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ディープスペースナイン エピソードガイド
第97話「クワーク、絶体絶命」
Body Parts

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・イントロダクション
※1司令室。身重の体なのに、行かせるべきじゃなかったと不安な顔をするオブライエン。ウォーフはケイコならベシアとキラが一緒だから心配ないという。ダックスはケイコのことだから、止めても聞かないという。トラッド5※2の植生を調べるのは長年の夢だったんだから、たったの3日で帰ってきてくれるのは御の字だという。ガンマ宇宙域に3日もだなんて、先週も大変だったんですというオブライエン。ケイコはベイジョーのアンダラー※3の断崖に生えている、キノコの標本を採りに行くと言い出したのだ。キノコのために崖くだり、妊娠中だということをすぐに忘れるとぼやくオブライエン。体重が増えたりつわりがきたり気持ちが不安定になったり定期検診を受けたり、忘れようにも忘れられないというダックス。オブライエンは仕事があるといい、歩いて行った。
クワークの店は今日も大盛況だ。クワークが客に声をかけながら店に入ってくる。ダボテーブルからは大当たりという歓声が上がる。クワークはカウンターに座っていたロム※4に抱き付き、また会えて嬉しいという。カタツムリジュース※5はどうだというクワークに、1杯だけ、後33分で勤務なんだというロム。クワークはトールグラスにしよう、お祝いだから店のおごりだという。何のと聞くロム。俺が2週間の帰省から戻ってきたからだ、寂しかったかと聞くクワーク。寂しかったと答えるロム。クワークはそれならお祝いの理由は2つだという。ロムはジュースを飲み、味は完璧だという。帰省はどうだった、ネズミの皮※6の取り引きはと尋ねる。クワークは契約は結んだ、こっちの取り分は15%だったという。さすが、マミーに会ったと聞くロム。クワークは元気だった、よろしくといってたという。ほかに何をしたのと聞かれ、クワークはネズミの皮の取り引き、買い物、そして聖なる市場に巡礼してきたという。それから大ニュースがあったんだというクワーク。急に涙声になり、俺死ぬんだってさと叫んだ。一斉に振り返る店の客。何見てやがんだ、死にかけの男を見たことがないのかとクワークはいった。

※1: シスコ役、エイヴリー・ブルックスの監督作品です

※2: Torad V

※3: Undalar

※4: Rom DS9第88話 "Bar Association" 「ロムの反乱」以来の登場。同エピソードでベイジョーの保安部勤務になりました

※5: カタツムリのジュース snail juice "Bar Association" にも

※6: vole bellies ネズミ (vole) は DS9第37話 "Playing God" 「宇宙の原型」に出てきたカーデシアのハタネズミ


・本編
死ぬって何でと聞くロム。クワークは年に一度受けている、健康診断の結果が来たという。ドレク症候群※7以外は正常だったという。だがそれは不治の病なのだ。滅多にない病気で、発病するのは500万人に1人の割合だというクワーク。その1人に当たるとはという。それでどれくらいもつのとロムに聞かれ、クワークはドクター・オーパックス※8はあと6日、もって7日だろうといっていたという。ロムは間違いないのというが、オーパックスはフェレンギでも最も高い医者の一人で、待合室に入るだけでもラチナムコイン※9を2つも取るという。兄貴が死ぬなんて嫌だ、ほかの医者にも診てもらおうというロム。ドクター・ベシアがガンマ宇宙域から帰って来たらというが、クワークは金を取らない医者なんて信用できないという。それに地球人の医者がドレク症候群を知ってると思うかという。じゃあほんとに死ぬのかいとうめき声を上げるロム。6日で身辺整理をしないといけない、遺言やマミーへの年金や葬式の手はずも整えて、借金も返さなきゃというクワーク。すごい額だよというロム。だが半分は地球人とベイジョー人とクリンゴン人が相手だからなという。ロムは金儲けの秘訣17条、「契約は絶対に破るなかれ、相手がフェレンギ人である限り」※10という。クワークはその通りだ、とはいえ半分でも凄まじい額だからなという。クワークはフェレンギ先物取引所※11で死んだ後の体を競売にかければ売れるという※12。俺の体なんか誰も欲しがらない、恐い母親と馬鹿な弟のいる無名のバーテンだというクワーク。でもグランド・ネーガスになったというロムに、1週間なという※13。運が良ければフェレンギの経済年鑑の脚注くらいには載るだろうがというクワーク。ロムはステーションにいながら政権交代を予見したという。おかげで惑星連邦にべったりというイメージを与えてしまった、フェレンギ星※14じゃ笑い者さというクワーク。宇宙艦隊のお気に入りのバーテンダー、シンセホールキングだと呼ばれているいう。DS9じゃ尊敬される実業家で、社会に貢献し友達だって大勢いるというロム。地球人みたいな戯言を抜かすな、大事なのは同胞の評価だけだとクワークは言う。同じフェレンギの商人のな、だがみんなには俺は二流の、実績のない商人に過ぎないという。歩いていくクワーク。ロムは何言うんだ、そんなことないと叫んだ。見てなよ、そこのコンピューターからフェレンギ先物取引所に遺体の売り出しをかけてごらんという。きっとフェレンギ同盟中から買いが殺到する、みんな兄貴の一部を机に飾りたがるというロム。もしかして持ち切れないほど注文がきちゃうかもという。クワークは嘘つきだな、でも嬉しいぜという。ロムは無理矢理コンピューターの前に連れて行き、自分がどれほどの値が付くか知ったらもっと前に死んどけば良かったと思うという。今のは例えだと付け足した。クワークはパネルを操作し、画面には自分の写真が映し出された。
何かがワームホールから出てくると報告するダックス。スクリーンに表示させ、拡大するシスコ。それは火を吹いているシャトルだった。ヴォルガ※15です、故障していますというウォーフ。ベシアは医療室への緊急転送を要請しており、患者は2人だという。キラ少佐とケイコ・オブライエンですと言った。唖然とするオブライエン。
医療室に駆けつけるオブライエン。キラが治療を受けている。ケイコはまだ手術中だが、命に別状はないというキラ。赤ちゃんはと聞くオブライエンに、キラはいうのをためらう。だめだったかとうなだれるオブライエンに、赤ちゃんは無事よという。何も心配はない、赤ちゃんは引越ししただけという。引越しと聞き返すオブライエン。キラは自分のお腹を見て、毛布を取った。そのお腹は妊娠したように大きくなっている。あなたの赤ちゃんはここよとキラは言った。言葉のでないオブライエン。

※7: Dorek syndrome

※8: Dr. Orpax

※9: slip

※10: No.17 "A contract is a contract is a contract. But only between Ferengi."

※11: Ferengi Futures Exchange

※12: 死ぬと体が分けられ売られることは、DS9第26話 "Melora" 「エレージアン星人」などで触れられました

※13: DS9第11話 "The Nagus" 「宇宙商人フェレンギ星人」より

※14: フェレンギナー Ferenginar

※15: U.S.S. Volga ダニューブ級、NCC-73196


状況の説明を行うベシア。もう少しで小惑星帯を抜けるという時に、ディフレクターが動かなくなってしまったという。大きな岩がぶつかってきて燃料室が爆発し、ケイコは壁に叩き付けられた。脳震盪に肋骨の骨折、内出血も激しく、母体は安定させられたが胎児の心音が落ちてきたと話すベシア。そこで移さざるを得なくなったが、キラ少佐と僕だけだったという。正しい判断だったというシスコ。オブライエンは少佐がベイジョー人なので、地球人の子を身ごもれるのかと聞く。ベシアはキラのエストロゲンとプロゲストロンの分泌を促した上に、胎児がベイジョー人の栄養源を新陳代謝できるように大量のタソキーネ※16を投与したという。シスコに支障はないんだろうといわれ、そうですと答えるベシア。ケイコが回復して胎児を戻せるのはいつなんだと聞くオブライエン。ベシアは1、2日で立てるようになるが、赤ちゃんはキラ少佐が出産することになると言った。ベイジョー人の妊娠期間は5ヶ月もなく、血管の発達が早く母子は複雑で緊密な血管網を形成するという。ケイコに胎児を戻そうとすれば、キラに大量の内出血が起きてしまう上に、胎児の呼吸器にダメージを与えるという。じゃあつまり、少佐が僕の子供を産むってことかとオブライエンは言った。※17
コンピューターのパネルを見つめるクワーク。ロムが部屋にやってくる。何の用といい、買いがたくさん来ているか聞くロム。たくさんとは言えないといいパッドを操作するクワーク。その数は1つだ。遺体を丸ごと、ラチナムの延べ棒17本に板※183本にコイン5個で引き取るという内容で、太っ腹だと喜ぶロム。クワークはこんな安い値しか付かないなんて侮辱だ、今思い出したがこの値段はお前の貯金を全部下ろした額と丁度同じだなという。ロムは笑い、すごい偶然だなという。同情なんかいらないと怒るクワーク。ロムは同情ではなく、兄貴の思い出になるものが俺も欲しいという。クワークはやめとけば良かったという。諦めるのは早いというロムに、買い手なんかつかないという。俺の人生は間違いだらけだった、馬鹿だったというクワーク。こんなカーデシアのステーションでバーを開くなんて、信じられないという。その時コンピューターに反応があった。買いが入ったのだ。その額は何とラチナムの延べ棒500本というものだった。板にすれば1万本、コインにすれば100万個だ。買い手は匿名になっており、俺じゃないというロム。マミーかなというロムに、内臓1個ならともかく丸ごとでここまではしないだろうというクワーク。一体誰だ、どこの誰が延べ棒500本も出す気になるんだという。クワークはグランド・ネーガスだと言った。間違いない、いつも可愛がってくださったという。都合のいい時に利用しただけという気がするというロムに、愛情があればこそ利用したが公表はできない、だから匿名にしたんだという。感謝の印に破格の高値を付けてくださったんだとクワークは言う。ロムはそうは思えないが、誰だって構わないという。もっと値が釣り上がってくれれば助かるというが、クワークはそんなことは期待できないという。即答しないとグランド・ネーガスは気が変わってしまうかもしれないという。そしてパッドを操作し、落札した。おめでとうというロム。クワークはここまで来るのに一生を費やしたが、最後に勝って死ねて嬉しいと笑った。
キラがケイコ※19のところにやってくる。ケイコはベッドの上に座っている。気分はどうと聞かれ、10トンの岩に跳ね飛ばされたみたいというケイコ。ジュリアンは明日には立てるといってるけど、あなたはどうと聞く。平気よ、でも体が重たいけどというキラ。赤ちゃんを引き受けてくれて感謝している、何てお礼を言ったらいいのかというケイコ。キラはケイコの手を取り、お腹に触れさせた。これはあなたの赤ちゃんよという。ケイコは笑った。
クワークはマミーに借金を返しても、まだ後196本残るから、それでおじのゴラッド※20といとこのゲイラ※21に借金を返すという。ロムがパッドで計算を行っている。次は葬式の段取りだといっているところへ、ベシアが来てクワークを呼んだ。それに気づかず話しつづけるクワーク。葬儀はホロスイートで執り行い、入場料を一人コイン2個取るというクワーク。それはどうかと思うというロムに、じゃあ3個にしようという。さらに呼ぶベシアにやっとで気づき、近づくクワーク。ベシアはフェレンギ星のドクター・オーパックスから妙な通信が入ったという。申し訳ないがドレク症候群じゃなかったと伝えてくれという内容だ。つまり死ななくて済むんだというクワークとロム。あのドクター・オーパックスの野郎訴えてやる、誤診しやがってというクワーク。感激の声を上げ、死なずに済むんだと言った。
クワークの部屋。寝ているところに何度もチャイムを押す者がいる。ライトを点け、迎え入れる。そこにいたのはFCAのブラント※22だった。また抜き打ちの会計監査かよというクワークに、今夜立ち寄ったのは買った品物のチェックだという。何のことだというクワークに、もちろんお前のことだ、遺体丸ごとラチナムの延べ棒500本で買い取ったんだ、引き渡してもらうというブラント。お前が匿名の買い手かとつぶやくクワーク。ブラントは誰だと思ったんだ、ネーガスでもと聞く。クワークは笑い、まさかという。でもお前だとは思ってなかった、まだあの吉報を聞いてないみたいだなという。ドレク症候群が誤診だということなら知っているというブラント。じゃあ何で来たんだというクワークに、だから契約の念押しに来たという。6日以内にお前の遺体を乾燥処理したディスクを、52個全部もらえることになっているという。契約は契約だ、品物は必ず引き渡してもらうぞとブラントは言った。うろたえるクワーク。

※16: tesokine

※17: 実はこれは、キラ役のナナ・ヴィジターがこの時期に第二子を妊娠したためです。父親はベシア役のアレキサンダー・シディグ

※18: strip DS9第32話 "The Alternate" 「流動体生物の秘密」

※19: Keiko O'Brien DS9第91話 "Hard Time" 「つくられた記憶」以来の登場

※20: Gorad 吹き替えされていません

※21: Gaila これまでは名前しか登場したことがありません。DS9第74話 "The Way of the Warrior, Part II" 「クリンゴンの暴挙(後)」など

※22: Brunt (ジェフリー・コムズ Jeffrey Combs) フェレンギ会計監査局の監査官。"Bar Association" 以来の登場


はっきり言っておくが、俺は死なないというクワーク。ブラントははっきり言っておくが、そんな事はどうでもいい、今からお前の遺体をどうしようか楽しみしているといい、椅子に座る。聞いてみたいかという。クワークはわかったといい、代金を全額返した上に迷惑料としてラチナムの延べ棒5本を上乗せさせてもらうという。いや失礼、10本だという。何も言わないブラントに12本だ、それ以上は出せないという。まだ何も答えないブラント。もう遅いしあんたも長旅で疲れてるんだから、欲しい額をいって帰ってくれというクワーク。ブラントは欲しいのはただ、乾燥処理されたお前の遺体のディスクの52枚の丸ごと全部だと言った。だからまだ俺は死なないんだよと笑うクワーク。だが笑いを止め、どうしろって言うんだ、自殺しろとでもと聞く。ブラントはそんなことは言わない、誰かに殺してもらえという。できれば首を絞めてもらえ、遺体に傷が付かないからなという。本気じゃないだろというクワークに、契約した以上契約は守れというブラント。よくわかっている、しかしこういう状況で契約といわれてもなというクワーク。ブラントに顔を近づけ、俺たちはクリンゴン人じゃない、ビジネスマンだろという。これはビジネスじゃない、お前には恨みがあるんでねとブラントは言った。なぜだと聞くクワークに、わからないのか、それでよくロムを馬鹿呼ばわりできるなというブラント。お前が私にしたことはたいしたことじゃない、ちょっとした迷惑だという。母親をFCAの監査から守ったり※23、ストライキに訴えた従業員どもと裏で妥協したり※24といったことだが、俺は甘い顔をする奴は許せないとブラントは言う。私がお前を嫌うのは特に何かしたからじゃない、普段していることがすべて気に食わないという。バーテンだからかというクワークに、違う、博愛主義者だからだという。何を言っているんだというクワーク。バーの客に付け払いを許しているだろうというブラント。従業員のチップから30%しかピンはねしていないし、ベイジョーの亡命者には食べ物や薬を原価で売っているという。言いがかりだ、ちゃんと少しは上乗せしているというクワーク。同じことだ、寛大で人道主義的で儲けを度外視しているというブラント。制服を着ていない艦隊士官と同じだ、お前みたいのがいるから我々フェレンギのビジネスマンの評判が落ちるという。クワークは客からの取り立ては厳しくするし、従業員の休暇は全て取り消しにするという。休暇までやってたのかと驚くブラント。やってたわけじゃない、従業員が積み立てていた基金を上手に運用してと話すクワークだが、ブラントは吐き気がするといって出て行こうとする。クワークは前に立ちふさがり、あんたの言う通りだという。だけど妥協できる方法があると思う、自殺を図る以外にという。もちろんある、お前が契約を破棄すればいいというブラント。同胞との契約を破ることはありえないというクワーク。ブラントはお前にフェレンギ魂が残っているとは思えない、契約を破棄すればお前とお前の家族がフェレンギ星に所有している財産は全て没収され、母親は着の身着のまま身一つで生活することになるという。一緒に商売をしようと声をかけるフェレンギ人もいなくなり、フェレンギ社会からはじき出されるという。クワークはフェレンギが大好きだ、フェレンギ人といると落ち着くしなという。そうか、しかし私たちはお前とはいたくない、フェレンギの恥で言わば耳たぶにできた腫れ物のようなものだとブラントは言った。お前を切り捨てることは義務だといい、笑いながらブラントは出ていった。
ケイコは何とか立てるようになった。オブライエンに付き添われながら、歩く練習をしている。ドッキング準備、エンジン出力2分の1、そうだといいながらケイコを椅子に座らせるオブライエン。素晴らしい着陸です、また飛びたくなったらいつでもどうぞというオブライエンに、しばらくはおとなしくしているというケイコ。今日はキラ少佐に会ったと聞く。司令室で会ったというオブライエンに、ケイコはディナーに招待しようと思っていることを話す。それはいい、毎晩来てくれるように頼んでみようかというオブライエン。ケイコはたとえ毎晩来てくれても全然足りない、わがままだとはわかっているという。赤ちゃんが生きて無事だったことを感謝しなければいけないことはわかっているが、自分の赤ちゃんと会うのに約束をしなきゃいけないなんてという。マイルズ、どうすればいいのと聞くケイコ。オブライエンはわからないと言った。抱き合う2人。
考えていることはわかる、フェレンギの掟は破れないって言うんだろとクワークに言うロム。破るのもそう悪くはない、この俺も組合を作ったという。非難され、誰にも相手にされなくなるぞと言われたというロム。お前は組合を作る前から誰にも相手にされてないというクワーク。2人は階段を降り、ガラックの仕立て屋にやってきた。ガラック※25はモーンにズボンを履いてみるようにいっているところだ。お尻のところに余計にパッドを入れてある、バーのスツールに座って回す時も回しやすいはずだという。試着室に入るモーン。ガラックは注文したズボンが仕上がるのは来週だとクワークに言う。それで来たんじゃないというクワーク。ガラックを仕立て屋としてではなく、殺し屋として雇いたいと言った。何の事だかわからないというガラック。とぼけるな、本業は仕立て屋じゃないんだろというクワーク。ガラックは昔は庭師だった、抜いて欲しい雑草があるならいつでもどうぞという。抜くのは草じゃない、人間だよというクワーク。ロムはクワークの前に立ち、ブラントを殺すのかい、まさか本気じゃないだろという。いくらなんでも無謀すぎるという。クワークは黙ってろとロムを押しのけ、殺すのはブラントじゃない、俺だよというのだった。クワークの顔を見つめ、微笑むガラック。

※23: DS9第69話 "Family Business" 「クワークの母」より

※24: "Bar Association" より

※25: エリム・ガラック Elim Garak DS9第94話 "For the Cause" 「裏切り者は誰だ」以来の登場


自分を殺せっていうのか、なら話は別だというガラック。楽にすぐ死ねるのがいい、血が出ない方がいい、もちろんそう簡単にはいかんだろうがというクワーク。ロムは馬鹿なことはやめて、契約を破棄すれば済むことなのにという。ほっといてくれ、兄弟ぶるのはよせというクワーク。お前やノーグやマミーみたいな恥知らずとは違う、フェレンギのビジネスマンだと言った。契約したら何があってもというクワークに、今は金儲けの秘訣なんか聞きたくないというロム。兄貴の命がかかってるんじゃないかという。そうだ、俺の命だと言い俺にとって一番大事なのはとガラックに聞くクワーク。商売でしょというガラック。聞いただろ、俺は商売が生きがいのビジネスマンだ、ただのビジネスマンじゃなくフェレンギのビジネスマンだとクワークはロムに言う。その意味がわかるか、闇雲に人から金を巻き上げるのではなく、フェレンギの商人なら誰でも守るルールに乗っ取ってやってるという。それが金儲けの秘訣だ、自分に都合が悪くなったって破ることはできんという。そう言っても、破らなきゃ死んじゃうんだよと泣くロム。クワークはうなずき、死んで聖なる宝物殿※25の門についたら宝物殿の門番※26はきっと賄賂を受け取ってくれるだろうという。俺の死に様も生き様も文句の付けようがなかったからだ、フェレンギ人としてといった。ガラックと話し合うために奥にいくクワーク。
変な声を上げるキラ。ものすごく蹴ってるけど大丈夫なのかしらと聞く。ケイコは順調な印だわ、モリーもお腹を蹴って飛び出すくらいだったのという。痛そうなキラを見て、腰が痛いんでしょう、ちょっと待ってといってオブライエンは奥へ走る。赤ちゃんの様子を教えに来てくださってありがとうございます、少佐というケイコ。いいのよ、ネリスでというキラ。つわりは始まりましたと聞くケイコ。キラは何それという。ベイジョー人の妊婦にはないのかもしれないけど、地球人の女性は妊娠すると吐き気がしたりするんですと教えるケイコ。ベイジョー人の女性は妊娠するとくしゃみが出る、我慢できないくらいにというキラ。でもこの子は地球人だからどうかしらという。オブライエンがクッションをもってきた。キラの背中のところに置く。お腹空いたといってモリー※27がやってきた。キラはだいぶ楽になったという。そろそろ夕食にしましょうというオブライエンに、私は失礼するというキラ。ケイコは食べていってくださいというが、そんなの悪いというキラ。私たちの赤ちゃんを育ててくれてるんですもの、もう家族よというケイコ。オブライエンもケイコと話し合ってたことがある、お願いしたいことがあるという。もちろん無理にとはいいませんというケイコ。どんなこととキラが聞くが、オブライエンとケイコの2人は譲り合いをして話そうとしない。
席に座り、料理をおいしそうに食べているクワーク。後ろからやってきた者が突然クワークの首をつかみ、口を抑えて首を捻った。骨を折られたクワークは料理に顔を突っ込んだ。これはどうというガラック。現れたクワークは、恐ろしい、首の音が折れるあの音を聞いたかという。最期に耳でするのがあんな音とはというクワークに、そう大きい音じゃなかったというガラック。あんたにはな、とにかく首の骨を折るのはだめだとクワークは言う。ガラックは方法が尽きかけてきたよ、蒸発は遺体がいるからだめ、ディスラプターは着ている服が汚れる、ナイフは残酷すぎるだ、神経ガスは臭い、首吊りは時間がかかりすぎる、で毒は、毒はなぜだめなんだと聞く。毒が入っているってわかっているものを食えるか、これを早く片づけてくれという。ガラックはコンピューターに命じ、死体を片づけさせる。口じゃ死ぬと言ってるけど、本当に死ぬ覚悟ができているのかと聞くガラック。ちゃんと死ぬさ、でも楽に死にたいというクワーク。これから死ぬというのを見たくも、聞きたくもない、匂いもかぎたくない、いつも通り生活していたら突然という。いきなり死なせて欲しいのかというガラック。その通りだ、目が覚めたらなぜか聖なる宝物殿にいたいんだという。それならいい方法があるというガラック。ほんとかというクワークに、信用しなさい、一瞬のうちに死なせてやるとガラックはいった。
周りをうかがいながら、暗い自室に入るクワーク。ライトを点けた瞬間にしゃがむ。ガラック、もしそこにいたって楽には死んでやらんぞと大声を上げながらベッドルームに入る。そしてベッドに横になった。
まばゆい部屋。周りは全て金色だ。フェレンギ人の頭像がある。目の覚めるクワーク。ここはどこだという。扉の上にはフェレンギ語でこう書かれている。「聖なる宝物殿に入る前に会計監査がございます。損益計算書のご用意を」クワークはじゃあ死んだのか、ガラックさすがだなといった。

※25: Divine Treasury DS9第79話 "Little Green Men" 「フェレンギ人囚わる」では「死後の世界」と訳されていました

※26: Registrar

※27: モリー・オブライエン Molly O'Brien "Hard Time" 以来の登場


クワークが本当に死んだのかとうろうろしていると、扉が開き年老いたフェレンギ人が入ってきた。死んでもお前は変わらんの、大馬鹿じゃと笑う。ひざまずき、あなたは誰ですと聞くクワーク。そのフェレンギ人は初代グランド・ネーガスのギント※28だという。それなのになぜかお顔は弟のロムにそっくりだというクワーク。ギントはそれはお前の夢の中だからだという。じゃあ死んでないのかというクワークに、ギントは頭の回る奴だという。どうりでここが野暮ったいわけだ、どこが聖なる宝物殿だというクワーク。貧困な想像力をわしのせいにするな、では本題に入るぞというギント。ブラントとの契約は破棄するんだという。まさかご冗談を、だってあなたが現在のフェレンギ社会の基盤となっている金儲けの秘訣をお書きになったんでしょうというクワーク。それを破れだなんていわないでくださいという。ギントはたかがあんなルール、文字に過ぎないという。しかも書いたのはわしだという。守らなくてもいいんですかと聞くクワークに、守れば儲かるからベストセラーになった、でも命より大事なはずはないというギント。言わば道しるべ、提案なんだという。じゃあそういえば良かったのにというクワーク。金儲けの提案なんて言う本は誰も買わない、秘訣として守らせたい方がいいじゃろうというギント。販売戦略だったのかというクワークに、大成功だった、金儲けの秘訣239条「商品にはどんどん違うラベルを貼れ」※29というギント。金儲けの秘訣にしたがって生きてきたのに、背を向けることなんてできないとクワークは言う。わしがそうしろといってもかというギント。でもあなたはギントじゃない、これはただの夢なんだというクワーク。ギントはお前は本心では契約を破棄したいと思っている、ただ誰かの許しが欲しくだからわしが現れたという。確かにそうだ、初代グランド・ネーガスのギントが俺の前に現れるというクワーク。契約を破れとお告げがあったといえば、何の問題もないという。クワークちょっと待てという声がいきなりしたかと思うと、ブラントが前の方に座っていた。何してるここは俺の夢だというクワーク。契約を破棄したらどんなことが待っているか忘れるな、財産没収、国外追放だというブラント。わかってるが初代ネーガスのギントからお告げがあった、契約を破棄しろとなというクワーク。ブラントはそれはギントじゃない、もっと背が高いという。偽者の言うことを真に受けたら一生後悔するという。そんな奴今すぐ殺してしまえというギント。ここは夢の中だ、私は殺せないというブラント。しかし寝ている間に死んでしまう人も世の中には大勢いるからねといい、クワークの首を絞め始めた。ロム、ギント、どっちでもいいから助けてくれというクワーク。これは夢、わしは何もできんというギント。だが死にたくないなら契約を破棄しろ、それしかないという。
クワークは自分の手で首を絞めながら目が覚めた。俺は生きてると安心するクワーク。
ダボガールの手を舐めるように触りながら、こんなに長くて細くてしなやかな指の持ち主がウー・マックスを一度もしたことがないなんて驚きだというブラント。クワークが来たのを見て、命乞いにきたのかねという。クワークはパッドをテーブルの上に置いた。一体これは何だねというブラントに、ラチナムの延べ棒500本は返す、利子もつけるというクワーク。ブラントは返品はお断りと言っておいたはずだという。わかってる、契約は破棄して欲しいとクワークはいった。ブラントは笑い、やっぱりな、お前の一族はみんなそうなんだ、弱くて甘くて救い用がないという。また一人負け犬ばかり輩出してきた一族に出ただけだというブラント。契約は破棄だともう一度言うクワーク。財産を没収して、ビジネスのライセンスを取り消すがいいという。何でもやるべきことをやったらとっとと出て行けというクワーク。もしお前が今度俺のバーに足を踏み入れたら、生きては返さんぞと言った。それを聞いたブラントは、店の客に向かって大きな声でこう話し始めた。「私は会計監査員です。今この瞬間からこのバーにおいてフェレンギ人が商売を営むことを禁止いたします。このバーでフェレンギ人が働くことも、フェレンギ人が店を利用することも禁止、そしてフェレンギ人がいかなる取引をすることも禁止いたします。あの男、クワークと。」そして入り口に監査令状を張ると、ただちに全財産の差し押さえを始めると宣言した。クワークは客に、このバーは当分の間閉店させて頂きます、今までありがとうございましたと言った。笑いながら出て行くブラント。クワークは店にいた者がみんな出ていった後、扉を閉めるのだった。
オブライエンの部屋。キラが荷物を持って入ってくる。これだけと荷物を受け取るオブライエンに、身軽がいいのよというキラ。あなたのお部屋を見てもらいたいというケイコ。ええぜひといって部屋に入るキラ。よく我が家へ来てくださったわねというケイコに、赤ちゃんが産まれるまでだけどというキラ。モリーが来て、私のおばちゃんなのと聞く。そうねえというキラ。オブライエンもそんなもんでしょうという。ネリスおばちゃんよとモリーに言うキラ。おばちゃんの部屋で遊んでもいいと聞き、キラはいつでも来ていいわよと言った。
何もかも没収され、閑散としたクワークの店にロムがやってくる。兄貴、大丈夫と言いクワークの横に座るロム。俺は破産だ、もうおしまいだという。財産も大貧民だと言いお前はと聞くクワーク。まあまあさというロムにそれは良かったという。全部もっていったのと聞くロム。このシャツも取られた、明日の午前中にブラントに送ることになっているという。ロムは俺が捨てることにしてたシャツを貸すから大丈夫だという。裸でいるというクワークに、わかった、でもブラントにたんかを切った時俺には兄貴がものすごくかっこよく見えたというロム。それなら人生を捨てた甲斐が少しはあったってもんだなというクワーク。ロムはまだ終わりじゃない、これからどうするつもりという。クワークはあれこれと知恵を絞って考えてみたが、何も思い付かないと言った。
そこへベシアが酒瓶を担いで入ってきた。アルヴァニアンブランデー※30だ、患者が送ってくれたものだが受け取れないからというベシア。同情なら結構ですというクワークに、同情じゃない、どうせ飲まないんだ、いらないなら捨ててくれというベシア。クワークはブランデーの箱を下に置いた。続いてダックスがやってきて、妹からもらったものだけど使ってくれないといって、数個のグラスを見せた。デザインは良くないという。ロムがそれを見て、前に使ってたものよりいい、趣味は悪いけどねという。お心づかいはありがたい、でもブランデーが1ケースと悪趣味なグラスが1セットだけじゃ、バーは始められないとクワークはいう。さらにシスコがクワークを呼んだ。居住区の第2レベルの構造を修理中だが、余った家具を預かって欲しいという。幸い置き場所はあるみたいだからなというシスコ。外にはずらりと机や椅子を抱えた人たちでいっぱいだ。次々と運び込まれる。オドーがこの家具はどこに置くんですかと尋ね、3階あるんだどの階でもいいぞというシスコ。モーンも運ぶのを手伝っている。こんなの困りますよとクワークは言う。シスコは運んでいる異星人の腕をつかんで止めた。保管料を払って頂かないとというクワーク。もちろんただ同然に安くしときますと言う。請求してくれといい、再び荷物を運ばせるシスコ。クワークはオドーに、何を突っ立っているんださっさと運べという。モーンがカウンターに座り、ベシアは酒を並べている。ロムはクワークに、さっき財産がないといったけどそれは違うという。シスコが、ダックスやベシアやモーンが、財産だって言うのかというクワーク。最高の財産だというロム。そうかもしれんな、1杯飲んでくるとクワークは言う。クワークはカウンターの前で「みんな」とだけ言い、微笑んだ。

※28: Gint (マックス・グローデンチック Max Grodenchik)

※29: No.239 "Never be afraid to mislabel a product."

※30: Alvanian brandy DS9第81話 "The Sword of Kahless" 「カーレスの剣」ではアルヴァニアの洞窟ナマケモノ (Alvanian cave sloth) が言及


・感想
クワークが最初から最後まで大変な思いをします。金儲けがすべてのようなクワークでも、実は思いやりの心があり、そしてDS9の人々にとってかけがえのない存在になっていることがわかります。ところでガラックは一体何をしたのか不思議に思うところですね。夢を見せたんでしょうか。サブストーリーはオブライエン夫妻の子供を「借り腹」し、家族になるキラの話。女優は大変です^^;
作成協力: Jesusさん


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