エンタープライズ エピソードガイド
第70話「爬虫類族の攻撃」
Azati Prime
イントロダクション
ワープを抜けるエンタープライズ。 ブリッジの中央に立つアーチャー。「4分の1 インパルス。」 スクリーンには、赤色巨星。 トゥポル:「2つの内惑星の周辺に、船が密集しています。数えきれません。全て、ズィンディです。」 リード:「無数の衛星が列をなしてる。探知グリッドを構成してます。」 アーチャー:「デグラの言う防衛網か※1。」 「ではやはり、ここですね。」 「いま丁度小惑星があったな。反対側に回れ。」 メイウェザー:「了解。」 トゥポル:「船団が、探知グリッドに向かっています。」 アーチャー:「映像を。」 5隻のズィンディ船が、惑星へ向かっている。 アーチャー:「先頭のシャトルを拡大。」 こちらに背を向け進んでいく。 アーチャー:「ワープ痕跡を出せ。」 左下に図が表示された。 微笑むアーチャー。「…デグラだ。」 酒を注ぐデグラ※2。「こうして完成を祝うのは、何とも妙な気分ではあるな? 何しろ惑星を吹き飛ばすために造られた兵器だ。だが 50年前、エナーカス※3が大いなる離散※4にこんな言葉を記している。『住む世界を失えば、自分たちの子孫までもが荒れた地をさまようことになる』。」 ターレン※5たち人間ズィンディにグラスを渡していく。「今この危機を乗り切れば、我々はもう二度と荒野をさまようことはない。ズィンディの新時代に、乾杯。」 |
※1: ENT第66話 "Stratagem" 「策略」より ※2: Degra (ランディ・オグルスビー Randy Oglesby) ENT "Stratagem" 以来の登場。声:木村雅史 ※3: Enarchis ※4: Great Diaspora ※5: Thalen (Christopher Goodman) ENT "Stratagem" 以来の登場。俳優はこれまでの Josh Drennen から変更。セリフなし |
本編
アザティ・プライム軌道上の爬虫ズィンディ船に、デグラの船がドッキングしている※6。 シャトル内に入る毛長ズィンディ※7。「デグラ、久しぶりだな。」 デグラ:「ようこそ。」 爬虫ズィンディ※8:「いつ始められる。」 「もう間もなくだ、辛抱しろ。」 「おとなしく待ってなどいられん。」 毛長ズィンディ:「だが短期間でかなりの成果を上げたな。」 もう一人の評議員である人間ズィンディ※9。「ここまできたのはデグラのおかげだ。」 爬虫ズィンディ:「成功を確信するのはまだ早いぞ。…私がお前に礼を言うのは地球人が全滅したときだ。」 小惑星の影に隠れているエンタープライズ。 司令室のモニターに、恒星を球状に包む網が表示されている。 リード:「グリッドをくまなく調べましたが、隙は見当たりません。」 トゥポル:「しかもかなりの精度です、通った瞬間に探知されるでしょう。」 タッカー:「分断するしかない。」 「衛星の数は数千にも上ります。一つだけ停止させても…」 無数の点の一つを消しても、すぐにグリッドが復活する様子が表示される。「溝は埋まります。」 アーチャー:「昆虫族のシャトルは。」 リード:「仲間になりすませば…」 「通れるな。兵器のある位置を確認したい。」 トゥポル:「彼らのシャトルなら、怪しまれることはないでしょう。」 メイウェザー:「しかし、操縦には特殊な技術を要しますよ。」 タッカー:「2、3時間は練習しないと。」 アーチャー:「かかれ。終了次第出発だ。」 発着ベイの中で浮き上がる昆虫ズィンディ・シャトル。エンジンが起動される。 だがスイッチに手を触れると、ガクンと落下した。 メイウェザー:「今のは『バック』ですね。」 タッカー:「ああ…だがケツから飛んでくわけじゃないんだ。前に進んでくれなきゃ困る。」 「おっしゃるとおりです。」 「コンソールのセッティングを見直そう。まず、左舷の駆動装置だ。」 「これですね。」 作業するサトウ。昆虫ズィンディの声が再生される。 近づくトゥポル。「…少佐が翻訳マトリックスを使うまでには、まだ少しかかります。」 サトウ:「昆虫族の言葉を話すには、早くこれを分析しないと。」 再生される音声。「恐らく今のは『さよなら』とか…そんな意味です。」 まだ不快な声は続く。 アーチャーがズィンディ・シャトルに近づく。「…入ったら、早く見つけ出して戻ってこい。…どんな情報を手に入れても、生きて戻ってこなければ意味がないんだぞ?」 タッカー:「心します。」 「…無事で。」 「はい。」 メイウェザー:「行ってきます。」 ドアを閉める。 発進する昆虫ズィンディ・シャトルは、上部の突起物が持ち上がった。いきなりふらつく。 ブザーが鳴るシャトル内。 タッカー:「どうした。」 メイウェザー:「壊れた操縦桿で、船※10を動かしてる気分です。」 トゥポル:「針路が一定していないようですね?」 スクリーンに映るズィンディ・シャトル。こちらに戻ってくる。 アーチャー:「…通信しよう、回線オン。…トリップ?」 さらに近づくシャトル。 シャトルは衝突し、大きく揺れた。 ため息をつくアーチャー。 タッカー:「すみません。」 アーチャー:「構わんよ? 修理代はもて。」 ズィンディ・シャトルは安定してきた。座るタッカー。 メイウェザー:「…感覚がつかめてきた。」 タッカー:「…センサーは順調だ。…ショーを始めるか。」 アーチャー:「ギリギリまでモニターしておけ。」 うなずくトゥポル。 タッカー:「500メートル。200。行くぞ?」 トゥポル:「グリッドを通ります。」 タッカー:「入った。」 警報が鳴る。「パトロール船だ! …後ろから来てる! 呼びかけだ。」 昆虫ズィンディの声が流れる。 メイウェザー:「どうも歓迎してるようには聞こえませんね。」 タッカー:「…ホシ。…頼りにしてるぞ。」 操作する。 機械的な音声が再生される。『この船の、探知グリッド内への侵入は許可されていない。説明を。』 タッカー:「…航行システムの故障で、少しコースを外れてしまったんだ。だが、修理は済んだ。」 それが機械翻訳されて送信される。 また相手の声が翻訳される。『それでは、速やかに母船と合流せよ。』 タッカー:「了解。」 トゥポル:「…グリッドで、センサーが阻まれています。消えました。」 警告音。 リード:「スキャンです。」 アーチャー:「どこからだ。」 「付近に船は、見当たりません。」 スコープを覗くトゥポル。「発信源は衛星です。監視ステーションがあります。自転で、探知区域内に入ったようです。」 アーチャー:「映像を。」 岩場の陰に、小さな施設が見える。 アーチャー:「マルコム。」 色が切り替わり、はっきりと人工物だとわかる。 トゥポル:「ズィンディの生体反応が 3つ。」 アーチャー:「奴らはスキャン結果を送ったか。」 「まだです。」 リード:「何をしてるんだ。」 「自転により、通信領域に入るのを待っているんでしょう。」 アーチャー:「猶予は。」 「4時間です。」 アーチャーは後ろを向いた。再び向き直る。「ステーションを狙え。」 アーチャーを見るサトウ。 リード:「…ロック。」 トゥポル:「船長。」 アーチャー:「危険は冒せない。……撃て。」 光子性魚雷が向かうのが見える。直撃した。 アーチャーは船長席に座る。 アザティ・プライム軌道上の昆虫ズィンディ・シャトル。 タッカー:「微量のキモサイト※11の反応がある。だが、これは大きな兵器じゃないな。」 メイウェザー:「陸地は少ないですね。」 「しかも陸上には…生体反応が見当たらない。…グッと下降してくれ。水面に近づくぞ。…右舷 20度の方向だ。」 「そこに何か?」 「恐らくな。」 水面に近づくズィンディ・シャトル。水中に巨大な影が見える。 メイウェザー:「確か、パワーの大部分が船体強化に回されてるんですよね。」 タッカー:「このシャトルなら、ガス惑星にも突っ込めるんだったよな。」 メイウェザーと顔を見合わせる。「行くぞ。たかが水だ!」 シャトルは突起物を納めながら、そのまま水中に突入した。 メイウェザー:「船体強度は保ってます。」 タッカー:「もっと潜るぞ。Z軸をマイナス10度だ。」 ゴツゴツした岩場。そばを複数の船が通っていく。 そして、その奥には巨大な施設。 見つめるメイウェザーとタッカー。 中央部にあるのは、紛れもなく球状の兵器※12だった。辺りでは多数の船が動いている。 メイウェザー:「センサーに映ってましたか?」 タッカー:「……右下の辺りに船が集中してる。」 兵器に近づく昆虫ズィンディ・シャトル。そばを水棲ズィンディが泳いでいく。 タッカー:「中に入ってみよう。」 メイウェザー:「…船長は、必ず戻れって。」 「…もちろんそのつもりだ。」 「…了解。」 他の船※13に紛れて、穴の一つから内部へ向かう。 モニターに兵器の構造図が表示されている。 タッカー:「兵器は完成間近の状態でした。すでに、最終調整に入ってるようです。」 リード:「スキャン結果を分析しました。…これが起爆マトリックスです。至近距離に接近して起爆すれば、連鎖反応が起きます。」 トゥポル:「起爆するには、かなりの破壊力が必要です。」 「光子魚雷 2、3発で起爆できます。」 タッカー:「シャトルに、積めます。」 アーチャー:「……つまり自爆ということか。」 リード:「ええ。」 メイウェザー:「…僕が行きます。」 タッカー:「よせ。」 「シャトルを操縦できるのは僕だけです!」 「それなら私も一緒に、練習しました。」 「操縦したのは僕です。」 「船長。…上級士官が行くべきでは。」 アーチャー:「…私が行こう。」 「船長。」 「いつ、準備できる。」 「積み込みに 2時間ほど。」 「かかれ。…30分後、出発ベイに。少し練習したい。」 メイウェザー:「了解。」 アーチャーは司令センターを出て行く。無言のトゥポル。 廊下を歩いてきたアーチャーは、ターボリフトに入った。 だが突然辺りの雰囲気が変わっていた。そばの大きな窓からは、外の星雲のような場所が見える。 前からダニエルス※14が歩いてきた。「ようこそ、船長。」 アーチャー:「ダニエルス! ここはどこだ!」 「エンタープライズです。エンタープライズ-J※15、言わば…遠い子孫に当たる船だ。400年後の未来です。」 ダニエルスは黒い制服だ。 音が響いた。窓から船同士が戦闘しているのが見える。 惑星連邦の船※16もいる。 |
※6: この様子から、爬虫ズィンディ船は以前 (ENT第60話 "Twilight" 「留められない記憶」) より大きく、デグラの船は以前 (ENT "Stratagem") より小さく 35m ほどと推測できるようです。まあ、そこまで深く考えて描いているとは限りませんが… ※7: Xindi-Arboreal (リック・ワーシー Rick Worthy) ENT第65話 "Proving Ground" 「アンドリア人の協力」以来の登場。声:遠藤純一。これまでの田中英樹から変更 ※8: 爬虫類司令官 Reptilian Commander (スコット・マクドナルド Scott MacDonald) ENT "Proving Ground" 以来の登場。声:白熊寛嗣 ※9: Xindi-Humanoid (タッカー・スモールウッド Tucker Smallwood) ENT "Proving Ground" 以来の登場。声:竹田雅則 ※10: 原語では「小惑星走行車 (asteroid-runner)」 ※11: kemocite ENT第59話 "The Shipment" 「兵器工場潜入」など ※12: ENT "Twilight" では可能性の未来において登場していますが、実際には初めて ※13: デグラの船と同タイプのものもいるようです ※14: Daniels (マット・ウィンストン Matt Winston) ENT第63話 "Carpenter Street" 「デトロイト2004」以来の登場。声:津田英三 ※15: Enterprise-J 明らかに U.S.S.エンタープライズ-E (映画第8作 "Star Trek: First Contact" 「ファースト・コンタクト」など) の 5代後の船、という設定でしょう ※16: ここで見えるのはプロメテウス級宇宙艦。VOY第82話 "Message in a Bottle" 「プロメテウスの灯を求めて」など |
尋ねるアーチャー。「連れてきたからには、わけがあるんだろうな!」 ダニエルス:「見て下さい。全ての方向に、5万光年ずつ広がっているんです。」 「前に見たことがある。」 「ええ、領域内でね。」 「あの異星人を知っているのか。実験のことも。」 そばのエンタープライズ-J の図を見るアーチャー。 「彼は球体を造った種族です。宇宙を、自分たちが住める環境に変えている。侵略の前触れだ。」 「我々もそう踏んでる※17。」 「もうそこまでつかんでいたとはね。」 大きく揺れた。「これは歴史に残る出来事です。プロシオン5 の戦い※18で、連邦は球体の創造者※19と戦う。」 複数の船※20が飛んでいく。 「連邦? 前にも言っていたな※21。」 「ヴァルカン、アンドリア、イセナイト※22、クリンゴン※23、そして地球。ほかにも、多くの星が同盟を組んだ。…創造者です。」 異星人の船※24が攻撃され、爆発した。 目を押さえる 2人。 ダニエルス:「連邦は戦いに勝ち、創造者を異次元の世界に追い返しました。もし負けていたら創造者は銀河中にはびこり、全てを破壊していたでしょう。…彼らには、起こりうる複数の未来を予見できる技術があるんです。だから敗北を知り、未来を変えるためにズィンディに接触して地球人は脅威になると吹き込んだんです。」 アーチャー:「ズィンディに我々を始末させようと?」 「地球抜きに連邦は成立しない。」 ため息をつくアーチャー。 ダニエルス:「地球人は敵ではないと、わからせなければ。ここの戦いでもズィンディを創造者から守ったのは、地球人なんです。彼らに和平を、呼びかけるんです。」 アーチャー:「兵器は完成間近だ。」 「知ってます。」 「阻止せねばならん!」 「たとえ破壊しても、また次を造るだけだ。ズィンディを説得できるのはあなたしかいないんです。…あなたが自分を犠牲にすれば、歴史は変わってしまう!」 「私の使命は、数十億人の命を守ることだ! それで歴史が変わるというなら仕方ないだろう!」 「その任務にはほかのクルーを…」 「冗談じゃない!」 「私を、信じて下さい! あなたは大変な間違いを犯そうとしている。」 手を振り払うアーチャー。「君こそ間違いを犯しただろ?」 ダニエルス:「それは関係ない!」 「船に戻せ!」 ダニエルスをつかむアーチャー。「今すぐにだ!」 ダニエルスは小さな円盤を見せた。「これを。ズィンディの物だ。…ここにいるクルーがつけていた、家族の紋章です。…この船にはズィンディのクルーもいる。」 アーチャー:「なぜこれを私に?」 「…気が変わるかもしれない。」 首を振るアーチャー。「変わらんよ。」 22世紀のエンタープライズ。 メダルを見るトゥポル。「量子分析してみます。」 アーチャー:「確かに未来のものだ。」 受け取る。 「どうなさるんですか。」 「任務を続行する。…君は反対か?」 「…船長がズィンディを説得できるとしても、死んでしまっては無理です。」 「ダニエルスの言う、未来を信じればの話だ。」 「信憑性はあります。」 「タイムトラベルは信じないんじゃなかったのか?」 「先日デトロイトへ行った※25ことで、不信感は消えました。やはり考え直すべきです。」 「じゃあどうしろと言うんだ! シャトルで飛んでいって仲直りしてこいとでも言うのか? …兵器は、今にも発射されようとしている。…もっと早ければ状況は違ったかもしれんが、もう遅い!」 歩いていくアーチャー。 「…死んで欲しくありません!」 アーチャーは振り返る。 トゥポル:「…策はあるはずです。」 アーチャー:「だといいがな。」 アーチャーはわずかに笑みを浮かべ、去っていった。 デグラの船にいる爬虫ズィンディ。「完成した兵器には 4隻護衛をつける。」 デグラ:「それだけの船を移動させるには、かなりの大きさの渦を作らねばならないんだぞ!」 「たとえ地球をまるごと破壊しても、星系内には地球人の船や施設がある。それらも、全部まとめて始末するのだ。地球人のあらゆる船や、コロニーや、基地に至るまで全てを破壊してくれる。」 「そんな巨大な渦は安定しない。護衛船に被害が出ることになるぞ。」 「やってみればわかる。」 呼び出しを確認するデグラ。「あなたに通信だ。」 爬虫ズィンディ:「…どうした!」 ズィンディ:『ステーションの一つが連絡不能になっています。』 「…いつからだ!」 『2時間前です。』 「警備船を送れ! 話の続きは戻ってからだ。」 出ていく爬虫ズィンディ。 毛長ズィンディ:「誰かが言っていた。爬虫類族は太陽のようなものだと。相手に容赦なく、火傷を負わせる。」 デグラ:「…彼は別だ。」 「最初の攻撃機を発射したときもそんな顔だった。」 「あの時は 700万人だったが、今度は星をまるごと破壊するんだ。」 「敵の星でよかった。」 「私もそう言い聞かせてきた。…だが罪もない人々が死ぬのは紛れもない事実だ! …子供たちも。」 「…それは考えない方がいい。」 「子供をもつ親の身としてはそうもいかん。」 「自分の子供たちのためだ。今やらねば未来はない。それを忘れるな。」 「……子供たちには我々が、どう映るのか。」 操縦桿を握るアーチャー。 メイウェザー:「なかなか思い通りにはいきません。」 アーチャー:「昆虫の目を想定して造られてるんだろう。」 「もう一度。」 ため息をつき、操縦を始めるアーチャー。 メイウェザー:「そうです。昆虫の感覚がつかめてきた。」 アーチャー:「妙な褒め方だな?」 「…聞いてもいいですか。」 「何だ。」 「…船長はこの船に欠かせない人です。…なぜこの任務を。」 「……一時間前、私は 3人のズィンディを殺す命令を下した。…一ヶ月前には組織を取り出すためだけにトリップのクローンを創らせ、そして目の前で死なせた※26。」 「その罪を償うためってことですか…」 「これ以上、誰かを死なせる命令は出したくない。」 暗い医療室に入るアーチャー。「動物園の仲間を増やして悪いな?」 ポートスや荷物を抱えている。 フロックス:「構いません、別に? 口一つ増えるぐらい。」 「ヘ、臓器を取らないでくれよ?」 「ええ。必要にはならないでしょう。」 ポートスをなで、外へ向かうアーチャー。「ああ、それから。時々チーズをやってくれるか。」 フロックス:「…はい。」 出ていくアーチャー。 ポートスはフロックスに顔を近づけた。笑うフロックス。 クルーがブリッジに集まっている。 アーチャー:「私は、別れの言葉というのがあまり得意じゃないんだ。だから、あえて言わない。…だが、一つだけ頼みがある。初めて宇宙に、旅立った時を思い出してくれ。…我々は探索者だ。…ズィンディの攻撃から地球を救ったら、その任務に戻って欲しいんだ。この銀河には 4,000億の星がある。我々が出会ったのはほんの一部だ。まだ先は長い。……この先やってくるどの船長たちよりも、私は君たちのことを誇りに思っている。」 ブリッジ。 トゥポルはリードを見た。操作するリード。 発進する昆虫ズィンディ・シャトル。 通信が届く。『こちらアーチャー。これから向かう。』 赤色巨星へ向かうズィンディ・シャトル。 |
※17: ENT第67話 "Harbinger" 「新たなる脅威の兆し」より ※18: プロシオン5号星の戦い Battle of Procyon V プロシオン (プロキオン) は、こいぬ座アルファ星 ※19: 球体創造者 Sphere-builder ※20: ここで見えるのはドーントレス (型)。VOY第94話 "Hope and Fear" 「裏切られたメッセージ」。追いかけている球体創造者艦は、デヴォア戦艦 (VOY第104話 "Counterpoint" 「偽りの亡命者」) の使い回し ※21: ENT第27話 "Shockwave, Part II" 「暗黒からの衝撃波(後編)」より ※22: Ithenites ※23: 24世紀までにクリンゴンは連邦と同盟を結んでいるだけですが、その後 26世紀には加入しているということなんでしょうね ※24: この球体創造者艦は、ヴィシア船 (ENT第48話 "Cogenitor" 「第3の性」) の使い回し。攻撃しているのはノヴァ級宇宙艦。VOY第120・121話 "Equinox, Part I and II" 「異空生命体を呼ぶ者達(前)(後)」など。左下に見えるのはクリンゴン・ヴォルチャ級攻撃巡洋艦 このシーンに登場する 26世紀の船 (プロメテウス、ドーントレス、ノヴァ、ヴォルチャ) は、200年前の 24世紀のものと同一とは限りません。それよりも単に未来の船という描写であって、偽物の船であるはずのドーントレスが使われているのもそういう理由でしょう ※25: ENT第63話 "Carpenter Street" 「デトロイト2004」より ※26: ENT第62話 "Similitude" 「ライサリア砂漠幼虫」より |
報告するリード。「400メートル。…200。…グリッドを通ります。…通過。」 タッカー:「頼みますよ。」 トゥポル:「…作戦室にいます。」 トゥポルを見るタッカー。 作戦室に入ったトゥポルは、窓に手をかけて深く息をした。その目からは涙が流れていた。 アザティ・プライムに近づく昆虫ズィンディ・シャトル。 操縦桿を倒すアーチャー。 ズィンディ・シャトルは海面に突入した。 水中を進む。 センサーを確認するアーチャー。 施設に到達する。だがそこには兵器はなく、プラットフォームが残されているだけだった。 昆虫ズィンディの通信が届く。ボタンを押すアーチャー。 『侵入は、許可されていない。停止せよ。』 3隻に囲まれた様子が映る。 攻撃を始める昆虫ズィンディ船※27。 シャトルは揺れ、真っ暗になった。 不安な表情を浮かべるトゥポル。ドアチャイムが鳴り、パッドを手にする。「どうぞ。」 タッカー:「…変化はない。」 「…知っています。」 「2時間も経てば、たどり着いてるはずだ。俺たちだって、25分で兵器を見つけ出した。…センサーが爆発を捉え損ねたってことは。」 「ありえません。」 「…後にできないのか。」 「…なぜです。」 「こんなときだ! 君はブリッジにいるべきだろ。」 「…何か必要があれば呼ばれるはずです。」 「ズィンディの兵器がどうなったにせよ、船長はもう戻ってこない。…司令官は君だ。クルーにそう示してやるべきだろ、ここにいても仕方ない。」 「あなたの助言は必要ありません。」 「力になりたいんだ。辛いのはみんな同じだよ。…トゥポル。」 「…下がりなさい。」 「下がれって。」 「…出ていって。」 タッカーはため息をつき、作戦室を後にした。 殴られるアーチャー。両手は天井から吊り下げられており、血を流している。 爬虫ズィンディ:「質問に答えろ。」 苦しむアーチャー。「もう一度言え。」 爬虫ズィンディ:「この領域にいる地球の船は何隻だ。」 「教えてやりたいが…」 血を吐くアーチャー。「あいにく、私も知らされていないもんでね。」 また爬虫ズィンディの部下に殴られる。 「先制攻撃を狙ったのか。」 「あんたらの専門だろ?」 「我々の専門は別にある。」 「ああ、当てよう。」 アーチャーは臭った。「悪臭を放つことか。」 部下を制する爬虫ズィンディ。「地球人がこうもしぶとい種族とは知らなかった。ヒト族というのは得てして柔なものだと思っていたが。」 アーチャー:「ズィンディでもか…。」 「だからこそ武力が必要なときは、我々が指揮を執ってやるのだ。…地球への攻撃機を操縦したのも爬虫類族だ。」 「友達か。」 「あれは私の部下だ。私が直接任命した。」 「それは鼻が高いな。」 「その名は歴史に刻まれ、語り継がれることだろう。冷酷さこそ全てのものに勝るという、何よりの証としてな。」 「あんたは知らないだろうが、地球にも爬虫類が支配していた時代があった。」 「それは初耳だな。」 「だが隕石が 6,500万年前に衝突して、多くが絶滅したんだ。爬虫類は激減し、哺乳類が生態系の中心となった。」 「何という悲劇だ。」 「もし爬虫類が弱点を克服すれば、再び頂点に君臨したかもしれん。」 「どんな弱点だ。」 「知能レベルが低すぎるんだよ。…もう救いようがない。どうやら、それは宇宙共通らしいな。」 声を震わせる爬虫ズィンディ。「…地球の船は…何隻いる。」 アーチャー:「生き残った爬虫類は、進化してヘビや、ワニや、カメになった。サンフランシスコにある私のお気に入りのレストランには、美味いカメのスープがあるんだ。…地球へ行ったら一度食べてみた方がいい。」 爬虫ズィンディはアーチャーの首をつかんだ。「どうやら早く死にたいようだな。」 アーチャー:「は、話をしているだけだろ。…破壊しようとしているのが…どんな星か教えてやってるんだ…。」 「ではその礼に、お前にもいいことを教えてやろう。」 頭を握る爬虫ズィンディ。「我々は、お前の船の居所をつかんだ。」 「……なるほど。」 「ステーションが通信不能になったときに付近をスキャンして、船が隠れているのを…見つけたのだ。…お前が地球の船の数を、言わない気なら…部隊を送り込んでやってもいいんだぞ? 今、すぐにな。…うーん、話はもう終わりか? うん? …部下に別れくらい言わせてやりたがったがなあ。」 「い、いいさ。ああ、だがデグラと話したい…。」 「デグラ?」 「二人っきりで。」 「誰だったかな。」 「兵器を造った男だ…思い出したか。」 「デグラがお前のような奴と話したがるとでも思うのか?」 「…こう伝えろ。…3番目の子供の名は、トレニア※28だ。」 「奴の子供は 2人だけだ。」 「彼に言えばわかる。…伝えろ!」 司令室のトゥポル。「それだけの爆発なら、センサーが確実に捉えるはずです。…たとえ水中でも。」 タッカー:「突入しよう。接近して兵器を破壊するんだ。」 リード:「賛成です。」 トゥポル:「これだけの警備網です。兵器までたどり着ける望みはありません。」 タッカー:「おとなしく座ってろって言うのか?」 リード:「…じゃどうすれば。」 トゥポル:「…船長が生きている可能性はあります。」 「これ以上ここにいたら、見つかるのは時間の問題です!」 「…一時間以内に連絡がなければ…私がシャトルで星に向かいます。」 「あ…。」 タッカー:「行ってどうする。」 トゥポル:「彼らと交渉するんです。」 「冗談だろ。」 リード:「本当にそんな方法が上手くいくと思ってるんですか!」 トゥポル:「可能性は低いでしょうが、私はヴァルカン人です。試す価値はあります。」 「行っても捕まって、殺されます!」 「でしょうね。しかしほかの方法を思いつきません。」 デグラを連れてくる爬虫ズィンディ。 アーチャー:「また会ったな。」 デグラ:「…なぜ私のことを。」 「…話せば長い。」 「彼に、何と言った。」 「…3番目の子はトレニアだ。」 デグラは爬虫ズィンディに言った。「外してくれ。…彼も連れて行け。」 部下に指示する爬虫ズィンディ。拷問室を出ていく。 一度アーチャーを振り返った。 アーチャー:「奥さんが妊娠 3ヶ月で、アナプローリアン熱※29にかかり…子供は助からなかった。名前を決めてただろ?」 デグラ:「…そのことは誰にも話していない!」 「私には話した! …700万人を殺したあの攻撃機のことも聞いたよ。…後で、その中に幼い子供たちが何人いたのか考えたと※30。」 「何者だ。」 「そんなことはこの際どうでもいいだろ。…それよりも、もっと重要な話がある。」 「…続けろ。」 「…あんたらは…異星人にだまされて、兵器を造らされてる。」 「だまされているとは。」 「未来のある時点で…地球人が、あんたらの星を破壊すると。」 「それは確固たる事実だ!」 「…球体は知ってるな。」 「もちろんだ。」 「あれを造ったのは…異次元に棲む種族だ。…彼らの目的は、領域を自分たちの住める環境に変えることで…それが、あんたらを滅ぼすことにつながるんだ!」 「球体は研究したが、そんなことを裏づけるようなデータはない!」 「この目で見たんだ! …タイムトラベルで…400年先の未来へ行ってな!」 「そんなことを本気で信じろと言うのか!」 身体の側面を見せるアーチャー。「ポケットに証拠品が入ってる。…見てみろ。…早く!」 肩のポケットを開け、メダルを取り出すデグラ。「イニシエーションメダル。」 アーチャー:「量子分析しろ。本物だとわかる。」 「こんな物はどこででも手に入る!」 「ゴチャゴチャ言わずに聞け! 私だって最初は信じられなかったが、星の運命がかかってるんだ! 地球を破壊すれば、地球人だけでなく自分たちを滅ぼすことにもなる!」 メダルを見るデグラ。 |
※27: ENT "Stratagem" に登場。その際は映像だったので、本物は初めて ※28: Trenia ※29: Anaprolean fever ※30: ENT "Stratagem" より |
デグラの船。 デグラはイニシエーションメダルを手にしている。「量子分析で証明された。確かに未来の物だ。」 人間ズィンディ:「だからといって話が本当とは限らん。」 毛長ズィンディ:「だがもし本当だとしたら、あの女は信用できんな。」 デグラ:「彼女は裏で、爬虫類族と取引している。」 人間ズィンディ:「アーチャーがそう言ったのか。」 「地球に爬虫類族がいて、デトロイトという街で会ったと。…100年以上前の過去でな。」 毛長ズィンディ:「過去だと?」 人間ズィンディは手を挙げた。「アーチャーはタイムトラベラーか。」 デグラ:「話によれば、彼らは生物兵器を作っていたらしい※31。」 毛長ズィンディ:「評議会で禁止されてる。」 「その点についても詳しく聞いた。確かに生物兵器の製造を隠すには、過去ほど安全な場所はないと言えるだろう。」 「どうやって過去へ行ったんだ。」 「…彼女が、連れて行ったんだ。」 「詳しく調査せねば。」 「早急にな。兵器は安全な場所にあるが、いつ発射されるか。」 人間ズィンディ:「その前に評議会に知らせるだろう。」 毛長ズィンディ:「評議会には爬虫類族もいるんだぞ? 我々は何も知らない振りをしていた方がいい。今はな。」 「水棲族はどうする。」 「内密に連絡を取ろう。」 「しかし、そんな策略はあまりに危険すぎる。内部分裂させる気か。本当の敵を忘れたわけではあるまいな。」 デグラ:「本当の敵など、もはやわからない。」 廊下でトゥポルを追うタッカー。「君が失敗したらどうする! 成功するまで人を送り続けるのか?」 トゥポル:「それは不可能です。シャトルは後一機しかありません。」 「…そういうことじゃないだろ!」 発着ベイに入るタッカー。「地球がどうとかより、船長を助けたいだけだろ。」 トゥポル:「違います。」 「考えて出した結論とは思えない。」 「反対意見はわかりました! ブリッジに戻りなさい!」 「みすみす死なせるわけにはいかないんだよ。」 「命令ですよ!」 腕をつかむタッカー。「トゥポル!」 トゥポル:「離して!」 「行かせない!」 「離しなさい!」 降りていくトゥポル。 「…どうしたっていうんだ!」 リードの通信。『副司令官。』 階段を上るトゥポル。「どうぞ。」 リード:『行く必要はなさそうです。向こうから来ました。』 爬虫ズィンディ船、昆虫ズィンディ船がエンタープライズへ近づく。 ブリッジに入るトゥポル。 リード:「4隻の船が接近中です。」 トゥポル:「通信を。」 サトウ:「……応答ありません。」 リード:「武器をチャージ!」 アーチャーは解放されている。 人間ズィンディ:「それで、どうしろと言うんだ。」 アーチャー:「…力を合わせたい。」 「お前は魚雷を積んだシャトルで我々のコロニーへ潜入してきたんだぞ? そんな奴を信用できるか。」 「それはあの兵器を破壊するためだ。発射させるわけにはいかない。」 「それで奇襲が失敗したら、今度は交渉か?」 「……話は聞いただろ?」 「お前たちの星を破壊することが、我々の自滅につながるとか言ったな。」 「そうだ。」 「しかも、地球人が我々ズィンディを球体の創造者から守ってくれるらしいが?」 「…戦う相手を間違えてる。」 「残念だが『こんな物』だけでは、信用はできんな。」 メダルを見せる人間ズィンディ。 デグラ:「量子分析の結果が誤っていた例もある。」 アーチャー:「これが偽物だと思ってるのか? …私が評議会へ行って、直接話す!」 「話をする前に殺されるのが落ちだ!」 「それなら一緒に説得してくれ!」 人間ズィンディ:「我々も説得できないのにか。」 「ここにいることが、理解を示し始めた…証拠だ。」 ズィンディ船と戦闘を行うエンタープライズ。フェイズ砲を使う。 火花が散るブリッジ。 リードは機関コンソールを見る。「防御プレート消失!」 メイウェザー:「…船の制御が利きません!」 船長席に座るトゥポル。「トゥポルより機関室!」 機関部員の声が飛ぶ機関室。 タッカーはワープコアのそばを離れた。あちこちで破片が舞う。 隔壁が破れ、炎が巻き起こった。機関士を直撃する。 トゥポル:「機関室、報告を!」 機関室で再び爆発が起こり、何メートルも飛ばされる機関部員。 連絡するタッカー。「最後ので右舷ナセルをやられた。対処不能だ! …ブリッジ! ブリッジ!」 倒れるブリッジの士官。 サトウ:「通信ダウン。」 トゥポル:「復旧させて!」 落ちてきた天井の梁が、クルーに当たる。 見上げる士官たち。 メイウェザーは音に気づき、素早く操舵席を離れた。天井中央の丸い部分が落ちてきてぶら下がる。 拷問室に爬虫ズィンディがやってきた。「拘束しろ。」 デグラ:「話の途中だ。」 「時間は十分やった。…地球の船の居場所は吐いたか。」 「今しているのは別の話だ!」 「それ以外のことなどどうでもいい。…船へ追い返せ。」 「どこへも行かんぞ。」 うなずく爬虫ズィンディ。部下は銃を取り出した。 デグラ:「我々を脅す気か?」 爬虫ズィンディ:「自分の船へ戻れ。」 連行されるデグラ。「彼はどうなる!」 爬虫ズィンディ:「収容センターで更なる拷問にかけてくれるわ。…こいつの船で生き残った奴がいれば一緒に連れて行く。」 アーチャー:「…生き残る?」 「攻撃の真っ最中だ。」 デグラは詰め寄った。「攻撃は待つと言っただろ!」 爬虫ズィンディ:「もう待ちくたびれた。」 「部隊を呼び戻せ…」 「指図は受けん。」 人間ズィンディ:「評議会を招集するぞ。」 「その頃には地球人の船など跡形もないわ!」 連行されるデグラたち。アーチャーだけが残った。 エンタープライズは光子性魚雷で、一隻の爬虫ズィンディ船を破壊した。 だがひどく損傷を負っており、右舷ナセルからはプラズマが漏れている。 ライトが落ちたブリッジ。 リード:「Cデッキで船体に亀裂! D、Eデッキにも!」 トゥポル:「すぐにふさいで!」 炎が起こっている。 「隔壁が作動しません! …空気が漏れています!」 消火器が使われる機関室。タッカーは炎に包まれる機関部員を見つけた。 消火器で助ける。「医療室に連れてけ!」 機関部員:「はい!」 「タッカーよりブリッジ。聞こえてるか! 冷却剤が漏れだした! …全員避難させる!」 ワープコアの上で爆発が起こった。 タッカー:「急いで逃げろー!」 廊下を走るクルー。壁が吹き飛び、倒される。 一方的に攻撃を受けるエンタープライズ。船体に穴が空き、そこからクルーが宇宙空間に吸い出された。 ボロボロになったブリッジに留まり続けるサトウ、メイウェザー、トゥポル、リード。 船長席のトゥポルは無言だ。 エンタープライズは姿勢を失う。 |
※31: ENT "Carpenter Street" より |
感想
「重要エピソード担当者」こと Allan Kroeker 監督による、本当に極めて大事な話です。何話も前から触れられていたアザティ・プライムに原題の通り到着し (ちなみに同惑星の名前は、今回一度も言及されず)、これまでの内容をまとめつつ、さらに新たな謎も提示されています。こういう話なのになぜかあらすじはなく、どちらかというと本編自体があらすじのような大急ぎの展開ですね。この辺はもしかすると、通例と同じシーズン 26話の予定だったのが 24話に減らされたのも影響しているのかもしれません。 スピード感だけで乗り切った感が強いですが、少なくとも間延びしてないだけ評価したいです。第3シーズンもこれぐらいのレベルを通してくれれば、視聴者にそっぽ向かれることもなかったでしょうに。 |
第69話 "Hatchery" 「トゥポルの反乱」 | 第71話 "Damage" 「球体創造者」 |