毛長ズィンディは尋ねた。「何者だ。……私に何の用だ。」
フェイズ銃を向けるアーチャー。「座れ!」
リード:「ほかに誰もいません。独り住まいのようです。」
「…外を見張っていろ。」
出ていくリードとヘイズ。
アーチャー:「名前は?」
毛長ズィンディ:「…グレイリック・ダール※12だ。」
「私はジョナサン・アーチャー。…地球から来た。」
ダール:「それが私のうちへ押し入ったことの説明になるのかね。」
「…キモサイトとは何なんだ?」
「…マルチフェイズ・アイソトープだ。」
「何に使う。」
「利用法は数多くある。精製のレベルにもよるがね。」
「…デグラという人物を、知ってるな。…何者だ。」
「君には関係のないことだ。」
アーチャーはドアを閉めた。「奴はキモサイトをどうする。」
ダール:「キモサイトには多用な利用法があると言っただろう! 客にいちいち何に使うか聞いたりはしない。」
「聞くべきだな! 兵器に使われ、私の種族が絶滅するかもしれない!」
「…何?」
「その兵器をどこで造ってる! いつ完成するんだ!」
「何の話なのかまるでわからん。」
アーチャーは銃を突きつけた。「答えを聞くまではここを動かないぞ!」
エンタープライズ。
ラボのトゥポル。「亜量子の痕跡を、何とか特定できました。ズィンディ偵察機のものと、一致しますね。」
タッカー:「船長、間違いないですよ。キモサイトは地球を攻撃した兵器に使われていました。」
アーチャーたちはダールの家の外にいる。
トゥポル:『尋問で何か、聞き出せましたか。』
アーチャー:「いや、今の情報が役立つ。」
タッカー:『船長、もう一つ。連中のライフル※13をスキャンしました。やっぱり量子痕跡が同じだった。分解する、許可をください。』
「…進めろ。2時間後に、また連絡を入れる。」
トゥポル:『了解。』
リード:「…おめでとうございます。…3ヶ月前この領域に来たときは、ズィンディが何者なのかもわからなかったのに、これで兵器工場を一つ破壊できます。」
アーチャー:「……戦争を止めに来たんだ、始めるためじゃない。」
「奇襲されたんですよ?」
「我々が攻撃すると聞かされたせいでな。向こうにすれば自衛手段だ。この工場を破壊すれば、やはり人類は残虐で危険だと思われる。」
「死んだ 700万人を忘れてらっしゃいませんか。」
「……ヘイズ少佐に、爆風抑制機※14を設置させろ。工場は爆破しても、ほかの場所にまで被害を出したくない。」
「……グレイリックはどうします。我々のことをバラしますよ。」
「…必要なときは私が対処する。我々の存在は誰にも知られたくない。」
ケースを運ぶタッカー。「船長こんなもん何に使うんだろうなあ。」
トゥポル:「どうしてもいるそうです。」
「量子分析ならもう 3度もしたんだぞ? 信用してないのかな。」 タッカーは転送台に置いた。
「事実を突きつけると言っていましたが。」 コンソールを操作するトゥポル。
ケースが転送された。
ダールは言った。「いつまでうちに閉じ込めておくつもりだ。」
ヘイズ:「アーチャー船長次第だ。」
「なら、私は書斎にいると言ってくれ。」
「悪いがここでジッとしててもらう。」
「仕事があるんだよ。」
「私も仕事だ。座ってもらいます。」
「…知ってることはもう、全部話した。」
ドアが開いた。
ダール:「ああ、船長。私のことを忘れたんじゃないかと思ったよ。」
合図するアーチャー。ヘイズは出ていく。
アーチャー:「兵器造りには関わってないと言ったな。」
ダール:「その通りだ。」
「これは何だ。」 アーチャーは持っていた物をテーブルに投げた。金属のかけらだ。
「…何だかわからんね。」
「これは 700万人を殺した偵察機の破片だ! …死んだパイロットは、ズィンディだった。そしてこの合金も、ズィンディ製だ。あんたが作ってる物質と、同じ量子痕跡をもってる! 惑星を破壊できるほどの更に強力な兵器を、造っているのはわかってるんだ! 製造場所を教えろ!」
「…君はうちに押し入り…ただのねじれた金属片を持ってきて、それだけで私を大量虐殺者というのか。」
アーチャーはフェイズ銃を取り出し、ダールを壁に押しつける。
ダール:「君の種族を以前に見たこともない。地球なんて星、聞いたこともない。信じようが信じまいが、数百万人が殺されたこととは無関係だ。」
手を離すアーチャー。
兵器室のフロックス。「少佐、お手伝いに呼ばれるのは光栄ですが、武器類は私の専門じゃありませんので。」
タッカー:「スキャンしてみたら有機的なパーツがあるんだよ。生き物関係は俺より、ドクターの畑だろ?」
ズィンディの銃の中には、イモムシのような生き物が入っていた。
タッカー:「どう思う?」
調べるフロックス。「神経インパルスを発生させていますねえ。」
タッカーは一匹を取り出す。「ああ…生きてるのか?」
フロックスは手の上に置いた。「ペットには不向きでしょうが…」 臭う。「確かに有機体です。」
小さく音が聞こえた。いま虫を取り除いたところに、また下から同じように出てきた。
フロックス:「繁殖能力も備わってるようだ。」
ダールの家。
ダール:「このキモサイトは極めて純度が高い。」
アーチャー:「ここの工場で作ったものか。」
「そうだ。…さまざまな種族と取引がある。ズィンディだけじゃない。使用法まで考えなかった。デグラが純度の高いものを注文してきたときには、祝ったもんだ。この収益で、コロニーの経済が潤うからな? だが高純度のものがいる理由までは思わなかった。欲に目がくらみ、兵器に使われる可能性が見えなくなっていたんだな。」
「デグラは爬虫類族か。」
「いいや。彼は霊長類ズィンディ※15だ。」
「ある鉱山で、一人会ったな※16。」
「君らに似てサルのようだ。…あの種族とはトラブルもなく、いつも信頼できた。だから、高純度のキモサイトは研究用だと言われて信じたんだ。爬虫類族同様、彼らももう信用できんようだな。」
「爬虫類族にも会った。」
瓶を開けるダール。
アーチャー:「一つの星で 5種族も、知性ある種が進化したとは驚きだなあ。」
ダール:「5種族? あ、ま今はそうだな。」 瓶とグラスを掲げる。
「いや、いい。」
「構わんか。」
「やってくれ。」
酒を口にするダール。「うーん。昔は、6種族だったんだ。鳥族※17だ。戦争で消えた。」
アーチャー:「消えた。」
「絶滅した。そう聞いている。母星が爆発するとき、逃げなかったんだ。」
「星の残骸は見た※18が、何があったんだ。」
「戦争が百年近く続いた。敵も味方もなく、同盟を結んではまた敵対。終戦の頃には、誰も戦争の原因すら覚えていなかった。だが終戦の理由は明らかだ。…政治的にも不安定だったがそれ以上に、我々の星は地質学的に不安定だった。…昆虫族と爬虫類族が、最後の手段に出たんだ。大量の爆発物を仕掛けたんだ、8つの巨大な地殻の裂け目にな。…星が吹き飛ぶことになるとは、知らなかったんだと思いたい。……祖父が住んでいた。以前は場所によって、空全部が鳥族で一杯だったそうだ。…だがもういない。」
「…5種族は、生き延びたんだな? こんな僻地のコロニーだけではないと思うが、その点は?」
「逃げ延びた者の子孫は、広く領域全体に散らばった。静かに暮らす者が多いがそういう奴ばかりではないようだな。」
ヘイズが入る。「船長。」
アーチャー:「すぐに戻る。」
「彼は。」
「…心配ない。」 外に出たアーチャー。
「抑制機設置しました。爆風は工場以外には及びません。ただ工場が騒がしくなってます。何かあるんじゃないでしょうか。」
呼び出しに応えるアーチャー。「アーチャーだ。」
トゥポル:『船長、この星に船が近づいています。構造が、我々を攻撃したズィンディ船※19と一致します。』
「…爬虫類族だ。」
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※12: Gralik Durr (ジョン・コスラン・ジュニア John Cothran Jr. TNG第146話 "The Chase" 「命のメッセージ」のニューダック艦長 (Captain Nu'Daq)、DS9第43話 "Crossover" 「二人のキラ」のテロック (Telok)、ゲーム「スタートレック・ボーグ」のドクター・ベニントン・ビラカ役。"Klingon" でも声の出演) 声:長島雄一、VOY ニーリックスなど
※13: ENT "Rajiin" より
※14: blast suppressor
※15: Xindi-Primate この正式呼称が用いられるのは初めて
※16: ENT "The Xindi" で登場した、Kessick のこと
※17: ENT "The Xindi" より
※18: Avians 鳥類ズィンディ (Xindi-Avians)
※19: ENT "Rajiin" より
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