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TOS エピソードガイド
第12話「400才の少女」
Miri

dot

・イントロダクション
※1ブリッジ。
カーク:「地球スタイルの遭難信号。SOS だ。」 機関コンソールのレズリー。
ファレル※2:「全周波を使って通信しましたが、応答ありません。」
スポック:「船ではなくて、地上からですね。計器によるとこの太陽系の第3惑星からです。」
スクリーンに小さく見える惑星。
ファレル:「真正面です、地球スタイルの信号に違いありません。」
カーク:「しかし我々は地球から何百光年も離れてるんだ。こんな遠くに植民星はないはずだ。」
惑星が大きくなってきた。
スポック:「惑星の測定結果が出ました。型は球形、円周は 2万4874マイル※3。質量、質量は 6 かける 10、21乗トン。平均比重、5.517。大気は…酸素、窒素。」
ランド※4:「…地球だわ。」
アフリカ大陸と同じ地形が映る※5
カーク:「地球じゃない。そっくりの星だ。こんなところに。」
さらにアメリカが見える。


※1: ハヤカワ文庫のノヴェライズ版は、「宇宙大作戦 見えざる破壊者」収録「ミリ」になります。惑星の詳細について、大幅に書き加えられています

※2: ジョン・ファレル大尉 Lieutenant John Farrell
(ジム・グッドウィン Jim Goodwin) TOS第5話 "The Enemy Within" 「二人のカーク」以来の登場。今回ウフーラの代わりに通信コンソールに就いていますが、制服の色は金 (黄) 色のままです。声:井上弦太郎

※3: 約40,031km のはずですが、吹き替えでは「3万9798.4キロ」と誤換算されています

※4: ジャニス・ランド船長付下士官 (世話係・秘書) Yeoman Janice Rand
(グレース・リー・ホイットニー Grace Lee Whitney) TOS第9話 "Balance of Terror" 「宇宙基地SOS」以来の登場。声:此島愛子、DVD・完全版ビデオ補完では榎本智恵子

※5: このモデルは、TOS第17話 "Shore Leave" 「おかしなおかしな遊園惑星」、第19話 "Arena" 「怪獣ゴーンとの対決」、第21話 "Tomorrow Is Yesterday" 「宇宙暦元年7・21」、第55話 "Assignment: Earth" 「宇宙からの使者 Mr.セブン」でも使用 (一部は色などを変えています)

・本編
※6惑星に近づくエンタープライズ。
『航星日誌、宇宙暦 2713.5※7。我々は銀河の果てで驚くべき発見をした。地球と全く同じ惑星から、地球スタイルの電波信号が発せられてくるのだ。信じられないことだが、現実である。』
カーク:「ミスター・スポック、固定軌道に乗せろ。」
スポック:「はい、乗せます。」
「依然として応答はないか。」
ファレル:「ありません。」
「上陸しよう。保安部に連絡、至急上陸班転送の準備をしろ。…遭難信号が発信されている地点近くに上陸する。」

地上の建物※8。荒れ果てている。
転送されてくる 6人。道路にはガラクタが散らばっていた。
壊れた自動車が何台もある。
分散するように指示するカーク。「瓜二つだ。地球と。1900年代の初期だな。」
トリコーダーを使ったスポック。「いえ、初期ではなくて半ば頃ですね。年代にして多分 1960年代でしょう。」
ランド:「みんなどこにいるんでしょう。」
「計器によりますと過去数世紀間は、自然のなすがままに任せてきたものと思われます。」
「みんな死んでしまったんですか?」
「断定はできないな。しかし恐らく例の遭難信号は、自動装置によるものでしょう。」
マッコイ:「素晴らしい眺めだな。古代建築がこんなに街ぐるみで保存されているのは見たことがない。」

フェイザーを持って独りで歩く、保安部員のギャロウェイ※9。通り過ぎた後、建物のドアが閉まった。

カークは転がった三輪車を手にした。「ミスター・スポック。」 ベルを鳴らす。
受け取るスポック。さらにマッコイに渡す。
三輪車を地面に置き、タイヤを回すマッコイ。
突然声が響いた。「僕んだ!」
建物※10から薄汚れた格好の男※11が飛び出てきて、マッコイに襲いかかった。「僕んだ! 僕んだ!」
駆けつけるギャロウェイやカークたち。
マッコイと取っ組み合う男。「僕んだよー! 僕んだ僕んだ僕んだ、僕んだー!」
引き離すカークとスポック。カークは男を何発も殴る。
泣きながら倒れる男。「こ、壊れちゃった。誰かが…壊したんだよー! どうして…。お願い、誰か直して…。」 顔全体が火傷を負ったようにも見える。
マッコイ:「心配するな、すぐに直してやる。」
スポック:「変形はしてますが明らかに人間ですね。」
カーク:「精神状態は子供だ。……ドクター、どう思う。」
マッコイ:「発作を起こしてるようだな。」
三輪車をつかむ男。
カーク:「力になろう。」
男:「嘘つきー! 嘘つき、嘘だ、嘘だ嘘だ嘘だ…嘘だー! 嘘だー! 嘘だー!」 意識を失った。
調べるマッコイ。「死んだ。信じられんな。」
カーク:「何が。」
「新陳代謝の度合いだ。考えられないほど高くて、まるで身体の中が燃えてるみたいだ。2、3分で急に百歳も年を取ったって感じだね。」
何者かが歩く音が聞こえた。
カーク:「来い!」
※12ついていく一同。
人影はない※13。またドアの音がした。
その建物になだれ込む。


2階を見るようにギャロウェイに指示するカーク。部屋も荒れている。
カーク:「どれくらい経ってる。」
スポック:「約300年※14ですね。」
音がした。ドアの前に立つカークたち。
中から息づかいが聞こえる。
カーク:「出てこい。」
泣き声だ。
カーク:「何もしない。」 ドアを開けた。
中にいたのは、一人の少女だった。
涙を流している。「お願い、いじめないで。」
カーク:「何もしないと言ったろ。」
「お願い助けて、私悪いことしてないわ。」
「信用したまえ。」
「お願い、助けて。」
「話をしたいだけだ。」
「何も悪いことしてないから助けて、お願い…」
「さあ、来たまえ。」
「やめて。お願い、助けて…」
「何もしないと言ったろ。」
「私何も悪いこと言ってないわ。ね、お願い…」
「さ、私を信用して出てきなさい。さあ。」
「いや、いや。助けて。」
落ち着かせるランド。「何もしないわよ、私達お友達なんだから。ね、さあ。シーッ。」
カーク:「放射能か何かに汚染されていないか、ほかに生物はいないか付近を調査してくれ。」
スポック:「了解。」 保安部員※15と向かう。
マッコイ:「どうしたんだろうな、あの子。よっぽど我々が恐ろしいらしいぞ。」

外を歩くスポック※16。ギャロウェイたちに見回るよう指示する。
トリコーダーを作動させた。


ガラスの汚れを取る手。スポックたちが見える。

スポックは歩き出した。

ガラスに近づき、その穴を覗き込む。

話す少女。「あなたたちグラップ※17がしたことよく覚えてるわよ。燃やして、暴れて人をいじめて。」
カーク:「そんなことをした覚えはない。」
「私をいじめないの。」
「当たり前じゃないか、助けたいんだ。」
「そんなの嘘だわ。」
ランド:「ねえ、信用して?」
カーク:「みんなどうしたんだ。何があったんだね。」
少女:「知ってるくせに。」
「知らないね、教えてくれ。」
「私とフーリ※18をしたいんでしょうけど、ダメよ。できないわ。だって私フーリのルール知らないもん。」
マッコイ:「フーリって?」
「ゲームの名前よ。ルールを知らなきゃ遊べないわ。グラップだって無理よ。」
カーク:「グラップって?」
「あなたたちよ。オンリー※19が年を取ったらなる。」
ランド:「大人のこと?」
カーク:「…さっき言ってたね、グラップが悪いことしたって。…燃やしたり、人をいじめたり。」
少女:「グラップが病気にかかるとそういうこと始めたので、私達は隠れたの。…この話わかる?」
「よくわかるよ?」
マッコイ:「…グラップが病気にかかるって、じゃあグラップはみんな死んじゃったのかね?」
少女:「ええ、死んだわ。もうあんな恐ろしいこと嫌。」
「きっと伝染病だ。となると筋が通ってくる。」
カーク:「…君たち子供はどうなんだ。『オンリー』は。病気にはかからなかったの?」
少女:「だからまだ生きてるんじゃない。」
「まだいるのかい、君のほかに。」
「みんな生きてるわ。」
2人に離れるように合図し、少女に近づくカーク。「何て名前?」
少女:「ミリ※20よ。」
「ミリ。可愛い名だ。君にふさわしいね。」
カークを見るミリ。カークは微笑む。
ミリ:「私に?」
カーク:「とっても可愛いよ。」
照れるミリ。

スポックたちは街を歩く。階段※21の下を通った時、上から音が響いた。
スポック:「こっちだ!」
だが相手の姿はない。
スポック:「よく見張れ。」
階段を上ろうとしたとき、子供たちの声が聞こえた。「ヤーヤヤヤーヤ!」
そちらへ向かう 3人。すると、上から石が落ちてくる。
隠れるスポック。
またそろった声。「ヤーヤヤヤーヤ、ヤーヤヤヤーヤ…」 何度も繰り返される。
テンポが速くなる。

戻ってきたスポック。「子供がおります、大勢。しかし近寄ろうとすると音もなく、まるで動物のように逃げてしまって。それとも動物でしょうか。」
カーク:「動物は全て死んだそうだ※22。」
マッコイ:「私を襲った怪物は明らかに子供じゃなかったな。となると死んだのは問題の病気のせいかもしれん。」
「謎を明らかにしてくれる、記録か何かが残ってるに違いない。ミリ。…昔医者が働いていた、うちか何かを覚えてるかな?」
ミリ:「ええ、覚えてるわ? …お薬なんかあるところでしょ?」
「案内してくれないか。」
「悪いとこよ、あそこは。」
「大事なことなんだ。…頼む。」
「いいわ。」
手を取るカーク。
ミリ:「あなたも名前あるの?」
カーク:「あるとも。カークだ。」
「いい名前ね?」
「そうかい? 君のもいいね? …大好きだよ。」
照れるミリ。「ほんと、それ。」
カーク:「嘘はつかない。」
「じゃあ私も嘘はつかないわ。…あなたもグラップだけどみんなと違って、いい人ね。」
ミリのあごに触れるカーク。「ありがとう。」
その時、自分の手に傷跡が見えた。
ミリ:「もう出てきたのね、やっぱりだわ! …ほかのグラップと同じ。そのうち体中に広がって悪いこと始めて最期に死んでしまうのよ。…もう駄目、助からないわ!」


※6: 原題がイタリック体で書かれている唯一のエピソード。TOS の最短タイトルでもあります

※7: 吹き替えでは「0401.6225」

※8: カルヴァーシティーにある、デジル・スタジオの「街の通り」セットでロケ撮影。TOS第22話 "The Return of the Archons" 「ベータ・スリーの独裁者」、第28話 "The City on the Edge of Forever" 「危険な過去への旅」、"The Andy Griffith Show" (1960〜68)、「アンタッチャブル」(1959〜63) でも使用。最初に映る建物には、「ラスク・ホテル (Rusk Hotel)」と書かれています

※9: Galloway クレジットでは保安部員その1 Security Guard #1
(デイヴィッド・ロス David Ross TOS第14話 "The Galileo Seven" 「ゴリラの惑星」の転送部長 (Transporter Chief)、第66話 "Day of the Dove" 「宇宙の怪! 怒りを喰う!?」のジョンソン大尉 (Lt. Johnson) 役) 名前は言及されていませんが、後のギャロウェイと同一視してよいと思われます。初登場。階級は大尉となっている資料もありますが、今回は階級章はありません (少尉以下)

※10: パルマートン・カフェ (Palmerton Cafe) と書かれています

※11: 少年の怪物 Boy Creature
(エド・マクレディ Ed McCready TOS第11話 "Dagger of the Mind" 「悪魔島から来た狂人」の患者 (Inmate)、第52話 "Patterns of Force" 「エコス・ナチスの恐怖」のナチス兵士 (S.S. Trooper)、第54話 "The Omega Glory" 「細菌戦争の果て」のドクター・カーター (Dr. Carter)、第56話 "Spectre of the Gun" 「危機一髪! OK牧場の決闘」の理髪師 (Barber) 役。2002年9月に死去) 声:肝付兼太?

※12: TOS の旧国内オンエア分では、カット部分が存在しています。完全版ビデオ (第1シーズンの一部) および DVD には吹き替えつきで完全収録されており、このエピソードガイドでは色を変えている個所にあたります (CS版との比較)。LD では基本的に、その部分だけ字幕収録です

※13: バートレット馬屋 (Bartlett Stable) という建物が見えます

※14: 旧吹き替えでは全て (DVD・完全版ビデオ補完部を除く。脚注※26 参照)、邦題を含めて「400年 (歳)」となっています。これだと現在が 24世紀、もしくはこの惑星が 100年分進んでいたことになります。「0401.…」といった吹き替えの宇宙暦は、当時の 1960年代から 400年後と言いたいのかもしれません (TOS第21話 "Tomorrow Is Yesterday" 「宇宙暦元年7・21」の脚注※19 参照)

※15: 保安部員その2 Security guard #2
(ジョン・アルント John Arndt TOS第6話 "The Man Trap" 「惑星M113の吸血獣」のスタージョン下士官 (Crewman Sturgeon) 役) TOS第9話 "Balance of Terror" 「宇宙基地SOS」のフィールズ (Fields) と同一視する見方もあります。途中の部分ではギャロウェイも含めて登場しておらず、ウィルスのメイクの手間を省いたという説もあります。セリフなし、ノンクレジット

※16: 保安部員も含め、直前に部屋にいた時に制服についていたホコリが綺麗に消えています。後ろには「ビッグスのオモチャ屋 (Biggs' Toys)」という建物が見えます

※17: grup
後のランドのセリフ「大人のこと?」にもあるように、"grown-up" の略

※18: foolie

※19: onlies
only。「オーリー」と吹き替えされているように聞こえます

※20: Miri
(キム・ダービー Kim Darby 映画「勇気ある追跡」(1969)、「いちご白書」(70)、テレビ映画「不思議な村」(71、シャトナーと共演) に出演) 原題。声:太田淑子

※21: TOS "The City on the Edge of Forever" でも使われ、カークが服を失敬した場所

※22: 原語では、スポック「…逃げてしまって。まるで動物のような、子供だけです」 カーク「大人はみんな死んだそうだ」

『航星日誌、宇宙暦 2713.6※23。ミリに案内された家にも、自動的にセットされた通信機があった。我々を呼び寄せた犯人である。一方謎の病気の症状に見られる青い染みのようなものは、ドクターの身体にも現れ始めたがミスター・スポックは無事のようだ。やがて実験室を探し出したドクターは、青い染みの細胞を切り取り病原菌を調べ始めた。』
地上の街。
顕微鏡を覗くマッコイ。「まさにバクテリアの動物園だね。」 コミュニケーターを開く。「生体工学コンピューターとポータブル電子顕微鏡を転送してくれ。ここにある道具ではとても恐ろしいビールスに勝てそうもない。」

エンタープライズ。
イヤーレシーバーを着けているファレル。「わかりました。カーク船長。」

カーク:「どうした。」

ファレル:「協力を申し出た者が、大勢いますが。」

カーク:「いかなる事態になろうと、誰も転送してはならん。これ以上伝染したらエンタープライズ※24が危険だ。」
ファレル:『でも船長、もし船長の病気がひどかったら…』
「命令に背くことは許さん。コンピューターの記憶装置を開けて待機してくれるだけで十分だ、以上! …ドクター。」
マッコイ:「ん?」
「どういうわけで、ミスター・スポックには症状が現れないんだろうな。」
「わからんね。…スポックの血はグリーンだからきっとビールスが遠慮したんじゃないのか?」
スポック:「うーん。あなたたち地球人の赤い血は、厄介ものですな。…ほう、博物館行きの珍品ですね。レンズつきで、手で操作して光に影響されて…」
「いちいちうるさいね、君も。邪魔しないでくれ。使えれば古くってもいい。」
マッコイは手の染みに気づいた。
手を取るミリ。「あっという間に広がっちゃうのよ? …年取ると体中がそうなるの。」 カークを見る。
改めて傷を見るマッコイ。
文書を読み上げるカーク。「『実験中間報告。実験課題、生命の…生命の延長。』」
スポック:「第2次報告、遺伝学セクション。生命延長計画※25について。」
ランド:「どういうことなの?」
マッコイ:「……生命延長計画か。成功しなかったようだな。」
ミリは部屋に置かれた道具に触れている。

『航星日誌。ドクター・マッコイの生体工学コンピューターとポータブル電子顕微鏡が、エンタープライズから転送されてきた。船のコンピューターバンクと連動させて使用する。』
実験室。
コミュニケーターを使っているマッコイ。「管状で繁殖力旺盛だな。この構造は核酸によく似ているようだが、分析を頼む。」
スポック:「…300年※26も前の記録ですよ。」
カーク:「大人はみんな死んでしまい、子供だけが残ったというわけか。」
「しかし子供も成長する。」
「そう、いずれは大人になる。」
「……ドクター。確か人間は、成長して思春期に入るとホルモンに変化が出てくると聞きますが違いますか。」
マッコイ:「その通りだ。それで身体の組織が変化するが、なぜだ。…どうして、そんなことを聞く。」
「もしかしたらこの星の子供たちはみんな、思春期に入ると病気にかかるのかもしれない。」
カーク:「それなら大人がいないのもうなずけるな。」
マッコイ:「思春期の、ホルモンの影響か。ありうる。」
スポック:「…しかしそれでは、非論理的だ。大人は 300年も前に一人残らず死に絶えたのに、まだ子供がいるなんて。」
カーク:「彼らも大人になれば死ぬ。」
マッコイ:「では、なぜ 300年も生きてきた。」
ランド:「そうです、それに…もし彼女も病気に冒されて凶暴になっているのなら、なぜおとなしく私達と来たんです?」
カーク:「さあ好奇心か、子供は本能的に大人を求めるんだろう。教えを請いたい気持ちがあるのさ。」
スポック:「彼女の場合にはほかの感情もあるようですよ、船長。」
マッコイ:「君が好きなんだ。」
「もう子供じゃありません。」
本を手にしているミリ。


エンタープライズ。
ファレル:「ミスター・スポック。」

スポック:「こちらスポック。」
ファレル:『測定の結果が出ました。12 の 10乗。新陳代謝率、72%。核酸の製造は、正常より 33%減少しています。平均年代進展率は、3.6 の 100 です。』
「スポック了解。」 入力を終え、チップ状のテープを取り出すスポック。「計算の結果が出ました。」
ギャロウェイたちに指示するカーク。「もう一度だ、見逃したものがあるかもしれん。…ミリ? 机を片づけてくれる?」
ミリ:「はい、いいわよ。」
スポックに近づくカーク。
スポック:「彼らの生命延長計画によると、驚くべきことが可能ですね。実際には 100年経ってるのに、一ヶ月しか年を取らない計算ですよ。」
ランド:「…100年も経って、ただの一ヶ月。」
「その通りだ。…ところが何かの計算のミスで、問題のビールスが短期間に大人を一人残らず殺してしまったんでしょう。子供だけを残して。」
「となるとあの子供たちは。」
「実は大変な年寄りかもしれませんね。」
カーク:「残った子供たちはいつまでも子供でいるわけか。」
マッコイ:「だいぶ解けてきたな。」
ランド:「年を取らない子供。いつまでも純真な心をもって、何にも縛られずに。夢の世界だわ。」
カーク:「夢の世界にあまり近寄らない方がいい。醜い世界かもしれんぞ。」
マッコイ:「ここへ来てすぐに、私を襲って死んでいったあの怪物もミリのような子供だったんだ。この星では子供は思春期に入ると、死が待ってるんだよ。」
片付けをしているミリを見る一同。
ランド:「彼女知ってるかしら。」
カーク:「まだ知らんだろう。」
「でも本当は年寄りだとなるとそれぐらいはわかっていいはずですわ?」
「しかし精神状態は子供なんだ。実は何百歳の大変な年寄りかもしれないが、中身は子供だ。何とかしてやらないと。」
スポック:「難しいですね、姿も見せないんですから。」
「何とか近寄れないだろうか。」
「無理でしょう。ネズミのように街をよく知っている連中です。」
「やってみよう。…ミリ? ちょっと。…その辺を散歩しないか。」
ミリ:「いいわよ?」 手を取り合い、実験室を出て行く 2人。
ランド:「あのあどけない子も。」
スポック:「そう少なくとも、君より 300歳は年を取ってるね。恐ろしいことだ。」

人形が飾られた部屋。隠れて外をうかがう子供たちがいる。
片方の子はお面を被っている。馬の人形に乗って遊ぶ子供もいる。
たくさんの子供の中で、一番背の高い少年のジャン※27「ミリの奴やっぱりあいつらと一緒なんだ。どうしてだい。」
外を見ていた男の子※28。「何をするつもりだろうね。」
ジャン:「わかんねえよ、俺にも。…それより大事なのは、ほかにも奴らの仲間がいるってことだ。空の上によう。どっかに隠れてやがんだ。いつも仲間と連絡してるだろ、グラップは悪いに決まってんだい。怒鳴ったり、殺したりよう。」
「親父のしたこと覚えてるぜ?」
「みんなそうさ。グラップのしたことは忘れねえよ。…奴ら連絡するときにちっこい箱を使ってんな。…その箱を取り上げてやったらよ、奴ら何もできねえぜ。ヘ。」
「僕たちは逃げて、ざまみろだ。…オンリーがんばれまた勝った※29、オンリーがんばれまた勝った、フレーフレーまた勝った!」 一緒に歌う子供たち。
「やめろ! …ゲームじゃねえぞ。本気だ。あいつらグラップだ、何をされるかわかんねえんだぞ?」
外を見張っている少年※30。「ジャン。」

カークとミリの姿が見える。
窓際に集まる子供たち。
ジャン:「来るぜ! みんな隠れろ!」
カークは建物に入るが、みな逃げた後だ。音が響き、カークはフェイザーを向けた。
少女が飛び出てくる。顔には病気の症状が広がっていた。
隠れていた子供たちが一斉に出てきて、騒ぎ出した。みな散り散りになって逃げる。
叫ぶミリ。病気の少女は声を上げ、カークに飛び乗った。
振り払おうと動き回るカーク。床に落ちた少女に、カークはフェイザーを浴びせた。
近づくカーク。「死んだ。殺すようにはセットしてなかったのに、なぜだ。」
ミリ:「ルイーズ※31って友達よ? 歳は私とほとんど違わなかったのに。怖い!」 カークに抱きつく。

実験室で鉛筆を研ぐミリ。
ファレル:『データをコンピューターにかけました、待機して下さい。』
スポック:「了解。」
ミリ:「これだけあればいい?」
カーク:「もう少し頼むよ、嫌じゃなかったら。」
「嫌じゃないわよ。」
スポックに記録を見せるカーク。「……君は自分の予測に確信をもてるのか。」
スポック:「この男は死に至る 2、3週間のことを詳しく記録してますね。最期の部分は当てにはなりませんが。…本人も自分の病気が重くて、もう正気かどうかわからなくなったと言ってる部分なんで信用できません。しかしそれ以前の記録を参考にすると、残り時間の予測はつきます。やがてコンピューターが、裏づけしてくれるでしょう。」
マッコイ:「我々が発狂※32するのは既に時間の問題か。お互いに殺し合い、最後に残った者も自殺しておしまいだ。」
カークの傷は確実に広がっている。「…ミリはどうなる。」
スポック:「予想通りでしたね。子供は思春期に入ると病気にかかり、新陳代謝が変化します。…しかし症状がはっきりと現れるのは一ヶ月ほど後です。…とすると彼女の命は、恐らく後一ヶ月半ぐらいでしょ。」
マッコイ:「我々はどうだ。」
「年を取ってるほど、悪化の速度は速いらしいですからね。」
カーク:「…君は。君の場合はどういう影響を受ける。」
「私は保菌者です。…船に戻れば全員に伝染するでしょう。しかし私は戻りたいですね、何とかして。」
「それは私も同じだ。…ビールスの種類はわかったのか。」
マッコイ:「いや、わかってるのは恐ろしい症状だけだ。…やがて現れる。青いあざだけではなくてそのうちに、高熱が出始める。手足の感覚がなくなるほど痛くなり、幻覚を見るようになる。しかもこれはごく初期の軽い症状だ。」
「…残り時間に間違いはないか。」
スポック:「私の計算はまず正しいですね。」
「助かる見込みは。」
ファレル:『ミスター・スポック、こちらエンタープライズ。』
「スポックだ。」
『コンピューターの回答は、170時間です。』
「当たりましたね。…あと 7日の命です。」


※23: 吹き替えでは「0401.6226」

※24: 吹き替えでは「エンタープライズ

※25: Life Prolongation Project

※26: DVD・完全版ビデオ補完部では、原語のままの「300年」になっています。そのため「400年」になっている旧来の吹き替えと矛盾が生じています (脚注※14)

※27: Jahn
(マイケル・J・ポラード Michael J. Pollard 映画「俺たちに明日はない」(1967) に出演) 声:小宮山清 (DVD・完全版ビデオ補完も継続)

※28: 男の子 Little Boy
(ジョン・メグナ John Megna 1995年9月に死去) クレジットの役名は、テイラー演じるキャラクターと入れ違いになっているという説もあります (脚注※40)。声:東美江、TNG ガイナンなど。DVD・完全版ビデオ補完ではさとうあい、旧ST4 ウフーラなど

※29: 原語ではオンリーについては触れておらず、"Olly, olly, oxen free!" という遊び文句

※30: 赤毛の少年 Redheaded Boy
(スティーヴン・マクヴィーティ Steven McEveety このエピソードの監督、Vincent McEveety の息子) 声:沢田和子。DVD・完全版ビデオ補完では三浦智子、FC オガワなど

※31: ルイーズ/少女の怪物 Louise, female creature
(アイリーン・セイル Irene Sale) 吹き替えなし、ノンクレジット

※32: 旧国内オンエア版 (CS ニュープリント版を除く) では、「発狂」の部分が修正されて無音になっています

『航星日誌、補足。7日間のうち既に 2日が過ぎたが、何一つ手がかりはつかめない。エンタープライズのコンピューターは虚しく待機するだけだ、データは何もつかめない。』
実験室。
カーク:「これでは駄目だ、動きが取れん。」
マッコイ:「ついに見つけたぞ!」
「ジャニス、ミリと散歩をしたまえ。」
ランド:「はい。」
マッコイ:「完全な資料じゃないが。」
カーク:「大体のことはわかるか。」
「わかりそうだね。彼らは新しい病気をいくつか作ろうとしてたんだ。そしてそのビールスの連鎖反応によって、人体細胞の生命を半永久的に延ばすつもりだった。」
スポック:「うん、しかし結果は残念ながら悲劇に終わったわけか。」
カーク:「…よろしい。ではまずこの病気のビールスを分離させることだな。そうすればワクチン※33を作れる。」
マッコイ:「…ずいぶん簡単に言うな、あと 5日しかないのに。」
「…わかってる。」
声が聞こえてきた。「ヤーヤヤヤーヤ、ヤーヤヤヤーヤ…」
カーク:「子供だ。」
外に出る 3人。歌は続く。
部屋を見て回る。

実験室の窓から入るジャン。ほかの子供※34に静かにするように合図する。
コミュニケーターを集めていく。

実験室の前に戻ってくるカーク。「いたか。」
スポック:「いえ、どこにも。」
「そっちは。」
首を振るマッコイ。

出ていくジャン。

カークたちは音に気づいた。実験室に戻る。
スポック:「船長、通信機が。…消えました。」
マッコイ:「何とかして取り返さないと大変だ、エンタープライズと連絡が取れない。通信機がないとコンピューターが使えないんだぞ?」

『航星日誌、宇宙暦 2717.3※35。残るは後、3日と 7時間になった。一方子供たちはたとえ健康でも街の食料が底をつき始めたため、あと数ヶ月で餓死してしまうだろう。ドクターの診断によると我々の病気はかなり進み、次第に気が短くなってきた。3日前とは、まるで別人のようだ。』
汗をかき、実験室を歩き回るカーク。「まだわからんのか!」
マッコイ:「文句があるなら自分でやってみろ!」
ミリの肩に触れるカーク。
カークがそばを通ったとき、ランドは持っていたフラスコを落として割ってしまった。「…嫌よ! …嫌よ! 嫌よ…助けて…」 外へ出て行く。
追うカーク。ミリも様子をうかがう。
ランド:「もう死んだ方がましだわ、どうしたらいいの。」
ランドは肩の下の皮膚を見せた。やはり病気の症状が見える。「私黙ってましたけど、身体のあちこちに青いあざが一杯。」
見つめるミリ。
ランド:「…船長。この脚を見て下さい。」
あざを隠すように手を置くランド。
抱き合うカーク。ミリはずっと見ている。
カーク:「大丈夫、治してみせる。」
ミリは実験室を出て行った。
マッコイ:「カーク、やった! 見つけたぞ!」
中に戻る 2人。
マッコイ:「最後のスライドを検査するときに調整を間違えてしまったんだ。病気のために判断が鈍って…」
カーク:「それより何を見つけたんだ!」
「病原菌だよ! 彼らが 300年前に作り出した細菌だ。」
ランド:「じゃ望みが。」
「あとは、時間との競争だな。…一秒も無駄にはできんぞ。」
ランドの腕をつかむカーク。またミリがその様子を見ている。
ミリは立ち去った。

微笑むジャン。「そりゃあよう面白いと思うけど※36、そう上手くいくかな。」
子供たちの中央にミリがいる。「いくわよ、任しといて。ずっと話を聞いてたのよ私。あと何時間かうちにその、細菌をどうにかするつもりらしいのよ。…だからもし女のグラップを連れ出せば、手伝う人がいなくなって困っちゃうわけじゃない?」
少年:「でもそんなに慌ててんじゃきっと連れ出せないぜ、だって手が足りなくて部屋から一歩も出ないんだろ?」
「簡単よ、あの女はいつも小さなオンリーのことを気にしてるの。『もし病気になったら誰が看病する』とか、『食べ物はあるの、どこで寝るの』とか。だから一言、誰かが怪我をしたって言えばいいのよ。」
男の子:「それ、僕だって言ってよ。」
「あんたでいいわよ。」
ジャン:「でもさあグラップは頭がいいからよう、一人ぐらい足りなくなっても別に困ったりしねえんじゃねえのか?」
「一人じゃなくって、2人よ。彼きっと捜し回るから。」
男の子:「誰だい、その彼ってのは?」
「…船長よ。いくら捜しても見つからないけど。何よあんな船長。」
男の子:「船長。やっちゃえ! ガンガンぶん殴れー! ガンガン、ガンガン…」
声を合わせ、床を叩く周りの子供たち。


※33: ワクチンは本来予防に使うものですが、この頃には意義が変わっているのかも

※34: コミュニケーターを盗んだ少年 boys who stole communicators
(ジョン&スコット・ドゥウェック Jon and Scott Dweck) 一部資料では「フェイザーを盗んだ」となっています。特定のセリフなし、ノンクレジット

※35: 吹き替えでは「0401.6253」

※36: 原語では「フーリになると思うけど」

カプセルを見つめるマッコイ。「ついにできたぞ。」
スポック:「窒素循環です、絶対これだ。」
「しかし問題は、使用する量だな。」
「うーん。間違うと大変なことになる。」
カーク:「どこにいるんだ、ミリ。彼女をどこへ連れてった。」
涙を流しているミリ。「変なこと言わないで、知るわけないでしょ?」
額に手を触れるカーク。「ジャニスはどこだ。ジャニスに何かあったら。」
ミリ:「気が変なんじゃない?」
「当たり前だ、これで平気でいられるか。みんな発狂する寸前なんだぞ※37! …何が起こってるかわかってるだろ!」
「あなたには無事でいてもらいたいの。」
「…ジャニスを捜さないと。」
スポック:「通信機も捜してもらわないと望みは消えますね。」
「何だその言い方は。手分けして捜してるじゃないか…」
マッコイ:「熱意が足りん! 何を作っても、船のコンピューターがなければテストはできないんだぞ?」
スポック:「通信機だけが頼りです。」
カーク:「ワクチンか、これは。」
マッコイ:「…だからそれをコンピューターに聞きたいんだよ!」
スポック:「一つ間違えば、これは死のビーカーになりますね。」
ミリに近づくカーク。「聞いたか。あと 2、3時間しかない。」
ミリ:「関係ないわ。」
「それじゃ済まんよ。ミリ。真面目に聞いてくれ。…君も、友達もつまりオンリーはみんなやがて病気になる。それを防ぐのが今作ってる薬だ、友達が病気になったのを見たろ。」
「運が悪かったのよ。」
「運じゃない、必ずなるんだ! ミリ、大人の世界に足を入れたらすぐに。君がそうだよ。…考えたまえ。なぜ、君はもうみんなと遊びたくないんだ。…みんなあれほど仲のよかった友達じゃないか。」 ミリの頬に触れるカーク。「それは君が大人になりかけているからなんだ。そしてね、大人になったらその瞬間に君は病気にかかる。みんなそうだ!」
「嘘よ、かかるのは運の悪い人だけよ…」
「違う、みんな必ずかかる! 君がいい例だ、わからないのか!」
カークがつかんだミリの腕には、確かにあざがあった。
カーク:「これを見ろ、よーく見たまえ。もう始まってる!」
ミリ:「嫌! …嫌…嫌…」
ミリを抱き寄せるカーク。

黒板の前で話す男の子。「やーい、あっかんべーだ。」
ジャン:「何勘違いしてんだよ、バカ。お前は学校の先生になれって言ったんだぜ。先生なら何て言うんだよ。」
「そうか。
みんな真面目に勉強しろ。ぶん殴るぞ、サボってると。」
声を上げ、拍手する子供たち。
隅の椅子に縛りつけられているランド。「何のつもりなのよ。」
ジャン:「遊びだよ※38。」
「私をどうするつもり?」
「ヘ、教えると思うか?」
音がした。ミリがドアを開けている。
ジャン:「ミリ。…ここへ来ちゃ駄目だよ。」
ミリ:「どうして。」
「どうした、何かあったのかい。」
「いえ?」
「ほんとか? とにかく突っ立ってないで入りなよ。」
すると、カークも来た。
ミリ:「話を聞いて。」
ジャン:「野郎、裏切りやがって。」
「待って。大事な話があるのよ。話してあげて。」
「話してあげて。話してあげて…」 ジャンを真似する子供。
指揮するように煽るジャン。
カークは男の子を教壇から降ろした。「みんな静かに。静かにしろ!」
ジャン:「おい、教室で怒鳴ってるぜ。行こう、悪い奴だ。でっかいくせによ。」
「遊びじゃあない。話を聞いてくれ!」
女の子※39:「警察を呼んで?」
男の子:「僕は警察だぞ、ぶん殴るぞ? 悪いことすると。」
ジャン:「お前は先生だよ。」
「先生の警察なんだよ、バンバン! バンバン…」 一緒に唱える子供たち。
カーク:「頼む、聞いてくれ! 通信機を盗んだろ。連絡に使う小さな箱だ。…船と話をしたいんで返して欲しい…」
子供たち:「バンバンバン…」
「うるさい、静かにしろー! もし船と話ができないと、通信機がないともう遊びもできなくなるぞ。何もできなくなる。…終わりだ。グラップもオンリーも、誰もいなくなる。永久に終わりだ。」
仲間※40に合図するジャン。
ランド:「船長!」
後ろから棒を持った子供が近づいたが、カークは簡単にはねのけた。「真面目に聞いてくれ。早く助けてくれないと手遅れになる。ジャニスのロープをほどいて通信機を返したまえ、今なら間に合う!」
また歌い出すジャン。「ヤーヤヤヤーヤ、ヤーヤヤヤーヤ…」
棒を持ってカークの周りに集まる子供。
カーク:「友達はどうなった。大人になった者から順に、病気になったろ。病気にならなかった者が一人でもいるか。一人ずつ恐ろしい病気にかかり、見る見るうちに…あのルイーズのような怪物になったはずだ。そして気が狂って最後には死んでいく※41。私やミリがかかっているこの病気だ! 君たちなら話がわかるはずだ。君たちはもう赤ん坊じゃない、お互いに助け合おう。」
カークを叩く男の子。「悪いグラップだ、バンバン…」 周りも殴り出す。
ミリ:「やめて、みんなやめて!」
微笑む女の子。
血を流しながら、カークはジャンに近づいた。「君もかかるぞ。あと何ヶ月かでかかる。」
ミリ:「聞いてあげて、これはほんとなのよ。」
ジャン:「変な奴、こいつどうかしてるぜ。」
男の子:「バンバン、やっつけろー!」
カーク:「この腕を見ろ!」 制服の袖を破った。青い染みが腕中に広がっている。「やがて君たちもこうなる。だから助けたい。」
男の子:「バンバン、やっつけろー!」
「子供はどうなる。」 そばにいた小さい子供※42を抱き上げたカーク。「君が死んだら小さな子供はどうなる。…君がルイーズのような怪物になったらみんなどうなる。もちろんしばらくは、生きられるだろう。でも食べ物がなくなる。残り少なくて、あと半年ももたないだろう※43。その後は、何を食べていくんだ。誰が子供の面倒をみる。すぐに死んでしまうぞ。」
ミリ:「ほら、私の腕も見て。もうかかってんよ、病気の話はほんとよ。」
ジャン:「インチキだー!」
子供たち:「バンバン…」
カーク:「そんなに殴りたいのか※44! よーし、殴らせてやる。」 また男の子を降ろした。「しかしその前にだ。…私の顔の血を見ろ。自分の手も。…血がついてるだろ。…これは誰がやったんだ。グラップではなくて、君たちだ。…人の血を流して乱暴してるのは君たちだ。今の君たちはあの恐ろしい怪物やグラップと変わりはない、彼らと同じことをしてる! …そのうち身体も顔も同じになるぞ。そうならないようにするんだ。…私はグラップだ。だからこそ君たちを助けたい。なあ、頼む。君たちのためだ。でなきゃ、みんな死んでしまうぞ。」
無言の子供たち。
カーク:「頼む。」

ハイポスプレーをセットするスポック。
マッコイ:「まだ通信機は見つからんのか?」
スポック:「下手すると、ワクチンは命取りになります。」
「どうせ病気で死ぬんだ。あと何時間の命だ、いや何分かもしれん。なのにボンヤリ待てるかね?」
「興奮しても、意味はない。船長の状況※45を見てきます。」 スポックは実験室を出た。
マッコイはハイポスプレーを見た。手にする。
そして自分に注射した。うなるマッコイ。
テーブルの上に倒れた。「スポーック!」 床に転がる。
ギャロウェイと話していたスポックは、実験室に戻った。ハイポスプレーをギャロウェイに渡す。
マッコイの瞳孔を確認し、脈を取る。
ギャロウェイ:「死んだんですか。」
スポック:「大丈夫だ。」

ランドや子供たちと一緒に、実験室に戻ってくるカーク。コミュニケーターを使っている。「あと 3時間11分だな、了解。チャンネルとコンピューターを開けて待機しろ。」 ドアを開け、動きを止めた。「どうした、ドクター。」
スポック:「自分でワクチンを打ったらしくて既に意識不明でした。」
「……顔を見たまえ。」
「あざが消えてゆく。…効いたんだ!」
あざは見る見るうちに消え、完全になくなった。
見つめる子供たち※46
スポック:「……思い切ったことをやったもんだ。」
ミリに微笑むカーク。
ジャン:「何だい、いいことがあったのかい?」
ミリ:「みんな助かるのよ。」

惑星を離れるエンタープライズ。
スクリーンに映る星々。
ランド:「小さな子供なのに、医療班をつけただけで置き去りにするのは…」
カーク:「小さな子供か、300歳も年上なのに。スペースセンター※47に緊急連絡をしたんで、すぐに関係者が来るはずだ。」
マッコイ:「補導員も必要じゃないかな?」
「大丈夫だよ。」
ランド:「ミリは、船長に恋をしてましたのね?」
「かもしれん。でも私は年上の女性は苦手でね。」
微笑むランド。
カーク:「ミスター・スポック。」
スポック:「はい。」
「ワープ1 で前進!」
「ワープ1 で前進!」
宇宙空間を進むエンタープライズ。※48


※37: DVD・完全版ビデオでは「もう残された時間は少ないんだ」に修正されており、前後も一緒に吹き替えし直されているため、次の部分は「何が起きてるか」になっています。また旧国内オンエア版 (CS ニュープリント版を除く) では、「発狂」の部分が修正されて無音になっています

※38: 原語では「フーリだよ」

※39: 破れた赤い服を着た金髪の少女 Blonde girl in red-striped dress
(リザベス・シャトナー Lizabeth Shatner ウィリアム・シャトナーの娘) ノンクレジット

※40: ジャンの友達 Jahn's Friend
(キース・テイラー Keith Taylor ドラマ「ビーバーちゃん」(1960〜61) に出演) クレジットの役名は、メグナ演じるキャラクターと入れ違いになっているという説もあります (脚注※28)。特定のセリフなし

※41: DVD・完全版ビデオでは「その挙げ句変わり果てて死んでいく」に修正されており、前後も一緒に吹き替えし直されているため、前の部分は「友達どうなった」になっています

※42: 黒いレースの服を着たブルネットの少女 Brunette in black lace dress
(メラニー・シャトナー Melanie Shatner 映画 ST5 "The Final Frontier" 「新たなる未知へ」の船長付下士官 (Yeoman) 役。ウィリアム・シャトナーの娘) 特定のセリフなし、ノンクレジット

※43: ここでジャンの前にいるのは軍隊のヘルメットを被った少年 Boy in army helmet
(フィル・モリス Phil Morris DS9第101話 "Looking for Par'Mach in All the Wrong Places" 「クワークの再婚」のソポック (Thopok)、第126話 "Rocks and Shoals" 「洞窟の密約」のレマタクラン (Remata'Klan)、VOY第128話 "One Small Step" 「電磁空間アレース4」のジョン・マーク・ケリー中尉 Lt. John Mark Kelly)、映画 ST3 "The Search for Spock" 「ミスター・スポックを探せ!」のフォスター訓練生 (Trainee Foster) 役。「スパイ大作戦」(1966〜73) のグレッグ・モリスの息子) 特定のセリフなし、ノンクレジット

そのほか、どの人物か確認できなかったキャラクターとして
金髪の少女 Blonde Girl (ケリー・フラナガン Kellie Flanagan)

金髪の女の子 Little blond girl
(ドーン・ロッデンベリー Dawn Roddenberry ジーン・ロッデンベリーの娘) ノンクレジット

花柄の服を着た顔が汚れた少女 Dirth-faced girl in flowered dress
(ダーリーン・ロッデンベリー Darlene Roddenberry ジーン・ロッデンベリーの娘) ノンクレジット

幼い少年 Small Boy
(Scott Whitney 映画第1作 "The Motion Picture" 「スター・トレック」のヴァルカン人医師 (Vulcan medic) 役。ランド役グレース・リー・ホイットニーの息子。ホイットニーの息子は 2人出演しているという記述もあります) ノンクレジット、いずれも特定のセリフなし

※44: 原語では「フーリをやりたいのか」

※45: 吹き替えでは「病状」

※46: ジャンの後ろの方にいるジャンの友達 (脚注※40) が、ここでは眼鏡をかけています

※47: Space Central
宇宙艦隊の設定が固まっていなかった初期のため

※48: エンドクレジットの字体は、このエピソードでしか使われていません

・感想など
TOS に散見される「地球にそっくりな惑星」と、「子供」の両方の要素を備えたエピソードです。まず前者については、そっくりというより全く同じ複製とも呼べる設定に驚かされます。大きさ、地形、種族、さらに (300年前で発展が止まったとはいえ) 年代まで完全なコピーです。その上、ストーリーの主眼はすぐに子供の方に移ってしまうため、何とも中途半端なままになっています。なおシャトナーによる小説「栄光のカーク艦長」では、TOS "The Paradise Syndrome" 「小惑星衝突コース接近中」の保存者と関連させて理由づけを行っています。
そして「ピーターパン」の子供たちについては…嫌な子の典型的パターンですね。これがリマスター版の第2話というのは、ちょっと残念です (なお本国では第1話と連続した枠に設定されたため、放送局によっては飛ばされて再放送が初オンエアとなったところもあります)。

今後もリマスター版の放送に合わせて、それまで手がけていないエピソードガイドを公開する場合があります。当然これまでの人気順ではありませんので、ガイドの一覧ページに本来の順位を併記しました。なお今回は、79話中 48位です。


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