小惑星帯を進むデルタ・フライヤーを、パリスが操縦している。
急に向きを変えたため、後ろに座っているキムに重力がかかる。顔を歪める。
パリス:「どうした、ハリー。真っ青だぞ。」
キム:「僕はテスト飛行に志願したんだ。これは特攻任務じゃないんだよ。」
「この新型デルタ・フライヤー※1が危険に弱かったら、洒落にならないだろうが。」
態勢が元に戻った。
キム:「今度そんな真似したら、一から作り直すことになるぞ。」
笑うパリス。
コンピューターに反応が出る。
キム:「右舷方向から船体が高速で接近中。」
パリス:「シールド。」
「距離、50キロメートル。10。真横に並んだ。」
窓から、異星人の船が隣に見える。
パリス:「いい船だ。惚れ惚れする。」
キム:「スキャンしてる。」
「こちらはトム・パリス中尉。そちらの船籍を述べよ。」
女性の声が返ってきた。『特定方向を向いた排気孔に、補強されたドライバーコイル。きっととても速いんでしょうね。』
「…どこへでもすぐ行ける。」
『スキャナーをチェックして。小惑星群の反対側に、彗星が見えるはずよ。私たちのうち、どちらが早く行きつけるかしら。』
「挑戦してるみたいだなあ。」
『受ける気はある?』
考えるパリス。
キム:「おい、間違ってもあるなんて言うなよ?」
パリス:「これはテスト飛行だよな。」 操作を始める。
「そうだけど。」
「レースでの闘いぶりを見れば、船の良し悪しは一目瞭然じゃないか?」
ため息をつくキム。
パリス:「スタートは? 3つ数えようか?」
異星人船はスピードを上げ、前へ行った。先には彗星が見える。
「必要ないらしい。」 操縦桿を倒すパリス。
デルタ・フライヤーは相手を追いかけ、彗星へ向かった。
|
※1: 前話 "Imperfection" 「セブンの涙」で先に登場しました。前話の宇宙暦は 54129.4 ですが、このエピソードで後ほど触れられる宇宙暦は 54058.6 になっています。つまり放送では後ですが、時系列的には先ということになります
|