エンタープライズ エピソードガイド
第19話「獲物たちの罠」
Acquisition
イントロダクション
宇宙空間を漂流しているエンタープライズ。 そこに一隻の小型船が近づく。 乗っている異星人の頭には、毛が生えていない。 その船長、ユリス※1は言った。「(どうだ? 応答は?)」 異星人語だ。 報告する部下、ミュック※2。「(全くありません)」 「(いいぞ。スキャン結果はどうだ)」 ユリスの後ろでエンタープライズを見ているクレム※3。 船を操縦していたグリシュ※4。「(生きてるが無意識です。成功だ)」 ユリス:「(よし。乗り込むぞ)」 船はエンタープライズにドッキングする。 |
※1: Ulis (イーサン・フィリップス Ethan Phillips TNG第72話 "Menage a Troi" 「愛なき関係」のファレク博士 (Dr. Farek、フェレンギ人)、VOY レギュラーのニーリックス (Neelix)、映画第8作 "Star Trek: First Contact" 「ファースト・コンタクト」の支配人 (Maitre d') 役) 声:山野史人、TNG サレク大使など ※2: Muk (クリント・ハワード Clint Howard TOS第3話 "The Corbomite Maneuver" 「謎の球体」のベイロック (Balok)、DS9第58話 "Past Tense, Part II" 「2024年暴動の夜(後編)」のグレイディ (Grady) 役。ロン・ハワード監督の弟で、彼が監督した映画「アポロ13」(1995) では NASA ミッションコントロール技師のサイ・リーバーガットを演じました) 声:斉藤志郎 ※3: Krem (ジェフリー・コムズ Jeffrey Combs DS9第54話 "Meridian" 「次元移動惑星M」のティロン (Tiron)、第69話 "Family Business" 「クワークの母」などのブラント (Brunt、フェレンギ人)、第95話 "To the Death" 「戦士の宿命」などのウェイユン (Weyoun)、VOY第135話 "Tsunkatse" 「囚われのファイター」のペンク (Penk)、ENT第7話 "The Andorian Incident" 「汚された聖地」などの Shran 役) 声:坂東尚樹、VOY ケアリー大尉など ※4: Grish (マット・マロイ Matt Malloy) 声:後藤哲夫 なお、このフェレンギ語の部分は原語のままではなく、全て吹き替えられています |
本編
ドッキングした船。 エアロックから降りてきたフェレンギ人※5たちは、マスクをつけている。 廊下にはエンタープライズのクルーが、何人も倒れていた。 クレム:「(どの種族だ?)」 ミュック:「(さあな)」 クルーに近寄り、耳の大きさを見るクレム。 ミュック:「(行くぞ。早く!)」 食堂には、料理を運ぶ途中で倒れたクルーもいる。 興味深そうに食べ物に触れるクレム。 ミュック:「(クレム。このデッキにはない。行こう)」 機関室に入ったクレム。「(ラチナムが稼げるぞ)」 ミュック:「(あそこだ)」 気体を発している機械がある。触れようとしたクレム。 ミュック:「(触るな!)」 クレム:「(閉め方は知ってる)」 気体を出す部分を収めるミュック。「(無防備でバカな連中だな)」 クレム:「(見ろよ!)」 倒れていたトゥポルに近づく。「(何ていい女だ。耳の形がキレイでそそるな。1,000ラチナムにはなる)」 耳をなでた。 ミュック:「(ユリスが待ってる。急げ)」 トゥポルを見ながら出ていくクレム。 ターボリフトに入ったミュックは、小型機械で状況を確認する。「(安全だ)」 2人はガスマスクを外した。 到着したのはブリッジだ。 リードやアーチャー、メイウェザーも眠っている。 アーチャーに近づくミュック。「(船長だろう)」 クレムは勝手に操舵席のスイッチに触れた。音が鳴り出す。 止めるミュック。「(こら。触るんじゃない。触るな)」 コミュニケーターを取りだした。「(ミュックだ)」 フェレンギ船のユリスは、鞭を持っている。「(手応えは?)」 ミュック:『(宝の山だ)』 「(すぐ行く)」 汚染除去室。 タッカーは目を開けた。「……ドクター、まだか?」 立ち上がり、ドアを叩く。 通信機に触れた。「20分って言ったろ。」 医療室にタッカーの声が響く。『…もう 1時間にはなる。そろそろいいんじゃないのか?』 フロックスも床に倒れていた。『ドクター。』 一方的に話すタッカー。「…おーい。」 ドアを開けようとする。 仕方なくコンソールをショートさせ、空いた隙間から出ていく。 下着姿のまま廊下を歩くタッカーは、眠っているクルーがいることに気づいた。脈を取る。 ターボリフトの中にもクルーがいる。 段差に金属板を置き、荷台を運んでいくユリスたち。 医療室に入ったタッカーは、フロックスの脈を取った。 ミュックの声が聞こえてくる。「(薬だ。高く売れる)」 逃げるタッカー。 中に入るクレム。「(機械類は?)」 ミュック:「(薬が先だ)」 手当たり次第に袋に詰めていく 2人。 クレムはフロックスが飼っている動物の箱に気づいた。 ふたを開けるが、中身に驚いて閉める。 ミュック:「(何遊んでる!)」 階段の上から様子をうかがうタッカー。 廊下に戻ったタッカー。物音が聞こえてくる。 ユリスが魚雷を荷台に載せて運んでいる。 部屋から出たタッカーは、走っていった。 |
※5: Ferengi TNG第5話 "The Last Outpost" 「謎の宇宙生命体」で初登場、そして連邦との正式なファースト・コンタクトを行った種族。DS9 ではクワークがレギュラーでした。ENT第13話 "Dear Doctor" 「遥かなる友へ」で言及。なお、このエピソードでは一回も言及されていません |
記念銘版を外すユリス。 グリシュは操舵席からメイウェザーをどかした。椅子を見る。 トゥポルの鼻をなでるクレム。抱きかかえて連れて行く。 ワープコア近くのコンソールをいじっていたミュック。火花が飛んだ。驚いて倒れるミュック。 椅子を取り、ターボリフトに運んでいくグリシュ。 クレムは食堂の棚から料理を選んでいる。 気に入った皿は、両方とも持って行く。 クルーの私室からブーツを取り出すミュック。 においを嗅ぎ、派手な靴下を履いた足とサイズを比べる。 トゥポルが寝ているシャトル出発ベイ。 たくさんの武器や道具が運ばれている。 そしてサトウたち、女性ばかりが集められている。 機関室にやってきたタッカー。 コンピューターを操作し、ブリッジの映像を出した。 リードやメイウェザーが倒れているそばで、ユリスたちがアーチャーを運んでいく。 アーチャーは手錠をかけられ、壁につながれている。 ユリス:「(起こせ)」 グリシュはハイポスプレーらしき物を使った。 目を覚ますアーチャー。「誰だ。」 ユリス:「(船の指揮官か?)」 「何て…言ったんだ?」 翻訳機を使うクレム。 ユリス:「(船長なのか?)」 アーチャー:「何?」 「ボク・メグリン・ドク、わからないのか?」 言葉が通じるようになった。 ミュック:「座ってろ!」 武器で殴る。 痛むアーチャー。「君ら何者だ。」 ユリス:「そんなことは、どうだっていいんだ。この船の指揮官なのか?」 アーチャー:「船長だ。」 サトウたちに気づく。「クルーに何をしたんだ。」 「眠ってるだけだ。協力すれば、誰も怪我をせずに済むんだがな。」 「何が望みだ。」 「この船の金庫の場所を教えろ。」 「金庫?」 また殴るミュック。 アーチャー:「…ああ…何の話をしてるんだ。」 クレム:「翻訳機が故障してるのかな?」 ユリス:「わかってるさ。」 アーチャー:「この船は宇宙探査船で、貨物船じゃないんだ。商取引はしない。あんたたちが欲しがるような物はないと思うねえ。」 「じゃあ貴重品は何も積んでないって言うのか? 宝石もラチナムも何も。」 「そう言ったろ?」 ミュック:「嘘だ!」 殴った。 「…誰か知らんが、欲しい物を盗って、早く出てってくれ。」 クレム:「ユリス、それがいいよ。もう既にかなりの儲けになっているし。」 ミュック:「いやまだあるはずだ。隠してやがるんだ。」 グリシュ:「クレムに賛成だ。欲張らずに引き上げようぜ。」 ユリス:「これだけでか? スキャナーに、低レベルの武器。小物ばかりだ。」 ふと上を見上げたアーチャーは、タッカーに気づいた。 クレム:「女どもがいるじゃないか。かなりの上玉もいるし高く売れるよ。今出ればスタミリス星※6の奴隷市に間に合うだろ?」 アーチャー:「奴隷市?」 ユリス:「そうだな、クレム。せいぜい高い値段がつきそうな女を選べよ?」 クレム:「もう選んである。」 「フン、あんたと商売できてよかったよ。」 アーチャー:「…待て。」 笑うユリス。「…考え直したのか?」 アーチャー:「…金庫を教えよう。…だが金は半分だけだぞ。」 「…ラチナム入りの金か!」 「金の延べ棒だ。」 驚くフェレンギ人たち。 アーチャー:「何百とあるが 50%は、こちらに残してもらう。」 ユリス:「10%にしろ。」 「40 なら。」 「15。」 「35。それ以上は譲らんぞ。俺がいなきゃ見つからないんだからな。」 「20%! これが最後だ。」 「冗談じゃない! それなら女を連れてってくれ。」 グリシュ:「奴らが 35 なら、こっちは 65 だ。受けた方がいいよ。」 ユリス:「いや。金庫は俺たちで見つける。クレム、商品を船に詰め込め。」 クレム:「従兄弟なのに何で俺は命令されてばっかりなんだ?」 「こいつにやらせろ。」 残ったクレムは、アーチャーに武器を向けた。 フェレンギ船。 荷物を運ばされるアーチャー。 クレム:「ああ、そっちじゃない。ここだ。」 引き返すアーチャー。「…こういう商売なら、もっとデカい船に変えろよ。」 クレム:「俺のじゃない。従兄弟のだ。」 「ほんとか? …一番偉く見えたのに。」 笑うクレム。「…俺は仕事始めてまだ 1ヶ月だ。」 アーチャー:「気に入ってるか?」 「ああ、従兄弟はしたたかな商人だ、いろいろと勉強になるよ。うーん、それはそっちへずらして。隙間が、空くだろ。」 従うアーチャー。「こんな物盗んでどうする。科学技術は十分あるのに…。」 クレム:「物はあればあるほどいいんだ。金儲けの秘訣※7にある。『発展か、死か。』※8」 「『金儲けの秘訣』?」 「うーん、今のが 45条だ。173条全部暗記した。一番大事なのがこれだ。『男は、財産の総額で、価値が決まる。』※9」 「我々の星では、そういう考えのせいで、文明が滅びるところだった。」 「そりゃあ商売のやり方が下手だからさ。来いよ。俺たちには仕事がある。」 「あ? 俺たち?」 指示するクレム。 出てくるアーチャー。「仕事の後は、儲けを 4人で均等に分けるのか?」 クレム:「いや、従兄弟が取り分を決めるんだ。」 「ほかの連中よりかなり多いんだろうなあ?」 「それが俺は一番少ない。」 「そりゃ不公平だなあ。一番働いてるのに。」 荷物を運んでいくアーチャー。 「…それも俺のためを思ってのことさ! 資産管理も全部やってくれてるんだ。」 「あ、そうなのか。」 「俺は、商売の耳をもってないんだ。ああ。」 「それじゃあ、管理料も払ってるのか?」 「当然だろ?」 また出てきたアーチャーは、タッカーが近くにいることに気づいた。 気づかず話すクレム。「…料金を取らなきゃいい商売人とは言えないからな。『たとえ身内でも金儲けの邪魔はさせるな』※10ってな。」 アーチャー:「例の秘訣か?」 「6条だ。」 「ハ。」 「いつか従兄弟が俺に船をもたせてくれることになってるのさ。」 咳をし出すアーチャー。「水を一杯持ってきてくれよ。」 クレム:「あ? ああ…。」 近くの取っ手を示す。 「食堂のディスペンサーで、その…出せるんだ。」 取っ手に手錠をかけるクレム。「じゃあ、すぐ戻ってくる。」 タッカーが隠れて見ている。 アーチャー:「そうだ、ついでに食い物も持ってきてくれないか。…陳列ケースの残り物でいい。もしも全部盗み出してなきゃな。」 笑う。 クレム:「ああ、ああ。」 歩いていった。 合図するアーチャー。 タッカーが近づく。「大丈夫ですか。」 手錠を外そうとする。 アーチャー:「ああ、そっちは。」 「クルーで起きてるのはどうやら俺たちだけみたいですよ? 誰か起こそうと思ったんですが、医療室に薬もない。」 「あいつらは目につく物を片っ端から運び出している。」 外すことができないタッカー。「ああ…何者です。」 アーチャー:「まだわからん。フェイズ銃はあるか?」 「兵器室は空です。」 「武器庫は 14 もあるんだ。全部空にするなんて無理だろ。」 「確かです、調べました。」 「…作戦は考えた。だが実行に移すには人手がいる。連中はハイポスプレーで起こしたぞ? 出発ベイにあるはずだ。」 足音が聞こえてきた。去るタッカー。 サンドイッチを食べながら戻ってきたクレム。「これ美味いな!」 アーチャー:「口に合ったか?」 「コックも一緒に連れて行くかな?」 笑うクレム。 「…俺のだろ?」 「あ、あ。」 クレムは水も渡したが、手錠を外さなければならないことに気づいた。「ああ。…うーん?」 鍵がないようだ。 シャトル出発ベイに入ったタッカーは、フェレンギ人のハイポスプレーを見つけた。 まずはトゥポルに注射する。目を覚ますトゥポル。 タッカーは続いてサトウに打つ。 トゥポル:「…少佐?」 「もう大丈夫だ。」 何度かサトウに打つが、反応がないようだ。 タッカーを見るトゥポル。 タッカーは気づいた。「どうしてこんな格好でいるのか、不思議だよな?」 トゥポル:「では説明してもらえますか?」 「衛星調査から戻って俺は汚染除去室に入ってた。その間に異星人が全クルーを眠らせたらしい。そして、船を乗っ取ったんだ。」 「…少佐が持ち帰った遺跡の遺物ですが、彼らが仕掛けた物だったんでしょう。開けた時、ある種のガスが噴出したんです。」 誰か来たらしい。タッカーは隠れ、トゥポルはまだ寝ている振りをする。 アーチャーと入るクレム。トゥポルに近づく。「この女は、ほかのとは違うよな。何て種族だ?」 アーチャー:「ヴァルカンだ。」 「…ヴァルカンか。」 「よく知ると、あまり楽しい連中じゃないぞ?」 ケースを運び出すアーチャー。 「この女のことは知りたい。売らないでおこうかなあ。すぐには。」 タッカーが見ている。 手を伸ばすクレム。 アーチャー:「本当だ。ユーモアのセンスはないし、文句ばかり言ってる。」 またトゥポル※11の耳に触れたクレム。「ああ…。」 アーチャー:「クレム!」 「あっ!」 出ていく 2人。 トゥポルは目を開け、耳に触れた。 タッカー:「大丈夫か?」 トゥポル:「ヴァルカンが抑えている暴力性を、時々取り戻したくなります。」 「行こう、作戦がある。」 「ほかのクルーは?」 「起こせない。ハイポスプレーがもう空なんだ。行くぞ、奴隷にされたくなきゃな?」 |
※6: Stameris ※7: フェレンギ金儲けの秘訣 Ferengi Rules of Acquisition DS9第11話 "The Nagus" 「宇宙商人フェレンギ星人」で初言及。24世紀には全285条まで増えています ※8: No.45 "Expand or die." 24世紀 (VOY第47話 "False Profits" 「救世主フェレンギ」) には第95条になっています。当時の吹き替えでは「財源を拡大せよ。」 ※9: "A man is only worth the sum of his possessions." 番号不明 ※10: No.6 "Never allow family to stand in the way of profit." 24世紀 (DS9 "The Nagus") には profit が opportunity に変わっています。当時の吹き替えでは「たとえ自分の身内でも金儲けの邪魔は絶対させるな。」 ※11: 寝た振りをした時と、顔の向きが変わっているような… |
私服のまま倒れたクルー。 タッカーはその男の青い制服を借りた。 スキャナーを使うミュック。「ここには何もないぞう。」 グリシュ:「奥までスキャンしてみろ、ここが金庫だって! ガヴァリアン※12船で似たのを見た。」 「何だって金庫が、医療室にある。」 ユリス:「金儲けの秘訣、第23条。『健康ほど大事なものはない。金の…』」 グリシュ:「『次に。』※13」 笑う。 ミュック:「ロックメカニズムも見あたらない。」 「電磁式ロックじゃないのか? マイクロ爆弾で吹き飛ばそう。」 ユリス:「待て。」 スイッチを押すと、診察台が出てきた。 グリシュに向かってくる。「あ…あ……ワーッ!」 武器を向ける。 ミュック:「…こんなの時間の無駄だ。ここの連中が起き出すまで 3時間しかない。全部調べてたら何日もかかる!」 ユリス:「見つかるさ、ミュック。辛抱だ。」 「ああ…」 「そっちを開けろ。」 トゥポルは機関室から、モニターで医療室の様子を見ている。 グリシュ:『空だあ。』 ユリス:『ああ…。』 ミュック:『ああ、こいつはいい。』 『金か?』 『いや。』 長い道具を取りだしたミュック。「だがかなり、質の高い品物だ。うーん、職人芸だねえ。」 ユリス:「元に戻しとけ。」 「俺がメンク人※14に見えるか? …こいつを俺のコレクションに加える。」 「…稼ぎは山分けのはずだぞ?」 「この船は金になると言ったよな。これじゃ儲けにはならねえ。」 「契約しただろ!」 「契約変更だ。見つけた物は、俺の物だ。」 「好きにしろ。その分金の分け前を減らすだけだ。」 道具の先を舐めてみるミュック。 「バイオ物質再配列」と書かれた小さなハッチ。 タッカーは、その上にロック装置を取り付けた。そして出ていく。 ブリッジに入るユリス。 司令室にいるミュック。「どうした、ユリス。見つからなかったのか?」 ユリス:「集めたな…」 「アヤヤヤ…! 触るな。」 スキャナーがまとめて置いてある。 「手伝う気がないんだったら、船へ戻るんだな。お前は何してる。」 グリシュ:「金庫探しさ。」 「船内図に載せると思うか、バカめ。」 「そんなのわかってるさ。でもほら。俺が調べたとこじゃ、これが多分船長の部屋だ。」 壁面の図を示すグリシュ。 ドアのそばで、トゥポルがブリッジの会話を聞いている。 ユリス:『それで?』 グリシュ:『あんたの部屋にラチナムあるだろ? うーん?』 ユリスは尋ねた。「一番の近道は。」 グリシュ:「エレベーターでこのデッキへ行って、この通路だ。」 パッドを使うトゥポル。 ユリス:『うーん、行ってみよう。』 パッドのボタンを叩いた。 途端にブリッジに、高いノイズが響きだした。 ユリス:「銃を取れ! どこから出てる。」 グリシュ:「こっちらしい!」 ドアを開けるトゥポル。 グリシュはコンソールを操作するが、音は止まらない。 トゥポルはスキャナーを全部持って行く。 ユリス:「音を止めろ!」 ミュックはコンソールを撃ち、やっとで静まった。 ユリス:「船長の部屋へ行くぞ。」 もう一度撃つミュック。「ヘッヘ…。」 司令室に戻る。「俺のスキャナーはどこだ。ここに置いたんだ。」 ユリス:「自分の財産には気をつけるんだな。」 「おい、おい! 袋を開けろ。」 「…よせ。」 「開けるんだ。」 「俺を盗っ人呼ばわりする気か?」 「自分のおふくろの耳垢でも盗むって評判だからな。」 グリシュ:「おい、やめてくれよ。仲間じゃないか。」 また会話を聞いているトゥポル。 ミュック:『仲間の物を盗んだりするか?』 ユリス:『あんな安物のスキャナーを誰が盗む。』 トゥポルはパッドを操作する。 ユリスが持っていた袋の中から、機械音が聞こえてきた。 取り上げたミュックが開けると、スキャナーが入っていた。「安物?」 ユリス:「俺は盗ってないぞ。」 「へー、そうか。じゃ誰だ。」 「誓って俺じゃない!」 「こいつが勝手に…テーブルから飛び降りて、中に潜り込んだって?」 音を止めるミュック。「…もう一つは! 3つあった。」 グリシュ:「あ? …俺を見るなよ!」 「返すんだ。」 「…知らねえ!」 「戻ってこい!」 外のトゥポル。 ミュック:『聞こえたろ! この薄汚い盗っ人が!』 もう一つのスキャナーは、トゥポルが持っていた。 機関室で指示するクレム。「それだ。そいつだ。」 アーチャー:「感電しなくて運が良かったなあ。反物質インジェクターを電球みたいに外すとは、無茶もいいとこだ。」 「…早くしろ。」 「うん。インジェクターアセンブリーをオフにしないと。」 「ああ。」 「うん。」 「ワープコアの部品は、需要が高くてね。」 「ふーん? …だけど、あんたの従兄弟が金庫を見つけても、金の分け前をくれるって保証はあるのか?」 「契約があるんだ。」 「金庫を実際見なきゃ、何本あったかわからない。いくらでも、ごまかしは利くじゃないか。」 「俺をだましたりはしない…。」 「でもあれだろ? 『たとえ身内でも金儲けの邪魔はさせるな。』 あんただけ扱いが悪いし、あんたには商才がないってバカにしてたぞ? 見返してやれよ。そこで提案があるんだ。取り押さえるのを手伝えば、金庫のありかを教える。山分けするんだ。五分五分でな? 奴らを拘束室において飛び立てば、大金持ちだ。自分の船をもつのが夢だって言ってただろ?」 「…お前が裏切らないって保証がどこにある。」 「銃を持ってるのはそっちだ。考えてみろよ。命令もされないし、もう言いなりにならなくていいんだぞ? ヴァルカンの女も、オマケにつけてやろうか。」 「ああ…! ああ…。」 「それで? どうする。こんなデカいチャンスは、滅多にあるもんじゃない。」 「……仕事に戻るんだ。」 ため息をつくアーチャー。「損したな?」 ゆっくりと話すグリシュ。「金庫は、どこにあるんだ? …俺の言ってることがわかるか?」 目の前にいたポートスは吠えた。 グリシュ:「言語にロックオンできないんだ。」 ミュック:「…下等動物なんだよ。多分船長の食料なんじゃないか?」 「いいや、わからんぞ? 耳の大きさを見ろ。」 「マロージアン星の動物園※15に売れば、多少の金にはなる。」 抱きかかえるミュック。 出てきたユリス。「何もない。別の部屋を探すぞ?」 ミュック:「…俺はもう金庫探しは飽き飽きだ。2人でやってくれ。」 シャトル出発ベイ。 ポートスをケースに入れてしまうミュック。 人の気配に気づいた。「誰だ。」 そのタッカーは何とか逃げていく。 コミュニケーターを使うミュック。「一人起きちまったぞ。」 廊下を走るタッカーを追うミュック。 見失った。 食堂に入るミュック。 タッカーはテーブルで気を失った振りをしている。 ふと気づいたミュックに、タッカーは飛びかかった。 ミュックの落とした銃を取ろうとする。 ミュックの耳に噛みつき、殴り倒した。 武器を奪い、逃げていくタッカー。 廊下を急ぐタッカーは、先に見えたグラシュに武器を撃つ。当たらない。 だがエネルギーを手に受け、銃を取り落としてしまった。 反対側から鞭※16を持ったユリスが近づく。 「何で目が覚めたんだ。」 振り下ろした鞭から発せられるエネルギーを、タッカーは身体に受けた。 倒れ、苦しむタッカー。 |
※12: Gavarian ※13: No.23 "Nothing is more important than your health except for your money." ※14: Menk ENT "Dear Doctor" に登場 ※15: Malurzian Zoo ※16: フェレンギ・ウィップ Ferengi whip これまで使用されたのは TNG "The Last Outpost" のみ |
出発ベイに入ったアーチャーは、トゥポルがいなくなっていることに気づいた。すぐに尋ねる。「次は何だ。」 クレム:「あ…あ。」 指示する。 「でもどこへ運ぶんだ。積み込む場所がもうほとんどない。どれを持ってくか、優先順位をつけるんだな。」 「ああ…ユリスに聞くよ。」 コミュニケーターを取り出すクレム。 「そんなことも自分で決められないのか? …いつか自分の船をもつ気だったら、少しは自分の意志で動かないとな?」 「お…俺は責任者じゃないし。」 「それじゃ一生もてそうにないな?」 中に入るユリス。「こいつは。」 タッカーを連れ、ミュックたちも一緒だ。 アーチャー:「機関主任だ。」 「なぜ目覚めた。」 「俺に聞くな。」 「ほかにもいるか。」 「俺は、誰も見てないな。どうだ?」 クレム:「あ…いや。」 グリシュ:「あと 2時間は麻酔が効いてるはずなのに。多分、量を間違ったんだ。ほかのも起きてくるぞ? 逃げよう!」 ユリス:「金を見つけてからだ。」 ミュック:「もうあきらめろ。見つかりゃあしないよ。」 「抜けたきゃこいつらのシャトルに乗っていけ。お前の分け前は頂くがな。」 「俺が手ぶらで行くと思うのか?」 「シャトルがあるだろうが。それに女もやる。」 「それは飲めねえ。」 武器を向けるユリス。「飲むしかない。」 「……後悔するぜ、ユリス。」 ミュックは銃を収めた。 「ヘ…消えろ!」 「グリシュ。運ぶの手伝えよ。」 タッカー:「待て! 金庫を教える。」 アーチャー:「トリップ。」 「女たちをおいていけば、金は全部やる。」 「それ以上しゃべるんじゃない。これは命令だ。」 「妻を連れて行かせやしない!」 ユリス:「妻?」 クレム:「尖った耳の女じゃないよな?」 タッカー:「違う、ホシって名前だ。妻には指一本触れるなよ! 乗るのか。」 アーチャー:「こいつらを金庫に近づけたら、命令不服従で拘束室行きだ。」 「クルーのことはどうでもいいのか。大事な金さえ守れればいいんだろ。」 「これ以上言わせるなよ?」 「あんたは金の亡者だ!」 「お前の女房がなんだ。売れてせいぜい延べ棒 6本だろう。ホシをくれてやれば、金を 10本やる。」 「何?」 「わかった、15本だ。」 「このー!」 タッカーは飛びかかった。 押さえるフェレンギ人たち。「やめろ!」 「よせ!」 アーチャーと取っ組み合うタッカー。「離せ…この…」 何とか 2人は引き離された。落ち着くアーチャー。 ユリス:「お前の話に乗ろう。」 タッカー:「…女をおいていくな?」 「ビジネスマンには二言はないんだ。」 「…こっちだ。」 袋を取り出すユリス。「ここで待て。俺が行く。」 同じく袋を持つミュック。「で、分け前をちょろまかすのか? 袋の底に隠すか。…俺も行くぞ? 金庫から出す前にきっちり全部本数数えるからな。」 ユリス:「数えるのは後だ。」 「その手には乗らねえよ、ユリス。」 グリシュ:「ミュックが行くなら俺もだ!」 クレム:「俺も!」 ユリス:「あ…全員はダメだ! …時間がないんだ。誰か残って積み込みを終えないとな!」 グリシュ:「クレムの仕事だろ!」 クレム:「飽き飽きなんだよ、言いなりはウンザリなんだ!」 ユリス:「クレム!」 「俺だって、自分の意志で、独りで…動きたいんだ。」 うなずくアーチャー。 クレム:「商売の耳ぐらい俺にもある、チャンスをくれなかっただけじゃないか!」 ユリス:「…仕事に戻れ!」 「……わかったよ。」 笑うミュック。ユリスたちも笑い、タッカーについて出ていった。 首を振るアーチャー。「一応…言ってやったな?」 クレム:「…仕事に戻れ!」 「……あ。腰が…。」 押さえるアーチャー。 「どうしたんだ?」 「腰が痛む。水球やってた時の古傷なんだ。時々痛み出す。休めば治る。おお…」 「時間がないんだ。ユリスが戻った時積み終えてなかったら…。」 「ならあんたがやれよ。」 「あ…ああ!」 アーチャーに手錠をかけるクレム。自分で荷物を運び出した。 ターボリフト内のユリス。「どこへ行くんだ。」 タッカー:「一番下だ。」 ミュック:「もう調べたぞ?」 「すぐわかる場所にはないさ。」 ユリス:「先に行け。」 ユリスとぶつかるミュック。 船に荷物を運んだクレム。 突然、トゥポルの声が響いた。「助けに来てくれたの?」 驚き、銃を向けるクレム。「何で目が覚めた!」 近づくトゥポル。「クルーを眠らせたものは私には効かなかったようね? …機能が違うの、人間とはね。」 クレム:「『ニンゲン』?」 「それがあの種族の名前。…ひどい連中なの。嘘つきで、残酷で。」 「じゃ、何で一緒にいるんだ?」 「いたいわけじゃないわ。囚われの身よ? 奴隷にされたの。」 武器を下ろすクレム。「ああ…。」 トゥポル:「一緒に連れて逃げて。」 「…嫁さんにできたら…いいだろうなあ? ……そうだ。あんたできるか? ウー・マックス※17は。」 「快楽の技術は訓練されてる。」 「ああ…」 「でもウー・マックスは知らないわ?」 「耳たぶだ。耳たぶを…なでてくれ…。」 触れるトゥポル。 クレム:「あっ!」 トゥポル:「…こう?」 「あっ! ああ…あ…」 「これでいい?」 「ああ…もっと…。」 その瞬間、トゥポルはクレムの肩をつかんだ。ヴァルカン首つかみだ。倒れるクレム。 鍵を手にするトゥポル。ケースからフェイズ銃を取り出す。 狭い通路を通っていくユリス。「ここはもう通ったんじゃないのか。」 タッカー:「いいや。」 「コンジットに見覚えがあるぞ。」 「同じコンジットが 1,000本ぐらいあるからな。」 ミュック:「堂々巡りしてないかあ?」 「こっちだ。」 また広い廊下。 グリシュ:「近道はないのか?」 タッカー:「わざとこうなってるんだよ。正確に行き方を知らなきゃ、たどり着けないようにな。」 ユリス:「あとどれくらいだ。」 「まあ焦るなよ。もうすぐだ。」 再びコンジット。 タッカー:「頭に気をつけろ?」 ミュック:「死ぬまで歩かせる。そういう作戦か?」 ユリス:「俺たちをだます気か!」 タッカー:「落ち着けよ! ここだ。」 「おお。」 我先に入ろうとするフェレンギ人。 さっき取り付けたロックを外すタッカー。 グリシュ:「金庫か!?」 タッカー:「持って行け。」 ユリス:「開けろ。あけろ!」 ハッチを開けたタッカー。「まず、俺が入るよ。」 ユリス:「何で。」 「アーチャー船長のことだ、いろんな罠を仕掛けてるに違いない。まず…先に行って確認してくる。」 ミュック:「ダメだ! 武器を隠してるかもしれねえ。」 ユリス:「俺が行く。」 押さえるミュック。「独りじゃ行かせねえぜ! ポッケに金を詰め込むからな。」 ユリス:「その手を離さないか!」 グリシュ:「時間がないんだよう!」 「ハッチから離れろ! 邪魔だ、どけえ!」 グリシュ:「俺にも分け前くれよう!」 入っていくユリス。「離せ! 離さないと手を吹き飛ばすぞ!」 グリシュ:「俺のだ、俺のだ!」 3人とも中に入った。中には大型の機械が置いてあるだけだ。 ユリス:「罠だ!」 隠れていたトゥポルが、グリシュとミュックを撃った。 反撃するユリス。ハッチに隠れながら撃つトゥポル。 フェイズ銃はチューブに当たり、蒸気が吹き出てくる。ついにユリスも撃たれた。 中に入るタッカー。「悪かったな? 今日は銀行は休みだ。」 シャトル出発ベイに入るトゥポル。 アーチャー:「どうだった。」 トゥポル:「完璧です。」 ため息をつくアーチャー。「鍵は。」 鍵を見せるだけのトゥポル。 アーチャー:「ん?」 トゥポル:「『楽しい連中じゃない。ユーモアはないし、文句ばかり。』」 「……埋め合わせする。」 「どうやって?」 「延べ棒 5本は? …外してくれ、副司令官? 命令だ。」 やっとで手錠を外し始めるトゥポル。 魚雷を兵器室に戻すフェレンギ人たち。 ミュックは置く時に手を挟んでしまった。 銃を持ったタッカーが見張っている。 エアロックから盗んだ物を運んでいくユリスたち。 保安部員やトゥポルが監視する。 ケースを開けると、ポートスが出てきた。 抱き上げるアーチャー。「ポートス? うーん。大丈夫か?」 フェレンギ船に入るアーチャー。「ヴァルカン最高司令部と、宇宙艦隊に報告しておくからな。ヴァルカンや艦隊の船の 1光年以内に近づけば、即攻撃する。」 クレム:「二度と近寄らないよ。」 他のフェレンギ人は船内で拘束されている。 アーチャー:「自由になりたきゃ、クレムにもうちょっと敬意をもって接することだな?」 ミュック:「クズ野郎!」 ユリス:「手錠を外せ! そうすればなかったことにしてやるぞ。」 クレム:「多分? 後でな? 行いが良きゃだ。」 「外せ、この馬鹿者が!」 「黙れー!」 笑うクレムは、トゥポルに尋ねた。「本当に『ニンゲン』の船に残りたいのかい? 俺の船とあんたの…テクで、ものすごい大金持ちに…」 アーチャーを見る。「なれるぜ…?」 出ていくトゥポルとアーチャー。 ユリス:「…俺のラチナム・ペンをやってもいいんだぞ? 前から目をつけてただろ?」 クレム:「いーらない。」 「…なら、ヒューピリアの嗅ぎタバコ※18は。」 「ああ…クシャミが出る。」 船長席に座るクレム。 グリシュ:「いくらか言え! ユリスが払う分の、2倍出すぞ。」 ユリス:「クレム! …従兄弟同士だろ。」 ミュック:「ボリアン人※19の女は? 紹介してやるぞ?」 制するクレムは立ち上がり、操縦桿を握った。「ああ…。」 エンタープライズを離れるフェレンギ船。 |
※17: oo-mox TNG "Menage a Troi" など ※18: 原語では「俺の嗅ぎタバココレクションは?」というセリフのみ。ヒューピリア (フーパイリア) の (虫) 嗅ぎタバコ (Hupyrian beetle snuff) は DS9第27話 "Rules of Acquisition" 「フェレンギ星人の掟」などでゼクが好んで使っていた物 ※19: ボリアン、ボラルス人 Bolian TNG第25話 "Conspiracy" 「恐るべき陰謀」で初登場した、肌が青く顔が二つに分かれたような種族。ENT 初言及 |
感想
「22世紀の」フェレンギ人が登場。豪華俳優陣が揃っている代わりに、レギュラーの 4人 (リード、サトウ、メイウェザー、フロックス) はセリフなしという仕打ち…。日本版の声優クレジットも削除されてますね。TNG でファースト・コンタクトしたという設定を守るためか、クルーの大半は船や姿を目にしてもいません。アーチャーもトゥポルも、地球人やヴァルカン人については話すのに、相手の種族名は聞かない…。 でも、現在の設定を打ち立てた DS9 でのフェレンギ話ほどではないものの、楽しめる一本ではありました。声優が普通 (失礼) だったのが惜しい。 |
第18話 "Rogue Planet" 「幻を狩る惑星」 | 第20話 "Oasis" 「閉ざされたオアシス」 |