エンタープライズ 特別先行エピソードガイド
第98話 "These Are the Voyages..."
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イントロダクション
※1尋ねるメイウェザー。「ブラジルへはいつ戻ることになってるの?」 サトウ:「式典が済んで、2週間後って言ってある。私達の歓迎会がいろいろあるし、言語データベースを整理するのに一週間はかかるから。」 どちらも制服の左胸には自分の名前※2が書いてあり、右腕には宇宙艦隊の記章がある。 「10年※3この船で過ごした後じゃ、また湿気に慣れるのに時間かかるだろうね。」 「それに虫にもね。」 操舵席のそばにあるコンソールを操作するリード。「船長はスピーチしなくちゃいけないんだろ?」 トゥポル:「いま取りかかってます。」 メイウェザー:「船長、スピーチは苦手だから。」 リード:「それに絶対に自分の手柄にしようとはしないだろう。」 トゥポル:「ええ絶対に。」 サトウ:「ゼフラム・コクレインがワープドライブを自慢しなかったみたいにね。」 アーチャーが作戦室から出てきた。パッドを持っている。「テラライトの 2人目の解放者は、どう発音するんだ。『チャラッシュ』か?」 サトウ:「サラッシュ。」 アーチャー:「『サラッシュ』。ありがとう。」 リード:「どうですか、船長。」 「どう書いても、自分の手柄にしようとしてる感じになるな。」 トゥポル:「船長、ダグラス提督※4が船の退役手続きを承認するよう求めていますが。」 「順番だ。憲章が調印されたら、提督がエンタープライズを引退させるのに必要なことは何でもやるよ。」 通信が流れた。『上級士官は全員ブリッジへ出頭してください。』 それに応じ、ブリッジにいた人物が声を出す。「コンピューター、プログラム停止。」 すると、アーチャーたちの動きが止まった。 端のコンソールにいたのは、22世紀の制服を着たウィリアム・トーマス・ライカー※5だった。「現在のタイムインデックスを保存せよ。」 コンピューター※6:『プログラム保存。』 「プログラムを終了。」 周りの映像が全て消え、ホログリッドが姿を現した。 ライカーの制服は、24世紀のものに戻る。 ホロデッキ※7を出ていくライカー。 |
※1: このエピソードは、ENT 最終話です。TNG 以降とは異なり、2時間エピソードではありません (本国での初放送時は前話 "Terra Prime" に引き続き放送されましたが、直接はつながっていません) ※2: 「T. MAYWEATHER」、「H. SATO」というように、全員に入ってます… ※3: 西暦 2161年、今までの第4シーズンからすると 6年後ということになります ※4: Admiral Douglas ※5: William Thomas Riker (ジョナサン・フレイクス Jonathan Frakes TNG第150話 "Second Chances" 「もう一人のウィリアム・ライカー」などのトーマス・ライカー (Thomas Riker) 役。ドラマ「ロズウェル」の「死因の謎」では ENT とのクロスオーバーとして、ジョン・ビリングズレーと共に本人役で出演しました) TNG レギュラー。(公開上は) 映画第10作 "Star Trek Nemesis" 「ネメシス/S.T.X」以来の登場。VOY第34話 "Death Wish" 「Q1, Q2」でも。希望声:大塚明夫 ※6: 声はもちろんメイジェル・バレット (希望声:磯辺万沙子) ※7: ドアは当時の設計図を元に、新たに再現されています。グリッドは CGI 合成 |
本編
U.S.S.エンタープライズ NCC-1701-D※8。 ライカー:『副長個人日誌、宇宙暦 47457.1。私の元上官、プレスマン提督※9が来ることは知らなかった。苦しい立場に置かれることになる。カウンセラー・トロイは歴史的な出来事のホロ・プログラムを呼び出せば、何らかのヒントを得られるかもしれないと提案してくれた。』 テン・フォワード※10にいるディアナ・トロイ※11。「何が起きたか、本当に話したくないの?」 ライカー:「言えることは全部話した。」 「約束を破るかっていう問題なら…」 「約束じゃない。命令だ。」 「ホロデッキで、命令を破ることについて何か学べたの?」 「まだだ。2日前の時点に戻ったんだ、状況を知りたくて。でもこんなことやっても役立つか、まだわからんがね。」 「だからあなたは宇宙艦を動かす人で、私はカウンセラーなの。」 微笑むライカー。 廊下※12を歩くライカー。「リードは思ってたより背が低いな。」 トロイ:「プログラムの間違いかも。」 「いや、確かめたよ。偉大な人は『大物』だって思うものさ。」 「アンドリア人は呼びかけてきたの?」 「まだだ。」 「その時間まで飛ばしてみたら? そこから実際に事件が始まるわ。それに厨房を仕切るのを考えるべきね。」 「なぜだい。」 「うん、宇宙艦隊の船にはその頃カウンセラーはいなかったけど、最初のエンタープライズではシェフがかなり近い存在だったの。クルーのほぼ全員が心を開いたんですって。」 「覚えとくよ。」 「夕食は?」 「もちろん。どうなったか知らせるよ。」 「OK。」 ターボリフト※13に入るトロイ。 驚くアーチャー。「そんなバカな。シュランはもう…3年前に死んだ。」 サトウは呼びかけに応じ、操作した。アーチャーを見る。 スクリーンを見るアーチャー。「こりゃ驚いたな。」 シュラン※14が映っている。『すまんな、ピンクスキン。だが一部の者に俺が死んだと思わせる必要があったんだ。』 アーチャー:「私もか?」 『しばらくぶりなのはわかってるが、確かまだお前は俺に借りがあるな。』 「覚えてるよ。だが今はタイミングが悪いんだ、シュラン。我々が向かってる場所は知ってるはずだが。」 『俺はもう帝国防衛軍の一員じゃないかもしれんが、連合の計画なら知ってる。』 「もう計画じゃない。憲章調印のために地球へ向かっている。」 『式典まで 3日以上ある。俺の計画が成功すれば、故郷には余裕で間に合う。』 再び昔の制服を着たライカーが、隅で話を聞いている。 アーチャー:「…残念だが今迂回するのは問題外だ。」 シュラン:『俺の子供が誘拐された…拉致だ。俺に借りがあるだろう。』 「子供がいるなんて聞いたことがない。」 『ジャメルが 5年前に産んだ。娘だ。奴らに奪われた。』 「誰だ。」 『昔の仲間だ。いろいろあってな。乗船させてくれ。』 「……ランデブーコースを取れ。」 ライカー:「コンピューター、プログラム停止。」 アーチャーたちの動きが止まった。 ライカー:「一時間進めろ。客観モードに変更。」 クルーの位置が変わり、アーチャーが消えた。 ライカーの姿は、本来の制服に戻る。ブリッジの中を歩いていく。 作戦室で話しているシュラン。「帝国防衛軍で船を指揮するより、民間人の生活の方が危険だなんて誰が考える。」 ライカーがドアを通り抜けた。 アーチャー:「なぜ君が去ったか、いまだにわからない。英雄だったのに。」 シュラン:「家族のいる英雄だ。…いつも、変化はいいことだと思ってきた。俺が馬鹿だった。」 「何で自分の死を偽装したんだ。」 「何度か間違った選択をしてしまった。ひどい奴らを仲間に選んだんだ。怪しいビジネスに手を出してる。俺が奴らの物を盗ったと思ってる。防衛軍の古い同僚たちに頼んで、自分を消すことに成功した。そして上手くいってた。3年近くはな。」 「君の『仲間』が見つけたのか。」 「6ヶ月前だ、それ以来逃げ続けている。奴らは真夜中に娘をさらったんだ。俺は隣の部屋で、熟睡してた。役立たずだった! それから一週間になる。奴らの物を返さなければ殺すと言ってる。」 「それなら欲しい物をくれてやればいい…」 「もってないんだ! 手に入れたこともない。」 「でも計画があるんだろ。」 座って見ているライカー。 シュラン:「俺の全てを懸けることになったが、奴らが娘を隠している場所を突き止めた。貿易用の辺境基地にいる。ライジェル10号星※15だ。」 アーチャー:「そこなら知ってる。」 「船長、俺はあいつらのことには詳しい。出し抜ける。前やったようにな。だが最低 7人必要だ。助けてくれるよな。…まだ小さい子なんだ。」 アーチャーの部屋にいるトゥポル。「彼は明らかに犯罪者です。ご自分でおっしゃったでしょう。」 アーチャー:「いかがわしい奴らと関わったと言ってる。だからといって犯罪者というわけじゃない。」 「我々が式典に遅れれば、広範囲に影響が及びます。」 「シュランが助けてくれなかったら、私はズィンディ兵器に乗り込めなかった。それを忘れたのか。今度の同盟は友情と忠義に基づいている。シュランが今求めているものと同じだ。」 「彼は信用できません。」 「アンドリア人を信用してないんだろ。一度も信用したことはない。君とさほど変わらない、ヴァルカン評議会にも感謝しなくちゃな。彼らがアンドリアと協力したいと望めば、君はシュランを『疑わしき者は罰せず』と認めることしかできない。…我々が10年前に会ったとき、私は君を信用してなかった。というよりも、ヴァルカン人は誰もな。君のおかげで変わったんだ、忘れたか。私は君の話を聞いた。今度は私の話を聞く番だ。彼に背を向けることはできないんだ、トゥポル。理解しようと努力してくれ。」 「努力します。」 「…それと…時間が空いたら厨房に寄ってくれ。シェフが最後のディナーのために、みんなでメニューを作るんだ。全員の好きな料理を知りたがってる。」 ライカーはドアの前に立ち、2人の話を聞いている。 トゥポル:「船には 83人いるんですよ。」 アーチャー:「会ってくれるな?」 ベッドの上に乗ってきたポートスとじゃれるアーチャー。「心配いらないぞ。シェフは最低 6種類のチーズを約束してくれた。」 シェフが食材を刻んでいる。 トゥポル:「提案には感謝しますが、私に特別な料理を準備する必要はありません。」 シェフは、ライカーだった。「いいから。もうプロミーク・スープを煮詰め始めた。あと知りたいのは、あんたが好きな根っこの種類さ。」 トゥポル:「そういうことなら、私は意外性を好みます。」 「椅子にかけて。話し相手が欲しかったところだ。アンドリア・キャベツスープ※16を今夜急いで用意しなくちゃならないかもしれないって、噂を聞いたんだが。」 「シュランのシャトルを収容するのに、もう5時間費やしました。その上ライジェルへ針路を迂回させれば、最低まる一日はかかります。」 「子供が危ないからね。」 「…この船で知らないことはないんですか。」 「ジョナサンは情け深い男だ。もうわかってると思うが。」 「船長の同情のせいで、何度もトラブルに巻き込まれました。今度の式典に我々は間に合わないかも。」 「心配しなさんな。俺の直感じゃ上手くいくって。お茶は?」 「ありがとう。」 「フロックスが一番大きなエドシアン・コバンザメ※17をくれるんだ。」 「何ですって?」 「…ナマズに似てる。味も似てるといいがね。タッカー少佐はナマズに目がないんだ。…やっぱり奴と別れて寂しいのかい?」 「今朝彼とプラズマアレイの再測定を行いました。」 「そういう意味じゃないよ。」 「親密な関係のことを指しているのなら、それは 6年前に終わりました。」 「まだ答えを聞いてない。別れて寂しいのか?」 「私はヴァルカン人です。『寂しい』とは思いません。」 「ああごめん。忘れてた。奴もあんたみたいに、今度の式典が成功するか心配してるのかい?」 「トリップが船長の決定を疑問に思うことはほとんどありません。」 「命令を鵜呑みにする奴には思えないけどね。」 「…違います。単に、大抵の場合は船長に同意しがちだってだけで。トリップは信頼しています。」 「…これ剥くのを手伝ってくれないか。」 ニンジンを手にするトゥポル。「ここのクルーになる前は、命令に従うことより大事なことなんて想像したこともありませんでした。」 ライカー:「それで今は?」 「…地球人は時には直感に従うべきだと信じています。非常に非論理的な試みですが、私も受け入れました。」 「…コンピューター、プログラム停止。…ありがとう。」 動きを止めたトゥポルの、頬にキスするライカー。 |
※8: CGI ※9: Admiral Pressman エリック・プレスマン (Erik Pressman) のこと。TNG第164話 "The Pegasus" 「難破船ペガサスの秘密」より。なお宇宙暦も同エピソードで言及された数字と全く同じです。同時期を表す場合も、少しはズラすのが通例ですが…。そもそも本来はエンタープライズが小惑星内に閉じ込められ、ライカーが真相を話した後の宇宙暦なので、時間的にも全然合っていません。安易に同じ数字にしてしまった感がのこります ※10: 数人のフェレンギ人がおり、明らかにピカードらしい後ろ姿も一瞬映ります。というのは、この冒頭シーンのみ TNG第72話 "Menage a Troi" 「愛なき関係」の映像が使われているためです。ラクサナとトロイがいた部分に、ライカーと (現在の) トロイが置き換えられています。ほんの一瞬ですがピカードの前にいるデータも見えるようです。その上、左の方に当時のライカーが座っているのがわかります (つまりライカーが 2人!)。以降のライカーとトロイがアップになって話すシーンはもちろん新録で、テン・フォワードの一部のセットが新たに再現されています。テーブル類や壁のライト、3Dチェスは当時のものだそうです ※11: Deanna Troi (マリーナ・サーティス Marina Sirtis 映画 "Spectres" (2004) で、リンダ・パクと共演) TNG レギュラー。(公開上は) 映画第10作 "Star Trek Nemesis" 「ネメシス/S.T.X」以来の登場。VOY第130話 "Pathfinder" 「遥か彼方からの声」などでも。希望声:高島雅羅 ※12: 当時の設計図を元に、新たに作り直した再現セット ※13: 少ししか映りませんが、明らかに当時のエンタープライズ-D のものとは異なります。予算節約のため、映画 (つまりエンタープライズ-E) のが使われたそうです ※14: Shran (ジェフリー・コムズ Jeffrey Combs コムズは DS9 の最終話 "What You Leave Behind" 「終わりなきはじまり」にも出演しました) ENT第90話 "The Aenar" 以来の登場。希望声:中村秀利 ※15: Rigel X ENT パイロット版 "Broken Bow" 「夢への旅立ち」より ※16: Andorian cabbage soup ※17: Edosian suckerfish ENT第38話 "The Catwalk" 「嵐を告げる男達」などでエドシアン・ナメクジ (Edosian slug) が言及 |
エンタープライズ-D。 コンピューターに、「U.S.S.ペガサス乗員名簿」と表示されている。 クルーの情報が順番に映されていく。ロナルド・ムーア中佐※18、ドーン・ヴェラスケス大尉※19、エリック・モッツ乗組員※20、アンディ・シモンソン乗組員※21、フィル・ウォレス少尉※22。 観察ラウンジ※23で操作しているのは、ライカーだ。 トロイがやってきた。「ここにいたの。…知り合い?」 ライカー:「知り合いだった。」 「ペガサスの?」 「フィル・ウォレス。ハンドボールが上手かった。プレスマンは昇進を考えてたんだ。」 「何人死んだの。」 「…71人だ。我々 9人以外はな。」 「船が爆発してないって知って、どう思ってるの。」 「どう違うんだ。71名が死んだ。」 「罪悪感を感じてるのね。何らかの意味で責任があると思ってるんのね?」 「君はエンパスだ。言ったらどうだ。」 「…ほかのことなのね。あの船をもう一度目にすることに罪を感じてる。」 「話題を変えよう。いいかな。」 「いいわ。…ホロデッキはどうなったの。」 「アンドリア人を乗せて、ライジェル10号星に向かってる。」 「何かヒントを得られるかもって言ったでしょ。」 「忠告通り、シェフになったよ。君の言うとおりだった。トゥポルは心を開いてくれた。」 「タッカー少佐と会った?」 「いや、まだ機関部には行ってない。NX-01に乗ったことは?」 「プログラムをやったことはないわ。」 「船自体はどうだい。」 「小さい頃に行ったはずだけど、博物館の船が全部ゴッチャになっちゃってる。」 「じゃあ丁度いいな。一緒に来いよ。」 「一時間後に約束があるんだけど。」 「そんなに時間はかけないから。さあ。」 NX-01 の作戦室にいるライカー。「こっちの拘束室の方が広いな。」 トロイ:「200年経てばいろいろ変わるわ。気をつけて!」 梁に頭をぶつけそうになるライカー。「水槽がない。」 トロイ:「アーチャーは水槽なしでよくやっていけたわね。」 ドアの前に立つ。自動で開かないことを不思議に思う。 ライカー:「失礼。」 代わりにスイッチを押した。 無人のブリッジに入るライカー。「でも犬を飼ってるんだ。」 トロイ:「そうよ、思い出した。三銃士の一人ね。」 「ポートスだ。」 船長席に座るトロイ。「あー、快適。」 ライカー:「副長の椅子はなしか。」 「多分アーチャーは自分の席に座られても、ピカード艦長みたいにうるさくなかったんじゃない?」 トロイはトゥポルの席のスイッチを押した。スコープが出てくる。「こういうのを写真で見たことあるわ。」 「カークの船にもあったな、確か。」 ライカーは廊下を歩く。「機関部はこっちだ。」 トロイ:「クルーがいない船は何だか寂しいわね。」 「コンピューター、適切なクルー乗員を追加してくれ。客観モード。」 クルー数名が現れた。 トロイ:「良くなったわ。」 機関室のリード。「記憶が正しければ、ライジェル10号星はかなり不快な物質であふれてましたね。それにシュランの計画も彼が言うほど単純にいくか、まだ疑ってます。」 タッカー:「まあ船長が憲章調印のこんな直前になって、俺たちを危険にさらすとは思えない。」 「気に入りませんね。…一体何をしてるんです?」 「この注入機は半年ごとに洗浄が必要なんだ。重水素フィルターは綺麗にしたか。」 機関部員※24:「3個所以外は終わりました。」 「よし。急いでくれ。」 「了解。」 リード:「何の意味が? 船は来週には、引退した艦隊に入るんです。」 タッカー:「俺はこのエンジンの大部分を造った。できるだけ長く面倒見るつもりだ。」 周りを見る。「よく走ったよな、マルコム。終わりがくるなんて考えたこともなかった。」 「… うなずくタッカー。 リード:「船長は次のエンタープライズがすぐできるだろうと考えてます。」 タッカー:「だろうな。」 「でも違う船だ。」 「…いいじゃないか。…行こう。」 トロイたちも機関室にいた。「辛いわね。自分が戻れないなんて、タッカー少佐は考えてなかったんだから。」 司令室でモニターを見るアーチャー。「情報はどれほど信用できるんだ。」 シュラン:「奴らは犯罪者だが、名誉は心得てる。タラ※26をレベル4 で捕らえていると約束した。」 指さす。「アメジストはできたのか。」 トゥポル:「あなたが我々にくれた写真は写りが悪いものでしたが、複製は本物に見えると確信しています。」 「俺が盗んだと思われてるテネビア・アメジスト※27は完璧なものだ。間違いなく拡大装置をもってる。」 「偽造と見破るにはスペクトル・マイクロメーターがいります。」 アーチャー:「何人で奴らの前に現れるつもりだ。」 トロイ:「コンピューター、プログラム停止。」 止まったアーチャーに近づく。「ハンサムね。」 ライカー:「バカな真似はよしてくれよ。」 笑うトロイ。「遅れたらレッジ※28が怒るわ。まだ残るの?」 ライカー:「ああ、もう少しね。」 「がんばってね。コンピューター、アーチ※29。」 トロイはホロデッキを出ていった。 「コンピューター、ライジェル10号星に着くまでの時間は。」 コンピューター:『16時間22分です。』 「その時間へ進めろ。客観モード継続。」 アーチャーたちの位置が変わった。「静止軌道へ乗れ。」 メイウェザー:「了解。」 スクリーンにライジェル10号星が映っている。 「チームを組んでくれ。発着ベイで会おう。」 タッカー:「船長、ちょっといいですか。…俺たちだけでやれます。」 「ああ、そりゃ嬉しいな。」 「言いたいことはわかるでしょう。船長の人生で一番大事な日が控えてます。到着するのをたくさんの人が待ってるんですよ。」 「心配してくれるのはありがたいが、大丈夫だ。」 「自分を危険な状況におく必要はありません。何度でも言います。我々でやれます。」 「ライジェルは最初に来た場所だ。覚えてるか。そして、最後になろうとしてる。おあつらえじゃないか。なぜ楽しまない。」 アーチャーはリードやシュランと共に、ターボリフトに乗った。 タッカーも続く。 シャトルポッドを操縦するメイウェザーは、今度も寒冷地用の制服を着ている。「対流圏を抜けます。少し揺れるかも。」 ライカーは MACO として乗り込んでいた。 後部座席で話すトゥポル。「シェフにもう会いましたか。」 タッカー:「…今朝一番にね。君は。」 「…彼はあなたのことを話しました。」 「…俺?」 話を聞いているライカー。 トゥポル:「私達です。」 タッカー:「俺たちがどうした。」 「大事なことじゃありません。」 「…なら何で持ち出したんだ。」 少し揺れるシャトル。 「……私と別れて寂しいですか。」 「それはつまり…」 「ええ。」 「いつ終わったか知ってるだろ。」 「そういうことを聞いているのではありません。」 「ああ、まあ…そうだな。多分…時々は。」 「あの頃を考えたことは、ずっとありませんでした。」 「ヴァルカン人で得したな。」 「…シェフと話した後、私達はもう二度と会えないかもしれないと思ったんです。」 「何を言ってるんだ?」 「違う職務に就いて、何も連絡する方法もなく…」 「連絡する方法ならいくらでもある。音信不通にはならないと保証するよ。そんな風に考えるのはよせ。」 「…いつになるかわかりませんが…あなたと別れて寂しく思うでしょう。」 通信が入る。『アーチャーより第2シャトルポッド。』 メイウェザー:「どうぞ、船長。」 『シュランが連絡してきた。全て準備できてる。ついてきてくれ。』 「わかりました。」 前にもう一隻のシャトルが見えている。 歩くシュランとトゥポル。シュランは箱を持っている。 前から異星人※30たちが姿を見せた。「そこで止まれ。」 囲まれる 2人。 異星人:「間違いじゃなけりゃ、お前はアメジストのありかを知らないはずだったな。」 シュラン:「娘はどこだ。」 「子供が消えたら記憶が甦るとは面白いな。なあシュラン。」 「どこにいる。」 「お前はまともな結婚生活を送ってると思ってた。そのヴァルカン人は何だ。」 「お前の仲間には興味がない。だから俺にも聞くな。」 「ケースを置いて開けろ。」 トゥポル:「子供を返すのが先です。」 「2人とも撃ち殺せるんだぞ。」 「このケースは絶対に開けられません。約束します。」 「女に交渉させるのかよ、シュラン。」 シュラン:「聞こえただろ。」 合図する異星人。アンドリア人の女の子が連れ出されてきた。 シュランに近寄ろうとするが、止められるタラ※31。 シュラン:「大丈夫か。」 タラ:「お腹空いた。」 異星人:「さあケースを開けろ。」 ロックを操作するトゥポル。ケースが開いた。 中には巨大な宝石が入っている。 微笑む異星人。「床に置け。」 シュランはアメジストを置き、異星人の方に押し出した。 異星人:「もう下がれ。」 シュラン:「その子を彼女に連れていかせてくれ。」 「いいだろう。だがお前は動くな。一歩でも動けば、この可愛い青い子は父親と一緒に帰れなくなるぞ。」 しゃがむシュラン。タラは駆け寄り、抱き合った。 シュラン:「トゥポルと行くんだ。一緒なら安全だ。食べ物もくれる。」 トゥポルを見るタラ。 シュラン:「父さんの言うことを聞くんだ。」 タラと手をつなぐトゥポル。シュランの肩に手を置いた。 うなずくシュラン。トゥポルとタラは歩いていった。 異星人:「さあ下がれ。」 従うシュラン。異星人はアメジストを手に取り、スキャナーで調べ始める。 その様子を、アーチャーが上から見ていた。隣のタッカーに向かってうなずく。 装置を操作するタッカー。 シュランは目に手をかざす。 調べ続ける異星人。「何をしてる。」 タッカーは装置を起動させた。 すると、アメジストが強力な光を発した。異星人たちは皆、目を覆う。 逃げ出すシュラン。まだ光を出し続ける宝石を投げ捨てる異星人。 シュランを追うが、前にフェイズ銃が浴びせられる。 リード:「ジッとしてれば傷つけるつもりはない。」 上に気づく異星人たち。アーチャーやライカーも武器を向けている。 反撃する異星人。撃ち合いになる。 ライカーも撃っていく。次々と倒されていく異星人の一味。 異星人の武器が、タッカーのいた床に当たった。陥没し、ぶら下がるタッカー。 手を差し出すアーチャー。リードが銃で援護する。 アーチャー:「つかまれ!」 リードは異星人を倒した。 上りきるタッカー。「ありがとうございます、ボス。」 アーチャー:「…いつでも構わんさ。」 |
※18: Commander Ronald Moore 映像効果監修者 Ronald B. Moore にちなんで ※19: Lieutenant Dawn Velazquez 製作者にちなんで ※20: Crewman Eric Motz ※21: Crewman Andy Simonson 乗組員の二人の階級は、略称が CM ではなく CN になっているような…。Crewman, Noncommissioned の略でしょうか。映像効果補にちなんで ※22: Ensign Phil Wallace 以上 5人は、いずれも古い (TNG 初期) 制服 ※23: 再現セット。当時より多少広くなっていますが、テーブルや窓の部分は当時のもの (映画ではエンタープライズ-E 用に改造されたそうです)。ただし植物や、変な丸い飾りがあるのは異なりますね ※24: 機関部員を演じているのは、NASA の宇宙飛行士であるマイケル・フィンク (Michael Fincke、マイク Mike とも)。隣にいる機関部員も (セリフはありませんが) 宇宙飛行士の Terry Virts です (NASA 公式サイト)。フィンクは国際宇宙ステーションに滞在中にスコット・バクラと会話し、6ヶ月の任務後にはロシア人宇宙飛行士のゲナディ・パダルカと共に「宇宙艦隊賞」を受け取っています (公式サイト) ※25: TNG 最終話 "All Good Things..." 「永遠への旅」より ※26: Talla ※27: Tenebian amethyst ENT第10話 "Fortunate Son" 「復讐の連鎖」でテネビアのスカンク (Tenebian skunk) が言及 ※28: Reg レジナルド・バークレイのこと。TNG第69話 "Hollow Pursuits" 「倒錯のホログラム・デッキ」など ※29: 本来アーチはホロデッキ内部から外部にアクセスするための装置で、退出するだけなら不必要なはず? ※30: Alien (Jonathan Schmock) ※31: Talla (Jasmine Anthony 映画「キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン」(2002) でデビュー) |
シャトルポッドから出てくる一行。 シュラン:「本当に大丈夫なんだろうな。」 アーチャー:「君たちを『仲間』からワープ4 で遠ざけた方が、気分がいい。」 「俺のシャトルは遅いかもしれんが、奴らの船は何とかワープ2 を出せる程度だ。」 「いずれにせよ、明日の夜には出発してもらう。奥さんに連絡を取って、朝に出会えるように伝えよう。」 「俺の計画は数時間しかかからないと言ったろ。」 小突くシュラン。 「礼はいらないよ。」 シュランは笑った。 アーチャー:「部屋に行く前に、娘さんをフロックスに診せた方がいい。」 タラを抱き上げるシュラン。「仰せのままに、船長。」 タラ:「ありがと、ピンクスキン。」 シュランは歩いていった。 タッカー:「俺の命を救うのにも疲れたでしょう。」 アーチャー:「一緒に来るなっていう忠告を聞かなくてよかったよ。」 「ええ、お互い様です。だって、下じゃ船長はもう少しで死ぬところだった。そんなこと話しても、式典じゃ大受けしませんからね。」 「文書の調印は簡単さ。新しいエンジニアを訓練するのは…本当に面倒だぞ。」 MACO として、2人を見ていたライカー。 デヴォリン星系の小惑星地帯に入った、エンタープライズ-D。 窓から小惑星が見える、トロイの部屋※32。 通信が入る。『データ※33よりカウンセラー・トロイ。』 トロイ:「何、データ。」 データ:『議論を今続けるのは、適切かどうかと思いまして。宇宙飛行が私のポジトロニック網に及ぼす、長期的な影響についてです。』 「それは『お預け』ってことでいいかしら。」 『カウンセラー、預かるのは結構ですが、具体的には何を預かればよろしいのでしょうか※34…』 ドアチャイムが鳴った。 「データ、また後でね。どうぞ。」 ライカーだ。「受付時間が過ぎてるのは知ってるが。」 トロイ:「どうしたの。」 「ペガサスがもうすぐ見つかる。」 「まだ決めてないのね。」 座るように示すトロイ。「ホロデッキは?」 「アンドリア人の娘を助けた。」 「それであなたも今、正念場に直面してるわけね。」 「これは極秘だということを約束してほしい。」 「もちろんよ。」 「アルジェロン条約について何を知ってる。」 「2311年ね。ロミュラン中立地帯が見直された。」 「それに宇宙艦隊艦での遮蔽技術の使用を禁じた。」 「…ペガサスに?」 「宇宙艦隊保安部のあるグループが、秘密裏に試作品を開発した。プレスマンはテストを指揮してた。」 「だからロミュランが見つける前にって焦ってるのね。」 「事故で 71名が死んだ。…遮蔽装置をテストしていた。」 「…全て隠蔽されたの。」 「我々生き残った 9人は、秘密の誓いを立てた。」 「それを 12年間も耐えてたの?」 「実験を中止したところから再開させる気なんだ。」 「本当なの?」 「プレスマンが自分で言ってた。彼らがやってることは間違いだ。条約を脅かす。」 「…だからピカード艦長に話したいのね。」 「俺は秘密の誓いを立てた。プレスマンは今も艦長より階級が上だ。」 「それで…あなたはこれまでのキャリアで易しい決断を下すときにも、そのことをずっと心に秘めてきたのよね。今回も間違いなく正しい決断を選ぶはずよ。」 「そうだったらいいんだがな。」 厨房で料理を手伝っているリード。「あの人は機転の利く方じゃない。彼のクニじゃ、田舎者と呼ばれる類かも。どうしても、アーチャー船長の彼に対する見方は理解できなかった。」 シェフのライカー。「もっと薄く。もうちょっと薄く転がすんだ、こんな風に。」 リード:「ああ、そうかそうか。」 「それで?」 「それだけだよ、ほんとに。以前は第一印象が大事だと考えてた。でも常に正しいとは限らない。正直言って、一ヶ月ももたないだろうと思ってた。船長と付き合いの長い友達であってもね。でも今は、彼がいないこの 10年間なんて想像できない。」 ライカーは尋ねた。「彼に惹かれたことは?」 サトウ:「…少しあるかも。タイプだなんてほとんど考えたこともなかった。彼、大学も出てないのよ。機械のことはボートのエンジンで学んだらしいわ。…言語にもあまり興味なし。…何とか英語をしゃべれるだけ。…でも見せ場を作るの。…まだかっこいいとは思ってるわ。このことは黙っててね。」 「もちろんさ。船長は知り合って長いって言ってたな。」 メイウェザー:「20年近くになる。船長にフロリダのどっかの海岸で、スキューバダイビングを教えたんだ。」 ライカー:「ああ、強く押しすぎだ。もっとゆっくり、しっかり動かして。」 「ああ、ごめん。」 「謝らなくてもいい。」 「2人は時々、自分たちにしかわからない言葉を使うんだ。それだけ長く一緒にいたから。」 「トリップはピカードを殴ったことはあるかな。」 「…誰って?」 「…アーチャーだよ。アーチャー船長を。」 「知る限りないね。いざって時は、タッカー少佐がいつも上手くやるんだ。どうするの。」 「ああ、あんまり大きくしないで。そこで折り曲げて。」 ライカー:「それでいい。」 フロックス:「ええ。それに少佐はいつも無理をします。極度の疲労に達することもしばしば。少なくとも2回、休むように強制的に命じました。」 「休むように?」 「ええ。トゥポルから神経マッサージ治療を受けるのにあまり乗り気ではありませんでしたが、そうしないと鎮静剤中毒になってしまう。」 「確かその時に…」 「2人の関係が始まった? ふむ、その通り。ある時少佐があまりに疲労していたので、6時間の睡眠を求めざるをえませんでした。4時間に減らせと交渉してきた。」 笑うライカー。 フロックス:「非常に頑固な若者です。」 こねるのを続ける。「ア、ハ、ヘ! こりゃほんとに面白い。」 「で、奴は命令に従った?」 「選択肢はありませんでした。」 「…いつも選択肢はあるもんさ。」 船長用食堂のタッカー。「それで、この同盟は長続きすると思いますか。」 「我々としてはそう願いたいね。近くには何千という惑星がある。まずは始めないと。」 アーチャーは酒を飲んでいる。 「誰が予想したでしょう。ヴァルカン人とアンドリア人が同じベッドで寝るなんて。」 「テラライト人も、アンドリア人の大ファンってわけじゃなかったな。このウィスキーは、特別なボトルなんだ。ゼフラム・コクレインが父にくれたものだ。ワープ5センターの起工式の日にな。」 またグラスに注ぐアーチャー。 「今やここで…ワープ7 達成に乾杯してる。」 「 「…もうスピーチは書いたんですか。」 「いつも試験前に詰め込んだんだ。まだ 3日残ってる。」 「船長の人生最大の日に、一夜漬けするつもりですか。」 「我々の人生最大の日だ。」 「ああ船長、否定する気はありませんが…みんなが注目してるのはあなたです。」 船が揺れた。 連絡するアーチャー。「アーチャーよりブリッジ。どうした。」 ライカーもそばにいる。 トゥポル:『攻撃を受けています、船長。小型船です。』 アーチャー:「何者だ。」 『まだわかりません。』 さらに揺れが続く。 トゥポル:『侵入者警報。』 廊下を急ぐアーチャーとタッカー。 その前に、あの異星人たちが現れた。「シュランと子供を迎えに来た。」 タッカー:「奴らの船じゃ追いつけないって言いませんでしたっけ。」 アーチャー:「シュランに教えとかなくちゃな。」 後ろも阻まれた。 異星人:「選択肢は少ないぞ。」 アーチャー:「シュランは 6時間前に出ていった。遅かったな。」 「嘘だ。奴のシャトルはまだ発着ベイにある。殺せ。」 タッカー:「待て。待ってくれ。」 アーチャー:「トリップ、大丈夫だ…」 「そりゃそうでしょうね。俺がシュランのところへ連れて行く。居場所を知ってるんだ。」 「命令だ、少佐。」 「聞こえただろ。俺が案内するって言ってるんだ。」 「トリップ!」 異星人:「いいだろう。後ろを向け、2人ともだ。」 タッカー:「おい、この人は船長だぞ。」 アーチャー:「もういい。」 「俺のボスだ。命令に反抗した、一緒に行きたくない。」 「トリップ、もうやめろ!」 「いいか。殺したら場所は教えないが、頼むから黙らせてくれ。」 アーチャーは殴られた。倒れる。 歩き出すタッカー。 異星人:「止まれ。俺がこいつを生かしたままおいていくと思ったのか。」 タッカー:「意識を失ってる。問題は起こせない。」 部下に命じる異星人。「ここに残れ。俺たちが 10分以内に戻ってこなかったら、殺せ。」 タッカー:「言ったことを聞いてなかったのか。殺したら手は貸さない。10分以上かかるかも。」 「シュランのところへ案内しないと、今この場で殺す!」 「わかった、わかったよ! …いいアイデアがある。俺がシュランを呼べばいい。どこにも行かなくていいんだ。」 部下たちに指示する異星人。「…絶対に目を離すな。」 タッカー:「自分で見てればいい。これはただの通信ステーションだ。」 そばの扉を開け、中に入る。「ここを開ければ、セキュリティプロトコルを迂回できる。いいか。」 「手は挙げておけ、見えるようにな。」 「いいだろう。」 タッカーはパネルを外し、一本のケーブルを抜いた。「あとは、こいつをあのパネルの中にあるリレーにつなぐだけだ。」 上を指さす。 異星人:「動くな。代わりに開けろ。そこに武器があったら、お前は船長より先に死ぬことになる。」 部下が開けた。特に異常はない。 タッカー:「満足したか。」 異星人:「…続けろ。…急げ。時間がないぞ。」 「最後に一つだけ言っとく。…全員地獄に堕ちろ。」 タッカーはケーブルをつないだ。その瞬間、強烈な爆発が起こる。 異星人は皆吹き飛ばされ、炎が噴き出す。 アーチャーは目を覚ました。辺りに煙が漂う。 大きく壊れ、蒸気が噴き出す廊下。異星人たちが倒れている。 アーチャー:「トリップ?」 火花が飛ぶ。 奥へ進むアーチャー。ライカーはその様子を見ている。 医療技師※35。「反応ありません。」 フロックス:「シンソ活性剤を 2%増やせ。」 アーチャー:「ドクター。」 「プラズマは超高温でした。肺を焼いています。高圧室を初期化して。」 ライカーも医療室にいる。 タッカー:「す、すみません…ライフルで殴られちゃって。俺はただ…」 ひどい火傷だ。 アーチャー:「わかってる、トリップ。落ち着くんだ。もう大丈夫だ。」 「遅れますか…。」 「いや。予定通りだ。スピーチを書く時間もある。」 「…そりゃよかった。…もう少しで…」 タッカーの言葉が止まる。 警報が鳴る。 フロックス:「すぐに高圧室に入れないと!」 運ばれるタッカー。 フロックス:「離れて!」 ベッドの上でタッカーはアーチャーに向かってウィンクし、微笑んだ。 そのまま筒状の部屋に入れられる。ドアが閉じた。 アーチャーはフロックスを見た。 |
※32: これも再現されたセット ※33: 声のみの出演ですが、きちんとブレント・スパイナー (Brent Spiner) が演じています。希望声:大塚芳忠 ※34: 原語では、トロイ「延期 (rain check) させてもらっていいかしら」 データ「カウンセラー、お望みなら雨をチェックしてもよろしいですが、私の中に水は入っていないと保証…」 ※35: Med Tech (Jef Ayres) |
飾られている、スキューバダイビングをしている写真を手にするトゥポル。ほかの荷物の上に置いた。 たたまれた制服を手に取り、その匂いをかぐ。 アーチャーが部屋に入った。「手伝おうか。」 トゥポル:「…いえ、結構です。」 「ご両親にか。」 「…お二人は式典に出席されるんですか。」 「トリップはそれ以外は望んでなかっただろうって、話したよ。」 アーチャーは微笑み、置いてある物を手にした。「これも忘れるな。」 そのフランケンシュタインの怪物の人形を手にするトゥポル。「…お会いしたかった。」 アーチャー:「ご両親に?」 「ええ、ぜひ。」 「お二人は少し変わってるんだ。トリップのユーモアセンスのルーツが、わかるだろう。」 笑うアーチャー。 鏡に映るライカー。 トゥポル:「私の母も多少変わってましたから。」 アーチャー:「そうだったな。」 「…トリップは私に話しました。年月が過ぎれば、母が死んで辛く思うこともなくなるだろうって。でも間違いでした。日増しにその思いが強まっているのがわかるからです。…どうしてそんなことを言ったんでしょう。」 「…時間が経てばどんな傷も癒える。だが離れるほど情は深まるとも言う。確かにややこしいな。…感情にはお互い矛盾するところがある。」 「我々が抑え込むのを疑問に思うんでしょう?」 「…10年前船をもった時、自分は探検家だと思った。どんな危険も冒す価値があると考えた。新しい惑星、新しい星の向こうには、素晴らしい…偉大なものがあるからだ。……そして今トリップが死に、私はこれまでやってきたことにどれほどの価値があったか、スピーチしなくちゃならん。」 「トリップならまず最初に、価値があったと言ってくれるでしょう。」 厨房のライカー。 やってきたのはタッカーだ。「ナマズのフライ、揚げたトウモロコシ添えだ。」 ライカー:「どうやら、船長から俺が会いたい理由を聞いたみたいだな。」 笑うタッカー。「いいか、一週間後には本物を食べられるんだ。モビールに降りるときに部下も連れて行く。」 ライカー:「簡単な仕事だな。」 「船長はミートローフにしたんだろ。」 「まだ話してないよ。」 「トゥポルはどうだ。あまり協力的じゃないだろうね。様子をうかがった方がいい。」 「もうプロミーク・スープを作り始めた。」 鍋を見るライカー。「いくつか材料を選んでもらうだけだ。一時間もすればここに来る。シュランを迎えに行くそうだな。」 「信じられるかい。みんな奴はとっくの昔に死んでると思ってた。」 「それで船長が先を急ぐとは思わなかったのかい?」 「サンフランシスコに戻るってこと?」 「そうだ。」 「ああ、こんなの船長には問題にならない。絶対さ。…ニンジン余ってるかい。」 「まだ剥いてないぞ。」 「いいんだ。」 かじるタッカー。「いいか、自分では認めないだろうが、今度のことは船長にとってデカい意味があるんだ。憲章に調印する一人になれて、船長は本当に誇りに思ってる。そう思うべきだよ。」 「まるでジョナサン・アーチャー・ファンクラブの生涯会員だな。」 「俺が信頼した人間は、片手で数えられるほどだ。…『嘘をつかない』とか、『金を盗らない』とかいう信頼って意味じゃない。何があろうと傷つけないっていう類の信頼さ。いつも近くにいる。どんなひどいことになっても。あんた、そんな人間いたかい。」 「ああ。…1人か 2人な。」 「…そうだ、任務に戻る前に荷造りもやっとかなくちゃな。」 出ていくタッカー。「どうするか決めたのかい?」 動きを止めるライカー。「…どうするって?」 タッカー:「別の船と契約するのか。それともバークシャー※36で前言ってた小さなレストランを開くのか。」 「そうだな、まだ決めてないんだ。アドバイスあるかい。」 「いいや。」 2人は笑った。 タッカー:「でも間違った選択はしないさ。」 ニンジンを持って出ていった。 広大な式場には、星々をかたどった青い紋章が掲げられている。 上の方の席に、リードがいた。「ここで席は合ってるのかな。」 メイウェザー:「そうですよ。」 「私には、あまり VIP とは思えないんだが。」 サトウ:「提督は式の進行を一望できる場所にしたかったんでしょう。」 「この距離じゃ、アンドリア人とテラライト人の区別もつかない。」 メイウェザーに尋ねるサトウ。「…スティルウェル船長※37に、もう返事したの?」 メイウェザー:「もう少し待ってもらうように言ったんだ。アーチャー船長がこれからどうするか決めるまで。」 その後ろの通路では、トロイが中を見渡していた※38。 リード:「新しい船のブリッジに立つだろう、一ヶ月の給料を賭けてもいい。ワープ7 の美人には抵抗できないはずだ。」 サトウ:「もう提督昇進の打診を受けたって聞きましたけど。」 メイウェザー:「マルコムの言うとおり。ずっとデスクにつかせるなんてできないよ。」 リード:「ついていくのが一番賢いかもな。私はそうするつもりなんだ。」 礼服姿のアーチャーは、パッドを読みながら歩いていた。 ボタンを直そうとするトゥポル。「動かないでください。時間に余裕をもっていれば、スピーチを暗記する暇もあったんです。」 アーチャー:「中学の時の先生みたいだな。」 フロックス:「ここには 18カ国の星から代表が集まっています。フフン、いい兆候です。この同盟がいつの間にか広がっても、驚きませんよ。十分誇りをもつべきですよ、船長。」 「このスピーチを突っかからずに言えたら、誇りにするよ。」 「…そういうことじゃありません。」 「…意味はわかってるさ、フロックス。もちろん嬉しいが、私のために開かれるんじゃない。」 トゥポル:「どうして多くの地球人は、正当な功績を受けるのを拒否するんでしょう。謙虚や謙遜は全く非論理的なことが、よくあります。」 少尉※39が来た。「準備ができたらいつでもどうぞ、大佐。」 フロックス:「さてと、3人の妻を待たせてるんだった。行った方がいいですね。幸運を、船長。」 アーチャーの肩に手を置く。「でもいつも強運がついていましたね。」 微笑み、唇を上まで曲げる。 アーチャー:「ありがとう、ドクター。」 歩いていくフロックス。 アーチャー:「…君も出た方がいい。私がヘマするのを見逃したくないだろう。」 トゥポル:「ここに残るつもりです、もしよろしければ。」 「人混みは嫌いだったな。」 階段を上っていくアーチャーに、トゥポルは言った。「船長。…とても御立派です。」 一度は上を見たアーチャーだが、戻ってきた。トゥポルを抱き締める。 再び上り出す。その先に広がる式場から、盛大な拍手が聞こえてきた。 中央に向かってアーチャーが歩くのが、小さく見える。脇には宇宙艦隊の士官が並んでいる。 リードたちも拍手する。 トロイに近づくライカー。 トロイ:「緊張してた?」 ライカー:「君もじゃないのか。」 笑うトロイ。「ああ、大丈夫みたいね。このスピーチ、小学校で覚えさせられたわ。…この同盟が連邦の誕生につながるって、みんなに教えたいんじゃない?」 ライカー:「…ピカード艦長に話す決心がついたよ。もっと前に話すべきだった。」 「それじゃおいとましましょうか。」 「そうだな。コンピューター…プログラム終了。」 映像が消えた。ホロデッキを出る 2人。 小惑星帯を離れるエンタープライズ-D。 ピカード:『 U.S.S.エンタープライズ NCC-1701※40。 カーク:『 そしてエンタープライズ NX-01。 アーチャー:『 |
※36: Berkshires ※37: Captain Stillwell 製作助手・脚本の Eric Stillwell にちなんでかも ※38: この VIP席には、DS9第176話 "What You Leave Behind, Part II" 「終わりなきはじまり(後編)」のように、スタッフが何人も出演しています。リードの斜め後ろにいる提督は、製作総指揮のマニー・コト。その後ろにいる民間人の女性と、隣の士官は脚本家のジュディス&ガーフィールド・リーヴス・スティーヴンス夫妻。ジュディスの隣にいる民間人の男性は、脚本家 Andre Bormanis。後のシーンで映る、コトの 2人右隣の民間人は、雑誌 Communicator 編集者の Larry Nemecek ※39: Ensign (Solomon Burke, Jr.) ※40: CGI ※41: ピカードとカークの部分は、それぞれ当時のオープニング音源がそのまま使われています (希望声:麦人、矢島正明または若山弦蔵)。英語と日本語における語順の違いや、訳語の違い (特に TOS) の問題があるため、日本版では昔のナレーションをそのままつなげるのは難しいと思われます。原題の由来 ※42: "where no man has gone before." という締めくくりの部分は、このシリーズで最初に発せられたセリフでもあります (子供時代のアーチャー、第1話 "Broken Bow, Part I" 「夢への旅立ち(前編)」) |