USS Kyushuトップ | hoshi.sa.to

エンタープライズ エピソードガイド
第67話「新たなる脅威の兆し」
Harbinger

dot

・イントロダクション
※1足をマッサージしているタッカー。「ま、マルコムと打ち解けるのはなかなか大変だろうな。うちにこもりがちっていうか。…痛くない?」 下着姿だ。
女性:「うん。」
「だけど、付き合い出してみればあいつほど頼もしい奴はいないと思うはずだ。…何だよ、くすぐったいのか?」
相手はトゥポルではなく、同じく下着姿の地球人※2だ。「今日はね。」
タッカー:「…やり方がまずいのかなあ。」 手を離す。
「別の体位を試してみる?」
「…姿勢だろ? いいよ。」 手を取るタッカー。「座って。」
ベッドに座る女性。「でもリード大尉って、私達を敵を見るような目で見るのよ?」
タッカー:「…別に軍事部隊を敵とは思ってないだろ。」
「ん?」
「ライバル意識だよ。楽に。」
深く息をする 2人。
タッカーは MACO の背中を押す。「トゥポルに最初に押してもらったポイントだ。…これがよく眠れるんだよ。」
MACO:「気持ちいい。…これも訓練に組み込まれてばね。」
「ヘイズに言ってみたら。」
「少佐の訓練は、私が入った頃から変わってないの。繰り返しやるのが好きみたい。」
「マルコムと同じだな? 艦隊の訓練を受けてたとき、毎日三食同じ物を食べ続けたらしい。一年もだぞ?」
「2人とも、似た者同士なのね?」
笑うタッカー。「だから張り合ってるんだろうな。」 強く押す。「これはどう?」
MACO:「気持ちいい。」
タッカーは手を離した。「よし。」
向き合う MACO。「12時間ぐっすり寝た気分。」
タッカー:「じゃあ上手くできたんだな。」
MACO は顔を近づけ、タッカーとキスした。
タッカー:「ああ…。」
微笑む MACO。「何?」
タッカー:「…ずいぶん突然だな。」
「突然しちゃいけなかった?」
「うーん、いやあ。…予告は欲しいかな。」
「…じゃあこれを予告だと思って? 今度の時の。」 タッカーの部屋を出て行く MACO。


※1: ENT第65話 "Proving Ground" 「アンドリア人の協力」同様、第3シーズンの複数のエピソードを扱ったあらすじが入ります。内容はエピソード放送順に、第53話 "The Xindi" 「トレリウムD」、第54話 "Anomaly" 「オサーリア人の襲撃」、第58話 "Exile" 「孤独な亡命者」、第60話 "Twilight" 「留められない記憶」、第62話 "Similitude" 「ライサリア砂漠幼虫」、第64話 "Chosen Realm" 「選ばれし領域」、前話 "Stratagem" 「策略」。なお今回デグラ役の木村雅史さんが声優クレジットにありますが、あらすじの "Stratagem" 部分だけの出演と思われます

※2: アマンダ・コール Amanda Cole
(Noa Tishby) 声:湯屋敦子

・本編
『航星日誌、2153年12月27日。デグラから受け取った座標を頼りに、赤色巨星へと向かう。ズィンディの兵器を発見できるかもしれない。』
作戦室。
ドアチャイムに応えるアーチャー。「どうぞ。」
リード:「お呼びでしょうか。」
「今朝、ヘイズから提案があってね? 君たち保安部員と上級士官全員に、軍事訓練を受けさせたいと言うんだ。」
笑うリード。「保安部員の訓練なら、週 2回やってます。」
アーチャー:「それとは違う。ヘイズ少佐と、軍事部隊主導の訓練だ。」
「…ですが。」
「ここは未知の領域だ。いつ何が起こるかわからん。」
「備えは万全です。」
「戦略や技術に関しては彼らの方が、2年も 3年も先を行っている。その経験と知恵を借りない手はないだろう。」
首を振るリード。
アーチャー:「反対か?」
リード:「…彼らの訓練は、地球上で行われたシミュレーションだけですが…我々は宇宙で多くの異星人たちと戦ってきました。見習うべきなのは、彼らの方だと思いますが。」
「軍事部隊もこの船で、ズィンディたちとの戦いを経験してきた。実に上手くやってるよ。…少佐と、訓練の詳細について相談してくれ。」
「…了解。」 出ていくリード。

医療室で生き物が騒いでいる。
フロックス:「ああ、すぐに来ていただけたんですねえ。」
トゥポル:「聞きたいこととは?」
「アマンダ・コール伍長を御存知で?」 フロックスが虫を入れると、下からギザギザの歯がそれをくわえた。
「軍事部隊のですか?」
「今朝、軽い頭痛を訴えてきたんです。一週間も痛みが続いていると言うんですが、特に異常は見当たらない。だがどうやら彼女は、ヴァルカンの神経マッサージを受けているらしいんです。タッカー少佐から。」 別のケースに植物を入れるフロックス。
「それが、頭痛の原因だと。」
「それをうかがいたい。高度な技術を要するものです。」 フロックスは更に水槽に餌を振り入れる。「少佐は、マッサージを教わり始めてまだ 3ヶ月だ。もしかしたら、方法を誤っているとも。」
「考えられます。」
「うん。…コール伍長には注意するように言っておきましたが、少佐にもあなたから言っていただけませんか。次のマッサージの時にでも。」 容器のふたをトゥポルに持ってもらうフロックス。
「構いません。」
「ああ、お願いします。」
「ええ。…ほかになければ。」
「ああそれともう一つ、お願いが。…近々、コール伍長に神経マッサージをしていただけませんか? タッカー少佐の誤ったマッサージを、リセットしたい。」
ため息をつき、出ていくトゥポル。フロックスは微笑む。

ターボリフトを出て、廊下を歩くヘイズ少佐※3。「よし、では火水金にしよう。朝 8時でどうかなあ。」
リード:「訓練するなら、夜の方がいい。」
「どうして。」
「効率の問題だ。身体がほぐれて動きやすい。」
「それなら火曜と金曜は朝で、水曜を夜に。」
「いや火曜と金曜が夜で、水曜が朝だ。」
「やけに突っかかるなあ。」
笑うリード。「そんなつもりはない。」
ヘイズ:「お言葉だが、今の君の態度はそうとしか取れない!」
「『お言葉だが』だと? そう付け加えれば、俺に刃向かえるとでも?」
「そんなつもりはない。」
「それならどうして俺を通さず、船長に直接掛け合った!」
「君に話せば却下されるのは目に見えてる。」
「かもしれんな! だが決定権は俺にある!」
「君の権限を脅かすつもりなどない。」
「今の君の態度はそうとしか取れない。」
「どう取られようと構わないが、私の目標は任務を成功させることだけだ。」
「ハ。…俺だってそうだ。火曜と金曜は、夜に決まりだ。」 リードは歩いていった。

警告音が鳴るブリッジに、アーチャーは入った。「どうした。」
メイウェザー:「何とも不可解なんです。さっきから、星が移動を繰り返していて。」
「移動?」
「まただ、いま動きました。」
「センサーの故障じゃないのか?」
「もう 2回チェックしましたが、異常ありませんでした。」
トゥポル:「原因がわかりました。非常に強い重力波が放出されています。…およそ、3光年先です。」
アーチャー:「見に行こう。」

ワープを止めるエンタープライズ。その先では沸騰する湯のように、一面が茶色くうごめいている。
スクリーンで見るアーチャー。
トゥポル:「この惑星には空間のひずみが集まっています。」
リード:「…直径は 7億キロ以上もあります。」
サトウ:「断続的な信号を探知。微弱です。」
トゥポル:「物体を探知。長さおよそ 5メートルです。」
アーチャー:「映像を出せ。」
異常空間の中に、長細い物体が見える。
トゥポル:「深さ 2、300メートルの位置です。…生体反応が一つ。…ヒューマノイドです。」
リード:「救命ポッドかも。」
アーチャー:「…付近にほかの船はいるか。」
トゥポル:「…いません。生体反応は不安定です。」
「グラップラーで引き上げろ。」
軌道上のエンタープライズから、グラップラーが打ち出された。だが異常空間に入ったところで角度が変わり、物体に当たらない。
アーチャー:「もう一度。」
リード:「位置を補正します。」
もう一つのグラップラーが、物体を捕捉した。引き抜こうとすると、周りの空間異常が盛り上がってエンタープライズの一部を飲み込んだ。
アーチャーはトゥポルを見た。「…何だ。」
船内が赤黒く変色する。あちこちに光の塊。
コンソールが爆発する。ゆっくりと飛び散る火花。
咳をするリード。「システムが、ダウンしていきます。」
メイウェザー:「操縦が利きません。」
トゥポル:「空気中に、硫化アンモニウムが充満しています。」
アーチャー:「機関室。」
タッカー:『タッカーです。』
「操縦が利かなくなった。全速後退させろ。」

タッカー:「すぐに。」 機関室の空気は正常だ。
ワープコアに近づくタッカー。

ブリッジに衝撃が走った。
後退し、異常を抜けるエンタープライズ。
ブリッジも正常に戻った。ため息をつくリード。
メイウェザー:「制御が戻りました。」
アーチャー:「…急いで離れろ!」
「喜んで!」

発着ベイに入るアーチャーとフロックス。
タッカー:「ハッチを開けます。」
リードと協力し、ひもでつないだハッチが取り外された。ポッドの中から白い気体が吹き出す。
アーチャーが近づくと、内部の筒が自動的に出てきた。中にいる異星人は、髪などはなくのっぺりとしている。
身体には無数のケーブルがつながっている。
見つめるアーチャー。


※3: Major Hayes
(スティーヴン・カルプ Steven Culp) ENT第59話 "The Shipment" 「兵器工場潜入」以来の登場。声:斉藤次郎

ベッドに寝かされた異星人※4は、目をつぶったまま声にならない声を出している。ひび割れた肌。
フロックス:「全身の細胞が急激に退化してるようです。」
アーチャー:「止められないのか。」
「まだ何とも。蘇生はしましたが、かなり苦しんでいます。」
深く息をしている異星人。
アーチャー:「船長のアーチャーだ。」
異星人の声は不思議と響いている。『こんなところに連れてくる権利はないぞ…。』
フロックス:「あなたを助けようと。」
『…そんなことは頼んでない。今すぐポッドに戻せ…!』
アーチャー:「ポッドでは、生命維持機能が不十分だ。戻せば、じきに死んでしまうだろう。」
『お前らには関係ないことだ…。』
「あのポッドは、何のためのものだ。」
『…どんな質問にも答える気はない…!』
アーチャーは異星人が向いている方に立った。「死にたいのか。…何とか君を助けようと。」
異星人:『いいからポッドに戻せ!』 苦しむ。
フロックス:「ショック症状です。」 装置を使う。

司令センターに入ったアーチャー。「どうだ。」
メイウェザー:「順調です。重力波に対処できるよう、航行センサーを調整してます。」 モニターには複雑な模様が表示されている。
「終了次第、出発したい。」
「一日で、アップロードとテストを済ませます。」 出ていくメイウェザー。
「何かわかったか。」
トゥポル:「…いろいろと。…ひずみの集合体は毎秒数キロの速度で拡大していて、ちょうど…5つの球体の、中心に位置しています。」 星図を切り替えていく。
「やはり球体が何かしら関係しているのか。」
「考えられます。」 再び惑星の図を拡大させたトゥポル。「かつては人の住む星でしたが、ひずみに飲み込まれたようで…現在は全くの無人です。」
「あの男は最後の生存者だったのか。」
「恐らくは※5。」
「…トリップと、ポッドを調べてくれ。…蘇生できなければポッドから情報を得るほかない。」
トゥポルは出ていった。モニターを見るアーチャー。

組み合った男を、床に投げたヘイズ。「…さまざまな格闘技を組み合わせた動きだ。接近戦では非常に有効になる。2人一組で、スパーリングを行ってもらう。今の動きを取り入れろ。では始めよう。」 身軽な服装だ。
ジムに集まっている MACO のほか、上級士官のリード、メイウェザー、トゥポル、タッカー、サトウも着替えている。タッカーはすぐに、MACO のコールに近づいた。

訓練を行う一同。ヘイズが見守る。
声を上げて相手の MACO を投げるトゥポル。視線の先にはタッカーとコール。
2人は楽しそうにやっている。また相手を倒し、タッカーの方を見るトゥポル。
コールに倒されたタッカーは笑った。見つめ続けるトゥポル。
コールに尻を叩かれるタッカー。トゥポルは相手を起こしたが、すぐに殴られて倒れた。
その様子を見るタッカーとコール。

ヘイズ:「コンビを使え。」
メイウェザーが闘っている。相手の MACO を殴った。
ヘイズ:「いいクロスだ。」
微笑むリード。
さらにメイウェザーの攻撃が続く。
ヘイズ:「完璧だ。……なかなかいいぞ。」
満足げなリード。
だが今度はメイウェザーが一方的に殴られ、床にねじ伏せられた。
ヘイズ:「手ばかり見ていないで、相手の目を見ろ。」
うなずくメイウェザーは、口から血を出している。
ヘイズを見るリード。
メイウェザー:「…やるなあ。」 MACO と握手する。
ヘイズ:「よーし、5分休憩の後…」
リード:「今日はここまでだ。」
「…まだショルダー・スローがある。」
「訓練は、終わりだ。」
「……よーし。では各自ガードとエルボーを、練習しておけ。」
「解散だ。」 ヘイズと話すリード。「何のつもりだ。」
「単なるデモンストレーションだろ。」
「明らかに行き過ぎだ、最後の投げ技は必要なかった。」
「立ち上がれたし問題はない。」
「問題はない?」
「少し血が出たくらいだ、大したことはない。」
「これはあくまで訓練だぞ。限度をわきまえないなら、こんな訓練はすぐに中止する。…わかったか。」
「…よーくわかった。」
「それならいい。」 リードは出ていった。

コンピューターを使うタッカー。「送信機みたいだけど、周波数を特定できない。」
ポッドの中を見ていたトゥポル。「…ドクターが、あなたと話してほしいと。」
タッカー:「何を?」
「…コール伍長が頭痛を訴えているそうです。…ドクターは、あなたの…神経マッサージが原因ではと。」
「…そんなこと言ってなかった。」
「心配させないためでしょう。」
「…マッサージしちゃいけないのか?」
「…初心者が安易に行うと、神経を傷つけてしまう恐れがあります。」
「俺はもう何度もやってるのに。」
「私の監督下で。」
「なるほど。……じゃ君がいるところでやるか?」
「彼女のマッサージは中止した方がいいでしょう。…この電極は、生体の情報を集めるもののようですね。」
「やめるって言ったら、アマンダが嫌がる。」
「それはそうでしょうね?」
「……どういう意味だよ。」
「…あなた方二人が親しくしているのは知っています。」
「親しくね?」
「先週も一緒に食事を取っていたし、昨日の訓練でもあなたはお尻を叩かれていた。」
笑い、咳払いするタッカー。「随分よく見てるみたいだな。」
トゥポル:「目立ちますから。」
「…いいか? 彼女とは共通点が多いだけだよ。フロリダ出身だし…」
「私に説明する必要はありません。が少し慎重に行動するべきです。」
「慎重にね?」
「上級士官が部下と親密な関係になるのは、問題です。」
「でも彼女は艦隊の士官じゃないだろ。」 コンピューターに反応がある。「何だ?」
コンソールを使うトゥポル。「急いで船長に報告しなくては。」
発着ベイを出る 2人。

作戦室のトゥポル。「間違いありません。あのポッドの材質は、球体で発見した合金と同じものです※6。」
窓から空間異常を見るアーチャー。「…トリアノン人の神話を覚えてるか。」
トゥポル:「球体を創った創造者が、いつか選ばれし領域に戻ると信じていました。」
「その球体によって、楽園が生み出され信じる者だけが生き延びると※7。」
「事実に基づいた神話なのかもしれません。…あのポッドは、被験者の生理状態※8をデータとして送り出していたようです。…ひずみの中にポッドを入れて、その環境での彼の反応をモニターしていたのでしょう。」
「カナリヤか。…地球では、鉱山を掘るときカナリヤを連れて行くんだ。…カナリヤが死ななければ安全に呼吸できるとわかり、掘り進むことができる。」

医療室に来ているアーチャー。
フロックス:「状態は悪化しています。細胞が崩壊している。もはや止めようがありません。」
アーチャー:「もう一度話したい。」
「意識を戻せるかどうか…」
「何とかしろ。」
「想像を絶するほどの苦しみですよ? それは倫理に反します。」
「今はそれも仕方ない。どうしても情報がいる!」
「…わかりました。やってみます。」
うなずくアーチャー。「意識が戻ったら知らせてくれ。」
異星人を見るフロックス。


※4: The Alien
(トーマス・コパシュ Thomas Kopache TNG第124話 "The Next Phase" 「転送事故の謎」のミロック (Mirok)、第175話 "Emergence" 「知的生命体“エンタープライズ”」の機関士 (Engineer)、DS9第117話 "Ties of Blood and Water" 「父死す」などのネリスの父、キラ・タバン (Kira Taban)、VOY第39話 "The Thaw" 「悪夢の世界」のヴィオーサ (Viorsa)、ENT第1話 "Broken Bow" 「夢への旅立ち」の Tos、映画第7作 "Star Trek: Generations" 「ジェネレーションズ」のエンタープライズ-B 通信士官 (Enterprise-B Communications Officer) 役) 最初の発着ベイでのシーンでは、俳優ではなく人形が使われています。声:菅生隆之、TOS補完・新録スポック。あらすじ部分で ENT "Chosen Realm" のディジャマットが登場しているので、その兼任だと思われます

※5: 原語では「可能性はあります」という感じでしょうか

※6: 原語では「同じものが含まれています

※7: ENT "Chosen Realm" より

※8: 吹き替えでは全て「精神状態」。psychological ではなく、physiological です

トゥポルはドアを開けた。「伍長。…どうぞ。」 部屋着だ。
コールも制服は着ていない。「失礼します。…今日はありがとうございます。」
トゥポル:「座って。上着を脱いで。…呼吸法は、タッカー少佐に正しく教わっていますね?」
「はい。」
肩に触れるトゥポル。「まずは深呼吸を。…そうです。…ドクターから、今後少佐のマッサージを受けないよう言われましたか。」
コール:「…注意されました。」
「…最近少佐と親しくしているようですね。」
「ん…共通点が多いんです。家がすぐ近くだったっていう話は、聞きました?」
「聞いていません。」
「…高校はライバル同士で、通った映画館も同じでした。…すごい偶然。」
「ごく稀ですね。」
「…だけど 2人とも、故郷の町を失ったんです。あのズィンディの攻撃で。」
「では御家族が被害に。」
「少し前に引っ越して、無事だったんです。幸運でした。」
「少佐には妹さんの死が堪えたようです。」
「いろいろ話を聞きました。」
「…好きなんですか。」
「うん。素敵な人です。紳士的だし、一緒にいると楽しいし。…それに、すごくたくましくて…」 声を止めるコール。
「…失礼しました。少し強く押しすぎましたね。」

ジムの壁に装置が設置されている。
ヘイズ:「我々がジュピター・ステーション※9で考案した、特別訓練システムだ。…10秒間でより多くの的に、命中させる。大尉。…挑戦するか。」
銃を受け取るリード。
ヘイズ:「下がって。…まずはレベル2 だ。」
空中に現れた的を撃っていくリード。次々と命中し、破裂する映像が映し出される。
だが外してしまうのも多い。ブザーが鳴った。
ヘイズ:「10秒間で 4つだな。…はじめはこんなものだ。…だが少し追加訓練を組んだ方がいい。レベル4 に上げろ。」
操作するコール。
的を撃ち抜いていくヘイズ。明らかにリードより速い。
不満そうなリード。
ヘイズ:「9個か。平均的なスコアだ。コール伍長はレベル4 で、14個の記録を出している。」
上級士官の方を見るコール。「ツいていただけです。」
ヘイズ:「では、どんどんやってみよう。レベル2 から、徐々に上げていく。次は誰がやる?」
タッカーが進み出た。視線を落とすリード。

食堂のタッカーはテーブルに座る。「あのシステムはなかなかだな。意外といい訓練になりそうだ。」
リード:「そうですか?」
「気にすんなよ。訓練すればすぐ上手くなるって。」
「的をヘイズの顔だと思って撃ったんです。」
笑うタッカー。「…そろそろ休戦しろよ。」
リード:「冗談でしょ? とことん闘いますよ。」
「まあ、俺がお前の立場でもそう言うけどな。」
「あいつは俺の地位を奪おうとしてるんです。」
「本気で言ってるのか?」
「そうとしか思えませんよ。」
「万全の備えを固めておきたいだけじゃないのか? …追加訓練は、別に悪いことじゃないだろ。」
「…もう、いいです。」
「わかったよ。…フン。」
「…ああそれより、何でアマンダとのことを隠してたんです?」
「…ただの友達だ。…みんなで観察してるのか?」
「目立ちますから。」
「トゥポルにも言われた。」
「トゥポルが彼女にマッサージやってるとか?」
「それが?」
「少佐の優しいタッチの後遺症ですか?」
「不調があるから治してる。それだけだ。」
「…何で少佐は、アマンダに神経マッサージをしたんです?」
「悪いか!」
「密着するもんらしいじゃないですか。ただの友達?」
「まさかお前…トゥポルとも、何かあると思ってんのか?」
「そういう噂も。」
「いいか。言っとくけどな、トゥポルともアマンダとも何もない。一切何もないぞ。」
「なるほど。…2人とも、友達ですか。」
「そうだ。」
「はあ。…じゃ別にそんな親密なものでもないんだな?」
「ああ。」
「だったら…俺もこの辺が痛いから…」
「もういい。」
笑うリード。

目を覚ましている異星人。肌のひび割れはひどくなっている。
アーチャー:「君は何かの実験台になっていたんだろ? …ポッドがあったあの星は何だ! 何が起きてる!」
フロックス:「鎮痛剤が切れてきた。」
ハイポスプレーを打とうとするフロックスの手を止めるアーチャー。「…まだ打つな。」
フロックス:「…しかし…」
異星人:『俺は無理矢理、実験台にされた。…俺がいたところは、あんたらとは…全く違う。別の次元の世界だ。』
アーチャー:「……続けろ。」
『何の実験かまでは知らない。』
「…とてもそうは思えんな。」
『ほんとだ。…俺は囚人だった。若い頃に罪を犯して、長い間ずっと刑務所暮らしをしてたんだ。…だが、ある日守衛に実験に協力すれば釈放すると言われて…ポッドに入った。でもその後のことは、何にも覚えてない。』
「君はポッドの装置につながれて、生理状態をモニターされていたんだ。心当たりもないと言うのか?」
『これは重要な実験なんだ。…俺を捨てるわけがない! …ポッドに戻せ…!』
「…それはできない。」
『戻らないと、俺は死ぬ。頼む。』 異星人の左手が、消え始めた。『こりゃ何だ。…どうなってるんだ!』

ワープ航行に戻ったエンタープライズ。
『航星日誌、補足。航行センサーの調整が済み、再び赤色巨星へと向かう。』
うつぶせになっているタッカー。「もう訓練は増えるし仕事は延びるしで、この時間を楽しみにしてたんだ。」
トゥポル:「起きて。」 タッカーと向き合い、首に手を伸ばす。
「…今日はおとなしいな。…まだアマンダのこと怒ってるのか?」
「怒っていません。」
「やっぱり怒ってる。」
「気のせいです。」
「…別にちょっと神経マッサージをしてやったぐらい、そんな気にすることないだろ。…まさか…」
「何ですか?」
「まさか、妬いてるのかなって。」
「私は嫉妬は、感じません。」
「似たような感じには見えるけどな。」
「あなたと、コール伍長のことは何とも思っていません。」
「いま声が上ずったぞ? ごまかせないよ。」
「あなたは声の抑揚の専門家ですか?」
「そうじゃなくてもわかるさ。…認めろよ。ほんとは妬いてるんだろ。」
「…私があなたに惹かれていると?」
「焼き餅焼くってことは、そういうことだろ?」
「…私が惹かれているというのは立場が逆です。」
「…俺が君に惹かれてるって?」
「あなたの口からそう聞きました。」
「そんなこと言った覚えはないぞ。」
「あなたのクローンです、シムにそう言われました。」
「…シムが?」
「私に惹かれていると。」
「そう言ったのか?」
「丁度その場所で※10。」
「ここで何してた!」
「声が上ずりましたよ?」
「声の専門家か。」
「そうでなくてもわかります。」
「…冗談だろ? 俺が、自分に…妬いてるって?」
「違いますか?」
「まさかそんなわけない。」
ため息をつくトゥポル。
タッカー:「…そうだな。…確かに、ちょっと…。」
トゥポル:「あなたは私に惹かれてる。…そういうことでは?」
「…シムと何した。まさか、二人で…」
トゥポルはいきなりタッカーにキスした。そのまま口づけを続ける。
着ていた寝間着を脱ぐトゥポル。背中が露わになる※11
トゥポルの身体を見るタッカー。「あ…。」
トゥポルはまた顔を近づける。

パッドを持ったフロックスに話しかける異星人。『あんたはほかの奴らとは違うみたいだな。』
フロックス:「…生まれた星が違うんです。」
『あんたたちはどこから、やってきたんだ。』
「私の故郷はデノビュラ星で、彼らの星は地球です。」
『…俺は死ぬのか。』
「最善を尽くしています。」
『いろいろしてくれて感謝してるよ。』
「休むといい。」 離れ、顕微鏡を使うフロックス。
だが突然異星人に後ろからつかまれた。首を絞められる。
異星人の腕がフロックスを通り抜け、フロックスは倒れた。腕を見つめる異星人。
壁に手を近づけると、そのまま突き抜けた。壁を通り抜けて医療室を出ていく。


※9: Jupiter Station
ENT第10話 "Fortunate Son" 「復讐の連鎖」など。今までは「木星ステーション」と訳されていましたし、それで構わないと思いますが

※10: ENT "Similitude" より

※11: 米国で放送された際、映像が修正されたそうです。予告編では脱ぐ途中でフェードアウトするものの、もっと下の方まで見えるようなアングルになっています。一説には「ジャネット・ジャクソン事件」のせいだとも言われており、DVD版、およびカナダやヨーロッパの放送では修正されていないということです。なお日本の放送では、どちらのバージョンなのか確認していません。DVD が発売されればはっきりするでしょうが、どうでもいいという気もします

ジムで鏡に向かって、シャドーボクシングしているリード。ヘイズが入ってきたのが見える。
リード:「やってかないのか?」
ヘイズ:「邪魔しちゃ悪い。」
「邪魔じゃないさ。ちょうど相手が欲しかったんだ。…やるか?」
制服を脱ぐヘイズ。「もちろん。」
戦いを始める。
ヘイズ:「ナイスブロック。…いいクロスだ。…コンビを使え。」 リードを投げた。「コンビが速くなったな。上達した。」
今度はリードが殴る。「左に隙があるぞ?」 笑った。
ため息をつくヘイズ。
リード:「おお、なかなかいいパンチだ。」 脇腹に命中させた。「上達した。」
リードはヘイズを床にねじ伏せた。「いいか、手ばかり見るな。相手の目を見るんだよ。」
立ち上がるヘイズ。「本気でいくぞ。」
リード:「ハハ、どうぞ?」
ヘイズはリードを倒した。「一つ聞きたい!」
リード:「何だ!」
「なぜ俺の仕事を邪魔する!」
起き上がったリード。「お前の仕事は戦闘技術を高めることで、保安部を乗っ取ることじゃない。」
ヘイズ:「そう思ってたのか。俺が地位を奪うと。」
「俺に命令されるのが我慢ならないんじゃないのか?」 リードは殴られてふらつく。
リードを蹴ったヘイズ。「命令されるくらい何ともない。」 回し蹴りで倒す。「サバイバル訓練※12を積んで、精神も鍛えたんだ。」
血をぬぐうリード。
ヘイズ:「いいスパーリングだったよ。」 制服を持ち、出ていく。
リード:「待て!」 廊下に向かって飛び込んできた。肘でヘイズを殴る。
通りかかったクルーが覗き込む。
リード:「配置に戻れ!」 殴り飛ばされた。
そのまま去るクルー。
組み合うリードとヘイズ。リードはヘイズを投げた。
倒れたままのヘイズ。「今のは。」
リード:「…クリンゴンの技を使ったんだ。」
うなずき、またファイティングポーズを取るヘイズ。
リードも構える。
ブザーが鳴り、アーチャーの声が響いた。『戦術警報。上級士官は配置につけ!』
走っていく 2人。

相部屋のクルー。突然火花が散った。
壁を突き抜けてきた異星人が、クルーを気にすることもなくそのまま歩いていく。

ブリッジのトゥポル。「システムを妨害して進んでいます。跡をたどりましょう。」 暗くなる。「これは第2中継機です。」
アーチャー:「Bデッキだな。」
「A-1 と A-3 隔壁の間です。」

薄着のままのリード。「現在地はアクセスチューブ、17-B です。」 ヘイズたち MACO もいる。

トゥポル:「…そちらに向かっています!」

リード:「どっちから来ますか。」
そばのコンピューターを突き抜け、異星人が現れた。リードとヘイズは武器で撃つが、通り抜けてしまう。
異星人はそのままドアの中へ消えた。

アーチャー:「現れたか。」
リード:『武器は全く効きません。中心部に向かってます!』 走る一同。

アーチャー:「アーチャーより機関室。」

タッカー:「タッカーです。」
大きく火花が散った。身構えるタッカー。

リードは機関室に入った。タッカーが倒れている。
ヘイズ:「いたぞ!」 異星人を撃つ。
リードもフェイズ銃を使うが、効果がない。
ワープコアの上に登る異星人。そして手をリアクターの中に入れた。
あちこちで火花が散る。吹き飛ばされる MACO。

トゥポル:「磁気抑制が弱まっています。」

声を上げる異星人。リードたちも揺れに耐えられない。
リード:「プラズマコイルの極性を反転させろ。フィードバック・パルスを使う。バルブを左一杯に回せ!」 ワープコアに近づく。
ヘイズ:「わかった。」 火が巻き起こっている。
操作し、うなずくヘイズ。
リード:「これでも耐えられるかな?」 異星人と目が合う。
音が響き、異星人の腕から伝わった白い光が全身に広がる。苦しむ異星人。
身体全体が明滅する。爆発し、異星人はワープコアの上から落ちた。
意識を失った異星人に、MACO が武器を向ける。ヘイズと顔を見合わせるリード。

通常航行中のエンタープライズ。
タッカーは食堂に入った。トゥポルに近づく。「おはよう。」
トゥポル:「どうも。」
カップを機械に置くタッカー。「コーヒー。濃いの。…お疲れ。」
トゥポル:「お疲れ様。」
ため息をつき、トゥポルを見るタッカー。席につく。「…エンジンを壊したのはある意味、マルコムの方だよ。」
トゥポル:「修理にかかる時間は。」
「…早くて一日だ。…あのさ。昨日のこと、話した方がよくない?」
「報告は受けました。」
「あいや…そうじゃなくて。昨日の、俺たちのこと。…君の部屋で……俺から言おうか? …ああ……やっぱり先に言って…。」
「…あなたには感謝しています。」
「…感謝なんていいよ。」
「地球人の、性の実体を理解させてくれました。」
「…よく、わからないんだけど。」
「…地球人についてはいろいろと学んできましたが、性的な関係は初めてでした。」
笑うタッカー。「もしかして昨日のことって、ただの…実験なわけ?」
トゥポル:「そうは言っていません。」
「でもそういうことだろ?」
「…感情的ですね。」
「違う、ただ実験用のネズミと一緒にされたくないだけだ。」
「…気分を害したなら謝ります。」
「…いいさ。それじゃあ、昨日のことは誰にも言わないでおこう。…なかったことにした方が、いいかもな。」
「そうですね。」
「…だけど、マッサージは続けられるよな。」
タッカーはトゥポルを見る。トゥポルはカップに口をつけたまま、目だけを逸らした。

作戦室のアーチャー。「診断によれば網膜剥離だそうだ。」
ヘイズと並んで立っているリード。ひどい怪我だ。
アーチャー:「お前は腎臓損傷。」
無言のヘイズ。
アーチャー:「…我々は未知の領域で、地球を守るために旅をしている。周りは敵だらけで、いつ何時攻め入られるかもわからない! そんな時にまるで子供じみた下らんケンカで、上級士官 2人が医療室に運ばれるとはどういうことだ!」
リード:「船長…」
「どっちが先だろうと関係ない! なぜ殴り合いになったのかは知らないしそんなことはどうでもいいが、とにかくすぐに問題を解消しろ! …今すぐに! これは命令だ!」
ヘイズを見たリード。「…問題はありません。」
ヘイズ:「解決しました!」
アーチャー:「……訓練はどうだ。」
ヘイズ:「順調です。」
リード:「万全です。」
呼び出しが入った。
アーチャー:「アーチャーだ。」
フロックス:『医療室に来てください。彼が目を覚ましました。』
「すぐ行く。」 出ていくアーチャー。
リード:「……下がっていいのかな。」

MACO がいる医療室に入るアーチャー。
フロックス:「対処のしようがありません。」
異星人を見るアーチャー。その姿は揺らめいている。
アーチャー:「自分の意思でここへ来たんだな? 自分の任務が何か知ってるはずだ! …お前たちの目的は何だ! …船を破壊しようとしたのは、なぜだ!」
異星人は微笑む。
胸元をつかんで引き寄せるアーチャー。「答えるんだ!」
異星人:『ズィンディが地球を破壊すれば、後は俺たちの思うままだ。』 そのまま消滅した。
アーチャーは、ベッドを叩いた。


※12: 原語では「月で」と言っています

・感想
スタートレックに限らず長く続くドラマには、「こういう話があるから見るのをやめられない」というような、珠玉の名作が時々あるものです。今回の話は言ってみれば、「こんな話があると見るのをやめてしまう」エピソードかもしれません。アイデアの寄せ集めとしか思えないトリプルストーリー、予告編でもあからさまに使われている視聴者サービス、長々続くダラダラした会話、スタントまで何人も使って頑張った割にはさっぱり印象に残らない各種格闘シーン。マニー・コトも関わっていますが、原案はバーマン&ブラガの総指揮コンビです。"Carpenter Street" 「デトロイト2004」もそうでしたが、本国では "B&B" と呼ばれるこの二人、脚本家としての能力は地に落ちたという思いさえしてきます。
原題の「兆し」は、打ち切りの兆しだったんですかね。打ち切られたのはいろいろ理由があるでしょうけど、一番は「面白くない」からでしょう、単に。


dot

previous第66話 "Stratagem" 「策略」 第68話 "Doctor's Orders" 「フロックス船長の孤独」previous
USS Kyushuトップ | hoshi.sa.to | ENT エピソードガイド