食堂で運ばれている大きなケーキの一番上に、制服姿の男女の人形が飾ってある。礼服※1を着たキムは、他のクルーと共にクラリネットを演奏※2している。シャンパンを運ぶクルーもいる。
セブンと話しているドクター。「こんな時こそカメラ※3を活用しないとね。いい記念になる。」 いつものようにホロカメラを手にしている。
ニーリックスが話しかけた。「このコメ※4はほんとに火を通さなくていいのか? 蒸すとか、何とか。」 トレーの上に、たくさんの小袋が置いてある。
ドクター:「幸運の印として二人にシャワーのように降らせるんだ。チキン※5の詰め物じゃないんだよ。笑って。」
セブンの隣に立ち、「はい」といって笑顔を作るニーリックス。写真を撮るドクター。
ニーリックス:「ライスを取って。」
「ちょうだい。」 クルーたちが受け取っていく。
ドアが開き、チャコティと腕を組んだトレスがやってきた。2人とも礼装だ。それを見たニーリックスがキムに知らせる。「非常警報。」
キムは楽団に言う。「行くぞ。」 曲が変わった。『ヒア・カムズ・ザ・ブライド=花嫁がやってきた』※6。
チャコティと顔を見合わせるトレス。
ジェインウェイはパリスに言う。「これで、独身貴族も終わりね。」
「長すぎましたよ。」
「後悔しない?」
「しません、多分、きっと。」
食堂の中央でパリスとトレスが近づいた。
写真を撮り続けるドクター。「まさかこんな日がくるとはね。」
セブン:「普段の彼らを見れば、婚姻より殺人を予測するのが普通だからな。」
トゥヴォック:「人間の感情というものは、全く論理の範囲外だよ。」
演奏が終わり、ジェインウェイはスピーチを始めた。「今日ここに集まったのは、艦隊士官としてではなく、友人・家族として、ヴォイジャーの優秀なクルーの結婚を祝うためです。最初はクリンゴンの伝統にのっとって、ペインスティック※7の儀式をやってくれとベラナに言われましたが。」
キム:「それはハネムーンまでとっとくんだよな。」 笑いが起こる。
ジェインウェイ:「艦長として、二人を夫婦とするのは私の役目です。ですが誓いの言葉に関しては、この二人が自分たちで用意しているようです。」
パリスとトレスは手を握り合った。
パリス:「なぜ僕を伴侶に選んでくれたのかは……未だにわからないけど、変わらないようにしよう。いつも君のそばにいて、君を敬う。死が僕たち二人を、分かつ時まで。」
ジェインウェイ:「少尉。」
キム:「ん?」
ささやくジェインウェイ。「指輪を。」
「ああ…。」 慌ててパリスに渡すキム。
「この指輪が永久の愛の証となるように。」 トレスの指につけるパリス。
トレス:「あなたはいつだって……そばにいてくれた。みんなが逃げ出すような時にも。私の数々の欠点を受け止めようとして。そのために傷だらけになることもいとわなかった。おかげで成長できた。かなり抵抗はしたけどね。これから二人の旅を始めましょう。」
ジェインウェイ:「副長。」
チャコティはトレスに指輪を渡す。
パリス:「この指輪が、永久の愛の証となるように。」
パリスはトレスに顔を近づける。
ジェインウェイ:「それはまだ。」
改めてジェインウェイは言う。「トーマス・ユージン・パリス中尉※8。ベラナ・トレス中尉。宇宙艦隊本部および惑星連邦によって与えられた権限により、あなたがた二人を、夫婦と宣言します。」
見つめあう二人にジェインウェイは言った。「もういいわよ。」
やっとでパリスとトレスは口付けをかわした。一斉に大きく拍手と歓声が上がる。
ジェインウェイ:「おめでとう。」
トレスは女性クルーからブーケを受け取り、それを後ろに放り投げた。たまたま後ろにいたセブンが取る。笑うジェインウェイ。
ドクター:「おめでとう。」
セブン:「何がだ。」
トゥヴォック:「知らない方がいい。」
笑いと拍手。再びキスをする二人。キムは演奏に戻り、「結婚行進曲」※9を吹く。
クルーたちから一斉に投げかけられる米粒。夫婦となった二人は笑いながら、その中を通りぬけていく。
床に落ちていく粒。だがその床が波打っている。たくさんの米粒が、うねるように動く床の上から消えて行く。床の下にあるジェフリーチューブに落ちていく粒。同じくチューブの中もうねっている。誰もそのことには気づいていなかった。
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※1: 初登場。TNG 以来ずっと同じ型です
※2: 曲名は "Heart and Soul"
※3: ホロ・イメージャー holo-imager ホログラム画像記録装置。VOY第105話 "Latent Image" 「ドクター心の危機」など。このセリフは CC に表示されません
※4: rice
※5: ローストチキン roast chicken
※6: "Here Comes the Bride" この曲名は定訳があるんでしょうか?
※7: クリンゴン・ペインスティック Klingon painstik クリンゴンの「飛翔の日」儀式の一部で使用される電子的「牛追い棒」。TNG第40話 "The Icarus Factor" 「イカルス伝説」など
※8: 階級章を含め、少尉ではなくて中尉です
※9: "The Wedding March"
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