ヴォイジャー 簡易エピソードガイド
第112話「崩壊空間の恐怖」
Course: Oblivion
イントロダクション
食堂で運ばれている大きなケーキの一番上に、制服姿の男女の人形が飾ってある。礼服※1を着たキムは、他のクルーと共にクラリネットを演奏※2している。シャンパンを運ぶクルーもいる。 セブンと話しているドクター。「こんな時こそカメラ※3を活用しないとね。いい記念になる。」 いつものようにホロカメラを手にしている。 ニーリックスが話しかけた。「このコメ※4はほんとに火を通さなくていいのか? 蒸すとか、何とか。」 トレーの上に、たくさんの小袋が置いてある。 ドクター:「幸運の印として二人にシャワーのように降らせるんだ。チキン※5の詰め物じゃないんだよ。笑って。」 セブンの隣に立ち、「はい」といって笑顔を作るニーリックス。写真を撮るドクター。 ニーリックス:「ライスを取って。」 「ちょうだい。」 クルーたちが受け取っていく。 ドアが開き、チャコティと腕を組んだトレスがやってきた。2人とも礼装だ。それを見たニーリックスがキムに知らせる。「非常警報。」 キムは楽団に言う。「行くぞ。」 曲が変わった。『ヒア・カムズ・ザ・ブライド=花嫁がやってきた』※6。 チャコティと顔を見合わせるトレス。 ジェインウェイはパリスに言う。「これで、独身貴族も終わりね。」 「長すぎましたよ。」 「後悔しない?」 「しません、多分、きっと。」 食堂の中央でパリスとトレスが近づいた。 写真を撮り続けるドクター。「まさかこんな日がくるとはね。」 セブン:「普段の彼らを見れば、婚姻より殺人を予測するのが普通だからな。」 トゥヴォック:「人間の感情というものは、全く論理の範囲外だよ。」 演奏が終わり、ジェインウェイはスピーチを始めた。「今日ここに集まったのは、艦隊士官としてではなく、友人・家族として、ヴォイジャーの優秀なクルーの結婚を祝うためです。最初はクリンゴンの伝統にのっとって、ペインスティック※7の儀式をやってくれとベラナに言われましたが。」 キム:「それはハネムーンまでとっとくんだよな。」 笑いが起こる。 ジェインウェイ:「艦長として、二人を夫婦とするのは私の役目です。ですが誓いの言葉に関しては、この二人が自分たちで用意しているようです。」 パリスとトレスは手を握り合った。 パリス:「なぜ僕を伴侶に選んでくれたのかは……未だにわからないけど、変わらないようにしよう。いつも君のそばにいて、君を敬う。死が僕たち二人を、分かつ時まで。」 ジェインウェイ:「少尉。」 キム:「ん?」 ささやくジェインウェイ。「指輪を。」 「ああ…。」 慌ててパリスに渡すキム。 「この指輪が永久の愛の証となるように。」 トレスの指につけるパリス。 トレス:「あなたはいつだって……そばにいてくれた。みんなが逃げ出すような時にも。私の数々の欠点を受け止めようとして。そのために傷だらけになることもいとわなかった。おかげで成長できた。かなり抵抗はしたけどね。これから二人の旅を始めましょう。」 ジェインウェイ:「副長。」 チャコティはトレスに指輪を渡す。 パリス:「この指輪が、永久の愛の証となるように。」 パリスはトレスに顔を近づける。 ジェインウェイ:「それはまだ。」 改めてジェインウェイは言う。「トーマス・ユージン・パリス中尉※8。ベラナ・トレス中尉。宇宙艦隊本部および惑星連邦によって与えられた権限により、あなたがた二人を、夫婦と宣言します。」 見つめあう二人にジェインウェイは言った。「もういいわよ。」 やっとでパリスとトレスは口付けをかわした。一斉に大きく拍手と歓声が上がる。 ジェインウェイ:「おめでとう。」 トレスは女性クルーからブーケを受け取り、それを後ろに放り投げた。たまたま後ろにいたセブンが取る。笑うジェインウェイ。 ドクター:「おめでとう。」 セブン:「何がだ。」 トゥヴォック:「知らない方がいい。」 笑いと拍手。再びキスをする二人。キムは演奏に戻り、「結婚行進曲」※9を吹く。 クルーたちから一斉に投げかけられる米粒。夫婦となった二人は笑いながら、その中を通りぬけていく。 床に落ちていく粒。だがその床が波打っている。たくさんの米粒が、うねるように動く床の上から消えて行く。床の下にあるジェフリーチューブに落ちていく粒。同じくチューブの中もうねっている。誰もそのことには気づいていなかった。 |
※1: 初登場。TNG 以来ずっと同じ型です ※2: 曲名は "Heart and Soul" ※3: ホロ・イメージャー holo-imager ホログラム画像記録装置。VOY第105話 "Latent Image" 「ドクター心の危機」など。このセリフは CC に表示されません ※4: rice ※5: ローストチキン roast chicken ※6: "Here Comes the Bride" この曲名は定訳があるんでしょうか? ※7: クリンゴン・ペインスティック Klingon painstik クリンゴンの「飛翔の日」儀式の一部で使用される電子的「牛追い棒」。TNG第40話 "The Icarus Factor" 「イカルス伝説」など ※8: 階級章を含め、少尉ではなくて中尉です ※9: "The Wedding March" |
あらすじ
強化ワープドライブにより、ヴォイジャーの残された旅は 2年にまで縮まっていた。ジェフリーチューブの異常が発見され、分子結合が崩壊し始めていることがわかる。原因は強化ワープドライブの亜空間放射能だ。さらにトレスの皮膚が変質し、苦しみ始める。複数のクルーに同じ症状が出ていた。 これもワープフィールドによる影響だった。ワープをやめても崩壊は止まらないが、最近ヴォイジャーの外から持ちこんだ物資には変化がない。原因となった正確な時期の出来事をつきとめる調査が始まる。トレスの病状は悪化し、ついに死んでしまった。調査を終えたチャコティたちは、仮説を証明するためにトレスの遺体に特定の処置を施させる。するとその身体が形態を失い、銀色の液状物質になってしまった。実はトレスをはじめとするクルー全員は、以前 Yクラス=デーモン・クラスの星に住んでいた、流動生命体だったのだ。つまり、本物のコピーだった。 レプリケーターやホロエミッターを含むヴォイジャー全体すらコピーであり、分子レベルで複製したために各個人の記憶もそのままもっているのだ。人間には影響ないはずのワープ放射能で、分子が崩壊し始めたのも説明がつく。チャコティは環境に適応している Yクラスの惑星に戻ることを提案するが、ジェインウェイはあくまで進みつづけながら解決策を探ることにした。死者は増え続け、船体外壁も波打つようになる。本物のヴォイジャーを見つけて DNA を採取し、崩壊を止める方法もあるが、どこにいるのか検討もつかない。航路上に別の Yクラス惑星を見つけ着陸しようとしたが、その惑星からの船が攻撃してきた。 敵ではないと説明しても無駄であり、相手を殺すこともできない。やむなく撤退し、アルファ宇宙域へのコースに戻った。Yクラス惑星へ戻るようにジェインウェイを説得するチャコティ。故郷は地球ではない、と。チャコティはそのまま死亡し、ジェインウェイは強化ワープドライブで Yクラス惑星へ戻る命令を下すのだった。 クルーは 60名以上死亡、故郷までは 5週間かかる。ドクターも機能停止し、上級士官で働けるのはジェインウェイ、キム、セブン、ニーリックスだけになった。自分たちが存在したことを忘れられないようにするため、ビーコンに記録を留めるように命じるジェインウェイ。だが艦長席で力尽きてしまった。その後艦長代理となるキム。船の 80%以上は居住不能であり、クルーの半分が死んだ。空気の残量は 10時間。ビーコンを発射しようとしたが失敗、あらゆる過去の記録が消えた。その時長距離センサーが別の船を見つけ、通信を行うパワーを得るためにワープコアを放出した。高速度のまま実行したため、船の崩壊が急激に進んでしまう。相手の通信圏内までは 5分。一方その頃、本物のヴォイジャーは救難信号を受け、発信源に向かっていた。相手の船籍はわからない。到着したが、その位置にあるのは、銀色の塵となったわずかな残骸だけであった。記録に留めるジェインウェイ。「船は大破。原因は不明。生存者なし」。 |
用語解説など
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感想
ヴォイジャーにしては珍しく、第4シーズンの一エピソードから引き継いだエピソード。自分たちのアイデンティティを問われる様子が、無残な特殊メイク、そして報われない最期とともに描かれています。スタートレックはハッピーエンドで終わるのもありがちですが、このように現実的に終わるのも ST らしいと言えると思います。 ただ現代のクローン問題と絡めて扱うにしても、以前のエピソードと結びつける必要があったかどうかは疑問です。"Demon" 「人を呼ぶ流動生命体」の最後で、キムになった擬態生命体は、最終的には自分が本物ではないことを悟っていたはず。彼らは惑星を発つヴォイジャーを見送ってすらいました。別の原因でコピーを作った方が良かったですね (本物のヴォイジャーとの位置関係も理解不能ですし…)。 ゲストキャラも一人もいませんし、低予算エピソードなんでしょうか。せっかくのパリスとトレスの結婚もなかったことに…。 |
第111話 "The Disease" 「自由は愛をも越えて」 | 第113話 "The Fight" 「眩惑のカオス・スペース」 |