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エンタープライズ エピソードガイド
第18話「幻を狩る惑星」
Rogue Planet

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・イントロダクション
船長席に座っているアーチャー。どこかぎこちない。「作戦室で、撮ったらどうだ。」
タッカー:「やはり船長は船長の席に座ってなきゃ。毅然とね?」 カメラで写真を撮っている。
「さっさと撮れ。」
「ちょっとバックが邪魔だなあ。」
見上げるトゥポル。
タッカー:「右に 10度ほど、顔を傾けて下さい。」 従おうとしないアーチャーに言う。「艦隊の司令部に入る新人がみんな見ることになるんです。」
メイウェザー:「名誉なことですよ? りりしい船長の姿を目にすれば、やる気も出るというもの。」
「ああ、画面の反射が入っちゃうなあ。司令室のモニターを消してくれないか? …頼むよ、トゥポル。オークランドの画家に完璧な写真を提供したい。」
アーチャー:「ヴァルカン司令部にも、司令官の肖像画が掛かってるかね?」
トゥポル:「ヴァルカン人は姿形ではなく、司令官の仕事ぶりを崇拝します。」
タッカー:「ほんとに偉い人は崇拝するだろ? ミイラにされるんだ。※1
アーチャーは椅子を降りてしまった。「ファイルの写真を使ったらどうなんだ。」
リード:「船長。この先に、小さな惑星を発見しました。」
「コース上に星系はなかったはずだが。」
「星系ではありません。惑星が一つ。」
「画面を。」
操作するサトウ。
暗い惑星が映し出された。
アーチャー:「拡大。」
近くに恒星がないため、全体が真っ暗だ。
トゥポル:「はぐれ惑星。…軌道から外れた惑星ですね。」
アーチャー:「そこに向かう。少し探ってみよう。」
メイウェザー:「了解。」
写真を撮るタッカー。「かっこいい、アーチャー船長!」
アーチャー:「いい加減にしろ、トリップ。」
タッカーはカメラを収めた。


※1: ENT第7話 "The Andorian Incident" 「汚された聖地」より

・本編
惑星がスクリーンに映っている。
トゥポル:「惑星上には、さまざまな生物が存在しています。」
サトウ:「信じられません。」
メイウェザー:「地表面は氷で覆われてるのに。」
トゥポル:「惑星内部から熱いガスが噴出していて、ほとんどの生物がこの地域に集中していますね。」
アーチャー:「オアシスか。どんな生物だ。」
「…ヒューマノイドの存在は、認められません。」
リード:「赤道付近に強いエネルギーを感知しました。船ですね。」
アーチャー:「呼びかけてくれ。」
サトウ:「…応答ありません。」
タッカー:「邪魔されたくないのかなあ。真っ暗な惑星に船が一隻。ハネムーンかも。」

惑星へ向かうシャトルポッド。
寒冷地用制服のリード。「赤外線は使えません。噴出口からかなりの熱が出ています。」
アーチャー:「船の真上にいるはずだ。」
トゥポル:「森の切れ目を感知しました。」
サトウ:「アマゾンのジャングルみたいだったら危険です。」
アーチャー:「目隠ししても着陸できるってのが私の口癖だ。」
リード:「やっと証明できますね?」
トゥポル:「900メートル前方に空き地がありますが、シャトルと変わらない広さです。」
アーチャー:「それで十分だ。」

着陸するポッド。

森の中を進む一行。それぞれ頭に機械をつけている。
トゥポル:「船長。船は 600メートル前方です。」
リード:「さあ、行きましょう!」
アーチャー:「おい、司令官は誰か忘れるんじゃないぞう? …ニュージーランドの熱帯雨林を思い出すなあ。手柄を立ててバッジをたくさんもらったもんだ。」
「ボーイスカウトですか?」
「イーグル・スカウトにいた。」
「ああ。私もですよ。」
「君も? バッジはいくつもらった。」
「28。船長は。」
「…26 だ。」
「ああ…。立派なもんです。」
トゥポル:「船長。」
アーチャーたちはライトを消し、頭の機械を作動させる。
暗視センサーだ。近づいていく。
奇妙な虫が木を登っている。
アーチャー:「生物を見つけた者に、宇宙生物学バッジを授けよう。」
リード:「それなら…もう持ってます。」
何も言わず進んでいくアーチャー。

サトウは気づいた。「誰かがキャンプをしています。」 跡が残っている。
アーチャー:「誰かいますか。……我々はエンタープライズ※2から来た。誰かいませんか。」
トゥポル:「生体反応はありません。船は、この先 200メートル以内にあるようです。」
「マルコムと調べてくれ。誰か戻った時のために、ここで待ってる。」

慎重に進むトゥポルとリード。
その 2人を、別のセンサーを使って見ている者がいる。
リード:「聞こえました?」
トゥポル:「ええ。」
フェイズ銃を構えるリード。
暗視センサーでは何も見えない。
リード:「反応は。」
トゥポル:「今、一瞬ヒューマノイドの生体反応を感知しましたが…消えました。」
「いや、ここだ!」
突然、何者かがリードに飛びかかってきた。
異星人語で何か怒鳴っている。
その男は自分のセンサーを外すと、もう一人の仲間に指示した。敵意はないらしい。
武器を収めるトゥポル。

火が焚かれるキャンプにも、異星人がいる。
戻ってきたリード。「船長。大丈夫ですか。」
アーチャー:「異常なしだ。彼らは、エスカ人だ。」
座っていたエスカ人。「私はダムラス※3。」 言葉が通じるようになっている。
アーチャー:「彼女はトゥポル、科学士官だ。こちらはマルコム・リード大尉。」
リード:「よろしく。お仲間に撃たれるところでした。」
さっきのエスカ人、ブーザン※4。「悪かった。森には危険な動物たちがいる。」
ダムラス:「ここでヒューマノイドに会ったのは初めてだ。」
トゥポル:「我々が領土を侵犯したと?」
「この惑星は誰のものでもない。我々には特別な場所だが?」
もう一人のエスカ人※5。「ダカラ※6で何をしてる。」
アーチャー:「探査ですよ。しばらくここに滞在して…いいですか? …大きな星なので、別の場所に移動してもいいが、できればここで御一緒させて頂きたい。」

肉を食べるアーチャー。「キャンプを『楽しんで』いるようだ。」
ダムラス:「フーン、ドラジン※7の肉は人生の楽しみだ。」
リード:「うん、異論はありません。それよりなぜ、センサーはあなた方を見逃したのかな。」
「遮蔽装置を使ってる。野生動物に気づかれないように。」
サトウ:「野生動物の研究を?」
ブーザン:「ハ! まあな。」
ダムラス:「我々は、狩りに来てる。」
エスカ人:「このドラジンは、昨日捕ったものだ。」
トゥポル:「ハンターですか。」
ダムラス:「何世紀も前から、ここに狩りに来てる。」
「この星固有の種を殺しに?」
「野生動物を狩るのは我々の伝統だ。進化した霊長類には、手を出さない。」
アーチャー:「地球じゃ、ハンティングは 100年以上前に廃れてしまったんですよ? でも、こうしたもてなしを受けるのは大歓迎です。」
リード:「狩りをするのに、皆さん随分と念の入った装備をしてるんですねえ。」
ブーザン:「ここのハンティングを甘く見ちゃ困るな。やられることもある。」 エスカ人と一緒になって笑う。
「…私も参加させてもらっていいですか?」
ダムラス:「狩りに反対じゃないのか?」
「さっきあなた方は、夜間視覚センサー※8に感知されずに忍び寄ってきた。どうやったのか知りたい。…狩りはしないと約束します。」
笑うエスカ人たち。
アーチャーも同じだ。「それは、皆さん次第だ。」
ダムラスはリードを受け入れたようだ。

軌道上のエンタープライズ。辺りが暗いため、船体は自らのライトで浮かび上がるのみだ。
『船長航星日誌※9、補足。トリップとマルコムは、エンタープライズに向かった。ホシを送り届け、キャンプ道具を持ち帰るためだ。』
タッカー:「もし虫が光るんなら、いつ寝袋に入ってきたかわかっていいだろ。」
サトウ:「私は、とにかく船に戻って眠りたかったのよ。それより相手が見えないなんて、おちおち寝てられない。」
リード:「アナムシ※10みたいに?」
タッカー:「アナムシ?」
サトウ:「耳の穴に入り込んで、卵を産むのよ? 楽しい夜を。」 シャトル出発ベイを出ていく。
笑うリード。

提案するトゥポル。「まずは、昆虫学者だけで十分です。その後生物科学チームを同行させればいい。上陸するのは、一度に 6名に制限した方がいいでしょう。」
アーチャー:「そうだな?」
ダムラス:「楽しんでますか?」
「もちろん。ここを使わせて頂いて、感謝します。」
「出発は、6時間後だ。少し眠っとけよ? 狩りに行くつもりならなあ。」
リード:「絶対行きますよ。」
「それじゃ。」
アーチャー:「おやすみ。」
リード:「おやすみなさい。…眠っておくか。」
タッカー:「そうだな?」 トゥポルも去る。
アーチャー:「私は、もう少し起きてるよ。」
「楽しい夜を!」
「ああ…。」

焚き火のそばで、独り寝ているアーチャー。
女性の声。「ジョナサン…。」
目を覚ますが、気のせいだと思うアーチャー。
だがまた聞こえた。「ジョナサン。」
アーチャー:「…誰だ。」
物音がする。立ち上がるアーチャー。「誰かいるのか。」
女性:「ジョナサン?」
アーチャーはライトを手にし、歩いていく。

森を進むアーチャー。「誰なんだ。」
さらに奥へ歩くと、ふと先の方に、一人の女性※11が立っていた。
アーチャーが近づくと、逃げてしまう。


※2: 吹き替えでは「エンタープライズ

※3: Damrus
(キース・ザラバッカ Keith Szarabajka VOY第150話 "Repression" 「狙われたマキ」のティーロ・アネイディス (Teero Anaydis) 役) 声:大友龍三郎

※4: Burzaan
(コノー・オファレル Conor O'Farrell DS9第79話 "Little Green Men" 「フェレンギ人囚わる」のジェフ・カールソン教授 (Professor Jeff Carlson)、ENT第64話 "Chosen Realm" 「選ばれし領域」のディジャマット (D'Jamat) 役) 声:糸博

※5: 名前は Shiraht (エリック・ピアーポイント Eric Pierpoint TNG第154話 "Liaisons" 「イヤール星の死者」のヴォヴァル大使 (Ambassador Voval)、DS9第111話 "For the Uniform" 「エディングトンの逆襲」のサンダース艦長 (Captain Sanders)、VOY第123話 "Barge of the Dead" 「さまよえるクリンゴンの魂」のコーター (Kotar)、ENT第91話 "Affliction" 「クリンゴンの苦境」などのハリス (Harris) 役) ですが、言及されていません。このガイドでは「エスカ人」としています。声:中田和宏

※6: Dakala

※7: drayjin

※8: nightvision sensor

※9: なぜか今回、「船長」をつけて訳しています

※10: bore worm

※11: Woman
(ステファニー・ニズニック Stephanie Niznik 映画第9作 "Star Trek: Insurrection" 「スター・トレック 叛乱」のケル・ペリム (Kell Perim) 役) 声:幸田直子

タッカーは言った。「船長が見たというなら本当なんでしょう。」
アーチャー:「あなた方以外に仲間は?」
エスカ人:「いない。」
ダムラス:「人間の女がいるわけがない。船のクルーじゃないのか?」
アーチャー:「違います。」
「フン。」
呼び出しに応えるアーチャー。「アーチャーだ。」
メイウェザー:『メイウェザーです。地表にも軌道上にも、ほかに船は確認できません。』
「ご苦労、トラヴィス。以上。」
トゥポルたちと一緒にブーザンが戻ってきた。「誰もいない。」
アーチャー:「…若い女性で、ブロンドの長い髪だった。ナイトガウンのような…服を、着ていたんです。」
リード:「ナイトガウンですか。」
トゥポル:「…夢を見てたのでは?」
アーチャー:「夢なんかじゃない。名前を呼ばれたんだ、私を知っていた。私も…見覚えがあった。」
タッカー:「船長?」
「彼女を知っている。…前に会ったことがあるんだ。」
ダムラス:「この惑星は、闇に包まれている。声は聞こえるが姿は見えないものばかりだ。それだけ…想像力をかき立てられやすい。」
ブーザン:「このジャングルに入って幻を見たのは、あんたが初めてじゃないですよ?」
アーチャー:「幻じゃない。」
ダムラス:「アーチャー船長。ここでナイトガウン姿の自分が知ってる女に出会う確率がどれだけある? 地球から何光年も離れた惑星で。…眠ることだ。…運が良けりゃまた夢で出会えますよ。」
笑うエスカ人。

エスカ人の装置を手にするリード。「赤外線は感知できますか?」
取り上げるダムラス。「もちろんだ。」
タッカー:「今日は何を追いかける?」
ブーザン:「昨日ファイヤーオオカミ※12の、群れを見た。場所は、ここから 6キロほどの地点。」 地図を指さす。「強行軍だぞ?」
リード:「がんばりますよ。」
笑うブーザン。
ダムラス:「頼むぜ? 俺たちには 2日しか残ってない。」
アーチャー:「なぜ期限が?」
「この星を守るためさ。猟は毎年 4日間と、法で決められているんだ。それが限界だ。」
エスカ人:「10年待ちのハンターもいるほどだ。」
トゥポル:「これは、火山の噴火口?」
ダムラス:「ああ、この一帯は特に活発だ。鉱泉や、噴出口。見物ですよ?」
アーチャー:「マルコムがサファリに出ている間に、探検してみるか。」
タッカー:「カメラを持っていきます。」
ダムラス:「よく眠れたかね、船長。」
アーチャー:「ええ、グッスリ。」
「よかった。綺麗な女を見かけたら、今度は俺たちにも教えてくれ。」

森を歩くエスカ人たちとリード。
センサーを使うダムラスは、森の中にブタのような生き物を発見した。
拡大する。動物はこちらに気づき、逃げていく。
ダムラス:「ドラジン。女。どっちも気まぐれだ。」

あちこちで蒸気が上がっている。
アーチャー:「イエローストーンを思い出すなあ。」
トゥポル:「デネヴァ・プライム※13の洞窟のようです。……前方 60メートルに、大きな地熱口を感知しました。調査の許可をお願いします。…船長?」
「…あ、許可する。連絡を怠るな。」
向かうトゥポル。
タッカー:「…船長…。例のナイトガウンの女。…現実ですか?」
アーチャー:「幻覚ではない。」
「でも…ありえないことです。」
「わかってる。トリップ、私は今まで馬鹿をしたことがあったか? …つまり、ほんとに馬鹿げたことさ。」
「木星ステーションでやったポーカーは馬鹿げてた。それぐらいかな?」
「夕べ私はこの星のジャングルの中で、独り、いるはずのない…女性を追いかけた。」
「かなりイカレてる。」
「…彼女に引き寄せられているように、自分で自分の身体がコントロールできなかった。上手く説明できんが。」
「特別な、パワーの持ち主かも。」

狩りを続けるエスカ人。
物音。鳴き声が聞こえた。
ドラジンがいる。だがその近くに、別の生物が見えた。
ダムラス:「いたぞ!」
リード:「何だ。何かいたのか。」
ブーザン:「銃器を感知して、熱スキャナーが誤作動を起こしただけさ。」
「調べてみよう。」
ダムラス:「センサーのゴーストを追いかけるのに大勢はいらん。お前らはあっちで待て。」
エスカ人:「ダムラス!」
「お客さんを頼むぞ。すぐ戻る。」
ダムラスとブーザンが残った。

写真を撮り続けるタッカー。
アーチャーは、ふとある方向に歩き出した。
女性がいた。
タッカーは写真を撮るのに夢中で気づいていない。
振り返ると、既に女性の姿はない。
追いかけるアーチャー。
女性は走って逃げていく。
アーチャーが開けた場所に出ると、女性が立っていた。「ジョナサン。」 目の前にいる。
アーチャー:「君は誰だ。」 コミュニケーターを取り出す。「なぜ私を知ってる。」
「お願い。助けて、ジョナサン。」
「同じ言語を話すのか。」
「どうしてもあなたにわかって欲しいから。」
「君を知ってる。でもありえない。」
「知ってたから、追いかけたんでしょ。」
「なぜ私に助けを? なぜだ。」
「ほかの人と違うから。」
「違うって?」
何かに反応し、顔を向ける女性。
アーチャー:「どうしたんだ。」
女性は怯えているようだ。。

武器を発射するエスカ人。

リードたちも森を進んでいる。

アーチャーは尋ねた。「どうした。」
女性:「撃たないで!」
「君を撃つ気はない。」
「ジョナサンじゃない。」
「じゃ、誰が。誰が君を傷つける。」
タッカー:「船長!」
振り返るアーチャー。もう女性の姿はなかった。「ああ…。」
トゥポル:「大丈夫ですか?」
アーチャー:「…うん。」
タッカー:「…どこに行ってたんです。…ここで何を。」
「…ちょっと…怪しい音がしたんだ。」 引き返すアーチャー。

ジャングルを走り抜けるエスカ人たち。
センサーを調整するブーザン。
すぐ近くに、さっきの生物がいることに気づかなかった。飛びかかってくる。
声を上げるブーザン。


※12: fire wolf

※13: Deneva Prime
TOS第29話 "Operation - Annihilate!" 「デネバ星の怪奇生物」で、惑星デネヴァ (Deneva) が登場

痛みに絶叫するブーザン。
エスカ人:「押さえて!」
ダムラス:「やってる。」
「しっかりつかまえてろ。」
合流するアーチャー。「ブーザン、しっかりしろ! 動いちゃだめだ! アーチャーよりエンタープライズ。」
タッカー:「何にやられた。」
リード:「見てない。途中で分かれたんだ。」
サトウ:『どうぞ。』
アーチャー:「ドクターを待機させてくれ。」
『了解。』
ダムラス:「ドラジンさ。子育て中のメスは特に攻撃的になるからなあ!」
エスカ人:「ひどいな、応急キットを!」
トゥポル:「内部の損傷はありませんが、かなりの出血です。」
アーチャー:「ドクターが待機していますので、我々の船に連れて行きましょう。」
ダムラス:「治療ならここで十分だ。」
エスカ人:「狩りには彼が必要だ、助けてもらおう。あと 2日しかない。」
「…頼みます、船長。できるだけの治療を受けさせたい。」
タッカーに命じるアーチャー。「シャトルに運んでくれ。マルコムと一緒に行け。」
ダムラス:「…君らは全員船に戻れ。我々は危険を承知でここに来てる。…君らは違う!」
「まだ離れる気はない。」

テントの中でパッドを見ているアーチャー。
やってきたトゥポルが報告する。「無事到着したと、大尉から報告がありました。」
アーチャー:「ご苦労。…トゥポル。…入れ。」
従うトゥポル。
アーチャー:「…また彼女に会った。噴出口の近くだ。話しかけてきた。」
トゥポル:「何と言って?」
「彼女は……助けてくれと。恐らく…狩りの対象になっているんだろう。」
「…エンタープライズに戻ることを考えた方がよろしいと思います。」
「うん、そしてドクターに診てもらえか? …精神に影響を及ぼす物は、何もなかったよ。あれは幻覚ではないし、夢でもなかった。」 パッドを渡すアーチャー。
「…では生身の人間の女性というのが船長の結論なんですね?」
「彼女が何者かは、わからん。人間であるはずがないとわかっているが、訳あって私の前に現れたんだ。それが何かを突き止めたい。」
「どうやって?」
「彼女を捜す。」
「…同行します。」
「いや。」
「今日重武装のハンターが死にかけました。単独でジャングルにはいるのは無謀です。」
「承知の上だ。彼女は私と話をするために選ばれたんだ。理由はわからんが。だから、私以外の者がそこにいたら、彼女は本心を明かさないだろう。」
「単独で行く理由はそれだけですか?」
「何だ。」
「…失礼ながら船長、それほど強い意志でその幻を捜したでしょうか。その人が美しい女性じゃなかったら。」 出ていくトゥポル。

エンタープライズ。
医療室に入ったタッカー。「容体は。」
フロックス:「患者の血液型を合成して輸血しましたからもう大丈夫。数時間もすれば歩けるでしょう。」
ブーザンの傷を見るタッカー。「船長に伝えとこう。」
フロックス:「…教えて頂けますか。一体何に襲われたんです。」
「ハンターたちはドラジンと呼んでる、デカい…ブタのような野獣だ。」
「ふむ。」
「味もブタに似てた。」
「フーン、傷に細胞の残留物がありました。明らかにこの男のものではない。彼に怪我を負わせた生物のものでしょう、ふむ。」
「何を見てるんです?」 顕微鏡を覗くタッカー。
「それは、細胞内のの染色体ですよ。変化し続けている。」 うごめく染色体。「まるで何かに変わろうとしてるようですが、それが何なのか。ブタでも実に珍しいブタだ。」

噴出口に来たアーチャー。「おーい! …出てきてくれ。」 スキャナーを使う。
反応があった。スキャナーを閉じるアーチャー。「独りで来た。」
腕をつかまれるアーチャー。
あの女性だ。「ジョナサン。」
アーチャー:「君は幻じゃない。現実だ。生身の女性だ。」
「ええ、そうよ。」
「だが…君は人間じゃない。そうだろ?」
「にんげん?」
「人間。私は人間だ。」
「私たちはあなたとは違う。」
「私たち? 仲間がいるのか? 君以外は見かけていない。」
「私たちは何にでも変身できる。樹木や、動物、水。あらゆるものに。」
「君は美しい女性だ。」
「あなたが美しい女性を見たいからよ。」
「なぜそんなことがわかる。」
女性は手をアーチャーに近づける。
一瞬避けようとしたアーチャーだが、受け入れた。
アーチャーの頭に手を触れる女性。「あなたの心が見える。心の奥までわかるの。」
アーチャー:「テレパシーか。だから言葉もわかるのか。」
「もっといろいろ知ってるわ?」
「なぜ私は、君に強く惹きつけられてしまうんだ。なぜ君を、知っているように感じる。」
「あなたは私を知ってる。」
「どこで会った。」
答えない女性。
アーチャー:「なぜ私を選んだんだ?」
女性:「あなたは違う。」
「前にも言ったね、どう違う。誰と違うって言うんだ。」
「ほかの人とは。これまでのこの星に来た人たちと、違うからよ。」
「エスカ人のことか。」
「目的を知ってる。」
「ハンティングだ。」
「私たちを狩るためよ。彼らにとって私たちは獲物なの。」



ダカラで話すタッカー。「獲物は逃がしたけど、傷跡があれば狩りの証拠になりますよ。」
ブーザン:「ドクターのおかげで傷も残らなかった。」
ダムラス:「船長と優秀なドクターに。」
エスカ人たち:「ああ。」
アーチャー:「御協力できてよかった。」
エスカ人:「狩りには失敗したけど、何かに乾杯しよう。」 笑う。
「…では、明日の収穫を祈って。」
ダムラス:「ああ、乾杯。」
ブーザン:「収穫を祈って。」
エスカ人:「乾杯。」
リード:「うーん、でも…なぜ、見逃したんです?」
ダムラス:「ドラジンは常に移動する。我々が戻ったらもう消えていた。」
アーチャー:「そのイメージセンサーを使って、行方を追えないのか。」
「奴らは案外逃げ足が速い。」
タッカー:「そうらしいね?」
トゥポル:「自分の星でも猟をするんですか?」
ダムラス:「ああ。」 笑うエスカ人たち。
アーチャー:「なぜ、わざわざ何光年も離れた惑星に来るんですか? 野生のブタを撃ちに来るには、ちょっと遠すぎるでしょ。」
エスカ人:「ただの野生のブタじゃない。」
ダムラス:「ここのは特別だ。」
アーチャー:「ふむ、ブタに、オオカミ、大型爬虫類。特に珍しいとは思えない。」
「心の中にあるものを狩ることができるとしたらどうです? 自分の想像ですよ? すごい獲物でしょ?」
「一体どういうことだ。」
エスカ人:「化け物さ?」
タッカー:「ゴーストか?」
ブーザン:「似たようなものさ。」
アーチャー:「冗談でしょう? そんな馬鹿なこと、あるはずありません。」
ダムラス:「そうかな? あんただって見ただろ? 謎めいた女を。キャンプの周りをうろついていたのは間違いなく化け物だ。」
「彼女は人間に見えた。」
笑うブーザンたち。
エスカ人:「女かどうかも怪しいもんだ。」
ブーザン:「流動体生物※14だよ。何にでも変身できる。知り合いにも化ける。…そうやってだまされるのさ。」
トゥポル:「…知的で繊細な感覚をもつ種のようですね。」
ダムラス:「我々の尺度では計り知れない知性だ。本能的な反応なんだ。」
エスカ人:「最初あんたたちを追いかけたのは、あんたらに化けてると思った。」
ブーザン:「奴らは化けたものの特徴を正しく把握する。岩なら岩に。完全になりきる。スキャナーまでだますんだ。」
ダムラス:「これまで我々エスカ人は、大勢の犠牲を払ってきた。私の父は 8人のハンターと共にやってきて、奴らを行き止まりの渓谷に追いつめた。これでもう捕まえたと父は確信した。だが奴らは…待ち受けていた。ハンターたちは心を読まれ…見透かされた。…父は生き延びたが、仲間は 2人しか生き残らなかった。」
話に聞き入っていたタッカーを叩くエスカ人。
アーチャー:「じゃどうやって捕まえる。」
ブーザン:「最近わかってきた。追いつめられると奴らは、パニックを起こす。特に若い連中がな。」
ダムラス:「恐怖を感じると化学信号を発するんだ。それを感知できるようスキャナーを改善した。もうこっちのものだ。」

エンタープライズ。
アーチャー:「エスカ人は承知の上で狩りをしている。」
トゥポル:「…私も非常に不快に感じます、船長。でもどうすれば彼らを阻止できるのか。」
リード:「完全武装して、現場にも詳しい。連中から武器を奪うのは遠慮したい。」
「理由はどうあれその権利はありません。」
タッカー:「この惑星の生物を撃つ権利はあるのか?」
アーチャー:「繊細な感情をもつ種まで狩りの対象にしている!」
トゥポル:「たとえ今回阻止できても、また次のハンターたちがやってきます。何百年に渡ってやったように。」
「だから永続的な解決法を見つけ出せ。」
フロックス:「というと?」
「流動体生物は、恐怖を感じると化学信号を発するそうだ。それで居所が知れる。細胞のサンプルがあったな?」
「彼らの変身能力を分析してきました。」
「化学信号を隠す方法を見つけられないか。そうすればスキャナーに感知されずに済む。」
「早速始めます。」
「ハンターを止めることは無理としても、せめて立場を対等にしてやろう。」

星を見つめていたアーチャー。
食堂に入るタッカー。「こんばんは、船長。」
アーチャー:「ああ、トリップ。」
「何か飲みますか?」
「いや、結構。」
注文するタッカー。「冷たいミルク。」
アーチャー:「君は詩を読むか?」
「私が詩ってガラじゃないでしょう?※15
笑うアーチャー。「子供の頃…眠れないと、母がよく詩を読み聞かせてくれた。お気に入りの詩があってね? 面白い題だったなあ。『さまようアンガスの詩』※16。大きくなってそれがイエイツ※17の詩だと知った。『私は頭が火照っていたので、はしばみの森に行った。』 …とにかく、詩に出てくる男が、魚を捕まえると、魚は美しい女に変身する。髪にリンゴの花をつけた女に。彼女は男の名前を呼ぶと、突然消えてしまうんだ。」
タッカー:「…それで?」
「男は生涯彼女を捜し続けるのさ。きっと、理想の女性像だったんだろうなあ。現実には存在しない女性。彼女に会った。」
「まさか。」
「この詩を聞いた時、私は心の中に自分なりの女性像を作り上げた。それをすっかり忘れていた。だから彼女に会っても気づかなかった。彼女は実在しない。子供の頃に想像した女性だったんだ。詩の中の捕らえがたい女。」
「でも流動体生物は、一体どうやって…船長の心から忘れていたイメージを拾い出したんです?」
「わからない。」
「…本人も気づかないうちに詩が浮かんだのか。」
通信が入る。『フロックスよりアーチャー船長。』
アーチャー:「何だ。」
フロックス:『糸口が見つかりました。』
「すぐそっちに行く。」 通信を切るアーチャー。「彼女は私の想像上の女性に過ぎないかもしれん。…だとしてもみすみす死なせはしない。」

動く物体に向かって、銃を発射するエスカ人。
ダムラス:「確かか?」
エスカ人:「奴らだった。」
ブーザン:「だが信号を発していない。ただのドラジンかもしれない。」
「変身する瞬間を見たんだ。」
ダムラス:「スキャンを頼む。」

走っていたドラジンは姿を変え、一本の木になった。
やってくるエスカ人。「どこだ。」
ブーザン:「何も感知していい。」
ダムラス:「ここにいるはずだ。逃げ道はない。」
「恐怖を感じているなら信号を発するはず。なぜ感知しないんだ!」
「まだ怖がっていないのか? 今思い知らせてやる!」
適当に辺りに向かって発砲する 3人。
だが隙を突いて木が姿を変え、襲いかかった。倒れるエスカ人。
逃げていく流動体生物。ダムラスたちは武器を撃つが、当たらない。
何とか立ち上がるエスカ人。「ああ…大丈夫だ。」
ダムラス:「見てるはずなのにおかしいな。」
ブーザン:「スキャナーの故障か。」
「全部がか?」
動物の声が聞こえてきた。あちこちから。
ブーザン:「撤退しよう。」
ダムラス:「キャンプに戻るんだ。」

戻ってきたエスカ人。
待っていたアーチャーはライトを向けた。「首尾はどうでした? 戦利品は?」
一瞬驚くダムラス。「何をしてる。」
アーチャー:「出発前の最後の調査ですよ。大丈夫ですか。」
「ああ。」
タッカー:「ほんとに? 何かあったんですか?」
ブーザン:「スキャナーの調子が悪くてね。」
アーチャー:「それはお気の毒。今年は手ぶらで帰らなければならないようですねえ。」
ダムラス:「…妙だな。あんたたちが現れてから失敗続きだ。」
タッカーと顔を見合わせるアーチャー。「悪運を呼び込んだかな。」

噴出口の近くに、アーチャーは立っていた。「いるのか?」
女性:「ええ。」
アーチャーが振り向くと、あの花をつけた女性が立っていた。
アーチャー:「奴らは帰った。」
女性:「今は。」
「仲間にも遮蔽剤を渡したか。」
「ええ。」
「それなら安全だ。」
「ありがとう。」
「…君の正体がわかったよ。」
「思い出したのね。」
「ありがとう。思い出させてくれて。」
「これからもずっと理想を追い続けてちょうだいね。」 アーチャーの顔に触れる女性。「…さよなら、ジョナサン。」
アーチャーは女性の手をつかんだ。
女性:「私を忘れないで。」
二人の手は離れた。
女性は振り向くと、流動体生物本来の姿に戻った。
流動体生物はもう一度振り向き、去っていった。
微笑むアーチャー。「忘れないよ。」


※14: shape-shifter
吹き替えでは「可変種」

※15: 原語では「『イプスウィッチ生まれの若い女がいた』以外で、ですか?」
"There was a young lady from Ipswich" というのは、リメリックと呼ばれるくだらない五行詩の一節に当たるようです

※16: "The Song of the Wandering Angus"
全文

※17: Yeats
ウィリアム・バトラー・イエイツ (William Butler Yeats) (1865〜1939年)

・感想
「退屈」という言葉が真っ先に出てしまう、今回も非常に ENT らしいエピソード。展開が読めてしまう上に、そのまま終わってしまいます。こういう時はレギュラーでありながら影の薄いキャラたちでも使って、複数のストーリーを進行させて欲しいですね。
日本語版としては、shape-shifter を「可変種」と訳していたのは疑問が残ります。可変種= changeling というのは DS9 の創設者やオドーだけを示す、いわば固有名詞。対して DS9 では「流動体生物」となっていた shape-shifter は、他シリーズの似た生命体も含めた一般名詞にあたります (エンサイクロペディアの項目でも明確に区別がされています。もっとも DS9 も混同して訳されている場合もありますけどね)。「可変種」という訳語が短くて収まりやすかったのかもしれませんが、混同を避けるためにも気をつけてもらいたいところです。
あ、ネタバレの邦題も。


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