ディープスペースナイン エピソードガイド
第114話「ジュリアンの秘密」
Doctor Bashir, I Presume
イントロダクション
クワークの店、ダボテーブル。12回も回してるのに当たりが出ない、そろそろ当たりが出る頃と客※1に話すリータ※2。カウンターには、リータの様子をうかがうロム※3がいる。やってきたクワークに、今日こそは絶対に告白してみせるというロム。そういって何週間だというクワーク。タイミングを見計らってただけさ、これから告白する、彼女は休憩に入ると挨拶しにやってくるというロム。その時に思い切って言うのだと、自信満々だ。練習してみろとクワークに言われるが、やはり小声で支離滅裂にしか言えないロム。意味をなしてないというクワーク。本番ではできるというロムに、がんばれよという。こんにちはといって、休憩に入ったリータがロムの前にやってきた。急かすクワーク。ロムの言葉を待つリータ。だがロムは、「じゃあね」とだけいって歩いていった。あきれるクワークとリータ。私が何か悪いことしたと聞くリータに、そんなことはない、ただロムはお前に興味がないんだというクワーク。彼は私が好きよというリータ。好意はあるだろう、だがロムはエンジニアで頭が切れる、付き合うなら体だけの女はちょっとなという。馬鹿じゃないわと怒るリータ。だから雇った、早く食事を食べて、食い終わったらその優秀なおつむを使って客から金を巻き上げてくれというクワーク。 同じく店の中では、ベシアとオブライエンがダーツをしている。調子を取り戻してきたオブライエンが気に食わない様子のベシア。一度落とした調子をまた上げてきたなというベシアに、落としてない、追いつくのを待ってただけさというオブライエン。ありがとう心配御無用だ、もう一勝負だというベシア。ワンゲームな、モリーと一緒にお絵描きをする約束なんだというオブライエン。周りが赤ちゃんばかりかまって、いじけたりするとかわいそうだという。親っていうのも大変だなというベシアに、そうだが子供もいいというオブライエン。君も家庭を持てよという。いやというベシアに、君はいい父親になると言うオブライエン。僕はあんまり家庭的じゃないしというベシア。そこへ君がドクター・ベシアかな※4といって、男が話しかけてきた。観測ステーションジュピター※5でホログラム映像を開発しているルイス・ジマーマン※6だ、今回は君をモデルにしたいと言った。 |
※1: 前話 "By Inferno's Light" 「敗れざる者(後)」での協定の通り、クリンゴン人もいます
※2: Leeta
※3: Rom ※4: "Doctor Bashir, I presume?" 原題でもあり、決まり文句でもあります
※5: 木星基地 Jupiter station
※6: ルイス・ズィンマーマン、ルイス・ジンメルマン Lewis Zimmerman |
本編
※7ホログラムによる、救急医療プログラム※8はご存知でしょうねとシスコに話すジマーマン。聞いたことはある、非常事態が起きた時に医療行為を補助するプログラムというシスコ。ただ補助するだけじゃないんですというジマーマン。戦闘に赴く宇宙艦※9には、ホログラムによるドクターが配置されることも多いんですと付け加えるベシア。ここもそうだと思ってましたというジマーマンに、このステーションは元がカーデシアなので、連邦のテクノロジーをそのまま使うことはできないんですというシスコ。お気の毒に、ホログラムのドクターは短期間用に開発されたものだが、艦隊から日常勤務用のものをと要請があったとジマーマンは話す。本物のドクターを追い出そうというわけかというシスコに、そういうことではありません、なぜみんなホログラムと聞くと嫌がるんだろうと頭を抱えるジマーマン。本当の人間より都合のいい場合だってたくさんあるんです、観測基地とか亜空間通信ステーションとか長距離探索船とかというベシア。即ち生命維持装置や居住スペースが限られていて、人間のドクターが必要でない時だ。わかった、そのホログラムドクターのモデルに、ドクター・ベシアを起用するわけかというシスコ。今度開発中の長期間用のホログラムドクター※10のモデルに、艦隊がドクター・ベシアを選んだというわけですというジマーマン。今のホログラムのモデルは誰がと聞くシスコに、私です、開発したのは私ですから自分を使うのが当然でしょうという。しかし名誉なことじゃないかとシスコにいわれ、大変光栄ですと答えるベシア。モデルになれば半永久的な存在となります、今のプログラムも何十年かは残るでしょうが、新しいプログラムはそれより長く使われるでしょうと説明するジマーマン。もちろん技術的な問題は残っていますという。3週間ほど滞在したい、研究室とメインコンピューターへのアクセス、機器をインストールしてくれる技師を一人付けてもらいたいと頼むジマーマン。副官のキラ少佐に伝えてくださいとシスコにいわれる。ベシアに、おめでとうドクター、ステーションのみんなもこのことを聞いたら誇りに思うに違いないというシスコ。ジマーマンにいくぞといわれ、ベシアも部屋を出ていった。 機器のチェックを行うオブライエン。これ全部に答えるんですかと驚くベシアに、私は細部まで徹底する主義でねというジマーマン。質問には例えば、5歳時の食習慣と比較して述べよ、10歳時、15歳時、20歳時、25歳時とある。長い期間医療に携わるんだから、患者と自然に交流できなければ困るというジマーマン。面白い逸話も少しは知っておいてもらいたいし、患者に食生活のアドバイスをする時も自分の経験から出たものをもっていなければというジマーマン。オブライエンはジュリアンの性格がホログラムドクターにも反映されるんですかと聞く。人間臭さを残すというのがこのプログラムのポイントだからねというジマーマン。考えてみろよ、プログラムができたら宇宙中で君にイライラさせられる人が出てくるんだぞとベシアに言うオブライエン。笑うベシア。仲良く冗談を言い合うのは置いておいて、オプティカルパラメータスキャンを始めていいかなというジマーマン。何をすればいいんですかというベシアに、手持ちの機械を当てる。真っ直ぐ立って測定に協力してくれ、医者らしくねというジマーマン。首の向きを直される。オブライエンはその様子を見て笑った。 ダボと叫ぶリータの声。抱き付いてくるモーン。ジュピターにはこういう遊び場はないな、ああいう女性もという2階のジマーマン。美人でしょというベシア。誰なんだと聞かれ、リータといって元彼女ですというベシア。ふったのは君かと聞き、ベシアがリータですというとますます気に入ったといい、リータを見つめるジマーマン。視線が合った。彼女にも面接を申し込まないといかんといい、パッドに書き込むジマーマン。友達や同僚や家族などの親しい人たちから話を聞く、ホログラムに心理的な肉付けをするために必要だという。ベシアがしかし家族については除外してもらいたいといおうとした時、オドーが話しかけてきた。アンテディーン貨物船※11が出航を1日早めたいといってきたのだが積み荷の検疫がまだで、健康証明があれば助かるという。わかった、10分後に第3貨物室で会おうというベシア。失礼といい、オドーは歩いていった。では仕事ですので、面接の件はできれば両親はやめてもらえませんかというベシア。なぜと聞かれ、正直言って両親とはうまくいっていない、もう何年も会っていないし面接対象から外していただけるとありがたいという。わかったよ、気持ちはよくわかるというジマーマン。すみません、では明日といって歩いていくベシア。だがジマーマンは、忘れずに両親に連絡を取ること、早いうちにとパッドに書き込んだ。 |
※7: ここでDS9を周回している連邦船は、イェーガー級 (Yeager-class) とされています。ヴォイジャーの円盤部にマキ船をくっつけたような形状。名前がないためエンサイクロペディアには載っていません
※8: 緊急医療ホログラム Emergency Medical Hologram ※9: 相変わらず starship を「戦艦」と訳しています
※10: 長期間用医療ホログラム Longterm Medical Hologram
※11: アンティードの貨物船 Antedean transport |
テスト用プログラムが起動される。無表情なホログラムのベシアが現れた。それを見つめるベシア。本人から見てのご感想はとジマーマンに聞かれて、ベシアはいいんじゃないんですか、ただ目に生気がないといってホロベシアの目を広げる。輝きが欲しい、前向きに人生に取り組むって感じがという。まだ試作品だ、完成品ではもっと目を光らせようというジマーマン。話すんですかと聞くベシアに、まだだという。まず古いプログラムのベーシックデータベースとソフト配列を読み込まなくてはといい、旧プログラムを起動させる。EMHが現れ、緊急事態の概要を述べたまえと言った※12。レベル3の診断中だというジマーマンに、わかりましたというEMH。ジマーマンは何も問題はないなといい、データの移送を開始せよとコンピューターに命じる。それを聞いて、私はお払い箱と慌てるEMH。新しい長期間用のホログラムができたんだというジマーマン。あいつですかと指差すEMH。データの移送が完了し、ホロベシアが緊急時の概要を述べたまえとしゃべった。あんな若造が、とても医者には見えないというEMHに、古いプログラムなんぞ消去してください、もう僕がいるんですからこんな時代遅れのプログラムは必要ないでしょうという。時代遅れ、とその言葉を繰り返すEMH。ジマーマンはそのことは今度話し合おうといい、パネルのボタンを押した。EMHは何か言おうとしたが、消えた。あまり僕らしくありませんねというベシア。態度が前向き過ぎかというジマーマンに、僕よりあなたに似ていましたというベシア。それはさっきも言った通り、ベーシックデータに古いプログラムのものを読み込んでいるからだというジマーマン。いずれはベシアのパーソナリティに基づいた新しいアルゴリズムを作る。君は見かけより頭は切れるんだろうね、僕はとろいのは嫌いだとベシアに話しかけるホロベシア。本人がそうなら仕方がない、友達の意見を聞いてからだというジマーマン。 面接が始まった。まずはシスコ。ドクター・ベシアに会った時の第一印象を包み隠さず教えてくださいというジマーマン。若くて野心的だった、医学部を出たばかりで、フロンティアにおける医療に情熱を持っていたというシスコ。時に段取りを無視して、情熱そのままに突っ走ってしまうこともあったという。つまり付き合いが難しい、と聞くジマーマン。いえ、でも時々自分の情熱に酔いしれちゃうんですというジェイク。ジマーマンは具体的に言ってくださいという。しゃべり始めると止まらなくなる時があると言うキラ。求めていないのにしつこくアドバイスするとかと聞かれ、ダックスはいいえと答える。でもあきらめは悪い方でしょうねというダックス。例を挙げてくださいというジマーマン。首をすくめるモーンに、あなたはもういいですという。私は医者は嫌いだ、どんな医者でもというウォーフ。ここで言ったことは絶対に漏れません、どんなことでもというジマーマン。本当でしょうね、ジュリアンには知られたくないというオブライエン。正直に言うと、素晴らしい友人ですという。名誉と規律を知る人間だし、ユーモアも思いやりもあるしと言うオブライエン。でもこれは内緒ですという。わかってますともというジマーマン。質問はそれだけと聞くリータ。実はもう一つあるんです、今夜一緒に食事をどうと誘うジマーマン。 クワークの店で、席につくロム。元気がない。ふと2階を見上げると、ジマーマンと話しているリータがいた。ロムは周りを伺い、耳たぶを向けて2人の会話を聞き始めた。ダボガールは結構大変なのよ、立ちっぱなしだし食事も短い時間だし、お客に気配りもしなきゃいけないし※13クワークは面白くない奴だしというリータ。ちらちらとロムの方を見ている。私は違うという。もちろんそうだ、君は魅力的な女性だというジマーマン。ダボガールにしてはねというリータに、そんなことはない、頭はいいし話は楽しいし、それにすごい美人だしという。ありがとうというリータ。そこへちょっと失礼、話があると言ってロムがやってきた。大切な話なんだという。微笑み、いいわよというリータ。ちょっと外していいかしらと聞かれ、動揺しながらもいいさと答えるジマーマン。ロムに近づき、話って何と聞くリータ。実はその、僕は君が、と言葉に詰まるロム。僕は君の部屋に、明日レプリケーターを直しに行ってもいいかなと言った。リータはがっかりした顔をし、いいわよ、明日の朝はいるという。明日の朝行くよ、じゃあ彼との食事を楽しんでというロム。ありがとうといいい、席に戻るリータ。また失敗したロムは、歩いて行った。 ステーションの空気の中に含まれるアーゴナイト※14の量が心配なんですと、シスコに話すベシア。100万につき17、安全基準は満たしているというシスコ。でも数値が上昇しているんでというベシア。そこへダックスが来て、ジュリアンに2人お客様が来てる、きっとすぐにでも会いたいだろうと思ってと言う。お通ししろというシスコ。中年の男女が入ってきた。2人を見て、嘘だろというベシア。ジュールス、元気といって、ベシアに抱き付く女性。男性もだ。大佐、紹介します、アムシャ※15にリチャード※16、僕の両親ですとベシアは言った。 |
※12: この場面には2人×2がいます^^; ※13: この辺りの訳は少し違う訳がされているようで、「ドム・ジョットはダボより面白く、リータが店を経営するなら最低3つのドム・ジョットテーブルと2つのプレイコ (prayko) アレーを置く」という内容のことをいってるようです。ドム・ジョット (dom-jot) はビリヤードに似たゲーム。TNG第141話 "Tapestry" 「運命の分かれ道」など。プレイコもゲーム ※14: argonite
※15: アムシャ・ベシア Amsha Bashir
※16: リチャード・ベシア Richard Bashir |
リチャードと握手し、ベンジャミン・シスコ大佐です、DS9へようこそというシスコ。ありがとうございます、ジュールスの仕事場を一度見てみたかったんですというアムシャ。前から来ようと思っていたのですが、仕事が忙しくてというリチャード。いずこも同じですというシスコ。ダックスがリチャードの仕事を尋ねる。いろいろやりました、今は建築の方を手がけてますと答える。公園など公共スペースの設計で、私が死んだ後も皆さんに楽しんでもらえると思うとやりがいがある、次の世代に対する遺産といったところですというリチャード。息子が一番の遺産ですがという。自慢の息子さんなんでしょうねというシスコに、そうなんですといいベシアの手を握るアムシャ。才能のある子なんで、ぜひいい方向に伸ばしてくださいというリチャード。厳しいご指導をお願いします、実は医者になれといった時も嫌がってという。じゃあお父さんが医者になれと薦めたんですかというダックス。そうです、ジュールスが本人がと話そうとするリチャード。だがアムシャはその話は後にしましょう、シスコ大佐はお忙しいでしょうしという。面接が終わってからでもというリチャード。面接と聞いて驚くベシア。ドクター・ジマーマンの、聞いてないかというリチャードに、聞いてないねという。とても重要なプロジェクトだから、2人揃ってすぐに来てくださいと言われたというアムシャ。今夜泊まるところを手配しなければいけないというベシア。ゆっくりしていってくださいというシスコ。ぜひ今度席を設けて、ジュリアンの特に小さい頃の話を聞きたいというダックス。リチャードは喜んで、小さい頃からきっと偉くなると思ってましたという。お父さん、大佐は忙しい方だからというベシア。またいずれというリチャード、アムシャとともにベシアも部屋を出ていった。 ホロベシアが壁にぶつかり、何度も同じ動作を繰り返している。それを見て笑うオブライエン。本物のベシアがやってきた。今試験中でねといい、ホログラムを消すオブライエン。チーフはずしてくれないか、ドクター・ジマーマンに話があるというベシア。出ていくオブライエン。面接はやめてくださいとお願いしたのになぜ両親を呼んだんですかと聞くベシア。悪かった、しかしご両親はというジマーマン。呼び付ける権利なんかないはずだというベシアに、招待状を出しただけだという。急ぐって言ったそうですねというベシア。事実私は急ぐのさ、親との面接は君の内面を知る上で欠かせない、じゃあ仕事があるので失礼するというジマーマン。 リータの部屋。風呂上がりのリータのところに、訪問者が来た。それは花を持ったジマーマンだった。悪い時に来ちゃったかなというジマーマンに、お花をもらうのに悪い時はないというリータ。ジマーマンを部屋に入れ、着替えてくるから座っててという。私の気を引こうとしてるなら大成功よといい、リータは奥へ行く。実は今朝ジュピターステーションの同僚と話をしてみたんだけど、ステーションのカフェの経営者が年で店を閉めることにしたというジマーマン。鏡で髪形を整える。新しい人を探している、できれば外食娯楽施設で経験のある人、君みたいなという。それで勝手だとは思ったけど、ジュピターの司令官に君のことを話したら大喜びで、任せたいといっていると話すジマーマン。カフェを任せてくれるのといい、ジマーマンに近寄るリータ。だがリータは何もまとっていなかった。あら、失礼というリータ。いいんだよというジマーマン。リータは花を受け取る。クワークの店の半分くらいの小さな店だが、ドム・ジョットのテーブルくらいなら置けるというジマーマン。服を着ながら戻ってきたリータは、レストランの経営なんてやったことないし、バーの切り盛りだって知らないという。前のバーテンだってそんなもんだったというジマーマン。やっていけるかしら、だって知ってる人も一人もいないしというリータ。僕がいるだろ、住むところも僕の部屋に来ればいいというジマーマン。会ったばかりでしょ、そりゃ嫌いじゃないけどというリータに、今はその気持ちで十分だ、そのうちに気持ちが育ってくるかもしれないというジマーマン。僕みたいにね、知的な男が好きだっていったろ、自分で言うのもなんだけど僕は優秀な男だという。笑うリータ。僕と一緒においで、後悔はさせないから、君が好きだというジマーマン。リータの手を握る。少し考えさせてくれると頼むリータ。ああ急がなくていいといい、ジマーマンは出て行った。 両親と食事をしているベシア。だがベシアは食が進まないようだ。シスコ大佐はとても感じのいい方ね、ジュールスというアムシャ。乗ってきた船の船長とは大違いだ、実に不愉快な船長だった、私がシャトル乗りだった頃は客にあんな失礼なことは絶対しなかったというリチャード。でまかせはやめてよ、父さんはたった半年間添乗員をやっただけだろというベシア。ああそうだ、しかしお客様は大切にしてた、万が一お客様をにらみでもしたらすぐ首になったというリチャード。なったんでしょというベシアに、違う、辞めたんだという。今でも研究を続けているのと聞くアムシャ。今は神経節細胞群でのプリオン複製※17について、2つ研究をしているというベシア。研究は地球でもできる、5年前にもそういったらフロンティアで医療に従事したいからだって、生意気言いおってというリチャード。DS9なら両方できるというベシア。ところで父さんは今、建築設計をやってるんだってという。夢中でやってるのよ、家中父さんの書いた設計図だらけで、まるでアトリエに住んでいるみたいというアムシャ。実は有力者が私の設計に注目してるんだ、将来の見通しは明るいというリチャード。父さんはいつもそういうけどさ、それが実現したことはなかったよねというベシア。何も言わないリチャード。明日に予定されてる面接のことを教えてちょうだい、どんな質問をされるのかしらというアムシャ。精神構造を隅から隅まで知りたいらしい、いろんなことを聞かれるだろうけど余計なことは言わないで、要点だけを話すようにというベシア。不用意な一言から追及が始まる恐れが多分にあるという。うまくやるよというリチャードに、もっと真剣に考えてくれ、ジマーマンは子供時代のことを根掘り葉掘り聞くだろうというベシア。親を信じないのかというリチャードに、ジュールスはそんなこといってないというアムシャ。でも内心はそう思ってる、私たちが口を滑らせたら大変なことになるってというリチャード。一生がかかってる、もしジマーマンにあの秘密を知られたら、医療士官としてのキャリアはおしまいだというベシア。キャリアが心配なのか、親はどうなんだ、刑務所送りになる、それはどうでもいいのかと怒鳴るリチャード。ベシアはもちろんそれも考えた、だから面接を軽く考えるなといったという。軽くなんて見てないよな、私はどうせ馬鹿だ、自分たちより知能が劣ると思って親を信用してないんだというリチャード。だからこの3年僕は帰省しなかったんだといって、ベシアは出ていく。止めようとするアムシャ。いいからほっとけ、親と一緒の部屋にはいたくないんだとさというリチャード。部屋を出たベシアは、その場に座り込んだ。 |
※17: prion replication in ganglionic cell clusters 「事前複製についてと神経節細胞群について」と誤訳。プリオンは DS9第102話 "Nor the Battle to the Strong" 「戦う勇気」でも言及 |
まだ気持ちは決めてないんだけど、今度の話は大きなチャンスだと思うのとロムに話すリータ。でも焦ってやることないし、どうすればいいと思うとアドバイスを求める。僕、わからないとロムは言った。もしここにいる理由があるならば残るわ、私に理由があるかしらと尋ねるリータ。またわからないと答えるロム。それなら話を受けてみようかしらというリータだが、ロムは「だね」としか言えない。言うことはそれだけなのといわれまた言葉につまるロムに、わからないのねというリータ。ありがとうロム、すごく参考になったわといい、リータは歩いて行った。小声でどういたしましてというロム。 医療室のベシアのところに、両親がやってきた。何か用でもというベシア。お父さんが話したいことがあるんですって、リチャードと急かすアムシャ。夕べはつい勢いに負けて言わなくてもいいことを言ってしまったというリチャード。あなたのキャリアをだいなしにすることだけは絶対しないとアムシャは言う。誤解のないように付け加えておくが何も言わない、ジマーマンに何を聞かれようが絶対秘密は守るというリチャード。お前が子供の頃遺伝子操作を受けたってことはな、と言った。信じて、私たちは25年も秘密を守ってきた、遺伝子操作を受けたことはこれからも秘密よというアムシャ。一つだけ言っておくが当局の宣伝なんかに惑わされるな、遺伝子操作は何も恥じるべきことじゃないというリチャード。お前は人間以下なんかじゃない、逆に人並み以上だという。けんかするために来たんじゃないとリチャードに言い、家族で力を合わせて乗り切りましょうとアムシャはいった。わかった、と答えるベシア。アムシャはキスをする。2人は出ていった。考え込んでいる様子のベシア。奥からオブライエンとジマーマンがやってきた。「あの2人は誰です」とベシアは言った。ホログラムだったのだ。オブライエンが操作し、その場から消えた。2人が出ていった方を見ながら、ためいきをつくジマーマン。 罠にはめるなんて卑怯じゃないかというベシア。わざとはめたんじゃない、プログラムを試してたらご両親がが来て、ジマーマンは予期せぬ事態にどれだけ対処できるかを見るいいチャンスだと思ったらしいというオブライエン。両親が何も気づかないことをいいことに、後ろでせせら笑ってたんだろうがと怒るベシア。そりゃ悪かったとは思う、こんなことになっちまって、でも今は何とか手を打たないといけないというオブライエン。そのことは話したくないというベシア。ジュリアン、ジマーマンは報告書を出す気だぞというオブライエン。ドクター・ベシアはコンピューターモデルふさわしくない、なぜなら幼少の頃遺伝子操作を受けた疑いがあるからだと。このことが艦隊医療部に伝わったらどうなると思うと聞くオブライエン。公式に調査が行われる、そうしたら僕は艦隊にはいられなくなる、免職だろうというベシア。じゃあほんとなのか、君はというオブライエン。ベシアはそうだ、僕という人間は自然じゃない、人工的に作られた存在なんだといった。怪物さ、いや化け物だ、そう呼ばれたってしょうがないという。6歳の時、背も低く運動も勉強も苦手だったという。小学校に上がってみんなコンピューターで読み書きを覚えているのに、ベシアは文字どころかイヌとネコの区別もつかないような子供だった。全然勉強についていけなかった。自分が遅れているのはわかっていた、友達には簡単に理解できるようなこともちんぷんかんぷんだったという。なぜかはわからず、わかったのは両親が自分にがっかりしていることだけだった。いつだったかよく覚えていないが、確か7歳になる前にアディジオンプライム※18に連れて行かれたと言うベシア。最初病院で大勢の異星人を見て興奮したのを覚えているという。早速入院し治療が始まり、それから人生が180度変わった。どんな治療を受けたんだ、DNAの配列を変えたのかと聞くオブライエン。専門的に言うと神経のクリティカルパス形成を促進※19したんだ、2ヶ月の治療で遺伝子構造を操作して大脳皮質の中に新しい神経系が成長するようにしたと説明するベシア。そして新しいジュリアン・ベシアが誕生したと言った。どういうところが変わったんだと聞くオブライエン。もちろん知能の飛躍的な向上が第一、IQは毎日5ポイントずつ上がっていったという。運動機能も、手と目の連携、スタミナ、視力、身長や体重、最後には名前まで新しいものになったと言うベシア。地球に戻って別の街に行って新しい学校に入った、両親がどこからかもってきた偽の記録を使ってだ。クラスのお荷物だった僕が優等生に変身したのさという。誰も怪しまなかったのかというオブライエンに、できる人間は疑われないものなのさという。そして僕は振り返るのをやめた、でも実態は詐欺師なのさとベシアは言った。オブライエンは詐欺師じゃない、どれくらい遺伝子操作を受けたのかは知らないが君のその向上心や性格や情熱は遺伝子操作によるものじゃないという。それは人間としての特質だという。艦隊は思ってくれないだろうな、重大な疾患を除いてはDNAをいじることは違法とされている、遺伝子操作を受けた人間は艦隊で勤務できないんだ、ましてやドクターはと言うベシア。ここ100年間遺伝子操作に関する事例はなかった、だからまだわからないじゃないかと励ますオブライエン。気休めはよしてくれ、このことがばれれば僕は艦隊から追放だ、決まってると言うベシア。そんなに簡単にあきらめるなよなというオブライエン。ベシアは一つだけできることがあるといい、ジマーマンが報告を出す前に辞職すると言った。おいジュリアンというオブライエンに、もういいんだ、いつかはこうなると思ってた、覚悟はできてるという。気持ちは嬉しいけど一人にしてくれと言うベシア。オブライエンは出ていった。 |
※18: Adigeon Prime ※19: accelerated critical neural pathway formation |
一人座っているロム。ちゃんと気持ちを伝えれば良かったという。片づけをしているクワークが、伝えなくて正解だ、ノーグの母親とはどうなったという。どうだ思い出したくもないだろう、あの教訓を忘れたのかという。お前がプリナドーラ※20の親父に結婚の5年契約を申し込んだのは子供が欲しかったからだ、単純な契約だという。お前がプリナドーラにほれたので、契約延長のサインをした。しかもべたぼれだったのでサインの前に契約延長の書類を読まなかったというクワーク。結局プリナドーラの親父は有り金を持っていくし、プリナドーラは金持ちの男に乗り換えた、ロムにノーグを押し付けて。恋なんかくそ食らえだといい、ロムの横に座る。リータはプリナドーラとは違うというロム。リータも女だ、女はトラブルのもとっていうのが宇宙の鉄則だ、寂しいならいいホロスイートのプログラムがあるというクワーク。ふところからアイロリニアロッドを取り出し、「ヴァルカンの愛の奴隷パート2 復讐の巻」※21という。試してみろよ、2時間も遊べばリータなんか忘れるってと薦める。ロムの肩を叩き、クワークは歩いていった。そのロッドを見つめるロム。 このまま手をこまねいているわけにはいかない、すぐに弁護士を手配しようというリチャード。惑星連邦最高裁※22まで争ってやるという。勝てるはずないよと言うベシアに、そういう弱気な態度はやめるんだ、キャリアを守りたいならなという。お父さんの言う通りよ、がんばらなきゃというアムシャ。ベシアは何で僕の言うことを聞かないんだ、裁判を起こす気はないという。お前の戯言を聞いてる暇はない、私たち家族の危機なんだ、ぐずぐず言ってないで新しい計画を練らないといけないというリチャード。そうだね、新しい計画を練ろう、うちはいつもそうだった、問題を正面から見ないで次の計画に逃げるというベシア。仕事が気に入らなければ次へいく、法律が気に入らなければ抜け道を探す、しかし自分では絶対責任は取らないという。才能があってあれだけ実績を上げて、なのになぜ子供っぽい態度をとるんだというリチャード。一人前の大人らしく振る舞え、でないと全てを失うんだぞという。全てを失うのは父さんだろ、父さんが世間に自慢できるものは一つしかない、僕だというベシア。父さんは僕が次の世代に残す一番の遺産だといった、でもそれはまがいものだ、あなたと同じという。私はお前の父親だぞ、親に向かって何て言う口を利くんだというリチャード。確かに親だった、今は僕の設計士だ、出来の悪い息子が嫌で優秀になるようにって造り替えた人だとベシアはいった。でも残念だね、もうおしまいだという。ひとごとみたいにそう親を批判できるものだな、今の自分を誰のおかげだと思っているというリチャード。落ちこぼれの人生から救ってやったんだぞとという。落ちこぼれのままだったとは限らない、僕はまだ6つだった、それなのにもう落ちこぼれだと決めつけてというベシア。ジュールス、お前は何一つわかってないというリチャード。ベシアは立ち上がり、わかってないのは父さんだ、僕は15の時から自分をジュールスって呼ぶのはやめた、僕はジュリアンだという。たかが名前じゃないかというリチャード。名前だけじゃない、中身も違う別の人間だ、ジュールスはあの時病院で死んだんだという。父さんや母さんが馬鹿でみっともない息子はいらなかったからと叫ぶ。それは違う、お前を恥だと思ったことはなかったというアムシャ。ごまかさないでくれよと言うベシア。お前は子供がいないからわからない、かわいい息子が友達より少しずつおくれをとっていく時の気持ちが、というアムシャ。懸命に努力しているのに負いつけないお前がとにかく不憫で、毎晩眠れないまま考えたという。私のせいだろうか、妊娠中胎児に良くないことをしただろうか、不注意だったろうか、何かお前によくないことを知らず知らずのうちにしたのだろうか。リチャードが止めようとするが、どうしても言っておきたいというアムシャ。私たちを責めても構わない、倫理に背くし違法行為だったかもしれないがこれだけは知っておいて欲しいという。お前が恥だからしたんじゃなく、息子だから、愛していたからとアムシャはいった。ベシアと抱き合った。して欲しいことはないのというアムシャ。ベシアは何もといい、シスコ大佐に会いにいって事情を説明し、艦隊には辞表を出すという。お前は本当にそれでいいのと聞くアムシャ。ええ、静かにこのステーションから出て行きたいとベシアは言った。 司令官室に入るベシア。丁度君のことを話していたんだというシスコ。リチャードとアムシャがおり、そして連邦の提督のホログラム通信の映像もだ。提督にベシアを紹介し、こちらベネット少将※23、法務総監※24であられるというシスコ。これはどういうことですかと聞くベシア。ご両親が私に会いに来られて、君の遺伝子操作の経緯を説明してくれたというシスコ。そこで提督に連絡を取ったという。これからも君は医療士官として勤務できる、お父さんのおかげだというベネット。刑務所※25へ行くとリチャードは言った。2年間だ、ニュージーランドの刑務所で服役してくるという。そんな馬鹿なと言うベシア。お父さんから申し出なんだ、遺伝子操作の有罪を認める代わり君の身分はそのままとなったというベネット。父親を犠牲にしてなんてちっとも嬉しくないというベシアに、ジュールス、ジュリアン、いいんだというリチャード。もう決めたんだ、治療を受けさせたのは私だという。責任を取るのが当然だろというリチャード。言う通りにさせてあげてというアムシャ。2年間も厳し過ぎませんかというベシアに、そんなことはない、200年前人類は遺伝子操作によって優秀な人類を生み出そうとしたというベネット。その結果が優生戦争※26だ。カーン※27たち遺伝子操作によって作り出された人類を超えた人類は、知能と共に権力への飽くなき欲求も増幅されていた。遺伝子操作を禁じる法律はそのために作られ、私はその法律を守っていくつもりだとベネットは言った。あの条件で承知するかねと聞かれ、リチャードははいと答えた。地球に戻ってきたら艦隊本部まで出頭してくれと言うベネット。通信を終えた。ベシアにゆっくりでいいぞといい、シスコは部屋から出て行った。 ※28エアロック。アムシャと抱き合うベシア。じゃあねジュリアンというアムシャに、ええ母さんという。2年後に会おうというリチャード。刑務所にだって面会日くらいあるでしょう、もし行けたらというベシア。リチャードは待ってるぞといい、抱き合う2人。中に入っていくリチャードを呼び止め、ベシアはありがとうと言った。気にするなって、刑務所にいる間はたっぷりあるから設計の腕に磨きがかけられるというリチャード。アムシャと手をつなぎ、船に乗り込んでいった。歩いて行くベシア。 そこへ到着したターボリフトから、荷物を抱えたリータとジマーマンが降りてきた。そして「待ってくれー」という遠い声。何の音だというジマーマン、何かしらねというリータ。だんだん近づいてくる。それは駆けつけたロムだった。彼がわめいてたのかというジマーマン。リータ頼む、行かないでくれと言うロム。何でよというリータ。何でって、好きなんだ君が、そばにいて欲しいんだとロムはいった。荷物を落とし、私もあなたが好きよロムというリータ。口付けを交わした。決まりの悪そうなジマーマンに、ドクター、本当にごめんなさいというリータ。ロムは放心状態だ。いいんだ、真実の愛は勝つものさというジマーマン。ぜひ幸せになって、祈ってるという。あなたって優しくて思いやりのある人ね、きっと素敵な人が待ってるわ、保証するというリータ。そうは思えないな、やはり私には研究に打ち込む人生が似合ってるのかなというジマーマン。そこへエアロックに入る、異星人の女性がいた。専門分野で活躍するんだ、私なら心配しないでといいジマーマンも中に入る。ロムと抱き合ったまま、じゃあねというリータ。その女性に、カーマストーラ※29っていう古典をご存知ですか、8世紀に書かれたヒンズーの…と話しかけながら、ジマーマンは乗り込んでいった。 ダボガールの仕事をするリータ。その奥でベシアとオブライエンが、再びダーツをしている。今日はだめだと言うベシア。今週はだろというオブライエン。そうだチーフ、この前のお礼もまだ言ってなかったというベシア。よしてくれよ、真剣勝負の真っ最中にというオブライエン。ダーツを投げる。また君の勝ちだなと言うベシアに、どうだい差がついたろうという。オブライエンはちょっと待てと言い、お前もしかして勝ちを譲ってないかと聞いた。なんでそう思うんだいと聞くベシア。だって運動機能も遺伝子操作で強化されてるんだろうというオブライエン。手加減もしたけど少しだよと言うベシア。何て野郎だ、手加減なんかされたくない、同じレベルでできると怒るオブライエン。わかってるよというベシアに、なら勝負しよう、本気で勝負だという。そしてベシアが3本投げた。オブライエンがダーツに近寄る。その3本は、全てど真ん中に刺さっていた。わかった、これからはお前はここから投げろといい、ベシアを離れたところに立たせるオブライエン。それでもだめなら、お前は目隠ししてやれと言った。※30 |
※20: Prinadora
※21: Vulcan Love Slave Part II: The Revenge ※22: Federation Supreme Court
※23: Rear Admiral Bennett
※24: Judge Advocate General
※25: 連邦刑務所 Federation Penal Settlement
※26: Eugenics Wars
※27: カン Khan ※28: ネビュラ級の船が停泊しています ※29: Kama Sutra ※30: ギャラクシー級1隻、エクセルシオール級2隻の姿。以前の映像の使い回しです |
感想
ジマーマン博士やベシアの両親の登場といったトピックもありますが、何といってもベシアが幼い頃に遺伝子操作を受けていたという衝撃の事実! スタートレックではTOSの頃から「悪」とされてきた技術ですが、これはまさに今研究が行われている分野でもありますよね。それを人にも、いや人以外の生物でさえ使っていいものか…。それにしても最後のダーツは、文字通り人を超えた腕ですね^^; |
第113話 "By Inferno's Light" 「敗れざる者(後)」 | 第115話 "A Simple Investigation" 「オドーの恋」 |