※7が映った。 ピカード:「ライカー中佐、ファーポイント基地に君を迎えに行くのが、予定より遅れそうだ。」 ライカー:『わかりました。どのくらいです。』 「何とも言えないが、また状況を知らせる。ドクター・クラッシャーとラフォージにも知らせておいてくれ?」 『了解。』 コンソールを切ったピカード。「…ほかにも話があるのか。」 トロイ:「ええ、実はそうなんです。報告すべきかどうか悩んだんですけど、やはり……ライカー中佐のことで。」 「…どうした。」 「私と彼は以前付き合っていたので、お知らせするべきかと。」 「なるほど…で? 一緒では仕事がやりにくいか。」 「いえ全く。もう数年前のことですし、今ではよき友人ですが、お話しすべきだと思って。」 「ああそうか、ありがとう。…しかしそういうことなら、後は当人同士に任せる。」 「わかりました。」 出ていくトロイ。※8 ピカードはため息をつき、レプリケーターに命じた。「アール・グレイをホットで。」 コンピューター:『その飲み物の情報はプログラム内に存在しません。※9』 微笑む現在のピカード。 男の声が流れる。『ピカード。こうやっていつまでも中立ゾーンを挟んでにらめっこを続ける気なのか?』 スクリーンには、トモロク※10司令官が食いつくように話しているのが見える。 ピカード:「…トモロク。そこで提案だが? …お互い目的は同じだ。どうだろう、双方一隻ずつ中立ゾーンに船を出して、デヴロン星系の異常を調査するというのは。」 トモロク:『それは艦隊司令部が認めた提案か?』 「いいや?」 『気に入ったな。※11よかろう。一隻という協定は必ず守れよ? もしほかの船が中立ゾーンに入ろうとしたら…』 「わざわざ言うまでもない。お互い戦いは望まないだろ。」 『その通りだ。ではデヴロン星系で会おう。』 映像は終わった。 「デヴロン星系にコースセット。ワープ5。」 ゲイツ:「了解。」 「発進。」 ワープに入るエンタープライズ。 ブリッジ。 データ:「センサーが、前方に大きな亜空間の亀裂を発見しました。」 制服の裾を伸ばすピカード。「停止しろ。スクリーンオン。…フルスキャンしてくれ。」 中心部が白い、空間異常が広がっている。 データ:「了解。」 ピカード:「この異常をできる限り詳しく調査しろ。」 コンピューターを操作する過去のデータ。「間もなく、デヴロン星系に到着します。センサーが、前方に巨大な亜空間の亀裂を発見しました。」 ピカード:「停止しろ。スクリーンオン。」 やはり、同じ現象がスクリーン一杯に広がっている。 つぶやくピカード。「過去の方が大きいのはなぜだ。」 トロイ:「何か?」 「いや。…フルスキャンしてくれ。」 データ:「了解。」 振り向くピカード。 振り向いた未来のピカードは指示した。「スクリーンオン! 早く映せ!」 だが、そこには何もなかった。 データ:「……ご覧の通り、何もありません。」 |
※1: 分割版では、イントロダクションが全てあらすじに費やされています。そのため、後編のカットシーンは前編に比べ非常に多くなっています ※2: U.S.S. Concorde フリーダム級、NCC-68711 ※3: U.S.S.ボーズマン U.S.S. Bozeman ソユーズ級、NCC-1941。TNG第118話 "Cause and Effect" 「恐怖の宇宙時間連続体」より。後にも言及。ブラノン・ブラガの故郷にちなんで ※4: ウォーバード・テリックス Warbird Terix TNG第164話 "The Pegasus" 「難破船ペガサスの秘密」に登場 (注釈※10 参照) ※5: このカットシーン、ビデオ版での吹き替えは以下の通り。ウォーフ「あなたはいつもそうやって、私が名誉を重んじる気持ちにつけ込んでくる」 ピカード「それがお前の弱点だ、ウォーフ! …お前は名誉や忠誠心を貫くためならば、ほかのどんなことも犠牲にしてしまう。責めるならそんな自分を責めろ」 ※6: このカットシーン、ビデオ版での吹き替えは以下の通り。トロイ「せめて、状況を説明していただけないでしょうか」 ピカード「…何が起こっているのかわからないのは不安だろうが、今はまだ何も話してやれないのだ」 ※7: TNG第21話 "The Arsenal of Freedom" 「生き返った死の宇宙商人」の映像を再利用。後ろにポール・ライス艦長の姿が少し見えています ※8: トロイが出ていく時にブリッジ内のターボリフトのドアが映りますが、誤って未来のデザインのままになっています (縦・横に太い線入り) ※9: このカットシーン、ビデオ版での吹き替えは以下の通り。ピカード「話は以上かな、カウンセラー?」 トロイ「あと一つあります。言うべきかどうか迷ったんですが、でも…やっぱり。…ライカー中佐のことです」「彼がどうした」「私と彼は以前個人的に、付き合っていたんです」「なるほど? …で、一緒だと仕事がやりにくいか」「それはありません、もう何年も前のことですし。ただ艦長にはお話ししておいた方がいいと思いまして」「よく話してくれた。だが 2人の間のことは本人同士に任せるよ」「わかりました」「アール・グレイ、ホットで」 コンピューター『その飲み物はフードディスペンサーにプログラムされていません』 ※10: Tomalak (アンドレアス・カツラス Andreas Katsulas) TNG第82話 "Future Imperfect" 「悪夢のホログラム」以来の登場。当初は TNG第164話 "The Pegasus" 「難破船ペガサスの秘密」に登場したロミュラン、シロルになる予定でした。そのせいか、ウォーバードの艦名はシロルが指揮していたテリックスのままになっています。声:加藤精三 (継続) ※11: このカットシーン、ビデオ版での吹き替えは以下の通り。トモロク『それは艦隊司令部が承認した案なのか?』 ピカード「いいや?」『悪くないな』 |
操作するデータ。「何も見つかりません。…パスツール※12の周囲一光年の範囲をスキャンしているのですが、時空の歪みも、素粒子の変動も見られません。」 星図が表示されている。 ピカード:「そんなバカな。ほかの 2つの時代にはあってどうしてここにない。」 ウォーフ:「艦長…クリンゴンの通信をずっと傍受していたのですが、先ほど戦艦が数隻、連邦の侵入者を追跡するためにこちらへ向かったそうです。」 「……引き返す気か?」 ビヴァリー:「ここには何もないのよ?」 「そんなはずはない、絶対にある! データ、通常のスキャンでは映らないのかもしれん。な、何かほかに時空の歪みを感知する方法はないのか。」 データ:「方法はいくつもありますが、パスツール※12の設備ではできることが非常に限られてしまいます。」 「ああ…。」 ビヴァリー:「連邦の領域に引き返すしかないわ。」 データ:「待って下さい? メインディフレクターを改造すれば何とかなります。逆タキオンパルス※13を発射するようにすれば、亜空間バリアがあっても、スキャンできます。」 ピカード:「いいぞ、やってくれ。※14」 ビヴァリー:「ちょっと待って。データ、時間はどれぐらいかかるの。」 データ:「ディフレクターを改造して、星系全体をスキャンするとなると約14時間です。」 「わかったわ。タキオンパルスの改造を始めてちょうだい。少尉、連邦の領域に戻るコースをセットして。あと 6時間だけ待って、何も見つからなければ最大ワープで引き返すわよ。」 チルトン:「了解。」 ピカード:「何を言うんだ、6時間では足りん! 見つかるまでここに残るぞ、何時間だろうとな。」 ビヴァリー:「命令を遂行して。ちょっと話があるわ。」 仕方なくついていくピカード。 ピカードは作戦室に入る。「ビヴァリー、どうしてだ。何もわからんうちに引き返すのは…」 ビヴァリー:「ブリッジで私の命令にケチをつけるような真似はやめて!」 「何だ、私はただ…。今はそんなことよりもっと大きな問題があるのがわからんのか!」 「あなただって、クルーが今みたいな態度を取ったら許さなかったでしょう。私だって同じよ。元艦長でも、元夫でも関係ないわ。」 「……確かに。その通りだ。すまなかった。…だがことの重大さだけはわかってくれないか。Q は全人類が滅亡すると言っていたんだぞ?」 「わかってるわ? だからこそ、危険を冒して調査を続ける許可を出した。…でもあなたの話が現実ではないという可能性も、覚悟しておいて欲しいの。」 「…何!」※15 「…あなたのためを思ってこれだけは言わないでおいたけど、イルモディック病の症状が進んでるの。全てあなたの、思い込みかもしれないのよ。……あと 6時間だけ調査を続けて、その後引き返すわ。…でもこれだけはわかってちょうだい。みんなあなたのことを想っているから、ここまで来たのよ。」 出ていくビヴァリー。※16 ピカードも後をついていこうとした時、部屋の中に声が響いた。「えー、いま何と言っとったかな、よく聞こえなんだ。」 ピカード:「Q! 一体どうなっている。亀裂はどこへいった。」 Q は老人の姿をしており、耳に旧式の補聴器を当てている。「え、母ちゃん※17はどこか? そんなの知らんよ。」 ピカード:「答えろ!」 演技をやめる Q。「答えはあるぞ、ジャン・リュック。教えてやることはできんが、お前にヒントをやろう。」 ピカード:「どんな。」 「お前は一人じゃあない。過去のお前に、そして未来のお前も、いつもお前と共にある。」 「…このタイムスリップか? そこに答えがあるんだな、そうだろ。一つだけ教えろ。…我々が探している亀裂は、人類を破滅させるのか。」 「何だ、もう忘れたのか。」 補聴器をピカードに当て、しゃがれ声を出す Q。「お前が破滅の原因だぞ。」 「…だが、私が何をする。いつ、どうして…」 コンピューターの音が聞こえる。※18 尋ねる現在のピカード。「どうだデータ。」 データ:「空間の亀裂は直径 2億キロメートルに及びます。時間エネルギーが高度に集中しており、Gタイプの恒星 10個分に匹敵する量のエネルギーを、放出しています。」 「エネルギーの源は。」 「確認できません。亀裂の中まではスキャンできません。」 「ああ例えば、メインディフレクターを改造して逆タキオンパルスを発射するようにしてはどうだ? それなら亜空間バリアを越えてスキャンできるから、時空の亀裂の内部まで調べられると思わないか。」 「…実に画期的なアイデアです。タキオンビームに、そんな使い方もあったんですね。…艦長が時空理論にそれほど精通していらっしゃるとは知りませんでした。」 「あ…いやあ実は、その道に詳しい友人からの受け売りだ。※19」 「早速メイン機関部で、改造作業に取りかかります。」 機関室のラフォージ。「メイン EPSタップを、ディフレクター配列につなげばパワーが上がるはずだ。」 データ:「わかった。」 操作する。「タキオンパルス、発射。」 ディフレクターからパルスが発射され、亀裂の中心に注がれる。 ラフォージ:「OK、パルスは安定。現在、スキャン結果受信中。」 データ:「亀裂内部のスキャン映像を全て分析するには少し時間がかかる。その間に…」 ラフォージは突然叫び、ヴァイザーに触る。 データ:「ジョーディ? どうした?」 ラフォージ:「急に痛み出した。こめかみを、アイスピックで刺されたみたいだ。……電磁波の変動がものすごいぞ。俺のヴァイザーがそれに反応しちまってる。」 「データより医療部。至急メイン機関部へ来てくれ。」 逆タキオンパルスを発射し続けるエンタープライズ。 ヴァイザーを外したラフォージが調べられている。 クラッシャー:「信じられないわ。視神経の DNA が再生を始めてる。見えなかった目が、生まれ変わりつつあるの。」 ピカード:「そんなことがあるのか。」 「理論上ありえないわ。身体の器官が自然再生するなんて、医学では説明つかないの。」 オガワ:「ドクター、ほかにも同じように古い傷が自然に治癒したと言ってきたクルーが、2名いるそうです。」 データ:「艦長。一部ですが解明できました。亀裂の内部を分析した結果…時空連続体に、多層の時間反転が起きていることがわかりました。」 何層にもなった内部構造が表示されている。 クラッシャー:「つまりどういうこと?」 「…つまり、この亀裂の内部は反時間※20の渦なのです。」 ピカード:「反時間とは?」 「時間力学における新しい概念で、物質と反物質があるように、時間においても通常の時間に対して反時間というものが存在するのです。」 「…それではもし、時間と反時間が接触したら。」 「双方とも消滅して、空間に亀裂ができます。デヴロン星系で、それが起こったのでしょう。…亀裂から、強力な時間エネルギーの波が発せられ、正常な時間の流れを妨げています。」 「時間と反時間が接触してしまった原因は何が考えられる。」 過去のデータは尋ねた。「…『反時間』ですか?」 ピカード:「そうだ、ディフレクターを改造し、逆タキオンパルスを出してスキャンすればあの空間の亀裂が…時間と反時間の接点であることを証明できる。」 「実に素晴らしい仮説です。…どうしてその…」 「いま詳しく説明している暇はない。言ったとおりのことを実行してくれ。そして、亀裂が発生した原因は何なのか探るんだ。オブライエン、この亀裂の大きさは?」 オブライエン:「…直径がおよそ、4億※21キロメートルありますね。」 「どうもわからん、なぜ未来より過去の方が大きい。※22大尉、ブリッジを頼む。作戦室にいる。」 ヤー:「了解。」 パスツールの作戦室を出るピカード。いきなり船が揺れた。 艦長席で揺れに耐えるビヴァリー。 ピカード:「どうなってる!」 ビヴァリー:「攻撃を受けたの。」 チルトン:「防御スクリーン強度、52%。左舷エンジン室に軽度の損傷。」※23 ウォーフ:「クリンゴン戦艦が 2隻出現。両側を挟まれた。」 クリンゴン艦※24が遮蔽を解除し、パスツールへの攻撃を続ける。 |
※12: 吹き替えでは「パスツール号」 ※13: inverse tachyon pulse エンサイクロペディアでは「逆タキオンビーム (inverse tachyon beam)」 ※14: "Make it so." ※15: このカットシーン、ビデオ版での吹き替えは以下の通り。ビヴァリー「わかってるわ。だから危険を冒してまでここに残って調べてるんじゃない。…でももしかしたら、あなたの言っていることが全て…現実じゃないかもしれないのよ」 ピカード「何だと」 DVD版以外では、前のピカードのセリフは「Q は全人類が絶滅すると…」 ※16: なぜか DVD版の吹き替え音声のみ、ドアの開閉音がかなり前にずれています (まだビヴァリーが映っている時に、開く音が聞こえる) ※17: anomaly (異常、亀裂) と mommy を聞き違えたということ ※18: このカットシーン、ビデオ版での吹き替えは以下の通り。Q「へー、何の話をしていた、よく聞こえんぞ」 ピカード「Q! 何が起こっているんだ。亀裂はどこにある」「へ、何があるって、聞こえんよ」「答えろ」「答えならあるが、教えてやるわけにはいかん。だがヒントならくれてやる」「何だ」「お前は一人ではない。過去のお前も、未来のお前も、常に同時に存在する」「…タイムスリップが、答えを見つける鍵だというのか。…一つ教えてくれ。あの空間と亀裂が、本当に人類を滅ぼすというのか」「はっきり言ったはずだぞ? 人類を滅ぼすのはお前だ」「私が、何をすると言うんだ。いつ、どうやって…」 また、カットシーンの直後、分割版では映し方が変更されています (ピカードが振り向いてデータが映る) ※19: 原語ではこの後に "Make it so." ※20: anti-time ※21: 吹き替えでは「4,000億」。million と billion を聞き違えたようです。7年で 2,000倍は、いくら何でも… ※22: 当初、ここでテレリアン船の Androna という女性と話すシーンがありました。マーサ・ハケット (DS9 トゥルール、VOY セスカ役) が演じていました。一部資料ではドクター・セラーが言及されていると書いてありますが、これも同様に当初の脚本からです ※23: このカットシーン、ビデオ版での吹き替えは「防御スクリーン、パワー52%に低下。左舷エンジン破損」となっています。 前後の吹き替え、DVD版以外では:ピカード「どうした!」 ビヴァリー「攻撃されたわ」(ここのアップは分割版のみ) ウォーフ「両舷にクリンゴンの巡洋戦艦が 2隻姿を現しました」。ビデオ版では、ビヴァリー「攻撃を受けたわ」になっています ※24: 初登場のタイプで、Rick Sternbach デザイン、Greg Jein 製作。後に (時代的には前)、DS9第73・74話 "The Way of the Warrior, Part I and II" 「クリンゴンの暴挙(前)(後)」で実際にネヴァール (ネグヴァー) として登場、クラス名も同名とされています。ただし下部に武器ポッド (または補助ナセル) が追加、船首下部の羽根および船首とナセル前部の角が除去されています (この TNG のを Voodieh 亜種としているサイトもあります)。さらに VOY第171話 "Endgame, Part I" 「道は星雲の彼方へ(前)」の可能性の未来でも別の亜種が登場、羽根と角が復活しています。このシーン、遮蔽を解除する前に攻撃しているような… |
攻撃は容赦なく続く。 ビヴァリー:「ワープスピードで退却するわよ。」 チルトン:「艦長、ワープパワーが出ません。」 「…方位 148、マーク 215、通常エンジン全開。」 逃げるパスツールに注がれる、クリンゴン戦艦のディスラプター。 チルトン:「パワー低下、防御スクリーン出力 30%にダウン。」 ピカード:「武器は使えるか。」 ウォーフ:「相手の防御スクリーンには歯が立ちません。」 ビヴァリー:「ジョーディ、早くワープパワーを回復して。」 ラフォージ:「やってるんですが、ダメージが大きすぎてフェイズインデューサーが戻らないんです。」 追ってくるクリンゴン艦 2隻。 チルトン:「もう一度攻撃を受けたら、防御スクリーンが消滅します。」 ビヴァリー:「宇宙チャンネルオン。」 「どうぞ。」 「こちら、ビヴァリー・ピカード艦長。この船は医療船であり戦う意思はない。直ちに攻撃をやめ…」 揺れは続く。「ウォーフ、降伏の合図を出して。」 躊躇するウォーフだが、クリンゴン語で話した。「(ウォーフ知事だ。降伏する)」※25 それでもやまない攻撃。 コンソールが爆発し、チルトンが吹き飛ばされた。 近づくビヴァリー。脈を取るが、死んでいた。 ウォーフ:「防御スクリーン消滅。全く無防備です。」 データ:「艦長、もう一隻現れました。方位 215、マーク 310。エンタープライズです。」 遮蔽を解除したエンタープライズ※26は、3本のワープナセルをもっている。 データ:「通信です。」 ビヴァリー:「スクリーンオン。」 ライカーが映る。『やっぱり言うことを聞きませんでしたね。待ってなさい。クリンゴンの注意を逸らします。』 フェイザーキャノンを発射するエンタープライズ。クリンゴン戦艦の先端を貫通した。 もう一隻からの攻撃をかわし、次々と撃ち抜いていく。爆発させた。 ウォーフ:「クリンゴン艦はエンタープライズを追っています。」 ビヴァリー:「被害報告。」 ラフォージ:「ワープコアがひどくやられていて、破裂寸前です。」 ピカード:「爆発するぞ!」 データ:「クリンゴン艦は攻撃をやめました。ライカー提督から通信です。」 映るライカー。『そちらの、ワープコアの異常をキャッチした。全員、エンタープライズに転送する。』 立ち上がるビヴァリーたち。みな転送された。 エンタープライズのブリッジに実体化する。 報告する戦術士官、ゲインズ大尉※27。「パスツールのクルーは全員収容しました。」 ライカー:「クリンゴン艦はどの辺りにいる。」 「0.5光年先を、航行しています。」 「また来るぞ。」 ピカードに言うライカー。「あなたは止めても聞かないだろうとは思っていましたよ。」 次はウォーフ。「だがお前までなんだ。武器もない船で護衛もつけず敵地に乗り込むなんて、無茶にもほどがある!」 ウォーフ:「あなたが艦長の頼みを断らなければ、私だってこんなことはしていない! 私はあなたと違って昔の恩や忠誠心を忘れませんからね。」 近づこうとするライカーを、ピカードが制した。「言い争ってる場合か! パスツールが爆発するんだぞ?」 ライカー:「…エンジン全開で退却。」 離れるエンタープライズ。パスツールは爆発した。 ライカー:「……連邦領域に戻るぞ。」 ピカード:「駄目だウィル、待ってくれ。人類を救わねばならんのだ。」 「遮蔽装置オン。」 ゲインズ:「提督。右舷のプラズマコイルに損傷。遮蔽装置故障、機関部は修理に 7時間かかると言ってます。」 「では昔のやり方で行く。連邦の領域へ向かえ。※28ワープ13。」 ピカード:「ウィル、待ってくれ。亀裂ができた原因を突き止めるまでは帰るわけにはいかん!」 「これ以上は留まれません。」 「人類の運命がかかっているのだ、このままでは帰れん。頼む、わかってくれ…」 ビヴァリーはピカードに、ハイポスプレーを打った。意識を失うピカード。 現在のピカードは、廊下ですれ違うクルーとぶつかった。 ベッドで横になっているラフォージ。 クラッシャー:「あなたの視力は回復の一方だわ。」 別のベッドへ向かう。「ごめんなさいアリサ、もう一度診せてね。あと 2、3日は、痛みがあるかもしれないわね。」※29 ピカードが医療室に入る。 クラッシャー:「ジャン・リュック。すぐ戻ってくるわ?」 うなずくオガワ。アンドリュー・パウエル大尉※30がついている。 クラッシャー:「赤ちゃんが駄目だったの。…多分これはジョーディの目と同じ現象よ。時空の歪みのエネルギーに影響されて、身体の組織の発達が逆に進んでいってるの。アリサのお腹の子も、どんどん退行していって…最期には DNA 自体が消滅したわ?」 ピカード:「アリサは。」 「今のところ、大丈夫だけど。これ以上時空の歪みの影響を受けたら、みんなの身体がどうなるかわからない。」 「クルー全員の身が危険だということか。」 「分裂していた細胞が癒着を始めてるの。退行の初期段階よ。それで昔の傷が治った患者もいるけど、喜んでいられるのは今のうちだけ。最期には消滅するのよ。」 観察ラウンジ。 ピカード:「この影響がどこまで広がっているか確認する必要がある。第23宇宙基地※31に連絡を取って、そこのクルーに時間逆行※32現象が起きていないか確かめろ。」 トロイ:「了解。」 「データ、タキオンスキャンは後どれくらいで完了する?」 データ:「1時間45分ほどです。」 「よし、それが終わったらできるだけ安全に時空の歪みを消す方法を検討してくれ。考え得るリスクを徹底的に分析してな。」 「了解。」 「以上だ。」 解散する一同。残ったピカードは、目を押さえた。 Q:「本当にそれでいいのか、ジャン・リュック。」 制服姿で前に座り、真似して頭を抱えていた。「時空の歪みの正体もわからんくせに、下手に手を出すのは危険じゃないか。」 ピカード:「失敗して、人類が滅亡するというのか。」 「かもしれん。あるいは逆に、手を出さないことが悪い結果を招くのかもしれんし。悩みに悩むところだなあ。少し気分を変えてみるか。」 Q は指を鳴らした。 ピカードがいる場所が変わった。 Q:「懐かしの故郷だろ。」 ピカード:「何だって?」 そこは岩場だ。 「自分の生まれ故郷もわからんのか。フランスだよ、ここは今から 35億年前の地球※33だ。多少の誤差はあろうが。ひどい臭いだろう。全く、硫黄やら火山灰やら。」 岩をなでる Q。「メイドに文句言わないと。」 「Q、これは一体何のつもりだ。」 「見ろ。」 見上げると、宇宙一面に亀裂が広がっていた。 ピカード:「亀裂がこんなところにまで広がっているのか。」 Q:「そう、この時代には…亀裂はお前たちの銀河系全体を覆うほどに拡大している。」 「過去に行けば行くほど、巨大になっているのか。」 火山が噴火した。 「来たまえ。見せたいものがある。」 地面を指さす Q。「見えるか! あれはお前だ。嘘じゃないぞ、見ていたまえ。地球で初めての命が生まれようとしているところだ。数種類のアミノ酸が結合して、最初のタンパク質を形作り、原形質となる。」 Q は笑い、ドロドロの液体を手につける。「これがお前たちのいう命。面白いじゃないか。人間の命も、文明も何もかも、元を正せば全てこの水たまりから、生まれたわけだ。…何だか納得できるな。ここに顕微鏡でもあればもっと面白いんだろうが。※34ああほら、始まるぞう。アミノ酸同士がどんどん近づいて、固まっていく。さあ結合するぞ。…お! 何も起きない。お前のせいだぞ?」 ピカード:「私が時空の亀裂を作ったせいで…地球に生まれるはずの命が、誕生できなくなったと、そう言いたいのか。」 「…めでたいだろう。」 艦長席にいる、過去のピカード。 |
※25: このカットシーン、ビデオ版での吹き替えは以下の通り。ビヴァリー「ウォーフ、降伏すると伝えて」 ウォーフ「トス・ヴァチョー・ド・ウォーフ。ドール・ジグ」(字幕なし) 前のビヴァリーのセリフ、DVD版以外では「我々は医療船であり」 ※26: ドレッドノート型と呼ばれる場合もあります。遮蔽装置をもっているのは、ロミュランがクリンゴンに征服されたことで、アルジェロン条約が無効になったからなんでしょうね ※27: Lt. Gaines (ティム・ケレハー Tim Kelleher VOY第122話 "Survival Instinct" 「ボーグの絆を求めて」のフォー・オブ・ナイン (Four of Nine)=プシャン (P'chan)、ENT第34話 "The Communicator" 「危険なコンタクト」の Pell 大尉 (Lt. Pell) 役) 名前は言及されていません。声:安井邦彦、DS9 2代目バライル ※28: このカットシーン、ビデオ版での吹き替えは以下の通り。ピカード「待てウィル、頼む! このままでは人類が滅びる!」 ライカー「遮蔽シールド」「右舷プラズマコイルがダメージを受けており、遮蔽シールドが使えません。修復するには、およそ 7時間必要です」「連邦領域に向け、大至急出発だ」 後のピカードのセリフ、DVD版以外では「ウィル、待ってくれ。いいか、亀裂ができた原因を突き止めるまでは帰っちゃいかん!」。分割版ではライカーが後ろを向いている時に「ワープ13」と挿入しています (ビデオ版でもその個所のまま)。DVD版のみ「13」が「サーティーン」ではなく「じゅうさん」になっています (前のビヴァリーは旧吹き替えのサーティーンのまま) ※29: このカットシーン、ビデオ版での吹き替えは「視力はどんどん回復してきているわ? アリサ? もう一度、お腹を見せてくれる? 多分あと 2、3日で痛みは消えると思うわ?」となっています。 後のシーン、分割版の方がハイポスプレーを扱っている部分はわずかに長くなっています ※30: Lieutenant Andrew Powell (ブライアン・デモンブルン Brian DeMonbreun) 初登場 (エキストラ)。オガワの恋人。TNG第167話 "Lower Decks" 「若き勇者達」など ※31: Starbase 23 ロミュラン中立地帯のごく近くに位置しています。TNG第148話 "Suspicions" 「新亜空間テクノロジー超フェイズシールド」より ※32: temporal reversion ※33: Dun Curry デザイン。DS9/VOY の洞窟にも使われる第18スタジオで撮影され、ミニチュアとマットペインティングで補完。メイン撮影最後のシーンであり、パラマウントの映画「サンセット大通り」(1950) でラストシーンが撮られた場所でもあります ※34: このカットシーン、ビデオ版での吹き替えは (前半) 「ひどい臭いだろう、硫黄の臭いと火山灰のホコリ。掃除をサボってるな?」 (後半)「元はただの泥の塊。顕微鏡を持ってくればもっとよく見えたのにな」となっています。 分割版では液体のアップの挿入個所が異なります。この原始地球のシーンはノーカットの DVD版・ビデオ版共に、前後まとめて吹き替えし直されており、分割版では「自分の生まれた故郷も」「約35億年前」「多少の誤差はあると思うが」「お前たちのいう命だ」「何も起きないな」、ビデオ版では「約35億年前の地球だ。(そのままカット部分の) ひどい臭いだろう」「お前たちのいう命だ」といった個所が DVD版とは違っています。 |
過去のエンタープライズも、逆タキオンパルスを発射している。 ピカード:「まず亀裂ができた原因を探ることに徹しよう。データ、意見は。」 データ:「タキオンパルスでも、亀裂の中心部はスキャンできませんでした。中心部分の状態が調べられれば、発生原因も推測できるでしょう。」 「何とかスキャンする手はないか。」 オブライエン:「あらゆる手を尽くしましたが、干渉波が大きすぎて。この船の装備では無理です。」 「ほかの手段は。」 データ:「理論的には、マルチフェイズ解像能力のある断層スキャナー※35なら、この干渉波の中でも有効なはずです。ディストロム研究所で開発中ですが、まだ実用段階ではありません。」 モニターに表示されている亀裂の図。 現在のピカード。「この船にマルチフェイズ断層スキャナーがあったな。」 データ:「あります。」 「それを使って中心部をスキャンできるか。」 「やってみます。…干渉波が強力ですが、何とか読み取れそうです。…この現象は…。」 3つの線が見える。 「どうした?」 「時空の歪みの中心部に、3本のタキオンパルスが集まり、吸い込まれています。…我々の出しているパルスと、後の 2つは全く波長が同じで…全て連邦の船※36のものと思われます。」 「3つの時間で…それぞれ発射したパルスが、一点に集まっていたのか。」 「艦長、どういうことですか。」 未来のピカードはベッドで目を覚ました。「コンピューター、ライカーはどこだ。」 コンピューター:『ライカー提督はバーラウンジです。』 起き上がるピカード。 テン・フォワードのラフォージ。「古い船なのに、よく整備されてますねえ。」 ライカー:「5年前に解体されそうになったがな。そこは提督の特権ってやつで、私専用の船にした。」 ビヴァリー:「ウィル? ウォーフと仲違いして、もうどれぐらいになるの?」 独りだけカウンターにいる、ウォーフの方を見るライカー。「もう 20年以上になるかな。まだ当分は続きそうだ。」 データ:「お二人がそんなことでは、亡くなったカウンセラー・トロイも…きっと悲しんでいますよ?」 ビヴァリー:「その通りよ。もう水に流してもいい頃じゃない?」 ライカー:「ディアナの葬式で会ったが、口も聞いてくれなかった。」 ラフォージ:「そんな余裕もないくらい…悲しんでたんですよ。」 「悲しいのは…ウォーフ一人じゃない。」 ビヴァリー:「…でもウォーフとディアナが結ばれなかったのは、やっぱりあなたの存在が引っかかっていたからよ?」 「二人の邪魔をしたことなど一度もない!」 「言い切れる?」 「どうかな。…終わったと認めたくなかった。いつかやり直せると思ってたよ。心のどこかで。…だが今更悔やんでもディアナは…もう。」 廊下を歩くピカード。クルーとぶつかる。 ピカード:「ああ少尉※37。…バーラウンジはどこだ。」 少尉:「ここから下がった、セクション005 です。」 「…ありがとう。」※38 ターボリフトに乗るピカード。 独りで飲み続けるウォーフ。 ピカードがテン・フォワードにやってきた。 ビヴァリー:「ジャン・リュック。」 ピカード:「ウィル! ウィル、原因がわかった。…今すぐ中立ゾーンに戻ってくれ。」 ライカー:「あなたが戻るべき場所はベッドですよ。」 「ことの起こりがようやくわかったんだ! 亀裂の原因は我々のタキオンパルスだ。ああ 3つの時間の中で、同じ過ちを犯してしまっていたんだ!」 ビヴァリー:「さ、一緒に行きましょう?」 「いや口を出さんでくれ。…年寄り扱いするな! いいか、我々は 3つの時間の中で、同じ場所にタキオンパルスを発射した。あれがいかん。わからんか、タキオンパルスだ。ああだから…最初にパスツール※12がタキオンを発射した時、あ、あの時に…我々が引き金を、引いてしまっていたんだ。それが過去に影響を与えて、ああつまりだな、鶏が先か卵が先かだ。ああ始まりは過去にあったと思ったのが間違いで、いま始まっていたんだよ! この未来で…だから過去の方が亀裂が大きかったんだ。」 データ:「艦長のおっしゃりたいことがわかってきました。つまり一種の…時間のパラドックスですね?」 「そう、まさにそれだ!」 「なるほど。…理論的には、未来が過去に影響を与えることもありえますね。仮にピカード艦長が、本当にタイムスリップしていたとしましょう。そして、3つの時間の中でそれぞれタキオンパルスを、宇宙の同じ座標に発射したと仮定します。…その結果として、3つのタキオンパルスが一体となって亜空間バリアを突き破り、時間と反時間の間の壁に亀裂を作ってしまったとも考えられます。」 ラフォージ:「つまりこういうことかな? 反時間の中では時間の流れがこの世界とは逆だから、未来の現象の影響が過去に反映される。」 ピカード:「そうだ! だから時空の亀裂も過去に行くほど大きくなっていくわけだ…」 ライカー:「いいでしょう。仮にそうだとしてどう対処します。」 「急いでデヴロン星系に引き返せ。」 ビヴァリー:「それがいいわ。」 データ:「引き返すなら、早い方がいいでしょう。…今ならまだ、時空の亀裂は発生したばかりのはずです。」 ライカー:「…ライカーよりブリッジ、ワープ最大でデヴロン星系へ向かえ。」 ゲインズ:『了解!』 ライカーはウォーフの前で立ち止まった。「手伝ってくれるか。」 立ち上がるウォーフ。 |
※35: 断層画像スキャナー tomographic imaging scanner ※36: 原語では「エンタープライズ」ですが、実際には未来ではパスツールが発射したパルスのため、吹き替えの方が正しくなっています ※37: Ensign (スティーブン・マシュー・ガーヴィン Stephen Matthew Garvin 一部資料では姓がガーヴェイ (Garvey) になっています) 声 (DVD版):小室正幸、TNG/VOY アリドール、DS9 エディングトン、ルソット、VOY バーレー、ケオティカなど ※38: このカットシーン、ビデオ版での吹き替えは以下の通り。ピカード「ああ君…バーラウンジはどこだ」 少尉「4階下に下りて、セクション005 です」「…ありがとう」 カットシーンの前に分割版では、ライカーのセリフの後、データのアップが挿入されます |
エンタープライズはワープをやめた。 ゲインズ:「デヴロン星系に入りました。」 ライカー:「よし、停止。」 データ:「左舷前方に、小さな時空の亀裂が見られます。」 「スクリーンオン。」 ピカード:「……思った通りだ。」 亀裂が映っている※39。まだ小さい。 ラフォージ:「反時間の流れができてます。発生してから 6時間ってとこですね。」 ピカード:「過去に影響を与える前に、今ここで止めなければ。」 ライカー:「データ。何か今すぐ打つ手はないか。」 データ:「過去のエンタープライズが発射しているタキオンパルスがエネルギー源ですから、それを止めることです。」 ピカード:「今度タイムスリップしたら止めさせる。」 ライカー:「それ以外に何か亀裂をふさぐ方法はないのか。」 データ:「大至急検討します。」 現在のピカード。「データ、タキオンパルスを止めろ。」 データ:「…は?」 「急げ、3つの時間から発射されたタキオンパルスが、亀裂の原因だったのだ。」 「了解。」 パルスが止められる。 ピカード:「亀裂の様子に変化は?」 過去のデータ。「ありません。」 ピカード:「タキオンパルスを停止しろ。」 オブライエン:「…スキャンが終わっていませんが。」 「わかっている。だが今すぐタキオンパルスを止める必要があるのだ。」 データ:「了解、停止します。」 パルスが止められた。スクリーンの亀裂に変化は見られない。 ピカード:「なぜ亀裂が消えないんだ。」 オブライエン:「どういうことですか?」 未来のピカード。「タキオンパルスは両方とも止めさせたが、亀裂には何の変化もなかった。」 データ:「ここでも変化は見られません。」 ビヴァリー:「どうするの。」 ラフォージ:「何とかして、亀裂をふさぐしかありませんねえ。時間と、反時間の間に壁を作るんです。」 ライカー:「できるのか。」 データ:「それには、亀裂の中に飛び込むしかありません。中に入れば、エンジンの噴射でワープシェル※40が作れます。」 ラフォージ:「俺もそれを考えてた。ワープシェルが亜空間バリアと同じ役目をして、時間と反時間を遮る。」 「亀裂も消え、時間の流れも通常に戻るでしょう。ただ 3つの時間で、同様に行う必要があります。」 ピカード:「そこが問題だ。過去の亀裂はここより遥かに巨大になっている。」 過去のピカード。「中に入るのは危険が大きい。」 オブライエン:「何の中に入るんです?」 「あの亀裂の中だよ。…コースを亀裂の中心にセットし、全パワーを防御スクリーンに回せ。」 ヤー:「艦長! わけを説明していただけませんか。」 「残念だがそれはできん。」 「これまで、どんな命令にも従ってきました。…疑問を抱いても表に出さずに。でもクルーの安全に関わる問題なら、説明を聞かないわけにはいきません。」 「…君の心配はよくわかる。私が君の立場だったら、やはり同じことを言ったと思う。だが今回は、君が納得するような答えを与えてやることはできない。…理解してくれと言っても難しいと思うが、我々が亀裂の中に入りワープシェルを張らなければ、重大な危機が訪れるのだ。…この任務には危険が伴う。生きては帰れないかもしれん。だが犠牲を払ってでも守らねばならないものがある。いま人類に迫っている危機は、君たちの予想を遥かに超えたものだ。…私に対する不信感や、お互いに対する不安もあるだろう。だがこれだけは自信をもって言える。この船に乗ってまだ日は浅いが、ここにいる君らは…艦隊の中でも最高のクルーだ。私は君たちを、心から信頼している。どうか、君たちもこの私を信じて…ついてきて欲しい。」 ピカードを見ていたクルーは、みな自分のコンソールの方に向き直った。 ヤー:「防御スクリーン、パワー最大。」 ウォーフ:「亀裂に入った際の衝撃に備え、ワープエンジン部の船体強度を補強します。」 データ:「ワープシェル、起動準備開始します。」 オブライエン:「コースセット完了。」 トロイ:「全デッキ準備完了。」 ピカード:「発進しろ。」 現在のデータ。「艦長、いい手があります。亀裂の中に入り、亜空間バリアの代わりにワープシェル…」 言葉を引き継ぐピカード。「ワープシェルを張るんだな? それで時空の亀裂をふさげるはずだ。」 データ:「そうです。」 「君は本当に有能だよ。いつの時代でもな。…コースを亀裂の中心にセットしろ。中心部に着いたらワープシェルを張る。」 クルー※41:「了解。」 未来のピカード。「後の 2隻も亀裂に向かった。」 ライカー:「よーし、パイロット。発進だ。」 亀裂へ向かうエンタープライズ。 オブライエン:「亀裂に突入します!」 ピカード:「全員、衝撃に備えろ。」 揺れ出す船。 ヤー:「時間エネルギーの影響でメインパワー低下。補助パワーに…」 現在のラフォージは、ヴァイザーを外したままだ。「切り替えます! 船のシステム全体にパワー変動が起きて、通常エンジンの出力が低下しています!」 ピカード:「コースとスピードを維持しろ。後どのぐらいで、中心に達する。」 データ:「最低でも、30秒です。」 スクリーン一杯に広がる亀裂。 ゲインズ:「亀裂に突入!」 過去のデータ。「中心に達しました。」 ピカード:「ワープシェル、起動。」 現在のデータ。「ワープエンジン起動。ワープシェル、起動!」 ライカー提督。「変化は出てるか。」 過去のデータ。「亀裂の中心部に、新しい亜空間バリアが形成されています。」 ヤー:「艦長、センサーが船を 2隻捉えました。」 スクリーンに映ったのは、こちらを向いている未来の 2隻のエンタープライズだ。 現在のエンタープライズには、過去と未来のエンタープライズの側面。 そして未来のエンタープライズでは、過去 2隻のエンタープライズの後方が映る。 過去のデータ。「艦長、狙い通りです。亀裂が次第にふさがっていきます。恐らく…」 ヤー:「時間エネルギーの影響でワープコアに亀裂が入りました。」 ウォーフ:「コアを捨てるしかありません。」 ピカード:「駄目だ! できるだけ長くワープシェルを維持しなければならん。」 ヤー:「…ワープコアが破裂寸前です! このままではエンタープライズ全体が…」 ブリッジが白い光に包まれた。 現在のスクリーンに、過去のエンタープライズが爆発するのが見える。 ピカード:「反物質タンクに、非常用パワーを送って補強しろ。」 ラフォージ:「やってますが、パワーが不安定です!」 データ:「ワープシェルの効果は顕著に出ています。亀裂は縮小しています。」 「補強できません! タンクが崩壊します!」 ピカード:「何とかもたせろ、ラフォージ…」 光。 未来のエンタープライズは、前にいるエンタープライズが爆発するのを目にした。 データ:「2隻とも爆発しました。」 Q がピカードの隣にいた。「残るはこれ一隻か?」 ピカード:「…亀裂は。」 データ:「ほとんど消えかけています。」 ラフォージ:「タンクに異常発生。」 Q:「お別れだな。お前は見所のある男だった。名残惜しいが何事にも終わりはある。※42」 「反物質が漏れだしています。もう限界です!」 エンタープライズの周りが白く包まれた。亀裂が縮小し、そこを中心として飛散した。 ピカードは座り、目を押さえていた。 椅子に乗った Q。「Q連続体はお前には無理だと言ってたが、私はやると思ってたよ。」 手袋を取る。 ピカード:「成功したのか。亀裂は消えたのか。」 「お前はそればっかりか。亀裂、亀裂とまあ面白くもない男だなあ。」 「どうなんだ!」※43 「お前はまだここに存在し、私と話してるだろ。」 「…クルーと船は。」 「ケ! 早速クルーや船の心配か。その分じゃペットの魚も心配だろう。安心するがいい、お前は今回も…人類を救った。」 「……感謝する。」 「…何に?」 「今回の危機を脱するヒントをくれた。」 「…私が巻き込んだからな。指令は連続体からだ。しかしヒントを与えたのは…私の考えだ。※44」 観客はいなくなっている。 ピカード:「……この法廷に立たされるのはできればこれを最後にしてもらいたいものだな。」 Q:「何度も言ったはずだぞ、ジャン・リュック? 裁判に終わりはない。今回は新しい次元に精神を広げることができるかを試した。お前はほんの一瞬それに成功した。」 「パラドックスに気づいた時か。」 「そうだ。その一瞬既成概念を捨て、新しい可能性に目を開いた。それが、宇宙を探検することだ。ただ星を調べて回るだけが能じゃない。あらゆる存在の可能性を追求することこそ真の、探求だ。」 「Q、何を言おうとしてるんだ。」 一旦はピカードの耳に口を近づけたが、Q は上昇していく。「自分で見つけろ。私はいつでも、見ているからな。また機会があればお前のところに寄って、肩を叩いてやろう。ではな。また、会おう!」 ピカードはターボリフトを出た。 トロイとウォーフが、キスしようとしている。 トロイ:「艦長、大丈夫ですか?」 ピカード:「…ウォーフ…今日の日付は?」 ウォーフ:「宇宙暦、47988 です。」 微笑むピカード。「ああ…。」 トロイ:「どうかしたんですか?」 「いや、別に? 何でもない。じゃあ私は、戻って寝よう。…今夜は、ゆっくりと眠れそうだ。」 ウォーフと顔を見合わせるトロイ。ピカードはターボリフトに戻った。 『航星日誌、補足。艦隊司令部の調査によれば、中立ゾーンには不穏な動きは何もなく、時空の歪みも見られなかったという。一連の出来事を記憶してるのはクルーの中では私一人のようだ。』 ライカーの部屋。 ポーカーをしているクラッシャー。「負けたわ?」 ライカー:「毎回悪いねえ。」 「うーん。」 ウォーフ:「4連勝なんて、どうなってるんです。」 ライカー:「イカサマさ。」 帽子をつけたデータは、ライカーを見た。 ライカー:「ジョークだって。」 クラッシャー:「…ねえみんな? 艦長が未来の話を聞かせてくれたじゃない? …みんながどんな風に変わっていくかって。…なぜ教えてくれたんだと思う?」 ラフォージ:「未来のことを教えたり、時間に手を加えるのはまずいのになあ。」 データ:「だが、今回は特別なケースじゃないかな? …時空の亀裂も生じなかったし、この世界は既に違う流れを歩み始めている。…我々の未来も、艦長が見た未来とは違ってくるはずです。」 ライカー:「だから話したんだ。あれは、我々の未来じゃない。いくらでも変えることができる。そう思うだろ、ウォーフ?」 ウォーフは笑みを浮かべた。「……同感です。」 ドアチャイムに応えるライカー。「どうぞ。」 トロイ:「入れてくれる?」 「ああ、椅子取っといでよ。」 「今のルールは?」※45 データ:「2 が、ワイルドカードです。」 またチャイム。 ライカー:「どうぞー。」 ピカードだ。戸惑うクルー。 ライカー:「…何か問題ですか。」 ピカード:「いや? そうじゃなく…ちょっと、寄ってみただけだ。仲間に入りたくて。」 微笑むクラッシャーたち。 ピカード:「お邪魔かな?」 ライカー:「とんでもない、どうぞ。」 データ:「親をやりますか。」 トランプを渡す。 ピカード:「お? じゃあ、そうするかな? こう見えてもな、若い頃はギャンブラーと呼ばれてたんだ。」 ピカードはカードを切る手を止め、クルー一人一人を見た。「もっと早く来ればよかったな。」 トロイ:「…いつでも歓迎です。」 「よーし、ファイブカードスタッド・ポーカー。ワイルドカードはなしだ。どこまで掛けてもいいぞ。※46」 配り始めるピカード。 エンタープライズは宇宙空間を進み続ける。 |
※39: スクリーンの形状などは、TNG第163話 "Parallels" 「無限のパラレル・ワールド」での平行宇宙のエンタープライズと、同じものが使われています ※40: 固定ワープシェル static warp shell ※41: 操舵士官はゲイツ少尉 (女性、コンピューター声の磯辺万沙子さんが兼任) のはずですが、原語も吹き替えも男性です。データの代わりにいた、オプス席クルーの声でしょうか ※42: "All good things must come to an end." 原題の一部が含まれています ※43: このカットシーン、ビデオ版での吹き替えは以下の通り。Q「亀裂、亀裂って、全くお前という人間はそのことしか頭にないのか」 ピカード「どうなったんだ!」 後のシーン、「お前はまだここに存在…」の辺りは分割版では映し方が異なります。前後のセリフは DVD版以外では「無理だと言っていたが」「魚の心配もしているんだろう」 ※44: このカットシーン、ビデオ版での吹き替えは以下の通り。ピカード「……礼を言うよ」 Q「…何にだ?」「危機を乗り越えるのに手を貸してくれた」「…試練を与えたのは私だ、Q連続体の命令でな? だがヒントをやったのは、私の意思だ」 ※45: このトロイのセリフ、原語にもあるのに DVD版の吹き替えのみ削除されています。なぜか英語字幕でも表示されません ※46: 吹き替えでは「ワイルドカードはなしだ」で終わっていますが、原語では "Five card stud, nothing wild." の後に "The sky's the limit." と締めくくっています (つまり意訳ではなく訳出されていない)。DVD 字幕で直訳調に「上限は空の彼方だ」となっているこの言葉には、ギャンブルの際「掛け金の制限はない」という用法があるためです。最後のセリフとして同時に「果てしなく続く」という意味をもたせ、宇宙を旅するエンタープライズの映像につなげているわけですね。ここでは「掛ける」と「駆ける、翔る」をダブらせてみましたが、いかがでしょうか |
感想など
人気順に手がけるエピソードガイドで、最終話が TNG で 4話目に入るということが奇跡的と言えますが、それほどよくできた話です。会話劇のムーアと、奇抜さのブラガ。2人だけが脚本にクレジットされているのは、映画版を含めて全シリーズ中このエピソードただ一つであり、見事に功を奏してますね。たたみかけるような展開、伏線を生かした設定、戦闘シーンを含めた映像…と言うことありません。TNG 全話で最高視聴率 (17.4%) を獲得しただけはありますね。 クレジットはされていませんが、マイケル・ピラーが好きな「スローターハウス5」へのオマージュです。当初は 4つめの時間枠として、"The Best of Both Worlds" 「浮遊機械都市ボーグ」(ロキュータス) もありました。脚本に時間をかけられなかったそうですが、アレキサンダーも登場したり、未来で博物館のエンタープライズを盗んだり、トロイの死をラクサナが伝えたり…と消えていった要素も多くあります。DS9 第2シーズン末期、VOY 開始前、ジェネレーションズ撮影直前、さらに特別番組も収録 (日本では LD として発売) という状況の中、これだけの作品ができたのは心底すごいことです。 それだけに、日本の地上波では (一部を除き) パイロット版が放送されなかったのは非常に残念なことでした。いま DVD で全話ノーカットで楽しめるだけ、幸いですが。2つのシーンがまとめてカットされたと思われる「Q のヒント」は、あるとないでは結構印象が変わりますね。 |