お世辞にも良い状況とは言えない、もう病気が消化器系を冒しているのに加えて循環器系、呼吸器系もアウト、軟骨組織もだと言うベシア。後どれくらい生きられますかと聞くゲモールに、わかりません、ただまだ治療法がないこともないという。ヘクサドリン※6セラピーや、神経再生性療法※7もあるというベシア。どんな治療でも受けますといい、キラに君の役に立ちたかったんだがと謝るゲモール。いいんです、それより早く元気になってというキラ。
司令官室。シスコが大佐日誌を付けようとしゃべり始めた時、オブライエンがシスコを呼んだ。カーデシアのガル・デュカットから通信が入っているという。回してくれといい、通信を呼び出すシスコ。シスコ大佐、会えて嬉しいよというデュカット。後ろにはジェムハダーも映っている。まだ称号はガルなのか、とっくに評議員の身分を回復していたと思っていたというシスコに、私はガルの方が好きなんだ、権力という点では上だからねというデュカット。それに他の称号より地味なところがいい、大統領、皇帝、第一首相※8、選ばれし者という。ドミニオンの操り人形はどうだというシスコ。デュカットは笑い、今の発言からすると君はドミニオンの政治制度の複雑さに対する理解がまだまだ浅いようだなという。新政府が樹立されてからカーデシアはかつてないほどの自治権を享受しているというデュカットに、演説するならよそでやってくれ、忙しいというシスコ。わかった、君のステーションに同胞が1人滞在しているはずだ、名前はテケニー・ゲモールというデュカット。中央司令部の評議員だった人物だという。それがどうしたというシスコに、返してもらいたい、あの男には聞きたいことがあるという。要求はわかった、熟慮して回答するというシスコ。しかし連邦が君の政府を承認していない現状では、カーデシアが連邦ともベイジョーとも犯罪者引き渡し協定を結んでいない以上、希望は持たない方がいいという。そのまま通信を切った。
ゲモールの部屋。キラヨシを抱きながら、何て器量のいい男の子だろう、いい子だ、自慢の息子だろうねというゲモール。マイルズとケイコの子よ、私はおなかを貸しただけなのと言うキラ。突然ゲモールは体の痛みに声を上げた。キラヨシをあずかるキラ。ゲモールは椅子に座り、平気だという。不思議だな、なぜか実の孫のような気がする、君は娘のようなものだしという。私にも「ヨシ」※9は息子と同じです、あなたはきっといいおじいちゃんになると言いながら、キラヨシをあやすキラ。君はどうなんだ、自分の子供を産む気はないのか、この際シャカールと結婚したらどうだというゲモール。シャカールとのことを知ってるのと驚くキラ。大事な娘だからね、いつも気にかけていたんだと笑うゲモール。人を雇って調べさせたんですかというキラに、私は年でそんな気力はない、噂を聞いたら教えてくれと頼んだという。君はもうかなりの有名人だからね、アルファ宇宙域で最も重要な軍事基地の副官を務めているし、カイ・ウィンとの反目は既に伝説の域まで達しているという。カーデシア中央公記録保管所※10に君専門のセクションがあるのを知っているかいと尋ねるゲモール。ええと答えるキラ。君は人に強烈な良い印象を残す、自分を誇りに思うべきだというゲモール。私は思っているという。キラは微笑み、実は私もあなたの動向は気にかけていたという。カーデシア政府にたてつくなんて危ない仕事だしというキラに、多少の危険は気にならないというゲモール。正義のためなら見込みがなくともがんばれた、そういう家系なんだという。デュカットから要請があって、カーデシアに引き渡せって言うんですと話すキラ。当然だ、私が生きている限りデュカットは安心できないだろうからというゲモール。決して引き渡したりしませんと言うキラ。ネリスといってゲモールは立ち上がり、私ほどカーデシア政府の内情を知っている男はいないという。名前、人間関係、謀略、正しく使えば世のためになる知識だ、カーデシアの習わし「シュリー・タル※11」では死ぬ者は一門の敵を打ち倒すことを願って家族に秘密を言い残すという。しかし私には家族がいない、君だけなんだというゲモール。最後にもう一度だけ娘になってくれ、私の知識を君に残す、知ること全てをといった。
冷たく聞こえるだろうが、こんな機会はまたとないというシスコ。ゲモールの頭には、我々がこの5年間に集めた情報よりも遥かに多くが詰まっているという。元評議員ですからねと言うキラ。君は重い責任を負うことになると言うシスコに、わかってます、ただ自分にそんな大役が務まるんでしょうかという。感情移入しすぎてうまく話を引き出せないかもと言うキラ。それよりカウンセラーに話すようにゲモールを説得するとか、オドーの方が適任かも、オドーは尋問の名手だしという。そうだな、だがゲモールはただ情報を与えたいだけじゃない、誰かにそばにいて話を聞いてもらいたいんだというシスコ。ええ、その誰かは私だけとキラは言った。キラには多数の人の声が聞こえてきた。
そこは洞窟の中。怪我をしたベイジョー人がたくさんいる。ファレル※12たちが担架に乗せた負傷者を運んできた。ネリスと呼び、キラがやってくる。お父さんといってその担架に近づくキラ。私よ、わかると声をかける。だが父のタバン※13は、痛みに耐えるので必死だ。
やってくれるかと聞くシスコ。やるしかありませんね、娘ですからとキラは言った。
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※6: hexadrin
※7: neuroregeneration
※8: シャカールの肩書き (First Minister) ですが、「首相、総裁」と訳されています
※9: "Yoshi" キラヨシの愛称。訳出されていません
※10: Cardassian Central Archives 「カーデシア当局」と訳されています
※11: shri-tal 訳出されていません
※12: フレル、フュレル Furel (ウィリアム・ラッキング William Lucking) キラと同じ、シャカールレジスタンス部隊の元メンバー。DS9第109話 "The Darkness and the Light" 「一人、また一人、そして…」以来の登場。ただしそのエピソードで殺されました。まだ片腕を失っていない頃です
※13: キラ・タバン Kira Taban (トーマス・コパシュ Thomas Kopache TNG第124話 "The Next Phase" 「転送事故の謎」のミロック (Mirok)、第175話 "Emergence" 「知的生命体“エンタープライズ”」の機関士 (Engineer)、VOY第39話 "The Thaw" 「悪夢の世界」のヴィオーサ (Viorsa)、ENT第1話 "Broken Bow" 「夢への旅立ち」の Tos、第67話 "Harbinger" 「新たなる脅威の兆し」の異星人 (The Alien)、映画第7作 "Star Trek: Generations" 「ジェネレーションズ」のエンタープライズ-B 通信士官 (Enterprise-B Communications Officer) 役) 名前は台本のみ。後にも登場
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