TOS エピソードガイド
第10話「コンピューター人間」
What Are Little Girls Made of?
イントロダクション
※1ブリッジ。 スクリーンに映っている惑星が近づいてきた。 クルーの通信が流れている。『…点検。異常があれば直ちに報告せよ。エンジニアリング部門…』 カーク:「やがて標準軌道に入る。あと少しだな?」 クリスチン・チャペル※2が来ている。 カークは船長席に座った。「君はこの船に乗ってフィアンセを捜すために、将来を棒に振った※3そうだね。」 チャペル:「彼は必ずまだ生きてます。」 惑星を見る。 クルー:『中部操作部からブリッジへ、現在異常なし…』 カーク:「連絡が途絶えてからもう5年になる。」 チャペル:「ロジャーは意志の強い人なので、簡単には死にません。」 ウフーラ:「地上に合図の信号を送ります。」 カーク:「全周波を使用して送りたまえ。」 スポック:「この惑星に関する知識は、我々もコンピューターも同じですね。」 モニタに表示される惑星の情報。「引力は地球の 1.1倍、大気にも危険は認められません。」 「しかし表面の温度は零下100度※4という寒さだ。」 「かつては生物が棲んでいたと思われますが、この 50万年間に太陽が衰え続けています。」 男性の写真※5に切り換えるスポック。「問題のコービー博士は、考古学的医学のパスツールと称される人で、オリオン星※6の遺跡で発見した医療記録の紹介は革命的な免疫技術をもたらしました。」 「そんなことは学生時代の必修科目で習ってる。一度ぜひ会いたかった。生き残っている可能性はあると思うか。」 「さあねえ。」※7 スポックは写真を消した。 ウフーラ:「全周波で試しましたが応答ありません。」 カーク:「続けろ。」 クリップボードを受け取る。 クルー:『許容量、0-7。』『通信部、こちらへ回線を回してくれないか…』 チャペル:「…地下に洞窟を発見したって言ってきたのが最後の連絡です。」 カーク:「それ以来捜索隊が二度も派遣されたはずだ。」 ウフーラ:「もう一度全周波で試しましたが応答…」 反応が出た。『エンタープライズ、エンタープライズ応答せよ。こちら、ロジャー・コービー。繰り返す、ロジャー・コービー博士※8だ。…聞こえるか、エンタープライズ。こちら、ロジャー・コービー。応答せよ。』 目を閉じるチャペル。 |
※1: ハヤカワ文庫のノヴェライズ版は、「宇宙大作戦 惑星ゴトスの妨害者」収録「かわいい娘」になります ※2: Christine Chapel (メイジェル・バレット Majel Barrett) TOS第7話 "The Naked Time" 「魔の宇宙病」以来の登場。声:公卿敬子 (DVD・完全版ビデオ補完も継続) ※3: 原語では「生物研究でのキャリアを捨てた」 ※4: 吹き替えでは「零下80度」。-100度を華氏と見なして摂氏に換算しているようですが (-73.3度)、基本的に摂氏です ※5: パイロット版で使われた、古い宇宙艦隊制服を着ています ※6: Orion ※7: 原語では何も言っていません ※8: Dr. Roger Korby (マイケル・ストロング Michael Strong 1980年9月に死去) 声:勝田久 (DVD・完全版ビデオ補完も継続) |
本編
惑星軌道上のエンタープライズ。 『航星日誌、宇宙暦 2712.4※9。惑星エクソ3号星※10より応答があった。以前その惑星に棲んでいた生物が残した洞窟の中に、ロジャー・コービー博士をリーダーとする探検隊の一部が生き残っていたのだ。』 カーク:「エンタープライズから博士へ、上陸地点を決定確認しましたので上陸班を転送します。…素晴らしいプレゼントをお持ちしますので期待して…」 コービー:『実はちょっと御願いがあるんだがね船長、君独りで降りてきてくれないか。重大発見をした、君に慎重な決定を下してもらいたい事項がある。』 スポック:「……問題がありますねえ。」 カーク:「…しかし相手は、ロジャー・コービー博士だ。」 ※11「…博士の声に間違いないですか。」 チャペル:「あなた、フィアンセをもったことありませんの?」 スポックを見るカーク。 チャペル:「間違いありません。」 カーク:「もう一人連れて行っていいなら、協力しましょう。」 「ロジャー、聞こえる?」 コービー:『クリスチン。』 「…そう、私よ。」 『クリスチン、どこにいるんだ。もちろん、彼女なら文句はない。まさかお前が来てるとは。クリスチン、元気か。』 「ええ、とっても。やはり来た甲斐があったわ?」 カーク:「では一緒に降ります、期待して下さい。エンタープライズ、アウト。」 機関コンソールについているレズリー。 ターボリフトに入るカーク。チャペルはウフーラと喜び合い、キスをした。 考えるスポック。 操作される転送機。 カーク:「転送!」 転送されるカークとチャペル。 地表は一面氷の世界だ。 実体化する 2人。洞窟の中で、大きな窓がくりぬいてある。 チャペル:「待ってるって言ったのに。」 カーク:「コービー博士。」 人気のない洞窟。 カーク:「コービー博士。上陸地点を間違えたのかもしれん。」 コミュニケーターを取り出す。「カークからエンタープライズ。」 スポック:『スポックです。』 「保安部員…2名転送。」 『どうかしましたか。』 「相手が現れないので念のためだ、以上。この洞窟はかなり深そうだ。多分来るのに時間がかかってるんだろう、大丈夫さ。」 チャペル:「そうかしら。」 音がし、保安部員が転送されてきた。 カーク:「レイバーン※12は、ここで見張れ。」 レイバーン:「はい。」 「マシューズ※13、博士を捜しに行く。ついてこい。」 マシューズ:「はい。」 下へ降りていく 3人。 人工的に作られた部屋らしき場所があるが、誰もいない。さらに進む。 崖に差し掛かり、チャペルがバランスを崩した。支えるカーク。 落ちていく石の音から、下は相当深そうだ。慎重に進む。 突然前方にライトが灯り、カークはフェイザーを向けた。 明かりの前に人影が近づく。 チャペル:「ロジャー!」 近づこうとするチャペルを止めるカーク。マシューズもフェイザーピストルを構えた。 カーク:「コービー博士ですか。」 ライトのスイッチを切ると、相手の顔がわかった。コービーではない。 チャペル:「ロジャーの助手のブラウン博士※14です。ブラウン、ロジャーはどこなの。」 音がした。直後に叫び声。 マシューズの声が小さくなっていく。 駆けつけ、下を覗き込むカーク。 ブラウン:「危ない、気をつけて下さい。」 カーク:「下へ降りる道は。」 「望みはないですな、底なしだ。」 すると、髪のない大男※15がそばにいた。カークたちに気づかれないようにその場を離れる。 ブラウン:「滑ったんでしょう。」 カーク:「途中引っかかるようなところはないのか。」 「何もありません。」 「……可哀想に。運がなかったんですな。…博士の代わりに急いで迎えに来たんですが。」 「…遅かったな。」 チャペル:「ブラウン、どうしたのよ。」 ブラウン:「何がです。」 「私を覚えてないの?」 「…覚えてますよ。…お元気そうで。私はブラウン、博士の助手をしています。あなたがカーク船長ですね?」 うなずくカーク。また下を見る。 ブラウン:「死にましたよ、間違いなく。どうぞ、コービー博士がお待ちです。」 歩いていく。 カーク:「古い付き合いか、あの男とは。」 チャペル:「こんなところに、5年もいたのできっと。」 「カークからレイバーン、どうだ。」 レイバーン:『入口付近は異常ありません。奥の方はどうです。』 カーク:『マシューズが死んだ。明らかな事故だが警備班を待機させるように、エンタープライズに伝えろ。』 レイバーン:「わかりました。」 大男が近づく。 カーク:『今後、一時間おきに連絡しよう。もしお互いに相手の応答がなかったり時間になっても相手から連絡が来ない場合は、ただちにエンタープライズに警備班の派遣を要請すること。以上だ。』 レイバーンの背後から近づいた大男は、口をふさいだ。倒れる音。 説明するブラウン。「太陽が衰えてきたので、この惑星の住人たちは次第に地下へ潜り始めたわけですな? 狭い暗黒の世界への移動ですよ。まだ博士について勉強していた頃、行動と選択の自由が人類の精神を形作っているという博士の持論を何度も聞いたでしょう。」 進んでいく。「この文明はそれを実証したと言えます。光の世界から暗闇へ移ったとき、彼らは自由の代わりに機械文明を手に入れたわけです。コービー博士はこの文明の要素のベールを剥ぎ取りました。それを一旦洞窟から出しさえすれば、まさに宇宙に革命を起こしうる驚くべきものです。」 自動ドアのある部屋に案内された。中には家具のほか、機械も置いてある。 隣の部屋から、肌の露わな若い女性が入ってきた。 見つめるチャペル。 女性:「アンドレア※16よ? あなたがクリスチン※17ね、何て美しい名前だろうって思っていましたの。…あなたはエンタープライズ※18のカーク船長さんね? よくロジャーのフィアンセを連れてきて下さったわ。」 チャペル:「アンドレアなんて名は彼から聞いたことないわ?」 「ロジャーが言ってたとおり魅力的な方ね。彼の気持ちがわかるわ。」 カーク:「コービー博士はどこだ。」 コービーの声。「ここにいるよ。」 入ってきていた。「やあ、急用ができて迎えに…」 チャペルに気づいた。 キスするコービー。 チャペル:「必ず逢えると思ってたの。」 コービー:「…もう心配はかけない。」 「…ああ、どうも失礼。私が、ロジャー・コービーだ。」 握手するカーク。「私のことはどうぞ、気になさらないで下さい。お名前は、学生時代から。」 ブラウン:「船長の部下が一人洞窟で死にましてね。」 コービー:「何? 何があったんだ!」 「すぐ外の縦穴で、足を滑らせたらしくて。」 「それは可哀想なことをした。私が迎えに行ってれば、あの辺りには詳しいので…」 カーク:「仕方ありません。カークからレイバーン、どうだ。安全確認のためです、現在働いている助手の人数と不足物資および必要なものをリストアップして下さい…」 「船長、そんなことよりも…」 「レイバーン、応答しろ!」 「慌てないで待ちたまえ、頼む! まず話を聞いてくれ。」 「部下と連絡がつきません。船を呼び出します。」 ブラウン:「通信は一切禁止する。」 銃※19を向ける。 チャペル:「ロジャー。」 コービー:「すまん、これ以上邪魔者に来られたら。」 「船長さんをどうする気…」 「危害は加えないと約束する。…宇宙には、君たちの理解を超越した重大な物事が存在することがわからんのかね。」 カーク:「博士、すでに一人死んでもう一人も行方不明です。」 「アンドレア。」 「何をするんだ。」 「仕方なしにやることだ。やがてわかる。アンドレア。」 手を伸ばしたアンドレアを、カークは逆に背後からつかみあげた。 フェイザーを取り返し、ブラウンに向ける。 カークはアンドレアを離し、テーブルに身を隠した。「捨てろ!」 従わないブラウンに、フェイザーを発射する。音がし、倒れるブラウン。 部屋に大男が駆け込んだ。カークを抱き上げ、壁に押しつける。 倒れたブラウンの腹部から、機械音がしている。 叫ぶチャペル。その穴からは、回路が見えていた。 |
※9: 吹き替えでは「0401.5184」 ※10: Exo III 吹き替えでは「EX03 (イーエックスゼロさん)」。原語でもエクソと言っているのにこのような読み方になったのは、冒頭でスポックが見ていた図の惑星名を参考にしたからでしょうか? そもそも変えた理由が不明ですが、日本語的に響きがよろしくないからかも。ラスヴェガスのアトラクション、The Experience にあるクワークのバーでは、「ワープコア・ブリーチ」という飲み物にエクソ3号星の氷が使われている設定です ※11: TOS の旧国内オンエア分では、カット部分が存在しています。完全版ビデオ (第1シーズンの一部) および DVD には吹き替えつきで完全収録されており、このエピソードガイドでは色を変えている個所にあたります (CS版との比較)。LD では基本的に、その部分だけ字幕収録です ※12: Rayburn (バッド・アルブライト Budd Albright TOS第6話 "The Man Trap" 「惑星M113の吸血獣」のバンハート (Barnhart) 役) 声:岡田敏宏 ※13: Mathews (ヴィンス・デドリック Vince Deadrick TOS第9話 "Balance of Terror" 「宇宙基地SOS」のロミュラン・クルー (Romulan crewman)、第38話 "The Apple" 「死のパラダイス」の原住民 (Native)、第62話 "Is There in Truth No Beauty?" 「美と真実」の機関部員 (Engineer) 役) 一部資料では Matthews と誤記。声:藤本譲、VOY ダ・ヴィンチ、旧ST6/STG スコットなど ※14: Dr. Brown (ハリー・バッシュ Harry Basch) 原語では「ブラウニー (Brownie)」と愛称で呼ばれている個所もあります。声:大木民夫、VOY ブースビー、旧ST4 スポック、新旧ST2 カーン、旧ST5 サイボック、叛乱 ドアティなど ※15: ラック Ruk (テッド・キャシディ Ted Cassidy TOS第3話 "The Corbomite Maneuver" 「謎の球体」のベイロック (Balok) の人形の声役。ロッデンベリー製作のテレビ映画 "Planet Earth" (1974)、「SF地球最後の危機」(79) に出演。ドラマ「アダムズのお化け一家」(64〜66) のラーチ役。映画版「アダムス・ファミリー」シリーズでは、同役は TNG ホム役のカレル・ストルイケンが演じました。1979年1月に死去) 声:大宮悌二 ※16: Andrea (シェリー・ジャクソン Sherry Jackson ドラマ "Make Room for Daddy" (1953〜61) のテリー・ウィリアムズ役) 声優は多くの資料で公卿敬子 (一部では公郷敬子) となっていますが、公卿さんはチャペル役であり、明らかに別の方が担当していると思われます ※17: 吹き替えではこの個所だけ、明らかに「クリスティン」と聞こえます ※18: 吹き替えでは「エンタープライズ号」 ※19: ブラウンやアンドレアはエンタープライズのクルーとは異なり、TOS第1話 "The Cage" 「歪んだ楽園」などで使われたレーザーと同じ銃を使っています。レーザーなのか、古いフェイザーとして意図されたものかは不明。脚本では旧式フェイザーとなっており、実際蒸発させるシーンもあります |
エンタープライズ。 カークの通信。『カークからエンタープライズ、どうぞ。聞こえるか。』 ウフーラ:「周波をオープンにしました。」 スポック:「船長、スポックです。」 カーク:『コービー博士と、連絡がついた。』 「どうなったか心配してました。定時連絡もこないし転送した保安部員もその後何も。」 『心配はいらない、そばにいる。』 カークは話していない。 コミュニケーターを使っているのは、大男だった。カークの声を出している。「48時間以内に帰還する予定だ。コービー博士の記録と標本の荷造りに時間がかかる。」 スポック:「どうしました、疲れたような声ですね。」 コービー:「声を立てるとラックが襲いかかるぞ! …私と話し合うまで、待ってくれ。」 スポック:『応答願います、どうかしましたか!』 ラック:「異常はない。コービー博士は驚くべき発見をなさったぞ、革命的だ。…では定時連絡を待ってくれ。カーク、アウト。」 コービー:「これは、決して見せかけではないぞ。私は科学者だ、私の評判を知ってるだろ。信用したまえ。」 カーク:「評判はよく知っています。あなたの才能は、銀河系の者全員が認めてる。そのあなたがこんなことをするなんて。」 「最後の判決を下すのは勉強してからにしてもらいたい。…例えば、アンドレア!」 ラックはアンドレアの声を再現した。「じゃあなたがエンタープライズ※18の、有名なカーク船長さんなのね?」 次はコービーの声。「クリスチン、もう心配はかけない。」 コービー:「これでわかったかね?」 チャペルの声を出すラック。「ねえロジャー、必ずあなたに逢えると思ってたの。」 コービー:「もういい、クリスチンの真似は許さん。指一本触れてはならんぞ?」 カーク:「いざという時以外はか?」 「…クリスチンの命令に従え。これで安心したかね? …お互いに信頼し合いたいもんだ。さあ、24時間私に付き合ってくれ。」 「この状態じゃ、付き合うも何もないでしょ。」 「君を自由にしたら船に戻ってまず何をする。報告だ。これまで幾多の偉大な発見が下らん迷信や無知や、無能のために葬り去られてきたか知っとるのかね。」 「一つ、無知な質問をさせてもらいたいな。…私の部下はどうなった、生きてるのか死んだのか!」 「ラックは実験を守るようにプログラムされている。だから実験に差し障りがあると判断すれば…」 「私の部下はどこにいる!」 「2人ともラックが殺した。しかし私は命令しなかった、信じてくれ。」 ラックを見るカーク。「アンドロイドか、この男も。」 ラック:「ブラウンより遥かに複雑で、遥かに優れている。前の支配者たち※20に創られた。」 コービー:「我々が来た時ラックは独りで機械を操作していた。いつからいたのか。…それは本人も知らない。彼の協力と残された記録とで、ブラウンを造ったんだ。」 カーク:「話はよくわかった、あなたは非常に危険な人物だ…」 逃げようとするカーク。だがラックに腕をつかまれ、持ち上げられた。 床に投げられる。 コービー:「ラック、やめろ!」 アンドレアが部屋に入る。チャペルがいる。 アンドレア:「私にはわからない。…何がそんなに悲しいの、またフィアンセに逢えたのに。」 チャペル:「カーク船長はどこなの?」 「……船長のことがそんなに心配?」 「そうよ、心配よ?」 「…ロジャーを信用できないでいて、よく愛せるわね。…どうして私がロジャーって言うと嫌な顔するの?」 コービーが来ていた。「アンドレア。…いちいち理由を聞く必要はないだろ。」 カークを拘束しているラック。 コービー:「これからは、私をコービー博士と呼びなさい。わかったね。」 アンドレア:「はい、コービー博士。」 「話が耳に入ってきてね、カーク船長ならこの通り無事で心配はない。…ただ、いま船に報告されると私の研究が水の泡になる。…だから彼に納得してもらうまで待って欲しいんだ。もちろん、君にもだが。まずアンドレアから説明しようか。」 チャペル:「そうね、ぜひ御願いしたいわ?」 アンドレア:「…私もブラウンと同じ、アンドロイドよ。……知らなかったの?」 あごに触れるコービー。「傑作だろ、この子は。見たまえ、この生き生きとした頬。この皮膚のデリケートな変化を。肉体は、この通り暖かく脈さえある! …まさに驚異だよ。」 チャペル:「便利なものね。」 「クリスチン、アンドロイドというのはコンピューターのようなものでプログラム通りにしか動かん。…君も科学者として、それくらいわかるだろ?」 「助手のブラウンぐらいならまだしも、若い美人※21まで作れるとはありがたいわね。」 「機械を愛せると思うか?」 「どうかしら?」 「アンドレアじゃ話にならん。彼女は命令に従うだけで、何の意味もない。そうだろ、感情をもちあわせていないし。…アンドレア、カーク船長にキスをしろ。」 従うアンドレア。 コービー:「次は殴れ。」 平手打ちする。 コービー:「ほらね、感情がないんだよ。ただ機械的に命令に従って行動するだけなんだ。…言うなれば身体の奥までコンピューターであり物体で、女ではない。…どうだ、これでわかったかね。」 カーク:「もしこのロボットたちに感情がなくあなたの命令通りに動くとしたら、なぜブラウンは私を撃とうとした。なぜわけもなく私の部下を殺したんだ! …納得できないことがたくさんあるな。」 「質問に答えようじゃないか、全てに。」 ラックは、人間大の泥人形のようなものを機械にセットする。 部屋に入るコービーとチャペル。 チャペル:「ロジャー。」 コービー:「アンドロイドはこうして造る。」 操作するアンドレア。 人形が置かれた反対側には、裸のカークが同じように拘束されていた。 コービー:「始めろ。」 カークを載せた円盤が回転し始める。コービーを見るカーク。 |
※20: 昔の支配者 Old Ones 脚本のロバート・ブラックは、H・P・ラヴクラフトに師事していました。そのためクトゥルフ (クトゥルー) 神話の「古のもの」を指すこの言葉を使ったとされています。同じく脚本を担当した TOS第30話 "Catspaw" 「惑星パイラスセブンの怪」でも使っており、その際の吹き替えは「長老たち」 ※21: 原語では「機械のブラウン博士」に続いて、「機械の芸者 (geisha)」と言っています。唐突な日本ネタですね |
円盤の速度が上がっていく。明滅するライト。 コービー:「彼には異常はない、大丈夫だ。」 大きくなる音。 チャペル:「ロジャー、いつから変わったの。私が教えてもらってた頃は動物はおろか虫一匹殺せなかった人だったのに。…あれだけ生命を尊重したのに。」 回り続ける円盤。 コービー:「私がもしブラウンたちと一緒にエンタープライズへ転送されていたら、ただ単に見せ物を提供したに過ぎなかったろう。無知な奴らが珍しがって、バカなことを思いついて。」 回転が続く。操作を行うラックとアンドレア。 コービー:「強くしろ! …よく見なさい!」 するといつの間にか、人形もカークの姿と同じになっていた。 速度が最高に達し、合図するコービー。 停止する円盤。カークが 2人になっている。 コービー:「どちらだと思う、本物の船長は。」 チャペル:「…わからないわ。何から何まで、どこを見ても同じだわ。」 「中に人造器官が入っていて、それをただカークの自律神経と同調させ彼の身体のリズムを写し取るんだ。…と同時に心のパターンも写し取る。」 こちらを見るカーク。 コービー:「さて肉体はできあがったんで、次は心を完成させる。」 操作を行う。「最終神経融合を開始する。…アンドレア、外皮※22回線の準備をしろ。このアンドロイド※23は完全だ。十分船長の代わりをする。同じ記憶、同じ態度、同じ能力をもつ。…回線のスイッチを入れろ。」 カーク:「お前は黙ってろ、スポック! 混血に、とやかく言われたくない! お前は黙ってろ…※24」 苦しむカーク。反対側のアンドロイド・カークにも反応が出る。 コービー:「終わったよ。」 チャペル:「大丈夫ですか?」 カーク:「今のところはね。」 コービー:「さあ、ご対面だ。」 円盤が 180度回転し、アンドロイド・カークは微笑んだ。「よろしく、クリスチン。」 食事を準備するアンドレア。部屋に来たチャペルを案内する。「あなたにサービスするようにプログラムされて来ましたの。お食事はいかがですか。」 チャペル:「…ありがとう、頂くわ?」 カークも来た。 アンドレア:「どうぞお座り下さい。」 カーク:「ありがとう。どうやら仮釈放になったらしいね。」 「お昼を差し上げろと博士に命令されました。それから 2、3 お話ししたいことがあるそうです※25。」 チャペル:「船長さん。」 カーク:「話はわかってる。…実は私、船長とフィアンセの板挟みになって悩んでると言うんだろ。」 「いいえ、板挟みじゃありません。それよりどういうことか、心配で。」 「秘密を聞いたのか。」 「あれ以上は話してくれません。…だから全てがわからなくて。彼は間違ったことをしてるようですけれど、少なくともコービー博士でしょ? そんなことをする人じゃないはずです。」 「正気を失ってるのかもな。」 「それは直感でわかります。気は狂っていません※26。」 「…どうだ、博士を裏切れともし私が命令したら。」 「お願い、それだけはやめて下さい。だったら私、底なしの谷に突き落とされて死んだ方がマシですわ。…私にはとても、さあ御食事しましょう※27。」 「…アンドロイドは何も食べないんだ。」 本物と思っていたアンドロイド・カークを見るチャペル。 コービー:「君のユーモアのセンスも備えてるようだ。」 研究者の制服を着た本物のカークと一緒だ。 アンドロイド・カークを見るカーク。「ただ一つの違いは、私が食べることか…」 Aカーク:「私から言えばそれが君たち人間の弱点だ。」 コービー:「これは面白い論争だね、どうぞ。」 カーク:「食べるのは楽しいことだ、可哀想に君にはそれがわからん。」 Aカーク:「でも飢えに苦しまずに済むだろう。」 「…完全な複製か?」 コービー:「あらゆる点でね?」 「記憶はどうだ、サムを知ってるか?」 Aカーク:「ジョージ・サミュエル・カーク※28、君の兄だ。『サム』と呼ぶのは君だけだ。」 「この任務の出発を見送ってくれた。」 「そうだ、奥さんと 3人の息子と一緒にね?」 「…第2地球コロニー※29研究ステーションに転属になると言っていた。」 「違うね、彼は自分の研究を続けると言っていた。だから第2地球コロニーへの転属を望んだんだ。」 コービー:「コンピューターを議論で負かすつもりかね、君は。」 カーク:「いやあ、それは無理だが。でもおかげで、違う個所があることがわかった。」 「そんなのは問題にならん。もう下がってよろしい。」 出ていくアンドロイド・カーク。 コービー:「これで残りも想像がつくか、あ? どうだ君、わからんか。」 チャペルに話す。「…今いたのは、ただの機械に過ぎん。言うなれば私の研究の一部だ、わかるかね?」 次はカーク。「…作業を続けて行えば今彼に欠けているもの、すなわち君の意識をも与えられたんだ。もし望むなら魂を、君の全てをだ。…アンドロイドを利用すれば、人間は事実上永遠の生命を得られる。私が考えていることがわかるかね?」 カーク:「支配か、全宇宙の。同じようなことを言ったな、ジンギス・カン※30もジュリアス・シーザーもヒットラーもフェリス※31もマルトーヴァス※32も。」 「同じではない、アンドロイドに生命を託せばより良き人間に改良できる。そういう人生が君には想像できるか。嫉妬や憎悪や、欲望を取り除いた人生が。」 「愛や哀れみも取り除くつもりかね。いたわりは、思いやりは。感情には用はないか?」 「誰一人死なずに済むようになる。病気もなく不具者も姿を消し※33、恐怖さえ取り除いて喜びに置き換えることができる。私が創ろうとするのは天国だ、新しい理想郷だ。頼む、力を貸してくれ。」 密かに椅子を探るカーク。「何をすればいいんだ、私のような者が。」 コービー:「我々を適当な植民星へ運んでくれ、必要な材料がそろった※34。…君が立ち寄る植民星の中に適当なのがあるはずだ!」 巻き付いているヒモを取ろうとするカーク。 コービー:「予定のコースを変えるな、予定外の行動は疑われる。そこで私は優れたアンドロイドの、生産にかかる!」 カーク:「なるほど、そうか。密かに造って、チャンスがくるのをジッと待つか。」 「アンドロイドの存在を明かす前に、社会の中にできるだけ多く送り込まねばならん。…さもないと無知な人間のヒステリーのために科学が、滅びる! …協力してくれるか。」 「あなたは自分のカークを造ったはずだ、彼に頼んだらいいだろう。」 ヒモを取り終えたカーク。 「あれは証明するために造ったんだ、君の代役ではない。」 「見事な証明だな、先生? …大いに勉強になったぞ!」 その瞬間、カークはコービーの首にヒモを巻き付けた。 カーク:「ラック近寄るな、殺すぞ!」 近づけないラック。 カーク:「下がれ!」 苦しむコービー。カークは入口まで下がり、コービーを解放して逃げていく。 コービーのヒモを取るラック。 洞窟を逃げるカーク。 部屋の外に出るコービー。「ラック、捕まえろ※35!」 追いかけるラック。 チャペル:「大丈夫?」 走るラック。 カークは逃げ続ける。 チャペル:「ラック、やめて!」 あとを追う。 ラックはチャペルの声を聞いた。「ラック、戻って! 私の命令に従えって博士に言われたはずよ?」 だがラックは進み続ける。 追いかけるチャペル。「ラック! ラック! カーク船長に手を触れては駄目!」 隠れるカーク。ラックがすぐそばまで来た。 カークは目の前に垂れ下がっている、鍾乳石を折った。その音に気づくラック。 ラックはチャペルの声を出す。「カーク船長、どこですか? …カーク船長? 私が助けます。」 石を構えるカーク。「クリスチン、ここだ。」 近づいてくるラック。そばで止まる。 カークは石で殴ろうとしたが、さえぎられた。その拍子に足を滑らせ、崖っぷちにつかまる。 上から見つめるラック。 |
※22: (大脳) 皮質のこと ※23: 「このアンドロイド」と訳されているため、この時アップになっているカークがアンドロイドのようにも取れますが、本物の方です。コービーの話を聞いていることが、次の行動につながります ※24: 吹き替えでは「ミスター・スポック、やめたまえ。いいから破壊しろ、これは船長命令だ! ミスター・加藤 (スールー)、ワープ1! ワープ1 で前進!」。カークが口走ったうわごとのように訳されていますが、本来れっきとしたカークの作戦です。カットに関連して変えられた可能性もあります (脚注※46 参照) ※25: 原語では「(カークとチャペルの間で) 2、3 お話ししたいことがあるだろうと」 ※26: DVD・完全版ビデオでは、「いいえ、直感でわかります。おかしくなってはいません」と修正されています。また、LD では前のカークのセリフの音声のみ、旧オンエア版では更に「それは直感でわかります」の部分までカットされています (両方とも、「気は狂っていません」が残るのは妙な気もしますが)。旧オンエア版では消し方が不完全なために、カークの「気でも狂っている…」というような声がかすかに残っています ※27: 原語では「どうぞ食べて下さい」。チャペルは食べる気をなくして、皿を押しています ※28: George Samuel Kirk 愛称 Sam。初言及 ※29: Earth Colony 2 この個所は、吹き替えでは次のように訳されています。カーク「ミッチェルを知ってるか?」 アンドロイド・カーク「ゲリー・ミッチェル少佐、君の士官学校時代の同期生だった」「私は彼に何度も助けられた」「超感覚能力をもっていたね?」「…惜しい人物だったが、デルタ・ヴェガ星でデイナー博士と殉職した」「ちょっと違うね、彼は自分の欲望のために神になったつもりで思うままに行動し宇宙を支配しようとした」。なぜか TOS第2話 "Where No Man Has Gone Before" 「光るめだま」を振り返る内容になっていますが、TOS では前の話のことが触れられる例はほとんどありません。なお、カークとミッチェルは同期生とはそのエピソードでは言及されておらず、それとは矛盾しかねないセリフもあります (「光るめだま」のエピソードガイド、脚注※39 参照)。セリフを変えてしまったことで、サムが登場する TOS第29話 "Operation - Annihilate!" 「デネバ星の怪奇生物」とのつながりを失ったことになりますね ※30: TOS第77話 "The Savage Curtain" 「未確認惑星の岩石人間」でもそうですが、完全に悪人扱いですね… ※31: Ferris ※32: Maltuvus ※33: DVD・完全版ビデオでは、「あらゆる苦しみから解放され」と修正されています ※34: 吹き替えでは「必要な材料と共に」。後のセリフにもあるように、惑星上にある資源を指しています ※35: 原語では後でアンドレアに命じるのと同じ、「守れ」 |
ラックと睨み合うカーク。 しばらくした後、ラックはカークの手を引き上げた。 エンタープライズ。 ターボリフトから出てくるアンドロイド・カーク。 廊下で作業していたスポックが気づいた。「船長。」 無視して部屋に入るアンドロイド・カーク。 スポックもカークの私室に入った。「船長、予定より早いですね。」 Aカーク:「コービー博士が運ぶ資材が多いので、相談して航行スケジュールを見直すことにした。」 「指令パックを持っていくんですか。」 「お前は黙ってろ、スポック! 混血※36に、とやかく言われたくない。」 「そうですか、それは失礼しました。」 「不機嫌そうだな、どうかしたのか。」 「とんでもありません。」 「では、コービー博士たちを連れてすぐ戻る。」 アンドロイド・カークはターボリフトに入った※37。 そのまま連絡するスポック。「スポックから保安部、上陸班の準備は。」 保安部員※38:『待機しています。』 「船長の転送が済み次第上陸班を転送ルームに集合させろ。」 指令パックを見るコービー。 Aカーク:「検討した結果、立ち寄り先としてはミドス5号星※39が最適かと思われますね。」 コービー:「小さな星だが、資源は豊富だな。よくやってくれた、船長。」 「光栄です。エンタープライズにも慣れてきました。」 眠っていたカークは、ドアの音に目を覚ました。アンドレアだ。 カークは手をつかむ。「アンドレア。…キスしろ。」 言われた通りにするアンドレア。 平手打ちしようとしたアンドレアの手を止めるカーク。また口づけし、抱きしめるカーク。 アンドレア:「…ダメ。…ダメ。プログラムされてないのに。」 食器を運んでいこうとする。 カークはアンドレアの髪に触れた。「どうかしたのか、何を悩んでる。」 アンドレア:「…ダメ。」 カークはアンドレアに続いて部屋を出ようとしたが、ラックにさえぎられた。 突き飛ばされるカーク。「冷静になれ。…私を殺すなというクリスチンの命令に背くのか。」 ラック:「お前の存在を認めるのは、非論理的だ。」 「なぜだ。そんなことを考えるのはそれこそ非論理的だぞ。」 手をつかむカーク。「ラック、教えてくれ。昔の支配者はどうした。」 「…遥か昔のことだ。」 「お前たち機械を、あまり完全に造りすぎたんじゃあないのか? …生きる欲望や、プライドを与えたとしたらどうなる。理論や規律に生きるはずの友達がその感情のために、自分たちを造った支配者に背いたとしたら。」 「そうだ。我々を造った昔の支配者は、我々に恐怖を感じ出し我々を裏切り始めた。」 「ところがコービーはそれと同じことをまたお前たちにしようとしてるんじゃないのか? …我々人間は計算できない感情をもっている。理論では解決できんぞ。」 「いいや、あまりに昔のことなので忘れてしまった。我々を造った支配者はかってここにいたが、それはまだ記憶バンクにある。彼らを抹殺する必要が生じた。お前※40は矛盾に満ち、プログラムすることもできない。我々より劣っている。」 「…コービーは。」 「お前はここの秩序を乱す反逆者だ、侵入者だ!」 「お前の敵は私ではなくコービーだ!」 「俺はコービーにプログラムされた、彼に背けない!」 「お前を造った昔の支配者はどうした、彼らに背いて殺したのは誰だ!」 「ほかに、方法がなかったからだ!」 カークの身体を締めるラック。「生きるためだ! 生きるためには、支配者の命令にも背かなければならない…」 「そこだ、ラック考えろ! お前は自分を殺そうとしている者のために働くのか!」 コービーが入った。「ラック、ちょっと。」 チャペルも一緒だ。 カークを離したラックは、コービーに詰め寄る。「彼を連れてきたのはお前だ。お前は愚かな者を連れてきた。…愚かな者たちは抹殺したはずだぞ。だがお前は懲りずにまた悪をもたらした。」 コービー:「ラック、やめろ! …命令に背くのか。」 フェイザーを撃つコービー。ラックは蒸発した。 コービー:「…仕方がなかった。」 カークを外へ案内する。 洞窟を歩くカーク。「あなたがあれほど生命を重んじて人類から尊敬されていた人間とは思えん。この変わり方を地球の人たちに何と話せば…」 カークはコービーに襲いかかった。コービーはカークを払いのけるが、片手が入ってきたドアに挟まれる。 チャペルは叫んだ。コービーの手から、機械の回路が見えていた。 チャペル:「アンドロイド。」※41 カークをフェイザーで牽制するコービー。「…まだ私だ、クリスチン。ロジャーだ。中にいる。」 首を振るチャペル。 コービー:「私はここで一度死にかけた。身体は凍り、手も。…足も崩れてきた。ただ、脳だけが生死の間をさまよっていた。…これはすぐ直せる! 人間の折れた指を治すより簡単だよ。しかし、中身は前の私と同じだ。いや前より優れている。」 チャペル:「…あなたは何者?」 ブザーが鳴り、連絡するコービー。「アンドレア。」 アンドレア:『はい博士。』 「誰かこちらに近づいてくる。」 カーク:「スポックだ、私のメッセージが届いたんだ※42。」 アンドレア:『ラックを捜します。』 チャペル:「ここに来るまでに殺されてしまうわ。」 コービー:「ラックは抹殺した。…武器を取って君が当たれ、守るんだ!」 銃を手にするアンドレア。部屋を出ると、アンドロイド・カークが通りかかった。 アンドレア:「キスしてあげる…」 Aカーク:「よせ。」 「あなた、キスが嫌なの。」 「無駄なことだ。」 歩いていこうとするアンドロイド・カーク。 アンドレアは銃を撃ち、アンドロイド・カークは蒸発した。 訴えるコービー。「違いはない! 私の全てを、写し取ったんだ。しかも、欠点を取り除いて改良してある!」 アンドレアが来た。「カーク船長が逃げ出した…」 本物のカークに気づく。「船長じゃなかったのね。…私は、見分ける能力を与えられていません※43。ただあなたの命令を聞いて、それに従っただけです。」 カーク:「この子はアンドロイドを殺したんだ。ラックを殺したように。…これが新しい理想郷か。欠点のない機械が、殺し合うのはなぜだ! これじゃあ醜い人間社会と何の変わりもない、殺し合いが君の言う世界のルールか!」 コービー:「私はコンピューターじゃない、試してみろ。私は特別に…私は、違う!※44 ……クリスチン、頼む。私に証明させてくれ。…これがそんなに気になるのか!」 手を見せる。 チャペル:「もう証明してもらったわ? 私のロジャーならこんなことをするはずがないわ。」 「見ろ私を! 私はロジャー・コービーだー!」 カーク:「じゃ証明しろ。…フェイザーガンを渡せ。まだ少しでも人間性が残っているなら、それを渡せ。」 「嫌だ。お前にはわからんだろうが、私は完全な人間を創った。テストをし、証明したんだ。証明した。証明した。」 手を差し出すカーク。コービーは何かをつぶやきながら、フェイザーを渡した。 カーク:「アンドレア、武器を渡せ。」 アンドレア:「いいえ、守るの! 守るの…あなたを。」 コービーに近づく。「あなたを愛して、キ…キスして。」 コービー:「駄目だ、お前には人を愛せない。…人間とは違う。」 「愛して、キスして。」 口づけする二人。 コービーはアンドレアの銃に手をかけた。二人とも蒸発する。 泣き崩れるチャペル。 スポックの声。「カーク船長!」 カーク:「ここだ、スポック!」 保安部員を引き連れたスポックが来た。「船長、大丈夫ですか。クリスチン。コービー博士はどこです。」 カーク:「…コービー博士など、いなかったよ。」 エクソ3号星を離れるエンタープライズ。 スクリーンの惑星が小さくなっていく。 カークとチャペルに近づくスポック。 チャペル:「私のロジャーはいつまでも、私の心に生きてます。」 出ていく。 カーク:「ロジャー・コービー博士か※45。…気になることでもあるのかね?」 スポック:「率直に言って、船長が『混血』という言葉を使ったことに多少落胆しました。…いいですか、これは下品な表現です。」 「そうだな、覚えとくよ。次に似たような状況に陥った時にはな※46。」 スポックはわずかに微笑んだように見える。 カーク:「予定のコースを進め。」 スクリーンには、星が映る。※47 |
※36: 吹き替えでは「ヴァルカン人として生きている者」。脚注※24 と同じセリフ (※46 も参照) ※37: 必要なはずの指令パックを手にしていません。TOS第6話 "The Man Trap" 「惑星M113の吸血獣」の映像を使い回しているため ※38: 声:古田信幸、DS9 ダマール、VOY ホーガン、FC ホークなど ※39: Midos V ※40: どちらかと言えば、前の支配者を含めた「お前たち」でしょうね ※41: 原語では、このセリフはありません ※42: 脚注※24 および※36 を受けて。吹き替えでは「心配になってやってきたんだ」。※46 も参照 ※43: 原語では「緊急事態用にはプログラムされていません」 ※44: 原語では「私はどんなことでも解決できる…一致…送信…」 ※45: 原語では、チャペル「私に決めさせて下さって、ありがとうございます。正しい選択をしたと確信しています」 カーク「彼女は船に残る」 ※46: 吹き替えでは、スポック「私が洞窟に行ったときクリスチンは目に一杯、涙を…浮かべて。…コービー博士はほかの星へ行ったのかもしれません」 カーク「そうだな、生きてるよ。君も地球人の気持ちがわかってきたようだな」。脚注※42 を含め、旧オンエア版ではアンドロイド・カークがエンタープライズに来たシーン (※36) 自体が、カットされているための処置だと思われます。つまりまとめると、(1) カークはアンドロイドに関するコービーの話を聞いていた (2) 今後アンドロイド・カークがスポックに会うことを見越して、わざと悪態をついた (3) 目論見通りアンドロイドは同じセリフを吐き、スポックが気づいた (4) そのことを最後のシーンで話した…となります。吹き替えではこの個所が、やけに楽観的なセリフになっているのは変ですが… ※47: エンディングでは、携わったロバート・ジャストマンのお遊びが入っています。マイケル・ストロングのクレジットのところで、ラックがカークを抱え上げるシーンが使われています。なお最後の映像は、TOS第13話 "The Conscience of the King" 「ゴトス星の怪人」の惑星Q。窓枠がない全景を見られるのは今回だけ |
感想など
TOS ではちょくちょく登場するものの、TNG 以降ではデータの存在を際立たせるためか、実質的になかったことになっているアンドロイドもの。その中でもこのエピソードは、まさにデータの感情問題などを彷彿とさせるテーマが組み入れられています。なかなか名前が挙がるような話ではありませんが、いわゆる隠れた名作の部類には十分入ってもいいですね。チャペルが珍しく単なる看護婦ではない点も、高ポイントでしょう。その代わりに上司であるマッコイが出てないのが面白いですね。 アンドレアの風貌は、第3シーズンかと間違うような思い切ったもの。原題は童謡 (マザーグース) に由来します。日本語版では独自の訳などが多く、興味深く検証することができました。本国では後日談の小説が出ているそうです。 |
第9話 "Balance of Terror" 「宇宙基地SOS」 | 第12話 "Miri" 「400才の少女」 |