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エンタープライズ エピソードガイド
第55話「突然変異」
Extinction

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・イントロダクション
※1ジャングルの中を駆ける者。異星人※2だ。
その後を、全身防護スーツに包まれた複数の人物※3が追いかける。追いかけられた異星人は、小さな船の近くで倒れた。
ライトを向けるスーツ姿の者。異星人は首もとの器官をふくらませ、音を出す。
火器から大きな火が吹き上がった。何人もその装置を起動させる。
異星人の叫び声が響いた。焼き殺した者は、別の異星人種族らしい。


※1: このエピソードは、TNG ラフォージ役のレヴァー・バートン監督です。ENT第50話 "First Flight" 「運命の飛行」以来

※2: 異星人ヒューマノイド Alien Humanoid
(Kiante Elam 映画第9作 "Star Trek: Insurrection" 「スター・トレック 叛乱」のスタント) ノンクレジットでセリフなし

※3: 駆除員 (Decon Agent) として判明しているノンクレジット俳優は、以下の 3人。いずれもセリフなし
駆除員その1
(クレイグ・バクスリー・ジュニア Craig Baxley Jr.)
駆除員その2
(Keith Schindol)
駆除員その3
(ジミー・オルテガ Jimmy Ortega TNGパイロット版 "Encounter at Farpoint" 「未知への飛翔」のトーレス大尉 (Lt. Torres) 役)

・本編
※4エンタープライズ。
ろうそくに火をつけるトゥポルは、ドアチャイムに応えた。「どうぞ?」 寝間着姿だ。
タッカー:「遅くに悪いね。何か、お邪魔だったかな。」
「いいえ。」
タッカーは容器を持ってきている。「ジョージア・ピーチ※5だ。地球からカゴ一杯持ってきた。ステーシスに入れといてもらったから※6、今も取れ立ての新鮮さだ。」
トゥポル:「ありがとう。」
「食べないの?」
「夜遅くには、食べません。」
「…いいだろう、一口だけ。…ほら。」 笑うタッカー。
トゥポルはモモをかじった。「……2回のキャンセルの埋め合わせにはなりませんよ?」
タッカー:「最近は、ほんとにやることが多くて忙しいんだ。来るのが嫌なわけじゃないよ? こないだもグッスリ眠れたしねえ。…ほんと、久々に。…じゃ、早速…」
「どうぞ。」
シャツを脱ぐタッカー。
トゥポル:「靴も脱いでください。」
タッカー:「靴も?」
「足の裏には、ツボが集中しているんです。」※7
「靴まで脱ぐなんて聞いてなかった。」
「問題でも?」
「そうとは知らないから、今夜はまだシャワーを浴びてないんだ。ヴァルカン人の鼻のよさは知ってるし、それに…足は弱いんだよ。…触られるとくすっぐたい。」
「不快感を感じたらすぐにやめます。」
「ああ…。」 タッカーは靴を脱ぎ、ため息をつく。
ベッドに横になった。トゥポルが腰に手を触れる。
タッカー:「あっ! 氷みたいな手だな。」
一旦手をさするトゥポル。「深呼吸して。」
タッカー:「…大丈夫だろうね。今まで、地球人※8でこのマッサージを受けた人は。」
「いないと思いますが。…麻痺の危険性はごくわずかです。」
「うん…。」
「息をして。」
「……あっ、そこだ…。」
呼び出し音が鳴った。通信機に触れるトゥポル。「トゥポルです。」
アーチャー:『アーチャーだ。今すぐ、司令センターへ来てくれないか。』

カップを置くアーチャー。ドアが開き、服を着替えたトゥポルが入る。
アーチャー:「起こしてすまん。」
トゥポル:「起きていました。」
「見てくれ。」 アーチャーがモニターを操作すると、毛長ズィンディの顔が映った。
「別のズィンディですか。」
「うん。フロックスによれば、恐らく木の上に暮らす霊長類が進化したものらしい。回収したデータから星図を、復元できた。」 星図とコースが表示される。「たどった針路を計算するのに手間取ったが、何とか過去数ヶ月の航路を割り出せた。」
アーチャーは更に星系と惑星の図を出した。「船が襲撃される前に訪れた最後の惑星だ。」
トゥポル:「訪れた目的は。」
「わからん。滞在は一日だ。」
「…しかし、彼らが地球を襲った者と関わっているとは限りません※9。」
「うん。そうでないとも限らん。…トラヴィスにコースの指示を。」
出ていくトゥポル。アーチャーは惑星の図を見る。

エンタープライズは惑星へ近づく。
白い服※10のトゥポル。「生態系は、非常に豊かです。色素をもつ植物だけでも、数百万種が。」
アーチャー:「ズィンディは。」
「ヒューマノイドの反応はありません。…惑星全体の探知には、数時間を要します。」
リード:「…船長。金属反応を探知しました。赤道付近の島の北側です。」 島の図がスクリーンに表示される。「上陸用の船でしょうか。」
アーチャー:「生体反応は?」
トゥポル:「半径 30キロにはありません。」

発進するシャトルポッド。

報告するリード。「13キロ先です。」
トゥポル:「森林に空き地があります。着陸可能です。」
アーチャー:「降りよう。」
シャトルにはサトウもいる。

暗いジャングルを進む 4人。
リード:「船長。」
小型船がある。
トゥポル:「酸化具合から見て、着陸は 2週間前です。」
サトウ:「ちょうどズィンディが来た頃だわ。」
アーチャー:「ズィンディの船だ。データベースの型と一致する。…捜索しろ。手がかりが欲しい。…何かデータが残ってるかもしれん。」
中に入るトゥポル。
外に、ひどく痛んだ遺体が転がっている。
サトウ:「船長。死体が。」
調べるトゥポル。「この遺体は、これまで見た 3種族のズィンディとは異なります。」
サトウ:「残りの 2種族では。」
リード:「こっちにも。」
トゥポル:「…数値は同じです。」
アーチャー:「…周りが黒こげになってる。」
ため息をつき、身体をさするリード。
サトウ:「大丈夫?」
リード:「…ああ。暑いところは苦手なんだ。」
アーチャー:「手分けしよう。」

トゥポルは、ふと袖をまくった。腕に縞模様が見える。
左右の目の横が隆起し、脈打つ。触れるトゥポル。

呼びかけるトゥポル。「大尉?」
頭を起こしたリードは、顔が異星人のようになっていた。髪も伸びている。
奇妙な声や音を発するリード。脈打つ皮膚。
後ずさりするトゥポル。

小型船から出てきたアーチャーは、リードの声を聞いた。その時、やはり皮膚が動き始める。
瞳の色が変わった。ふらつくアーチャー。
内臓組織まで変質していく※11
アーチャーは声を上げる。
戻ってきたトゥポル。「船長!」
アーチャーは倒れた。
コミュニケーターを使うトゥポル。「エンタープライズ。」

船長席のメイウェザー。「どうぞ。」
トゥポル:『地表に保安部員を。上陸班に突然変異が…』
アーチャーの声が聞こえたが、異星人の言葉だ。『(君は誰だ)』
メイウェザー:「副司令官?」

完全に変質したアーチャーは、周りをうかがう。「(ここで何をしている)」
トゥポル:「動くな!」 フェイズ銃を取り出す。
飛びかかってくるアーチャー。「(何者だ!)」 撃たれ、倒れた。
トゥポルを襲う者がいる。変貌したサトウだ。
取っ組み合いになる。アーチャーも目を覚ました。
トゥポルは驚き、逃げ出した。追うサトウ。
リードやアーチャーも続く。

ジャングルの中を逃げるトゥポル。つまずいて倒れた。
意識を失う。


※4: 米国の初放送では、このエピソードからタイトルに「スタートレック」が含まれるようになりました

※5: Georgia peach

※6: 原語では「シェフに入れといてもらった」ということを言っています

※7: 窓から見える星が右から左に流れているため、トゥポルの部屋は左舷側にあることがわかります

※8: 「人間」ではなく「地球人」と正しく訳されるのは珍しいですね

※9: 吹き替えでは「彼らが地球を襲ったのと同一の種族とは限りません」。偵察機に乗っていたのが爬虫ズィンディということは既にわかっているので、この訳だとちょっと変ですね

※10: 赤・青に続いて登場

※11: CGI で実際に描かれます

トゥポルが手製のカゴで運ばれている。
リード:「(起きた)※12
アーチャー:「(下ろせ)」
サトウ:「(置いてくればよかったのに)」
「(話を聞きたい)」
おびえるトゥポル。
アーチャー:「(君の種族は?)」
トゥポル:「…船長…」
サトウ:「(種族は?)」
「……ほどいて。お願いです。」
縄を解こうとするアーチャー。
サトウはアーチャーを叩いた。「(敵かもしれない)」
アーチャー:「(黙れ)」
離れるサトウ。
トゥポルは解放された。「ありがとう。」
トゥポルの頭をつかみ、首の匂いをかぐアーチャー。
トゥポル:「エンタープライズに戻りましょう。…わかりますか。」
アーチャー:「(…君の種族は?)」
意味がわからないトゥポル。サトウに手を伸ばす。「それを貸して。…その装置を貸して!」
リード:「(渡すな、武器かもしれない)」
アーチャー:「(…彼女に渡せ。…渡せ)」
サトウは仕方なく、ベルトについていた装置を渡した。
起動させるトゥポル。「…これで意思の疎通が図れます。…話をしてください。…お願い。…何か話を。」
トゥポルを取り囲む 3人。

エンタープライズ。
地図を指さすフロックス。「これはヴァルカン人の反応です。間違いない。」
タッカー:「だがこっちは。」
「地球人ではない。」
「じゃ、ほかのみんなは? …上陸班がいなくなったってのに、データの分析なんて悠長なことしてられない。…俺たちも何か行動を起こすべきだ。」
「副司令官の報告で異変が起きたことはわかりました。」
メイウェザー:「突然変異したと言ってた。」
「言葉通りの意味かもしれません。…何らかの力が彼らの身体を変異させた。」
タッカー:「じゃこの異星人の反応は船長たちだと?」
「この領域では、何が起きても不思議ではありません。…ここでは生化学も物理もあらゆる法則が通用しないのです。」
メイウェザー:「生体反応が移動しています。着陸地点から、真東に向かってる。」
タッカー:「…シャトルの準備を。」
「了解。」 司令室を出るメイウェザー。
フロックス:「もう少し、反応を分析した方が。」
タッカー:「…宇宙服を着用して上陸。汚染除去室の準備を。」
やむなくうなずくフロックス。

翻訳機を手にし、空を見上げるアーチャー。「エンタープライズ…。」
トゥポル:「あなたの船です。あなたは船長です。」
リード:「こんなことをしている暇はない。アークアット※13を探さなければ。それが唯一の目的だ…」
「アークアット?」
「…早く探し出さねば。この近くにある。」
サトウ:「構わないで行きましょう! …足止めする気なのよ。…きっとこっちだわ…。」
「…仲間が教えてくれる。…我々に何が起き、なぜ思い出せないのか…。」
トゥポル:「船長。その装置でエンタープライズと交信すれば、私の話が本当だとドクターが証明してくれます。」
サトウ:「信じちゃ駄目! この人はよそ者よ。」
アーチャー:「よそ者だが、敵とは限らない。」 トゥポルの顔に手を伸ばす。
息を呑むトゥポル。「…アークアットを…私も一緒に探しに行きます。…先に進みましょう。」
アーチャーはうなずき、トゥポルの腕をつかんだ。「遠くはない。」

ジャングルを進む 4人。リードが木の上に何か見つけたらしい。
軽やかに登っていく。見上げるアーチャーとトゥポル。
リードが飛び降りた。両手に手の平大の、実のような物を持っている。
奪うアーチャー。リードが落としたもう一つを拾うサトウ。
殻を割ると、中の液体には白い虫が無数に入っていた。それを食べるサトウ。
声を上げるリード。アーチャーも首もとの器官をふくらませる。
アーチャーに飛びかかるリード。食べ物を奪ったが、アーチャーに殴られた。
手を挙げるアーチャー。リードは実を地面に置き、離れた。
殻を割るアーチャー。トゥポルに近づいた。
トゥポル:「結構です。」
アーチャーは虫を見せる。
トゥポル:「…空腹ではないので。」
アーチャーは口にし、その場を離れた。近づいたリードにも分け与える。

ライトでジャングルを照らしながら進むシャトルポッド。
地図を見るタッカー。「反応はここから 3キロ東だ。少し遠いが着陸するしかない。…ちょっとしたハイキングになるぞ。」 MACO たちに話す。

アーチャーたちはシャトルポッドの飛行音を聞き、しゃがんだ。
トゥポル:「エンタープライズのシャトルです。…危害は加えませんから話を!」
一行は歩き出す。

環境服を着て進むタッカー。「武器を麻痺にセットだ。回り込め。」
MACO は少し異なる環境服を着ている。

様子をうかがうアーチャー。その目には赤外線センサーのように、相手がはっきり見えている。

MACO がリードに気づかず歩いていった。
振り向く MACO。リードが飛びかかる。

ジャングルを走るサトウ。クルーの姿は見えない。
もう一人の MACO、パーマー※14がサトウを見つけて銃を撃ったが、外れた。

駆けつけるタッカー。倒れた MACO に話しかける。「チャン※15。」
音がした。飛びかかるリードを、タッカーはフェイズ銃で撃った。
後ろから棒で殴られるタッカー。アーチャーは殴り続け、環境服のヘルメットにヒビが入る。
トゥポル:「船長!」
トゥポルをも殴ろうとするアーチャー。
トゥポル:「待って! …彼がわからないんですか。」
タッカーを見るアーチャー。パーマーが来るのに気づき、逃げていった。
トゥポル:「リード大尉を、医療室に。」
タッカー:「あなたは。」
「残ります。」 アーチャーを追うトゥポル。
「副司令官!」

エンタープライズ。
汚染除去室で暴れているリード。ドアをこじ開けようとする。

その様子が医療室のモニターに映っている。
タッカーが来た。「俺をわかってなかった。」
フロックス:「無理もありません。この状態では、誰も認識できないでしょう。」
「原因は何なんだ。」
「変異原性ウイルス※16です。全身に広がっていました。」 コンピューターに構造を表示させるフロックス。「このウイルスは、宿主 (やどぬし) の DNA を書き換えます。どんなヒューマノイドも、別の種族に変えてしまう。」
「でも、トゥポルは無事だったぞ。」
「ヴァルカン人特有の K細胞※17の働きです。副司令官の遺伝子構造を参考に抗体を作りましたが、完成には彼女の DNA サンプルがいる。早く戻っていただかないと。」
「何とかする。」
メイウェザーの通信。『ブリッジよりタッカー少佐。』
タッカー:「…どうした。」
『2隻の船がワープを解除。こちらに向かってきます。』

異星人船が、エンタープライズに近づく。
報告するメイウェザー。「呼びかけてきてます。」
タッカー:「回線オン。」
異星人※18が映る。『ここは航行禁止区域だ。』
タッカー:「すまない。標識がなかったんで。」
『スキャンさせてもらったが、そちらの船内に危険なウイルスの感染者がいる。』
「それは承知してる。何か、ウイルスの情報があるなら…」
『船を検疫させてもらう。乗船受け入れ準備を。』


※12: 最初のアーチャーでは異星人語も吹き替えていましたが、ここからは原語のままのようです

※13: Urquat

※14: Palmer
(Troy Mittleider) 名前は言及されていません。セリフなし

※15: チャン兵長 Corporal Chang
(ダニエル・デイ・キム Daniel Dae Kim) ENT第53話 "The Xindi" 「トレリウムD」以来の登場。セリフなし

※16: mutagenic virus

※17: K cell

※18: 名前は Tret (Roger Cross 映画「X-MEN 2」(2003)、ドラマ「スティーヴン・スピルバーグ TAKEN」(2002)、「アンドロメダ」、「スターゲイト SG-1」、「Xファイル」などに出演) ですが、言及されていません。声:山野井仁

タッカーは応えた。「私の許可なしに乗船などさせないぞ。」
異星人:『ウイルスに冒された生物を、直ちに死滅させねばならない。』
「…その『生物』というのは、うちの船のクルーだ。」
『本当にクルーと言えるのか? 仲間を認識できないし言葉も通じないだろう。…60年研究を続けてきたが、拡大を防ぐには感染源を断つ以外にない。』
「拡大はしていない。リード大尉は、隔離されている。」
『感染者を乗せたまま軌道を離れさせるわけにはいかない!』
「いいか。我々はウイルスに遭遇して間もない。治療の努力もせずに、大事な戦術士官を見殺しなどできるわけないだろう。こちらへ来て議論したいというなら、来ればいい。だがもしうちのクルーに手を出したら、容赦はしないからそのつもりでいろ。」

日の照らす地表を進むアーチャー。洞窟に入る。
人工的な構造の場所まで来た。その奥には、巨大な都市が広がっていた。
人々が道を歩き、天井に空いた穴から光が差している。緑や噴水、空中庭園も見える。
アーチャーは座り込んだ。足音が聞こえる。
やってきたのは、変貌する前のアーチャーだった。

夜のジャングルで目を覚ますアーチャー。「…私は、どのくらい眠っていた。」
起きていたトゥポル。「ほんの数分だけです。」
アーチャー:「…見たんだ。今、夢の中で。私は、街にいた。」
サトウ:「…アークアット?」
「故郷だ!」
トゥポル:「この惑星に街はありません。」
「それは違う。…地下にあるのだ。」
サトウ:「…教えて! …どんなところなの。」
「…そこには、たくさんのロケック※19たちがいた!」
喜ぶサトウ。
アーチャー:「私達を、待っていた。」
トゥポル:「…あなたの故郷は地球という星です。仲間たちが帰りを待っています。…彼らを救うのがあなたの任務です。」
「私の故郷はアークアットだ。君も行けばわかる、その目で確かめろ! …先を急がねば。」

リードをモニターで見るフロックス。「汚染除去室なら、感染の危険はありません。」
異星人:「ウイルスの感染力を知ったら、安心などできなくなる。我々の星では数千万人が感染し…やむなく駆除された。」
タッカー:「駆除?」
「数週間で全人口が感染する恐れがあった。」
「…ウイルスはどこから。」
「この星の住人が、開発した。ロケックという種族だ。彼らは数世紀前に、何らかの原因で繁殖能力を失った。そこで絶滅を逃れる唯一の手段として、ほかの種族を自分たちの種に変異させたのだ。」
落ち着きのないリード。
フロックス:「なるほど。だがなぜ十分な数に達したところで、感染を停止させないんです?」
異星人:「そこは、我々にも長年の謎だ。」
タッカー:「なぜ彼らは、アークアットという場所に戻りたがる。」
「ウイルスに感染すると強い帰巣本能に支配され、故郷の街へ戻ろうとする。…だからこそ、たとえ一人でも感染者を逃すわけにはいかないのだ。…ウイルスに感染した者はどんなに遠い星からでも、この場所へ戻ってくる。何としても阻止せねば。」 呼び出しに応える異星人。「何だ?」
部下:『地上に別の 3人の感染者を探知しました。』
「…駆除班の出動準備を。そちらのクルーか。」
フロックス:「一人は抗体をもっています。情報を提供していただければ、研究に協力できる。」
「我々が、感染者を見つけて調べる。何かあれば、報告はしよう。」
タッカー:「調査なら、ドクター・フロックスにやらせたい。」
「そちらの要望は、関係ない。…感染防止が我々の任務だ。邪魔する気なら…どんな強硬手段もいとわない。」 保安部員に話す異星人。「エアロックへ案内してくれ。」
タッカーはうなずいた。医療室を出ていく異星人。
フロックス:「…2時間以内に抗体を完成させないと手遅れになる。元の遺伝子配列に戻せなくなってしまいます。」
タッカー:「シャトルを出せば奴らに気づかれる。…副司令官も感染を?」
「恐らくは。」
「転送は使えないな。船中に感染が広まる。」
「急いで彼女の DNA サンプルを採取しないと。」
「…すぐ戻る!」 走っていくタッカー。

廊下で話すクルー。「今日は遅番?」「そうよ…」
タッカーが走り抜けた。
クルー:「少佐?」

走ってきたタッカーは、部屋のドアを開けた。トゥポルの私室だ。
中を探る。すると、ジョージア・ピーチの食べかけがあった。
メイウェザーの通信が入る。『ブリッジよりタッカー少佐。』
タッカー:「どうした。」
『駆除船からシャトルが発進。惑星へ向かってます。』
「目を離すな!」

明るくなった地表。アーチャーは岩山を探る。「きっと、この近くだ。…入口は、ここだ。夢で見た。…手伝え!」
サトウもふさいでいる石をどけ、中へ向かう。続くトゥポル。

洞窟を進む 3人。開けたところに出てきた。
すぐ近くに死体があった。辺りにはクモの巣が張っている。
奥に広がっているのは、都市の廃墟だった。


※19: Loque'eque

サトウは尋ねた。「仲間が待ってるんじゃないの?」
アーチャー:「私は…確かに見た。…この目で、はっきり。…あそこに…噴水が…あって…そして、公園が…空中に、浮かんでた。…仲間が、たくさん…たくさん、いたんだ。」
トゥポル:「船に戻りましょう。何が起きたのか、調べられます。」
「嫌だ、行かない! …ここが、故郷だ。…故郷、こ……。」
「…よく見て。これは古代の遺跡です。…もう長い間、誰も住んでいません。」
「…それじゃ、これは? この、死体も古代のものか。……誰かが、殺したんだ! …なぜだ。…誰が、殺したんだ!」 アーチャーはトゥポルを見た。「君の、仲間か。」
「…違う!」
「じゃ誰だ!」
「わかりません、でも船に戻れば調べられます。」
「私の居場所は船ではない! 居場所は、ここだ。」 トゥポルを押しつけ、首を絞めようとするアーチャー。
サトウ:「誰か来るわ!」
アーチャー:「また君の仲間だな?」
トゥポル:「…違うと思います。」
足音が聞こえてくる。
トゥポル:「ここは危険です。…行きましょう。…さあ、早く!」 降りていく。

スーツを着た異星人※20が、遺跡の中を逃げていく 3人に気づいた。「見つけました。」
異星人司令官:『ヴァルカン人は捕らえろ。後は駆除するんだ。』
「了解。」

洞窟を進むアーチャー。「あれは、誰だ!」
トゥポル:「わかりません!」

後を追う異星人。

アーチャーは立ち止まった。異星人の不意を突き、殴り続ける。
トゥポルが後ろからつかまれた。
異星人が落とした銃で殴るアーチャー。「街を破壊したな、よくも仲間を!」
トゥポルは離れ、異星人を蹴った。サトウも攻撃する。
アーチャーが殴っていた異星人から、空気の漏れる音が聞こえる。石を振り上げるアーチャー。
銃を手にしたトゥポル。「船長! …地上に戻りましょう。」
先を急ぐ 3人。
殴られていた異星人は目を覚ました。スーツの腕が破れていることに気づく。
うろたえる。

進むアーチャー。「こっちだ。」

他の異星人が、倒れた男のところへやってきた。息を荒げる男は、目が変化している。
顔を見合わせる異星人。火器を起動させ、火が上がった。
叫ぶ男。強力な炎が注がれる。

外に出てきたアーチャー。だが異星人が待っていた。
完全に取り囲まれる。
トゥポルに話す異星人。「武器を下ろして離れろ。君は殺さん。…早くそいつらから離れろ!」
トゥポルは引き離された。アーチャーは抵抗しようとするが、殴られていく。
倒れた。
全員火器を向け、起動させる。
その近くで音が響いた。転送されてくる者がいる。
気づく異星人。実体化したタッカーは、フェイズ銃で撃っていく。
パーマーもだ。異星人は全員倒れた。
タッカー:「無事ですか?」
トゥポル:「…もう転送は嫌だったのでは?」
「できれば使いたくなかった。奴らの仲間がいる。怪しまれる前に、早くシャトルに戻りましょう。」
トゥポルは、洞窟を覗き込んでいたアーチャーに言った。「船長。一緒に来てください。…エンタープライズなら安全です。」 うなずく。

惑星を離れるシャトルポッド。
エンタープライズに近づく。
ブリッジの通信士官※21。「タッカー少佐です。」
メイウェザー:「つなげ。…どうぞ、少佐。」
タッカー:『ドッキングするぞ。フロックスを汚染除去室へ。収容次第ワープ4 で発進だ。』
「了解。」 操舵席のクルーと交代するメイウェザー。

エンタープライズは軌道を離れ、ワープに入った。
すぐに異星人船も追う。
ブリッジに入るタッカー。「奴らは。」
メイウェザー:「追ってきます。距離 2,000キロで接近中。」
「追いつかれるな。武器をスタンバイ。」
逃げるエンタープライズ。
通信士官:「通信です。」
タッカー:「無視しろ。コース維持。」
メイウェザー:「…900キロに接近。」
通信士官:「武器をチャージしてます!」
「700キロ。」
船が揺れた。
タッカー:「全パワーを防御プレートに!」
エネルギー兵器で攻撃する異星人船。エンタープライズに命中する。
メイウェザー:「防御プレート、40%にダウン!」
通信士官:「また呼びかけてきてます。」
タッカーはうなずいた。
異星人司令官が映った。『ただちにワープをやめろ!』
タッカー:「待て。あんたらも俺たちも、ウイルス撃退が望みだ。うちのドクターが治療法を見つけた、もう少しだけ時間をくれないか…」
『忠告はこれが最後だ、そちらがどう出ようと、我々は感染者を全員始末する。』
アーチャーがやってきた。「なぜ我々を攻撃する!」 その顔はほとんど元に戻っているが、まだロケック人の名残が見える。
異星人:『そちらに 3人の感染者がいる。このままこの星系を出すわけにはいかない!』
フロックス:「このアーチャー船長とサトウ少尉はあなたの部下に焼き殺されそうになりましたが、私の作った抗体が効いて元の姿に戻りました。」 サトウも来ている。
『そんなことは、不可能だ!』
「スキャンして、確かめてください。」
異星人は部下に合図する。
タッカー:「…だから、少し時間をくれと言っただろ。作った抗体は、喜んで分けよう。まあ船を破壊されてはそれも無理だがな。」
無言になる異星人。

『航星日誌、補足。フロックスの作った抗体を、駆除船に分け与えた。これで二度と感染の拡大が起こることはないだろう。マルコムとホシと私が完全に元の状態に戻るには、数日かかりそうだ。』
医療室。
ハイポスプレーを打つフロックス。「これで、頭痛は治まる。」
リード:「お腹は何とかならないかなあ。食べるとどうも、気持ち悪くて※22。」
「消化系統が元に戻るまで、普通食は控えることです。」
「…じゃ何を食べればいい。」
「私の、ピリシアン・コウモリ※23の餌※24を分けましょうか?」
アーチャーが来た。「気分はどうだ。」
リード:「…まあまあです。船長は。」
「…だいぶいい。ホシとトゥポルに、休暇を与えた。君も任務は忘れろ。」
「ありがとうございます、少し休みます。」
リードの肩を叩くアーチャー。リードは出ていく。
アーチャー:「私に用か。」
フロックス:「最後の変異原性ウイルスです。破壊した方がよろしいかと。」 小さな容器を持っている。
「…いや。」
「ご自身もあんな恐ろしい目に遭われたのに?」
「あのウイルス駆除船は、ウイルスを根絶させるまで任務を続けるだろう。抗体を手に入れた今、根絶への道は遠くない。」
「それならなおさら破壊した方が。」
容器を手にするアーチャー。「このウイルスは、種の存続を掛けた最期の望みだったんだ。つまり、ロケックという種族は…このウイルスの根絶と共に絶滅する。」
フロックス:「船長。」
「地球人を絶滅から守ろうとする我々が、他の種族を滅ぼすような行為に荷担するわけにはいかないだろ? …保存してくれ。方法は任せる。頼んだぞ。」
うなずくフロックス。アーチャーは出ていった。
フロックスは容器を装置に収めた。※25


※20: 異星人駆除員 Alien Decon Agent
(Brian J. Williams DS9第176話 "What You Leave Behind, Part II" 「終わりなきはじまり(後編)」のエキストラ、映画第8作 "Star Trek: First Contact" 「ファースト・コンタクト」、第9作 "Star Trek: Insurrection" 「スター・トレック 叛乱」、第10作 "Star Trek Nemesis" のスタント) 声:奥田啓人、白熊寛嗣のどちらか

※21: Com Officer
(Philip Boyd) 後にも登場。声:大久保利洋

※22: 原語では「シェフの料理を食べると」ということを言っています

※23: ENT第3話 "Fight or Flight" 「死のファースト・コンタクト」など

※24: 原語では「ピリシアン・コウモリに与えているガの幼虫」

※25: 最後に "In Loving Memory of Jerry Fleck" と表示されます。2003年9月に 55歳で亡くなった、TNG/VOY/ENT/映画の第一助監督ジェリー・フレックを追悼したものです (公式サイト)

・感想
自分たちに変貌させようとすると、絶滅した種族。TNG "Identity Crisis" 「アイデンティティー・クライシス」や、VOY "Favorite Son" 「女たちの星」でも類似した状況が描かれていました。具体的にエピソード名を挙げるまでもなく、何となくどこかで見たと感じる方は多いでしょうね。第3シーズンとして引き継いでいるネタはあるものの、テンポもゆっくり目で旧来のオーソドックスな感じでした。つまらなさまで、しっかり受け継いでしまいましたが…。
プロット的に穴があっても、それをいちいち列挙するのは野暮かもしれません。それでも一つだけどうしても言いたいのは、なぜ駆除異星人はビーコンなり何なりでロケック星のことを警告・封鎖しないんでしょうか? 科学顧問でもある Andre Bormanis 脚本というのが皮肉ですね (もっともこの方は、あまり名作らしい名作は残していませんけど)。面白いのは、日陰レギュラーであるリードとサトウの変わった姿が見られることでしょうか。


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