出発ベイに入ったアーチャーは、トゥポルがいなくなっていることに気づいた。すぐに尋ねる。「次は何だ。」
クレム:「あ…あ。」 指示する。
「でもどこへ運ぶんだ。積み込む場所がもうほとんどない。どれを持ってくか、優先順位をつけるんだな。」
「ああ…ユリスに聞くよ。」 コミュニケーターを取り出すクレム。
「そんなことも自分で決められないのか? …いつか自分の船をもつ気だったら、少しは自分の意志で動かないとな?」
「お…俺は責任者じゃないし。」
「それじゃ一生もてそうにないな?」
中に入るユリス。「こいつは。」 タッカーを連れ、ミュックたちも一緒だ。
アーチャー:「機関主任だ。」
「なぜ目覚めた。」
「俺に聞くな。」
「ほかにもいるか。」
「俺は、誰も見てないな。どうだ?」
クレム:「あ…いや。」
グリシュ:「あと 2時間は麻酔が効いてるはずなのに。多分、量を間違ったんだ。ほかのも起きてくるぞ? 逃げよう!」
ユリス:「金を見つけてからだ。」
ミュック:「もうあきらめろ。見つかりゃあしないよ。」
「抜けたきゃこいつらのシャトルに乗っていけ。お前の分け前は頂くがな。」
「俺が手ぶらで行くと思うのか?」
「シャトルがあるだろうが。それに女もやる。」
「それは飲めねえ。」
武器を向けるユリス。「飲むしかない。」
「……後悔するぜ、ユリス。」 ミュックは銃を収めた。
「ヘ…消えろ!」
「グリシュ。運ぶの手伝えよ。」
タッカー:「待て! 金庫を教える。」
アーチャー:「トリップ。」
「女たちをおいていけば、金は全部やる。」
「それ以上しゃべるんじゃない。これは命令だ。」
「妻を連れて行かせやしない!」
ユリス:「妻?」
クレム:「尖った耳の女じゃないよな?」
タッカー:「違う、ホシって名前だ。妻には指一本触れるなよ! 乗るのか。」
アーチャー:「こいつらを金庫に近づけたら、命令不服従で拘束室行きだ。」
「クルーのことはどうでもいいのか。大事な金さえ守れればいいんだろ。」
「これ以上言わせるなよ?」
「あんたは金の亡者だ!」
「お前の女房がなんだ。売れてせいぜい延べ棒 6本だろう。ホシをくれてやれば、金を 10本やる。」
「何?」
「わかった、15本だ。」
「このー!」 タッカーは飛びかかった。
押さえるフェレンギ人たち。「やめろ!」 「よせ!」
アーチャーと取っ組み合うタッカー。「離せ…この…」
何とか 2人は引き離された。落ち着くアーチャー。
ユリス:「お前の話に乗ろう。」
タッカー:「…女をおいていくな?」
「ビジネスマンには二言はないんだ。」
「…こっちだ。」
袋を取り出すユリス。「ここで待て。俺が行く。」
同じく袋を持つミュック。「で、分け前をちょろまかすのか? 袋の底に隠すか。…俺も行くぞ? 金庫から出す前にきっちり全部本数数えるからな。」
ユリス:「数えるのは後だ。」
「その手には乗らねえよ、ユリス。」
グリシュ:「ミュックが行くなら俺もだ!」
クレム:「俺も!」
ユリス:「あ…全員はダメだ! …時間がないんだ。誰か残って積み込みを終えないとな!」
グリシュ:「クレムの仕事だろ!」
クレム:「飽き飽きなんだよ、言いなりはウンザリなんだ!」
ユリス:「クレム!」
「俺だって、自分の意志で、独りで…動きたいんだ。」
うなずくアーチャー。
クレム:「商売の耳ぐらい俺にもある、チャンスをくれなかっただけじゃないか!」
ユリス:「…仕事に戻れ!」
「……わかったよ。」
笑うミュック。ユリスたちも笑い、タッカーについて出ていった。
首を振るアーチャー。「一応…言ってやったな?」
クレム:「…仕事に戻れ!」
「……あ。腰が…。」 押さえるアーチャー。
「どうしたんだ?」
「腰が痛む。水球やってた時の古傷なんだ。時々痛み出す。休めば治る。おお…」
「時間がないんだ。ユリスが戻った時積み終えてなかったら…。」
「ならあんたがやれよ。」
「あ…ああ!」 アーチャーに手錠をかけるクレム。自分で荷物を運び出した。
ターボリフト内のユリス。「どこへ行くんだ。」
タッカー:「一番下だ。」
ミュック:「もう調べたぞ?」
「すぐわかる場所にはないさ。」
ユリス:「先に行け。」
ユリスとぶつかるミュック。
船に荷物を運んだクレム。
突然、トゥポルの声が響いた。「助けに来てくれたの?」
驚き、銃を向けるクレム。「何で目が覚めた!」
近づくトゥポル。「クルーを眠らせたものは私には効かなかったようね? …機能が違うの、人間とはね。」
クレム:「『ニンゲン』?」
「それがあの種族の名前。…ひどい連中なの。嘘つきで、残酷で。」
「じゃ、何で一緒にいるんだ?」
「いたいわけじゃないわ。囚われの身よ? 奴隷にされたの。」
武器を下ろすクレム。「ああ…。」
トゥポル:「一緒に連れて逃げて。」
「…嫁さんにできたら…いいだろうなあ? ……そうだ。あんたできるか? ウー・マックス※17は。」
「快楽の技術は訓練されてる。」
「ああ…」
「でもウー・マックスは知らないわ?」
「耳たぶだ。耳たぶを…なでてくれ…。」
触れるトゥポル。
クレム:「あっ!」
トゥポル:「…こう?」
「あっ! ああ…あ…」
「これでいい?」
「ああ…もっと…。」
その瞬間、トゥポルはクレムの肩をつかんだ。ヴァルカン首つかみだ。倒れるクレム。
鍵を手にするトゥポル。ケースからフェイズ銃を取り出す。
狭い通路を通っていくユリス。「ここはもう通ったんじゃないのか。」
タッカー:「いいや。」
「コンジットに見覚えがあるぞ。」
「同じコンジットが 1,000本ぐらいあるからな。」
ミュック:「堂々巡りしてないかあ?」
「こっちだ。」
また広い廊下。
グリシュ:「近道はないのか?」
タッカー:「わざとこうなってるんだよ。正確に行き方を知らなきゃ、たどり着けないようにな。」
ユリス:「あとどれくらいだ。」
「まあ焦るなよ。もうすぐだ。」
再びコンジット。
タッカー:「頭に気をつけろ?」
ミュック:「死ぬまで歩かせる。そういう作戦か?」
ユリス:「俺たちをだます気か!」
タッカー:「落ち着けよ! ここだ。」
「おお。」
我先に入ろうとするフェレンギ人。
さっき取り付けたロックを外すタッカー。
グリシュ:「金庫か!?」
タッカー:「持って行け。」
ユリス:「開けろ。あけろ!」
ハッチを開けたタッカー。「まず、俺が入るよ。」
ユリス:「何で。」
「アーチャー船長のことだ、いろんな罠を仕掛けてるに違いない。まず…先に行って確認してくる。」
ミュック:「ダメだ! 武器を隠してるかもしれねえ。」
ユリス:「俺が行く。」
押さえるミュック。「独りじゃ行かせねえぜ! ポッケに金を詰め込むからな。」
ユリス:「その手を離さないか!」
グリシュ:「時間がないんだよう!」
「ハッチから離れろ! 邪魔だ、どけえ!」
グリシュ:「俺にも分け前くれよう!」
入っていくユリス。「離せ! 離さないと手を吹き飛ばすぞ!」
グリシュ:「俺のだ、俺のだ!」
3人とも中に入った。中には大型の機械が置いてあるだけだ。
ユリス:「罠だ!」
隠れていたトゥポルが、グリシュとミュックを撃った。
反撃するユリス。ハッチに隠れながら撃つトゥポル。
フェイズ銃はチューブに当たり、蒸気が吹き出てくる。ついにユリスも撃たれた。
中に入るタッカー。「悪かったな? 今日は銀行は休みだ。」
シャトル出発ベイに入るトゥポル。
アーチャー:「どうだった。」
トゥポル:「完璧です。」
ため息をつくアーチャー。「鍵は。」
鍵を見せるだけのトゥポル。
アーチャー:「ん?」
トゥポル:「『楽しい連中じゃない。ユーモアはないし、文句ばかり。』」
「……埋め合わせする。」
「どうやって?」
「延べ棒 5本は? …外してくれ、副司令官? 命令だ。」
やっとで手錠を外し始めるトゥポル。
魚雷を兵器室に戻すフェレンギ人たち。
ミュックは置く時に手を挟んでしまった。
銃を持ったタッカーが見張っている。
エアロックから盗んだ物を運んでいくユリスたち。
保安部員やトゥポルが監視する。
ケースを開けると、ポートスが出てきた。
抱き上げるアーチャー。「ポートス? うーん。大丈夫か?」
フェレンギ船に入るアーチャー。「ヴァルカン最高司令部と、宇宙艦隊に報告しておくからな。ヴァルカンや艦隊の船の 1光年以内に近づけば、即攻撃する。」
クレム:「二度と近寄らないよ。」
他のフェレンギ人は船内で拘束されている。
アーチャー:「自由になりたきゃ、クレムにもうちょっと敬意をもって接することだな?」
ミュック:「クズ野郎!」
ユリス:「手錠を外せ! そうすればなかったことにしてやるぞ。」
クレム:「多分? 後でな? 行いが良きゃだ。」
「外せ、この馬鹿者が!」
「黙れー!」 笑うクレムは、トゥポルに尋ねた。「本当に『ニンゲン』の船に残りたいのかい? 俺の船とあんたの…テクで、ものすごい大金持ちに…」 アーチャーを見る。「なれるぜ…?」
出ていくトゥポルとアーチャー。
ユリス:「…俺のラチナム・ペンをやってもいいんだぞ? 前から目をつけてただろ?」
クレム:「いーらない。」
「…なら、ヒューピリアの嗅ぎタバコ※18は。」
「ああ…クシャミが出る。」 船長席に座るクレム。
グリシュ:「いくらか言え! ユリスが払う分の、2倍出すぞ。」
ユリス:「クレム! …従兄弟同士だろ。」
ミュック:「ボリアン人※19の女は? 紹介してやるぞ?」
制するクレムは立ち上がり、操縦桿を握った。「ああ…。」
エンタープライズを離れるフェレンギ船。
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※17: oo-mox TNG "Menage a Troi" など
※18: 原語では「俺の嗅ぎタバココレクションは?」というセリフのみ。ヒューピリア (フーパイリア) の (虫) 嗅ぎタバコ (Hupyrian beetle snuff) は DS9第27話 "Rules of Acquisition" 「フェレンギ星人の掟」などでゼクが好んで使っていた物
※19: ボリアン、ボラルス人 Bolian TNG第25話 "Conspiracy" 「恐るべき陰謀」で初登場した、肌が青く顔が二つに分かれたような種族。ENT 初言及
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