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エンタープライズ エピソードガイド
第69話「トゥポルの反乱」
Hatchery

dot

・イントロダクション
※1エンタープライズは茶色の惑星軌道上にいる。
アーチャー:「拡大。」
スクリーンの映像が切り替わり、地表にある船らしき物体が映し出された。
リード:「ズィンディ船です。構造が、既存の船と一致しました。」
アーチャー:「爬虫類型やヒト型ではないな※2。…生体反応は。」
トゥポル:「見当たりません。大気もないようです。」
「…星系内に船は。」
メイウェザー:「いません。」
「…調査に向かう。」
リード:「了解。」


※1: 今回も、第3シーズンの複数の話からなるあらすじが入ります。エピソード放送順に ENT第56話 "Rajiin" 「美しき潜入者」、第58話 "Exile" 「孤独な亡命者」 (ワープ突入シーンのみ)、第60話 "Twilight" 「留められない記憶」 (可能性の未来。なお吹き替えではリードが「昆虫型昆虫族船に命中」と意味不明のセリフを言っていますが、元の話とは異なる訳)、第65話 "Proving Ground" 「アンドリア人の協力」 (爬虫ズィンディ船との戦闘シーンのみ)、第66話 "Stratagem" 「策略」、第67話 "Harbinger" 「新たなる脅威の兆し」の映像を使用。さらに、アーチャーがブリッジで「アザティ・プライムへコースセット。ワープ最大」と命じるシーンがありますが、このような映像は "Stratagem" を含め確認できませんでした。収録はされたものの、カットされたシーンを使った可能性もあります。今回声優にクレジットされている木村雅史さんは、あらすじの "Stratagem" 部分でのデグラ役のほか、本編ではセリフだけのクルーを演じています

※2: 今回の船は ENT "Twilight" に登場していますが、可能性の未来での出来事であるため、実際の流れでは初遭遇となります

・本編
シャトルポッドは降下し、ズィンディ船へ向かう。

環境服を着て中を捜索するクルー。真っ暗だ。
スキャナーの反応に従い、進んでいく。

アーチャーはかがんだ。昆虫ズィンディの死体が転がっている。
複数ある。
アーチャー:「これは、船へ持ち帰ろう。フロックスに解剖しろと伝えろ。ヘイズ※3と私は左舷へ。残りは、船のデータを調べろ。」
向かうトゥポルたち。

気体が吹き出している。扉を見つけたアーチャー。
ヘイズと共に持ち上げる。広い空間に、小型の船体が一機だけある。

半球状の機械が明滅している。
トゥポル:「コンピューターインターフェイスです。」
タッカー:「ダウンロードしましょう。」
リード:「……父がいたら大喜びだろうなあ。昆虫マニアなんです。家中昆虫の標本だらけで。母がよく怒ってた。」
「新しい標本を土産にしてやれ。」
「ええ。」 笑うリード。
ハッチ※4と操作パネルがある。
リード:「頑丈に補強されてます。」
パネルに触れると開いた。中にフェイズ銃を向ける。
タッカーに指示され、先に中に入るリード。3人とも入ると、ハッチが勝手に閉まってしまった。
リード:「加圧されてます。…大気成分は、酸素と窒素。」
タッカー:「お先にどうぞ。」
ため息をつき、ヘルメットを開けるリード。「ああ…新鮮じゃないが、息はできます。…生体反応。すごく弱い。この中です。」 窓がある。

小型機。
中にいるヘイズ。「シャトルか何かでしょうか。」
アーチャー:「攻撃機のようだ。6機の粒子砲を検知した。魚雷発射管もあるな。」 呼び出しに応える。「どうした。」
タッカー:『面白いものを見つけました。』
出ていく 2人。

ヘルメットを外しているトゥポルたち。アーチャーが到着し、見上げた。
部屋にはたくさんの丸い窓があり、そこから見える物体は天井からぶら下がっている複数のものと同一のようだ。
ヘルメットを外すアーチャー。
トゥポル:「さっきの遺体と、同じ DNA でした。間違いなく、クルーの子孫です。」
アーチャー:「…孵化室※5か。」
タッカー:「隔壁を強化してます。パワーシステムの、バックアップまである。」
トゥポル:「31個生きています。」
「生体維持用の、パワーは弱ってますが。」
アーチャー:「直せないのか。」
「見当もつきません。」
「…左舷にシャトルがあった、船へ運べ。…至急奴らの戦術システムについて、分析をしろ。」
リード:「了解。」
アーチャーは物体の一つに近づいた。頭ほどの丸い球体が、複数の糸で吊り下がっている。
スキャナーを使うアーチャー。液体が滴っている。
アーチャー:「ブリッジは。」
トゥポル:「どうやらないようです。彼らの指揮系統は、担当部署の…」
その時天井の物体から触手のようなものが伸びてきて、アーチャーに向かって液体を発射した。
ふらつくアーチャー。
トゥポル:「船長!」
アーチャー:「…大丈夫だ。」
「…すぐ医療室へ。」

エンタープライズ。
調べるフロックス。「…ちょっとした神経毒です。自動防衛システムのようなものだ。船長を敵と見なしたんでしょう。」
下着姿のアーチャー。「さすがズィンディの卵だけある。」
フロックス:「フフン。薬を塗っておけば、すぐに治りますよ?」 赤く腫れたアーチャーの頬に塗布する。
「昆虫族の死体を 2体運び込む。」
「うん。」
「できるだけ、詳しく調べてくれ。」
「わかりました。」
医療室に入るトゥポル。「兵器庫を見つけました。粒子兵器と魚雷が、複数保管されています。」
アーチャー:「修復した、データは。」
「ホシが翻訳中です。ズィンディのシャトルを収容したら、軌道を離れます。」

シャトルポッドは、昆虫ズィンディ・シャトルを牽引している。
揺れた。
リード:「熱圏を脱出。」 後ろに置いてある大きな布袋が床に落ちた。「お客さんの見張りは必要ないんじゃないか?」
ヘイズは遺体を何度も蹴った。
リード:「もう生き返りゃしないさ。」
ヘイズ:「念のためだよ?」 台に戻す。「地球じゃ虫は冬眠するからなあ。」 ベルトで締めていくヘイズ。
ヘイズは座り、銃を取り出した。
リード:「私を撃つ気か、少佐?」
ヘイズ:「…あんたに向けちゃいない。…前回の訓練結果をまとめてみた。上級士官は大いに上達したがまだ十分じゃない。…月曜の夜に、再度射撃訓練をしたいんだが。」
「タッカー少佐は反対だろうな。…月曜の夜は、映画鑑賞会だ。」
「…ミッションのためなら、娯楽時間なんか返上するかもしれん。」
「上級士官には山ほど仕事がある。兵器室で、ホログラフィックゲームをしてる暇はないんだ。」
「…船長は何て言うかな?」
サトウの通信。『シャトルポッド2、アプローチを許可します。』
リード:「了解した。ドッキングアーム。」

顔に触れていたアーチャーは、ドアチャイムに応えた。「入れ。」
トゥポルと入るタッカー。「船を調べてきました。…亜空間から出るとき、ナセルに亀裂が入ったようです。それで緊急着陸を試みたんでしょう。」 パッドを渡す。
アーチャー:「…船内で発見された昆虫族の死因は墜落じゃなくて窒息死?」
トゥポル:「ほとんどのクルーは、孵化室に生体維持装置を移した後死んでいます。」
「…子供のために犠牲になったというのか? …孵化室の生体維持装置は、どのくらいもつ。」
タッカー:「せいぜい後一日です。」
「至急、修理チームを組織しろ。」
「船長?」
トゥポル:「アザティ・プライムへは。」
アーチャー:「どこにも行かん。彼らは知的生命体だ。見捨てられん。」
タッカー:「失礼ですが、なぜかわかりません。私なんか、むしろ燃やしたい※6気持ちです。」
「31人のヒト族※7の赤ん坊が寝てる部屋を発見したら、それでも燃やすか? …ズィンディは人間が冷酷無比だと聞いたから、地球攻撃に及んだ。これは誤解を解くチャンスだ。」
トゥポル:「…貨物室を改造し、卵を移しては?」
「フロックスによれば、卵は孵化室と一体化してるらしい。動かせば、彼らは死ぬ。」
タッカー:「船長。いずれ、我々を殺す敵ですよ?」
「君の意見は求めていない。…私が修理の指揮を執る。君はトラヴィスと、例のシャトルの操縦法を調べてくれ。」
「船長!」
「決定事項だ。下がれ。」
ため息をつき、トゥポルと共に出ていくタッカー。
アーチャーは顔に触れ、また卵の図を見始めた。


※3: ヘイズ少佐 Major Hayes
(スティーヴン・カルプ Steven Culp) ENT "Harbinger" 以来の登場。声:斉藤次郎

※4: ENT第26話 "Shockwave, Part I" 「暗黒からの衝撃波(前編)」で登場した、スリバン船のハッチを使い回したようです

※5: hatchery
原題

※6: 原語では「あそこにプラズマトーチ (plasma torch) を持っていきたい」。ENT第8話 "Breaking the Ice" 「彗星は去り行くとも」など

※7: 吹き替えでは「人間」。「地球人に似ているヒト族なら殺せるのか」という意味であって、ここで普段 (直後でも) 地球人の意味で使っている「人間」と訳すのは間違いでしょう

『航星日誌、2154年1月8日。軌道に留まり、一日が過ぎた。クルーはミッションの再開を主張するが、私は正しい決断を下したと確信している。』
発着ベイ。
ズィンディ・シャトルの中にいるタッカー。「武器システムは設計できても…座り心地のいい椅子は、造れないらしいな。」
メイウェザー:「昆虫族にとっては心地いいんでは?」
「パワーの使い方も疑問だよ。半分を構造維持に費やしてる。」
「ガス状巨星内を飛ぶにはもってこいです。」
「操縦法がわかればな?」
「このアイコンは、インパルスマニフォールドを表してるようです。」
「押してみろ。」
メイウェザーが押すと、昆虫ズィンディ語が聞こえた後ライトが暗くなった。
ため息をつくタッカー。
メイウェザー:「僕らは嫌われてるようですねえ?」

パッドを見ているリード。「警報システムを解除するには、こことここのリレーを外さなければなりません。」
タッカー:「エンジンが初期化できなくなるぞ。」
メイウェザー:「地表の船はどうします? 調べた方がいいのでは。」
「ああ。」
リード:「…船長はどのくらいここに留まるつもりなんでしょう。」
タッカー:「修理が済むまでだろ?」
「船長に逆らう気はありませんが、ミッションを犠牲にしてまでズィンディの幼虫を救う必要があるんでしょうか。」
「船長は当然だと思ってる。たとえ敵でも、助けるべきだとな。」
「親が地球を破壊しようとしてるっていうのにですか?」
メイウェザー:「今この瞬間も、連中は着々と兵器を造っています。」
タッカー:「いいか。」 食堂にいる周りのクルーを気にする。「今後どれだけ多くの昆虫族と遭遇するかわからん。ここで奴らの戦術システムを分析しておけば、きっと役に立つ。」

手術着を着たフロックスは顔の前にガードをして、昆虫ズィンディの死体解剖をしている。アーチャーが来た。
フロックス:「ああ。船長。…いろいろ、わかってきましたよう? この彼について。あいやあ、『彼』は語弊があるな? 性別は、ありませんから。」
アーチャー:「じゃあの卵は。」 制服は汚れている。
「無性生殖で産んだんです。成虫はそれぞれ、複数の卵嚢を産む能力を備えてる。昆虫族船全てに、孵化室があっても不思議ではありません。寿命は恐らく、地球でいうところの…えーせいぜい 12年くらいでしょう。このクルーはかなり年長者の方ですねえ? 10歳近くになります。」
「孵化室の方は? 卵はいつかえる。」
「孵化期間がわからないのではっきりとは言えませんが、そうですねえ恐らく…一週間以内にはかえるかと。…船長、医師として一言言わせて下さい。少し休まれては?」
「生体維持装置を修理中だ。」
「2、3時間眠っても支障は…」
「何かわかったら、報告してくれ。」 出ていくアーチャー。
ため息をつき、解剖に戻るフロックス。

夕暮れの惑星を降下するシャトルポッド。昆虫ズィンディ船のそばには、既にもう一隻のシャトルがいる。

船内を歩くトゥポル。環境服を着る必要はなくなっている。
ハッチを開けて部屋に入った。「何か問題でも?」
チャン伍長※8が立っている。「いいえ。」 隣にも MACO がいる。
トゥポル:「ではなぜ警備を。」
「船長命令です。」
さらに奥に進むトゥポル。
タッカーが修理している。アーチャーも道具を使って必死に作業している。
ヘイズが見守っている。
パッドを持ってきたトゥポル。「リード大尉からです。」
アーチャー:「何だ。」
「昆虫族船の戦術分析を御命じでは?」
「後でいい。…準備は?」
タッカー:「もうすぐ終わります。」
トゥポル:「…兵士が警備をしていましたが。」
アーチャー:「ヘイズ少佐に頼んだ。卵を守るためだ。船に亀裂がある。何が入ってくるかわからん。」
「この星に生命体がいないことを御承知では。」
「トリップ。」
タッカー:「できました。…40メガジュールからだ。コンバーターから目を離すな?」
音が響き、室内が明るくなってきた。
タッカー:「50 に上げろ。」
コンソールから火花が散った。
アーチャー:「どうした。」
卵が割れる。吹き飛ばされる機関部員。
アーチャー:「止めろ。」
ケーブルを抜くタッカー。
アーチャー:「どうした。」
タッカー:「…さあ、サージでも起きたのか。…時間を下さい。」
アーチャーは、床に昆虫ズィンディの幼生が転がっているのに気づいた。
コミュニケーターを取り出すアーチャー。「エンタープライズ。…至急、ドクターを。」 液体にまみれている。
タッカーはトゥポルを見た。

動かなくなったズィンディの幼生を手にしているフロックス。アーチャーとトゥポルが医療室に入る。
フロックス:「残念ですが、死んでます。」
アーチャー:「……ホシの翻訳は進んでるか。」
トゥポル:「ほかのズィンディ族とは違う文字を使っているようで、しばらくかかるかと。」
「終わったら、すぐデータを調べさせろ。…埋葬の儀式について記録があるかな。」
「葬式をする気ですか?」
通信が入る。『タッカーから船長。』
アーチャー:「続けろ。」
『原因がわかりました。コンバーターの型が違うんです。互換性をもたせるには、3日はかかる。』 まだ昆虫ズィンディ船にいるタッカー。
「リアクターは、動かせるのか。」
『動きますが、反物質がほとんど残ってません。』
「待機しろ。…トリップと、船のリアクターを動かせ。」
トゥポル:「船長?」
「エンタープライズの反物質を移せばいい。必要なだけ使え。」
「しかし 60%しか残って…」
「これ以上、彼らを死なせられん。」 アーチャーは出ていった。
トゥポルはフロックスと顔を見合わせる。

司令センター。
タッカー:「エンタープライズに残ってる反物質の 3分の1 を使うことになる。」
リード:「そんなにですか?」
「あの船は全システムがつながってる。生体維持装置を動かすには、船中を動かすしかないんだ。」 モニターに船の構造が映っている。
「そんなに使ったら、こっちの魚雷分がなくなる。エンジンも動きません。」
トゥポル:「船長には言ったの?」
タッカー:「まず 2人に知らせようと。」
リード:「…船長があんなにズィンディに情けをかけるとは思いませんでしたよ。今や無我夢中だ。もう 2日近く、孵化室にこもってます。聞いたところじゃ、寝る間も惜しんで働いてるらしい。」
トゥポル:「…反物質は移しません。」
タッカー:「あ、船長命令ですよ。」
「…私が話します。」

ズィンディ船コンソールの下で、作業を続けるアーチャー。トゥポルが孵化室に入る。
ヘイズも部屋にいる。
アーチャー:「トリップは。…反物質は移したか?」
トゥポル:「いいえ。」
「問題でも。」
「ストックの 3分の1 の反物質を使わねばならないそうです。」
「使えばいい。赤色巨星まで後少しだ。そんなに燃料は必要ないだろ。」
「アザティ・プライムにズィンディの兵器があるとは限りません。」
「…命が懸かってるんだぞ?」
「我々のミッションにも、何十億という人間の命が懸かっています。」
「それは百も承知だ。」 トゥポルの腕をつかみ、卵のそばに連れて行くアーチャー。「だが子供に、罪はない。人間はズィンディが思うほど、冷酷じゃないんだ。ヴァルカン人はどうか知らんが? 人間は少々の苦難で、道徳心を捨てることはしない。」
「タッカー少佐もリード大尉も、ミッションの進行を妨げると考えています。」
「君らの意見はわかった。エンタープライズに戻り、ただちに反物質を移送しろ!」
「申し訳ありませんが、従えません。」
「……制服は着ていなくても、私の命令に背くことは許されん。」
「宇宙艦隊に連絡を取り、フォレスト提督と話されては?」
「……副長を解任する。少佐、トゥポルをエンタープライズに帰し自室に拘束しろ。」
ヘイズ:「しかし…」
「これは命令だ。」
「…こちらへ。」
アーチャーを見て出ていくトゥポル。アーチャーは顔を向けようともしない。
作業に戻る機関部員。


※8: Corporal Chang
(ダニエル・デイ・キム Daniel Dae Kim) ENT第55話 "Extinction" 「突然変異」以来の登場。声:新垣樽助。前回 (第53話 "The Xindi" 「トレリウムD」) の森田順平から変更

タオルを肩にかけて出てきたアーチャーは、頭を押さえている。鏡を見た。
ドアチャイムに応えるアーチャー。「入れ。」
タッカーがアーチャーの部屋に入る。「シャトルが発ちました。」
アーチャー:「…移送はどのくらいで完了する。」
「シャトル 2機を使って運んで、4、5時間です。」
「…シャワーを浴びて生き返ったよ。ヘ、孵化室にこもりすぎた。」
「新しい副長ですがマルコムはいかがですか? 私はブリッジに張りついてるわけにはいきませんので。」
制服を持ってくるアーチャー。「指揮系統を崩す気はないよ。あれは一時的だ。トゥポルは、頭を冷やした方がいい。」
タッカー:「これまでも、意見を述べることはありました。なぜ、突然拘束を? 少々、あれは…やりすぎなのでは。」
「やりすぎなのはトゥポルの方だ。クルーの前で私の命令を拒んだ。上級士官にはあるまじき行為だ。重要な任務中だというのに。」
「…私も、拘束して下さい。…正しいことをしてるとは思えません。立場が逆なら、ズィンディは卵を殺すに決まってます。」
「…優生戦争※9の時、私の曾祖父は北アフリカにいた。彼の部隊は、一般市民を交戦地帯から避難させたんだ。敵陣との間に学校があり子供たちがいた。部下が撃ち返せば、子供が死ぬ。曾祖父は敵の司令官を呼び、同意を取り付けた。子供たちを避難させるまで発砲はしないと。戦争中でも、ルールはある。」 制服を着終えたアーチャー。「子供たちを救わねば。」

エンタープライズが船を攻撃する様子が、モニターに表示されている。
リード:「見せたいものってこれか? 戦闘シミュレーション?」
ヘイズ:「敵の戦術の可能性を何パターンも見せてくれるんだ。ただ分析してるよりよっぽど役に立つ。」
「敵のシールドを分析しろと言ったはずだ。ゲームをやれとは言ってない。」
「大尉、これはゲームなんかじゃない。」 映像を切り替えるヘイズ。「シミュレーションによればシールドが最も弱いのは、このインパルスマニフォールドの周辺だった。魚雷を 2発撃てばエンジンを破壊できる。」
「このマニフォールドはかなり小さいが、ターゲットスキャナーでロックできるだろう。うん。よくやった。」
「どうも?」
「…すまなかった。ゲームだなんて。あ、最近みんな苛立ってて。」
「ああ、確かに。」
「トゥポルが、拘束されたらしいな。」
「上級士官の拘束命令は珍しいが、船長命令に背く方が悪い。俺の部下が背いたら営巣に放り込む。」
「ああ。じゃあ…ブリッジに戻るよ。…また何か見つかったら知らせてくれ。」 兵器室を後にするリード。

周りをうかがいながら廊下を歩くタッカー。部屋の前に来た。「トゥポルに会いたい。」
チャン:「面会は禁止されています。」
「神経マッサージを受けに来た。これは、ドクター命令だ。…フロックスを呼んで、直接聞くか?」
チャンは脇に動いた。中に入るタッカー。

自室で窓のそばに立っていたトゥポル。「状況は?」
タッカー:「反物質を運んでます。心配はない、あと 2日もすれば何もかも元に戻ります。」
「それまでこちらの反物質はもちません。船長は日増しに非論理的になっています。たとえ…人間にしても。孵化室への執着には、パラノイアの兆候が見られます。」
「ちょっと、大袈裟じゃないですか?」
「反物質を使わせるべきではありません。」
「反乱でも起こせと、言うんですか?」
「フロックスに話して、船長の検査をしてもらって下さい。」
「一体何のために!」
「何か問題が見つかれば、医療的見地から指揮権を剥奪できます。」
「剥奪って…いいですか? 拘束が不満なのはわかる。でも、私情が入りすぎでは。」
「向こうのリアクターが動くのは?」
「…ホシがインターフェイスの翻訳を終えるのが、12時間後です。」
「船長の精神状態がはっきりするまで、遅らせて下さい。」
「そんなことがバレたら我々は拘束室行きだ。……船長を裏切れと?」
「今は個人的な感情に振り回されているときではありません。この船と我々のミッションの、危機なのです。」
ため息をつくタッカー。

ブリッジのリード。「どうした。」
メイウェザー:「左舷方向で、亜空間の渦が開いています。」
「戦術警報。」
操作する保安部員。
リード:「アーチャー船長、ブリッジにおこしを。」
船が姿を現した。ヘイズが分析していたのと同じタイプで、惑星へ向かう。
その先にはエンタープライズ。
サトウ:「昆虫族船です、生体反応 3名。」
メイウェザー:「発砲しました!」 揺れる。「フルインパルスで去っていきます。」
リード:「後を追え。フェイズ砲起動。…エンジンを狙え。」
ズィンディ船を追うエンタープライズは、フェイズ砲を発射した。
メイウェザー:「効果なし。」
サトウ:「メインディフレクターチャージ。敵が亜空間に入ります。」
リード:「…魚雷装填。範囲最大。インパルスマニフォールドを狙え。」
保安部員:「完了。」
「発射。」
光子性魚雷を撃つエンタープライズ。2発目が命中し、昆虫ズィンディ船は動きを止めた。
火が大きくなる。
ブリッジに入るアーチャー。「一体何があった。」
リード:「昆虫族船です。」
「…破壊したのか?」
スクリーンには、爆発していくズィンディ船が映っている。
リード:「亜空間に逃げ込もうとしていました。」
アーチャー:「…彼らなら、孵化室を直せたかもしれん。」
「船長。」
「そうなれば我々は、ミッションに戻れた。」
「逃がせば我々の居場所を、上に報告します。」
「ここにいる理由を説明すれば、発砲沙汰は避けられていたかもしれん!」
「お言葉ですが、彼らは話す気などなかったようです。」
「……ヘイズ少佐。」
ヘイズ:『はい、船長。』
「至急、作戦室に来い。」
『了解。』
「…戦術士官を解任する。…これからはヘイズ少佐に従え。」
リード:「私は船とミッションを守るために、動いただけです!」
「追って知らせるまで、部屋から出るな。」
「船長!」
「下がってよし。」
リードはサトウを見た。「…はい。」 出ていく。
無言のメイウェザー。
アーチャー:「翻訳は終わったのか?」
サトウ:「はい、ほぼ。」
「昆虫族の言葉で救難信号を組み立ててくれ。準備でき次第、全周波数で送信!」 作戦室へ向かうアーチャー。
「…了解。」

作戦室のアーチャー。「いま一番重要なのはミッションの成功だ、そうだろ?」
ヘイズ:「はい、船長。」
「だが部下は、私の意図を理解していない。確かにかつて私は、彼らに自由に意見を述べるよう指示した。だが今はその時ではない。いま必要なのは、忠実に命令に従う士官だ。」
「私は従います。」
「トゥポルの反抗は例外だと考えていたが違ったようだ。リード大尉は昆虫族船を破壊し、我々が本来のミッションに戻ることを妨害した。…私が孵化室にいる間、ブリッジを任せる。私だけに従うように。」
「わかりました。」
「以上だ。」

発着ベイ。
タッカーが来た。「お話があります。」
シャトルポッドに大きな筒を積み込んでいるアーチャー。「何だ。」
タッカー:「……フロックスと医療室に行って下さい。」
「…病気に見えるか?」
「ホシに救難信号を送るよう命令を?」
「ああ、命じた。」
「危険だとは思いませんか。」
「ズィンディに届く前にここを去ればいい。」
「すぐ近くにいたら。救難信号を送るなんて、危険すぎます。」
「これ以上、尻込みはしていられん。ミッションのためだ。」 アーチャーは反物質を積み込み終えた。
「地球を救うためのミッションです。孵化室じゃない。」
フロックス:「船長、もう 2日も食事や睡眠を取ってません。強迫観念症とパラノイアの兆候が出ています。」
アーチャーはタッカーの肩に触れた。「君たちの気が済むなら、検査を受けるよ? ただしリアクターが…無事に動いてからだ。」
タッカー:「それじゃ遅いんです。…フロックスにはあなたに命じる権限がある。」
「裏でトゥポルが操ってるんだろう。私を病人にしてポストを奪う気だ。」
フロックス:「医療室に来ていただけないのなら、艦隊命令 104 の C項※10に則り指揮権を剥奪します。」
「トゥポルならやりかねんとは思うが、君らもグルとはな。伍長!」 MACO に話すアーチャー。「この 2人を拘束するか、いま迷っているところだ。」
フロックスとタッカーは顔を見合わせる。ため息をついた。
発着ベイを出ていく。外に出たフロックスは、ポケットに忍ばせていた医療スキャナーを取り出した。

脳の図が表示されている、医療室のモニター。
フロックス:「神経化学的には正常です。」
タッカー:「あれで正常?」
「これだけで結論は下せません? イメージングチェンバーで、神経系列を調べないと。」
「救難信号を送れば、受信したズィンディ船が大挙して現れる。…ブリッジにはヘイズがいるし…船中に、兵を配備してる。…何をするにせよ急がないと。」
「…何をすると言うんですか。」
「…ルールブックを窓から投げ捨てる。」

孵化室のそれぞれの個室が、明るくなっていく。音が響いた。
機関部員※11:「船長。」
見上げるアーチャー。天井の卵が動いている。


※9: Eugenics Wars
TOS第24話 "Space Seed" 「宇宙の帝王」など。本来 1992〜96年に起こったという設定ですが、アーチャーの曾祖父が活躍するというのは時代的に合わないという意見もあります

※10: Starfleet Order 104, Section C
宇宙艦隊一般命令および規則 (Starfleet General Orders and Regulations) の一つ。この項目は TOS第35話 "The Doomsday Machine" 「宇宙の巨大怪獣」で言及されました

※11: クルーその1 Crewman #1
(Paul Eliopoulos) 声:大久保利洋

肩を押さえながら歩いてきたタッカー。
チャン:「面会は禁止です。」
タッカー:「この前は入れたろ。」
「ヘイズ少佐の命令です。」
「頼むよ。この前ちょっと強くやられすぎて…」 別の方から、リードとフロックスが来るのを確認するタッカー。「神経がダメージを受けた。」
「ヘイズ少佐に言って下さい。」
「これは艦隊の船だ、ヘイズ少佐に従う義務はない。」 タッカーは無理矢理入ろうとする。
腕をつかむチャン。「下がって下さい。」
タッカー:「やめろ!」
リード:「離せ伍長。」 フェイズ銃を向けている。
素早くフロックスがチャンにハイポスプレーを打ち、タッカーは銃を取り上げた。
トゥポルの部屋に入るタッカー。「ヘイズが指揮を執り、船中に兵が配備されています。」
トゥポル:「船長は地表に?」
意識を失ったチャンが運び込まれる。
タッカー:「はい。」
トゥポル:「船長と反物質を船に戻しましょう。」
リード:「まずブリッジを確保すべきです。ヘイズに知られたら、武器を使うことになる。」
フロックス:「ヘイズ少佐にも状況を説明しては? 理性的な人物です。」
「それは危険だ。ヘイズが船長につけば、この反乱は始まる前に終わる。」
トゥポル:「もっと味方がいるわ。兵器室には誰が?」
「ウォルシュ少尉※12と部下 2人、彼らは味方です。しかし、兵士も 2人いる。」

卵を見守るアーチャー。「エンタープライズへ戻れ。」
機関部員:「…船長は?」
「早く行け。」
荷物を持って出ていく機関部員たち。

兵器室に、帽子を被った士官がやってきた。おもむろに MACO に近づき、肩に手を伸ばす。
そのヴァルカン首つかみで、MACO は倒れた。
もう一人の MACO が近づこうとするが、後ろからタッカーの声が響いた。「動くな。」
リードもフェイズ銃を向けている。「すまない。」
撃たれ、倒れる MACO。
タッカー:「あざになるな。」
宇宙艦隊の制服を着たトゥポルや、保安部員も武器を持つ。
リード:「よし。こっちへ。」
保安部員:「了解。」

廊下を走ってきたタッカーはコンソールを操作する。転送台に立つ保安部員。
タッカー自身も転送されていった。

昆虫ズィンディ船内に実体化する。

廊下に MACO が立っているのが見える。
隠れながら話すリード。「ここからブリッジへは行けない。」
道を戻るトゥポルたち。ドアを開け、はしごを上り始める。

ズィンディ船の MACO は、ハッチが開いたことに気づいた。隣にはホーキンス伍長※13
誰もいないが脇から手だけが伸び、小さな装置が放り込まれる。
そのスタン爆弾は強く発光し、MACO たちを倒した。中に入るタッカーと保安部員。
MACO の状態を確認する。
さらに孵化室に進んだタッカー。「船長!」 中は暗い。
声がする。床を昆虫ズィンディの幼生が走っていた。
また構えるタッカー。やはり幼生だった。
タッカー:「…船長、トリップです。」
アーチャー:「…ここで武器を使うな。」 タッカーを見つめる。

作業を続けるサトウ。MACO がブリッジにいる。
呼び出しに応えるヘイズ。「どうした。」 船長席に座っている。
『少佐、チャン伍長がトゥポルの部屋で意識を失っています。』
話を聞いているメイウェザー。
ヘイズ:「トゥポルは。」
MACO:『いません。』
「ヘイズから兵器室。……兵器室、応答しろ。」
部下に向かってうなずくヘイズ。向かう MACO。
ドアが開いた。素早く武器を構えるヘイズ。
リード:「動くな!」
みな銃を持ち、互いに向け合う。
ヘイズ:「俺を撃つ気か、大尉。」
リード:「武器を下ろせと命令しろ。」
「船長はあんたを解任した。あなたもです。」
トゥポル:「武器を置きなさい。怪我人を出したくありません。」
「船長命令でない限り、ブリッジを明け渡す気はありません。」

卵に触れ、状態を確認するアーチャー。「船に戻れ。」
タッカー:「一緒に来て下さい。」
また手を伸ばすと、昆虫ズィンディの幼生がアーチャーの腕を伝って降りてきた。
タッカー:「船長!」 フェイズ銃を向ける。
幼生はアーチャーの身体の上を動く。
手で押さえるアーチャー。「シー。大丈夫だ。」
2匹、3匹。アーチャーに乗るズィンディの幼生は増えていく。
一旦は武器を下ろしたタッカーだが、やはり発射した。
倒れるアーチャー。逃げまどう幼生。

ヘイズ:「船長に連絡を。」
トゥポル:「取り消します。」
「…命令が聞けんのか、少尉。」
トゥポルと目を合わせるサトウ。「…すみません、少佐。」
全員無言のままだ。
その時、座っていたメイウェザーがヘイズにつかみかかった。撃ち合いになり、倒れていく保安部員や MACO。
メイウェザーと組み合うヘイズ。
リードはヘイズの後ろから銃を向けた。「もう終わりだ!」 メイウェザーがヘイズの武器を奪う。
立ち上がるヘイズ。
リード:「部屋へ連れて行け。」
メイウェザー:「了解。」
サトウ:「タッカー少佐です。」
トゥポル:「つないで。…どうぞ。」
タッカー:『船長を拘束。そちらの状況は。』
「ブリッジを確保。」

タッカーは座り込んでいる。「イメージングチェンバーの準備を。船長を送ります。」

ワープ航行に戻ったエンタープライズ。
トゥポル:『代理航星日誌、補足。コースをアザティ・プライムに戻した。ヘイズ少佐と彼の部下は、一時的に解任。ドクターは、船長の不審な行動の原因を見つけたらしい。』
リードと共に医療室に入るヘイズ。「船長は。」
フロックス:「部屋で、休まれてます。…船長が卵に、攻撃されたのを覚えてらっしゃいますか?」
「顔に液体をかけられた。」
「うん。あれは反射的な防衛ではなく、高度に進化した防衛反応でした。」 モニターに脳の状態が表示されている。「特有の神経化学物質が含まれており、船長の神経経路にしみこんで彼にある種の幼虫への逆刷り込みを行ったのです。動物の赤ん坊が母親に刷り込まれる、逆の作用ってわけです。」
「船長は幼虫の親だと思ってたのか。」
「…というより、世話人かな? もちろん、本人に自覚はありません。だが結果的には、卵を守ることを何より優先させた。」
トゥポル:「ミッションよりも。」
ヘイズ:「…船長と話をしたいんだが。」
フロックス:「2、3時間で目覚めますよ? 完全に回復してる。」
トゥポル:「部下と共に、任務に戻って下さい。」
ヘイズ:「了解。」
出ていくタッカーたち。
図を見つめるヘイズ。「これはウェストポイント※14での訓練じゃ学ばなかった。」
立ち止まるリード。「ああ、だろうな。」
ヘイズ:「最初から、言ってくれりゃよかった。」
「船長側につかれるリスクを避けたかった。」
「…ついてたかもな。」
「ああ。」

部屋着で眠っているアーチャー。ポートスもドアチャイムに反応する。
アーチャー:「ああ…入れ…。」
タッカー:「…起こすつもりは。」
「ちょうど、起きたところだ。」
「…ご気分は。」
「…良くなったよ? もう少しで殺されるとこだ。」
「…船長。……わかって下さい、ほかに取る手だてがなかった。」
「君はミッションを守ってくれた。私でもそうしたよ。」
「それでも、あなたに銃を向ける日がこようとは。」
「ヘ。」
「自分でも、信じられません。」
「もうこのことは忘れよう、いいな?」
「…わかりました。」
「状況は?」 水を汲むアーチャー。
「反物質は全てこちらに戻しました。」
「…幼虫は。」
「フロックスによれば、19匹が這い回ってるそうです。運が良ければ、次のズィンディ船に拾われるでしょう。」
「そろそろコースに戻ろう。仕事に戻ってくれ。エンジンを酷使するからな? …ブリッジにいる。」
「もう少し、休んで下さい。」
「…十分休んだよ?」
「申し訳ありませんが、ドクターが休めと。」
「…わかった。また反乱を起こされてはたまらん。」 タッカーの肩に触れたアーチャー。「トラヴィスにワープ最大で、アザティ・プライムに向かえと。」
「わかりました。」 タッカーはアーチャーの部屋を出て行く。
アーチャーは、座ってポートスをなでた。


※12: Ensign Walsh
エキストラ

※13: Corporal Hawkins
(Sean McGowan) ENT第57話 "Impulse" 「幽霊船」以来の登場。セリフなし

※14: West Point
この部分は訳出されていません

・感想
昆虫族ズィンディの卵に取り憑かれるアーチャー。そう悪い話ではないと思うのですが、ずっと違和感がつきまとう印象ですね。事件の原因がバレバレなのは別にしても、アーチャーもクルー共に「正しくもあり、間違ってもいる」という演出意図は理解できます。ただどっちが正しいのか視聴者に任せるタイプかな…と思っていたら、結局アーチャーだけが悪者というだけであっさり終わり。トゥポルのこともちょっとおかしく描きたいのか、そうでないのか。トリップはトリップで率先して反乱したい素振りを見せながら、腰が引けたような描写もあり、最後は平謝り…。全体的に「?」ですね。
監督は珍しく ST 初担当の Michael Grossman という方で、SF・ファンタジー系ドラマを多く演出しています。今に始まったことではありませんが、邦題が残念。


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