ディープスペースナイン エピソードガイド
第117話「父死す」
Ties of Blood and Water
イントロダクション
※1※2カーデシアの船が着艦した。彼の扱いは国家元首級で頼む、通信および情報へのアクセスは無制限、要望があれば何でも聞いてあげてと言うキラ。もっと早く来るってわかっておけば、赤いカーペットを敷き詰めておいたのにというダックス。からかわないでよ、テケニーはカーデシアの反政府運動を長く率いてきた人よと言うキラ。デュカットとドミニオンに対抗するにはテケニー・ゲモール※3以上にふさわしい人はいないという。あなたの父親でもあるしねというダックス、ゲモールはカーデシア人でしょうというウォーフ。話せば長いと言うキラ。キラは昔誘拐されて、ゲモールの娘そっくりに整形されたというダックス。キラを餌に謀反の証拠をつかもうとしたのだ。カーデシアの政治は複雑なんだなというウォーフに、複雑なのが好きなんでしょというダックス。ゲモールはカーデシアの最後の希望の火よ、消すわけにはいかないわと言うキラ。エアロックからゲモールが降りてきた。年寄りを随分持ち上げるね、期待に応えられるかはわからんぞという。ゲモール評議員、お久しぶりですというキラに、ネリス、お父さんが嫌ならテケニーと呼んでくれというゲモール。DS9へようこそ、テケニーと言うキラ。2人は抱き合い、キラは科学士官のジャッジア・ダックス少佐、戦略作戦士官のウォーフ少佐と言ってゲモールに紹介した。一瞬間があったが、握手をするウォーフ。こんな年寄りにたいそうな歓迎だ、ブレスレットをまだしていてくれたのかとキラに言うゲモール。本当は勤務中は付けてはいけないんですけどねと言うキラ。とてもよく似合ってるというゲモール。お会いできて嬉しく思います、申し訳ないが少し休ませて頂くとダックスたちにいう。荷物は部屋までは私が運びますと言うキラ。ゲモールと共に歩いていった。キラ少佐がカーデシア人と友達とは信じられないというウォーフ。5年前のキラを見せたかった、友達なんて一人もいらないっていう風だったわよというダックス。 部屋に入る2人。ここのレプリケーターはカーデシアのメニューなら何でも出せます、コンピューターへのアクセスは終日可能だし、亜空間通信も備えてありますと言うキラ。ほかに何かご入用のものがあれば私に言って下さいと付け加える。君の元気さがうらやましいというゲモール。キラは謝り、ただあなたにくつろいで頂きたくてという。これなら十分だよというゲモール。キラは娘さんの消息をベイジョー当局に頼んではいますが、まだ何もつかめないそうですと話す。生きてはいまいというゲモールに、わかりませんよ、もしイリアナ※4が生きていればベイジョーに10年以上も潜伏していることになりますと言うキラ。そこまで長いと突き止められないという。励ましてくれるのは嬉しいが、そろそろ現実を認めないといけないというゲモール。私は一人ぼっちだ、家族も君しかいないという。ベイジョー当局もあきらめていないんですから、あなたもがんばってと言うキラ。もう少し待ってみて下さいという。待つのは若者の特権だよ、ところであれから元気でやっていたかねと尋ねるゲモール。楽しい毎日です、提案書を読んでくれましたと聞くキラ。なかなか壮大な計画だ、反政府運動を組織するなら私では無理だというゲモール。でもあなたよりふさわしい人はいない、カーデシア国民に広く人望のあるあなたなら影響力もあるしと言うキラ。そう簡単にはいかんというゲモール。キラはお手伝いしますといい、まずはこのステーションに亡命政府を樹立して、カーデシアに定期的に通信を送り、かつての反政府運動の人脈を使って国民を動かす大きなうねりを起こせばと話す。いい計画だな、だが私はだめだというゲモール。どうしてと聞くキラ。ヤーリムフェル症候群※5だ、不治の病で、もう末期だとゲモールはいった。 |
※1: シスコ役のエイヴリー・ブルックス監督です。DS9第97話 "Body Parts" 「クワーク、絶体絶命」以来 ※2: このエピソードから 1997年版のエンサイクロペディアには載っていないため、99年の新版により内容の追加・訂正を行いました。脚注で太字になっているものが追加分です
※3: テキニー・ゲモア Tekeny Ghemor ※4: イリアナ・ゲモール Iliana Ghemor ※5: Yarim Fel syndrome |
本編
お世辞にも良い状況とは言えない、もう病気が消化器系を冒しているのに加えて循環器系、呼吸器系もアウト、軟骨組織もだと言うベシア。後どれくらい生きられますかと聞くゲモールに、わかりません、ただまだ治療法がないこともないという。ヘクサドリン※6セラピーや、神経再生性療法※7もあるというベシア。どんな治療でも受けますといい、キラに君の役に立ちたかったんだがと謝るゲモール。いいんです、それより早く元気になってというキラ。 司令官室。シスコが大佐日誌を付けようとしゃべり始めた時、オブライエンがシスコを呼んだ。カーデシアのガル・デュカットから通信が入っているという。回してくれといい、通信を呼び出すシスコ。シスコ大佐、会えて嬉しいよというデュカット。後ろにはジェムハダーも映っている。まだ称号はガルなのか、とっくに評議員の身分を回復していたと思っていたというシスコに、私はガルの方が好きなんだ、権力という点では上だからねというデュカット。それに他の称号より地味なところがいい、大統領、皇帝、第一首相※8、選ばれし者という。ドミニオンの操り人形はどうだというシスコ。デュカットは笑い、今の発言からすると君はドミニオンの政治制度の複雑さに対する理解がまだまだ浅いようだなという。新政府が樹立されてからカーデシアはかつてないほどの自治権を享受しているというデュカットに、演説するならよそでやってくれ、忙しいというシスコ。わかった、君のステーションに同胞が1人滞在しているはずだ、名前はテケニー・ゲモールというデュカット。中央司令部の評議員だった人物だという。それがどうしたというシスコに、返してもらいたい、あの男には聞きたいことがあるという。要求はわかった、熟慮して回答するというシスコ。しかし連邦が君の政府を承認していない現状では、カーデシアが連邦ともベイジョーとも犯罪者引き渡し協定を結んでいない以上、希望は持たない方がいいという。そのまま通信を切った。 ゲモールの部屋。キラヨシを抱きながら、何て器量のいい男の子だろう、いい子だ、自慢の息子だろうねというゲモール。マイルズとケイコの子よ、私はおなかを貸しただけなのと言うキラ。突然ゲモールは体の痛みに声を上げた。キラヨシをあずかるキラ。ゲモールは椅子に座り、平気だという。不思議だな、なぜか実の孫のような気がする、君は娘のようなものだしという。私にも「ヨシ」※9は息子と同じです、あなたはきっといいおじいちゃんになると言いながら、キラヨシをあやすキラ。君はどうなんだ、自分の子供を産む気はないのか、この際シャカールと結婚したらどうだというゲモール。シャカールとのことを知ってるのと驚くキラ。大事な娘だからね、いつも気にかけていたんだと笑うゲモール。人を雇って調べさせたんですかというキラに、私は年でそんな気力はない、噂を聞いたら教えてくれと頼んだという。君はもうかなりの有名人だからね、アルファ宇宙域で最も重要な軍事基地の副官を務めているし、カイ・ウィンとの反目は既に伝説の域まで達しているという。カーデシア中央公記録保管所※10に君専門のセクションがあるのを知っているかいと尋ねるゲモール。ええと答えるキラ。君は人に強烈な良い印象を残す、自分を誇りに思うべきだというゲモール。私は思っているという。キラは微笑み、実は私もあなたの動向は気にかけていたという。カーデシア政府にたてつくなんて危ない仕事だしというキラに、多少の危険は気にならないというゲモール。正義のためなら見込みがなくともがんばれた、そういう家系なんだという。デュカットから要請があって、カーデシアに引き渡せって言うんですと話すキラ。当然だ、私が生きている限りデュカットは安心できないだろうからというゲモール。決して引き渡したりしませんと言うキラ。ネリスといってゲモールは立ち上がり、私ほどカーデシア政府の内情を知っている男はいないという。名前、人間関係、謀略、正しく使えば世のためになる知識だ、カーデシアの習わし「シュリー・タル※11」では死ぬ者は一門の敵を打ち倒すことを願って家族に秘密を言い残すという。しかし私には家族がいない、君だけなんだというゲモール。最後にもう一度だけ娘になってくれ、私の知識を君に残す、知ること全てをといった。 冷たく聞こえるだろうが、こんな機会はまたとないというシスコ。ゲモールの頭には、我々がこの5年間に集めた情報よりも遥かに多くが詰まっているという。元評議員ですからねと言うキラ。君は重い責任を負うことになると言うシスコに、わかってます、ただ自分にそんな大役が務まるんでしょうかという。感情移入しすぎてうまく話を引き出せないかもと言うキラ。それよりカウンセラーに話すようにゲモールを説得するとか、オドーの方が適任かも、オドーは尋問の名手だしという。そうだな、だがゲモールはただ情報を与えたいだけじゃない、誰かにそばにいて話を聞いてもらいたいんだというシスコ。ええ、その誰かは私だけとキラは言った。キラには多数の人の声が聞こえてきた。 そこは洞窟の中。怪我をしたベイジョー人がたくさんいる。ファレル※12たちが担架に乗せた負傷者を運んできた。ネリスと呼び、キラがやってくる。お父さんといってその担架に近づくキラ。私よ、わかると声をかける。だが父のタバン※13は、痛みに耐えるので必死だ。 やってくれるかと聞くシスコ。やるしかありませんね、娘ですからとキラは言った。 |
※6: hexadrin ※7: neuroregeneration ※8: シャカールの肩書き (First Minister) ですが、「首相、総裁」と訳されています
※9: "Yoshi"
※10: Cardassian Central Archives
※11: shri-tal
※12: フレル、フュレル Furel
※13: キラ・タバン Kira Taban |
ゲモールはベッドに寝かせられ、機器の調整を行うベシア。痛みが激しくなってきたら少量のトリプタセドリン※14を投与するように、ボタンの位置をキラに教える。薬を補充する時はバルブを回せば取れるから、新しいのを補充するように教える。自分でやれなければいつでも看護婦を呼んでくれと言うベシア。何とかやれるわと言うキラ。無理しないでくれ、末期の患者を看取るのは大変なことだ、それでなくても唯一の精神的支えだからねとベシアはいう。大変なことはわかってるつもりと言うキラ。がんばってくれ、何かあったらいつでも呼んでといい、出ていくベシア。キラはゲモールの横に座り、テケニーとしゃべりかける。目を覚まし、ネリスというゲモール。動かないでと言うキラ。喉が渇いたというゲモールに、水を持ってくるという。それを飲ませる時に少しこぼしてしまった。ごめんなさいといいながら拭き取るキラ。君はよくやってる、早速始めようかというゲモール。セッション1、日付は宇宙暦50712.5、いつでもどうぞといい記録し始めるキラ。デュカットの最大の敵はガル・トレパー※15だろう、第4階級※16のトップだというゲモール。痛みに声を上げる。ボタンをというゲモール。キラにより鎮痛剤が投与される。ドクターを呼んでもっと強い鎮痛剤を投与してもらうと聞くキラ。そしたら意識がなくなってしまう、まだ何も話していないのに、どこまで言ったと聞くゲモール。トレパーというキラ。トレパーはデュカットの元上官で、かつての部下から命令されるのには決していい感情をもっていないと話すゲモール。トレパーが右腕と頼むのがグリン・ボーヴェン※17という男だがと続ける。キラは再び過去のことを思い出す。 ドクターはどこ、一体何をしてるのと叫ぶキラ。ネリス、そばにいてくれというタバン。私が馬鹿だった、カーデシア人の村を焼き始めた時、私は話し合いで止めようとしたという。そしたらこの始末だというタバン。このかたきは必ず取ってくるわ、約束すると言うキラ。私の庭も、全て何もかも焼かれた、何年もかけて大事に育てたのに灰だとタバン。またがんばりましょうというキラに、お前の強さと自信がうらやましい、私は臆病者だという。ドクターはどこにいるのと離れるキラに、医者なんぞいらん、一人にしないでくれというタバン。キラはタバンの手を握った。 ネリス、とうわ言のようにつぶやくゲモール。「ゲモールは眠りに落ちた、今日の聴取はここまでとする」と録音するキラ。寒いと繰り返すゲモール。 司令官室。パッドをみながら、これはすごい、艦隊情報部も大喜びするだろうというシスコ。でもまだ序の口みたいです、ゲモールはカーデシアの政治家や官僚を全員知っているようですと言うキラ。ため息をつく。疲れたかとシスコに聞かれ、もう30時間寝ていないんでと言うキラ。少しは休まないといけないというシスコ。そこへベシアからキラへ通信が入り、至急ゲモールの病室へ来るように伝えた。向かうキラ。 ベシアはゲモールに付けた器具を取り外している。ヘクサドリンセラピーには反応しなくなったとキラに告げるベシア。ネリスと呼ぶゲモールに、ここにいますという。何でも聞いてくれ、もうあまり時間がないというゲモール。キラは録音機を取り出し、最高裁判所についての話の続きをと言った。 1隻の戦艦が、DS9へゆっくりと近づいている。司令室へ戻ったシスコは、現状報告を求める。ジェムハダーの戦艦※18が接近中ですというウォーフ。敵はいつでもステーションを攻撃できる態勢ですというダックス。非常警報、総員戦闘配置を命じるシスコ。呼びかけてきたため、スクリーンに表示させる。デュカットが映し出された。どういうことだというシスコ。この前ゲモールの引き渡しについて熟慮すると言ったな、そろそろ君の回答を聞きたいものだといった。敵は照準をこちらに合わせている。 |
※14: triptacedrine 「鎮痛剤」と訳されています ※15: Gul Trepar
※16: Fourth Order
※17: Glinn Borven
※18: Jem'Hadar battleship |
保安部員の監視の下、デュカットとヴォルタ人が司令官室に入ってきた。ご招待を感謝する、こちらドミニオンからのアドバイザー、ウェイユン※19だと紹介する。死んだはずだというシスコに、あの私は私ではないというウェイユン。ヴォルタ族は優れたクローン技術を持つと説明するデュカット。危険な仕事に従事する際のリスクを軽減するためです、前のウェイユンは4代目で私は5代目だという。不死身なのかとシスコに聞かれ、ともいえます、うらやましいと聞く。話があるなら早くしろとデュカットに言うシスコ。単刀直入に言おう、テキニー・ゲモールは余命いくばくもない、同胞に囲まれて逝く方が幸せだろう、ぜひカーデシアに連れて帰りたいというデュカット。死刑を執行するためにかとシスコにいわれると、ゲモールについては新しい司法制度の下で再審が行われ、無実が確定したという。ドミニオンの裁きは公平さと正確さで有名なんですというウェイユン。だからゲモールがカーデシアに帰ってこられない理由は何一つないというデュカット。ゲモールが承知するとは思えんというシスコに、ウェイユンはならば本人に聞きましょうといった。 私はもって1週間だ、ほんの数日カーデシアの空の下で過ごすために、私が沈黙するとでも思うかというゲモール。祖国だぞというデュカットに、お前が国をドミニオンに売らなければ、私は祖国に留まったという。帰ってくれというゲモール。彼は君が嫌いなようだね、イメージアップの作戦を考えないといけないとデュカットにいうウェイユン。出ていってと言うキラ。話はまだ終わっていない、君に喜んでもらえそうな情報をもってきたというデュカット。お嬢さんのイリアナだがといわれ、興味を示すゲモール。耳を貸してはだめよと言うキラ。お嬢さんは生きていたんだ、既に居場所も突き止めてあるというデュカット。できればその言葉を信じたい、しかしたとえ信じても取り引きはしないというゲモール。お前の連れが信用できないからだ、お前となら同じカーデシア人となら話ができるかも知れんが今はドミニオンの手先だというゲモール。ドミニオンのイヌとは話せないという。今の言葉を聞いたでしょとキラに言われ、私はしばらくの間ステーションに滞在するつもりだというデュカット。お気が変わったらどうぞと付け足すウェイユン。変わらんよというゲモール。2人は出ていった。キラはゲモールに微笑んだ。 ゲモールからの聴取は続いている。さらに強い薬が投与され、キラは眠りそうになりながらも話を聞きつづける。体を震えさせるゲモール。 店の2階にいるキラに、何にしますか少佐、よく冷えたベイジョーのエールかもっと強いブラックホール※20にしますと聞くクワーク。何でもいいわというキラに、ひどい顔をしてます、やつれた女性はあまり好みじゃないという。いいからお酒を持ってきてと言うキラ。あれがいい、アニヤックスミルクにしましょう、ぐっすり眠れますといい歩いていくクワーク。 キラの部屋。デュカットがやってきた。邪魔をして悪いねというデュカットに、キラはそう思うなら出ていってと言う。いつも強気なのには感心する、でもゲモールを守るのは間違えているというデュカット。キヤサ修道院※21での大虐殺を覚えているかと聞いた。ゲモールとどう関係があるのと尋ねるキラ。デュカットは持ってきたパッドを置き、自分で見ろ、これはゲモールの従軍記録だという。ここに載っていることは全てベイジョー情報部にも記録があるはずだといい、出ていく。あなたって本当にこういう陰険なことが好きなのね、人の気持ちをもてあそぶのがと言うキラ。否定はできんな、これを読んだ時の君の顔を見てみたいというデュカット。読むかどうかは君次第だという。するとキラはカップをデュカットに投げつけた。デュカットはそれをかわし、壁に当たって割れる。キラはデュカットに近づき、よく覚えてなさい、いつか今日のことを必ず後悔させてやるという。遠い先の話だとデュカットはいい、部屋から出ていった。キラはデュカットが置いていったパッドを手に取り、読み始めた。 |
※19: ウェイオン Weyoun (ジェフリー・コムズ Jeffrey Combs) クローンによる別人だということですが、第95話 "To the Death" 「戦士の宿命」以来の登場。声はその時と同じく納谷六郎氏
※20: Black Hole ※21: Kiessa Monastery |
キラを呼ぶゲモール。今すぐ行くわ、今度は何と聞くキラ。喉が渇いたというゲモール。寝てなさい、チューブがぐちゃぐちゃよというキラに、悪かったと謝るゲモール。謝られたって遅いといいながら、薬の補充を行うキラ。どうかしたのかと尋ねるゲモール。キラは嘘を付いてたでしょ、キヤサ修道院の大虐殺よ、従軍してたでしょという。デュカットから聞いたのかというゲモール。カーデシア人はキヤサを焼き払い、17人の僧を殺したと言うキラ。しかし奴らは武器を隠していたんだ、その武器で私の友人も殺されたというゲモール。戦争の真っ只中だった、簡単に人を殺せたんだ、無論怪物だったのは我々だがという。軍隊など入らなければと何度後悔したかわからない、でもやってしまったことは変わらんというゲモール。それで嘘をついたわけねと言うキラ。違うネリス、私を憎まないでくれと頼むゲモール。キラは水を渡し、今更遅いといってそのまま部屋を出て行った。 ウェイユンはダボを楽しんでいる。何でこんなばかげたゲームをやりたがるのか、私には理解できんというデュカットに、ゲームが好きなんだという。シスコがそこへやってきた。何か用かなというデュカットに、君と話がある、少し接待しないとという。席に座る3人。カナール※22でもどうだといい、持ってきた瓶からグラスに注ぐシスコ。今は遠慮しとく、喉が渇いていないのでねというデュカット。ぜひ飲んでくれといい差し出すシスコ。だがデュカットは遠慮するといっただろ、カナールは腹が減っている時に飲む物じゃない、消化に悪いという。飲むのを断るのはそれだけか、このカナールにはカーデシア人を十数人殺せるヴォラクサナ※23という毒が入っているとシスコはいった。20分前にゲモールの病室に届けられたものだ。驚いたなというデュカットに、なぜだ、ゲモールが君の新しい地位を脅かすようなことを言うのではないかと恐れているのかというシスコ。口の利き方には気を付けろ、現カーデシア政府の首班が暗に人殺しを企んだと非難しているように聞こえるぞというデュカット。シスコはそう聞こえるという。2人を見ていたウェイユンは笑い、しかし楽しいですね、謎の暗殺計画、やんわりとした皮肉と脅迫の応酬、実に面白いという。そして注がれたカナールのグラスを取り、一気に飲み干してしまった。いやひどい、いかにも毒入りという味だというウェイユン。知っていて飲むとは正気かというデュカットに、ヴォルタ人は大抵の毒には免疫がある、外交官としては便利だと笑う。特にカーデシア人と仕事をする時は、このカナールは君にやろう、ゲモールは飲めないからとデュカットに言いシスコは席を立った。 プロムナードの神殿の前にいるオドー。キラが出てきた。オドーを見てまた中に戻ろうとする。祈るには随分遅い時間ですねというオドー。静かに考えたかったの、何か言いたいことがあるならいったらどうと言うキラ。ゲモールの看病はしてあげないんですかと聞くオドー。嘘をついた、ゲモールもほかのカーデシア人と同じだったと言うキラ。本当にそうかな、私もゲモールのファイルを見ました、キヤサの大虐殺の時は若干19歳、軍隊に入ってまだ1年も経っておらず400人の兵士の一人に過ぎない、発砲したかもわからないというオドー。キヤサにいただけで罪よというキラに、問題は従軍記録だけじゃないでしょうという。デュカットから教えられる前に自分で調べることもできたはずですというオドー。何が言いたいの、病室に戻れって言いたいのというキラ。本当は病室に戻りたいんでしょ、違いますとオドーはいった。キラには再び過去の記憶が甦る。 痛みに苦しむタバンを抑え、じっとしてて、包帯が破れてしまうと言うキラ。落ち着いてという。預言者たちが私を呼ぶ声がする、私のパールが滑り落ちていくというタバン。ファレルが来て、カーデシアの重火器部隊を見つけたぞ、第9階級※24、第3突撃隊だという。待ってて、すぐに戻るわとタバンに言うキラ。場所はテンパサ※25の街の近くだ。キラは私も行くと言った。いいのかというファレル。あの辺は詳しいのというキラに、ガント※26に任せろという。撃たれたのはガントの親じゃないのとキラはいった。キラはお父さんをこんな目に合わせた奴にかたきを取ってくるから、待っててねとタバンに言う。ほかの者に行かせろというタバンに、いいえ行くわ、すぐに戻るというキラ。タバンには別の者がつく。 自室の祭壇にろうそくを点すキラ。ベシアがやってきて、君にどうしても伝えたいという。ゲモールの容体が悪化した、あと1時間だと言った。 |
※22: kanar カーデシア人が好む飲み物。DS9第42話 "The Wire" 「義務と友情」など ※23: voraxna ※24: Ninth Order ※25: Tempasa ※26: Gantt |
わざわざどうもありがとう、とだけいうキラ。それだけ、言うことはそれだけかいというベシア。ゲモールは死ぬんだよという。ええ聞こえたわというキラに、ゲモールは会いたがってるという。でも私は会いたくないのというキラ。そこを頼む、もう時間の問題だ、もう何もしなくていいんだというベシア。しても無意味だし、ただ最期までそばにいてくれるだけでという。嫌だっていったでしょ、いくら頼まれても嫌よというキラ。そうか、嫌なら仕方ないなというベシア。しかし君は間違ってる、ゲモールが何をしたとしても1人で死んでいくのはむごいという。誰だってだといい、部屋を出ていくベシア。 再び過去の記憶。喜ぶベイジョー人たち。君の案内で奇襲をかけられたのが成功の要因だったな、慌てふためいた様子を見たか、まるでクルマムシ※27の山を蹴飛ばしたみたいだったというファレル。どれくらい殺ったと聞くキラに、5台のスキマー※28を壊した、死んだカーデシア人は少なくとも15人だという。すごい大手柄だ、祝杯をあげようというファレルに、やられたらやるだけよ、祝うほどのことでもないというキラ。キラを呼び、お父さんがというガント※29。そこには、既に息を引き取ったタバンがいた。君を呼びながら亡くなったというガント。すぐ攻撃に出ましょう、カーデシア人を殺すチャンスを一つも逃したくないわとキラはいった。スコップを持ち、外に出ていく。 夕暮れの中、1人で穴を掘っているキラ。ファレルが来て、みんなを呼ぼうか、プレイラー・クエン※30に別れの言葉を言ってもらおうかと尋ねるファレルに、何も言うことはないわとキラはいい穴を掘りつづける。 キラはそれを思い出しながら、ゲモールがくれたブレスレットを見つめていた。 戻ってきてくれたのかというゲモール。私がいるからもう安心よとキラは言った。ゲモールの手を握り、その上に顔を置く。 医療室。死因はヤーリムフェル症候群による心肺機能の停止である、臨終に立ち会ったのはベイジョー軍部のキラ・ネリス少佐、私が死亡を確認したと記録するベシア。終わりましたよという。それだけ、死亡を確認したらもう終わりなわけと言うキラ。後は処理だけ、随分事務的なのねという。手続きだけはねと言うベシア。最期が近づいてきたら、すごく静かに何度も家族の名前を呼んでいたと言うキラ。お嬢さんのイリアナや私や、そしたらまた激しい痛みが襲ってきたらしく、一つ息を吸って動かなくなったという。死んだのかと思って見ていたら、すぐまた息を吐き出して呼吸し出した。息の数を数えた、100回、200回、300回。ゲモールは勇敢に死と闘っていた、私がいるのは知らなかったかもとキラは言う。彼は君に看取られて、幸せだったろうと言うベシア。私も彼を看取って幸せだった、自分の父の死は看取れなかった、間に合わなかったと話すキラ。いつも自分に言い聞かせてた、間が悪かったんだ仕方がない、運命なんだと。だが本当はそばを離れた自分の責任なのよ、私が行く必要はなかったのに死んでいく父と向き合うのが恐くて逃げ出したと涙を流すキラ。占領時代毎日嫌というほど人が死んでいくのを見て、精神が限界だった。ただ父だけが心の支えだった、その父が死のうとしていることを受け入れられなかったと言うキラ。だから逃げたという。それでゲモールからも逃げようとしたのと言うベシア。ゲモールを見ていると父を思い出して、そばに座っていると居たたまれないと言うキラ。でも君は戻ってきた、そして最期を看取ったとベシアは言う。決めたの、亡くなった父のためにも、今度こそ立ち向かおうと、とキラは言った。 デュカットとウェイユンが司令官室に入ってくる。私に用かというシスコに、さっき知らされたんだがゲモール評議員が息を引き取ったそうだなというデュカット。胸をなで下ろしただろうというシスコ。何を言う、そんな皮肉は君らしくない、カーデシアの全国民がゲモールの死去を悼むだろう、大人物だったというデュカット。心にもないことをよく言うなというシスコに、いや本気さ、最期に自分の過ちを認めた彼は、やはり偉大だったのだという。死の直前に私をそばに呼んで、カーデシアとドミニオンとの同盟関係を祝福して天に召されたというデュカット。実に感動的だが一つ小さな問題がある、その話は嘘だというシスコ。でも言うでしょ、嘘も方便というウェイユン。ゲモールの遺体は私が祖国へ連れて帰り、正式に国葬を執り行いたいというデュカット。シスコは国葬はあきらめてもらうしかない、テケニー・ゲモール評議員の埋葬は既に執り行われたといった。 花に囲まれた、ベイジョーの小さな墓地。埋葬されたゲモールに、キラは祈りを捧げた。 |
※27: barrowbug 訳出されていません
※28: skimmer ※29: (Rick Schatz) クレジットでは「軍医」(Medic)
※30: Prylar Quen |
感想
私が好きなエピソードの一つ、第3シーズンの "Second Skin" の続編でした。初めて明かされるキラの父の最期とのフィードバックが効果的ですね。3人も「死んだ」キャラクターを出すとは… (タバン、ファレル、ウェイユン) 驚きです。注釈でも書いたように、エンサイクロペディアに記述がなくなったのが残念です。 |
第116話 "Business as Usual" 「武器を売る者」 | 第118話 "Ferengi Love Songs" 「愛の値段」 |