ディープスペースナイン エピソードガイド
第123話「プレゼント大作戦」
In the Cards
イントロダクション
※1シスコの部屋でディナーが取り行なわれている。給仕を務めているのはジェイクとノーグ※2。だがシスコをはじめ、招待客たちの顔は一様に暗く、話も弾んでいない。テンアンモン※3が夕べ、カーデシアとの境界で消息を絶ったそうですねというオブライエン。ここ3週間で3隻目ねと言うキラ。じき船がなくなると言うベシアに、冗談はやめてという。冗談じゃないさ、宇宙艦隊司令部がドミニオンの脅威に対して何か手を打たない限り状況は悪くなるばかりだろうと言うベシア。ならどうしろって言うの、戦争と聞くキラ。シスコはうんざりし、話題ならほかにもあるだろという。オブライエンに、キラヨシ※4はどうだ、歩けるのかとオブライエンに尋ねる。いいえ、歩けるにはまだ、とだけ答えるオブライエン。オドーに来週ベイジョーへ行くんだろ、モーラ博士※5に会ってこないのかと聞くシスコ。オドーはベイジョーには行くのは取り止めにしたことを話し、DS9では医療物資や備蓄食料が盗まれる事件が75%も増加したという。こういう状況はあれ以来だという。いつだいと聞くオブライエンに、オドーはカーデシアがこのステーションを放棄する直前と同じなんですと言った。酒を飲み干したベシアは、そろそろ失礼しますといって席を立った。オブライエン、キラ、オドーも帰っていく。おやすみ、よく休んでくれというシスコ。壁にかけられた骨董を見ていたウォーフにも、引き取って構わんぞという。みんな帰ったことに気づいたウォーフは、わかりました、失礼といい出て行くウォーフ。片づけを始めようとするジェイク。だがシスコは私がやる、しばらく一人にしてくれと言った。失礼しますといい、ノーグは出ていく。ジェイクはシスコにキスをして、部屋に戻った。続いて司令室のキラから通信が入る。カイ・ウィンが明日の朝ステーションに来て、会いたいと言っているという。会うと伝えろというシスコ。しかし頭を抱えるのだった。 クワークの店のカウンター。お招きありがとな、すごく楽しかったぜというノーグ。父さんの表情みたかい、隠そうとしてたけど落ち込んでたなというジェイク。大佐だけじゃない、ステーション中が落ち込んでる、みんな不安なんだというノーグ。父さんはどんな時でも周りを励ましてた、みんなピンチには父さんを頼るんだというジェイク。でも誰が父さんを励ますんだろうという。お2人さんも明日の12時にはぜひ来てくれよなといい、クワークが話しかけてきた。何でというジェイクに、聞いてないのか、明日うちでオークションがある、珍しくて価値のある骨董品がたくさん並ぶという。欲しい物があったらベッドの下に貯め込んでるラチナムを持って競りに来いと、パッドを渡すクワーク。周りを見て、シーというノーグ。まさかほんとにベッドの下にあるのかと聞くと、ノーグはもちろん違うよと一応答えた。どこから集めてきたんだいと聞くジェイク。俺は少しの手数料でオークションを仕切るだけさ、品物はここから1光年離れた場所で漂ってた古い貨物船の物だというクワーク。ありとあらゆる分野の物が揃っている、骨董的価値も高い、アンティークやら絵画やら乗り物やらという。ノーグはガラクタだと笑い、多少ヒビのある24世紀中頃のロミュランのセラミック製の洗面台、年代の知れないテレル化合物の靴、20世紀中頃の地球のベースボール・カード※6、ボリアンのテーブルの脚と読み上げる。それを聞いてパッドをひったくるジェイク。映っているのは1951年のウィリー・メイズ※7のルーキーカードだ。完璧だよ、これなら父さんの元気も出るとジェイクは言った。野球好きだろ、これを見たら喜ぶぞという。明日12時だって伝えておいてくれ、オークションには誰でも参加できるというクワーク。ジェイクは僕が競り落とす、たまには僕が父さんを助けてあげなくっちゃねという。これなら簡単だ、カードを競り落とすだけだもんなと言った。 |
※1: ウォーフ役のマイケル・ドーン初監督です
※2: Nog
※3: U.S.S. テンアンモン U.S.S. Tian An Men
※4: キラヨシ・オブライエン Kirayoshi O'Brien
※5: モーラ・ポル博士 Dr. Mora Pol ※6: ベースボール・トレーディングカード baseball trading card
※7: Willie Mays
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本編
ジェイクとノーグの部屋。いいだろと頼むジェイクに、嫌だと答えるノーグ。僕の金だぞ、競りたいなら自分の金でやれという。僕は地球人だぞ、金はないというジェイク。お前の種族が自己を向上させるとかだという哲学に乗っ取って、貨幣経済を廃止したのは僕のせいじゃないというノーグ。ジェイクは言い過ぎだぞ、僕たちの方針は正しく、労働の目的は自己向上と人類愛だという。どういう意味だと聞かれ、つまり金は必要ないってことさというジェイクに、それなら僕の金だって必要ないだろと笑うノーグ。何本ラチナム持ってると尋ねるジェイクに、しぶしぶながらも5本だよと答える。5本もあるのかと驚くジェイク。必死に貯めた金だ、ベースボール・カードのために使われてたまるかいというノーグ。ジェイクは立ち上がって後ろを向き、何て恩知らずなんだと言い出す。宇宙艦隊アカデミーに入れたのは誰のおかげだという※8。そりゃずるいというノーグ。ジェイクは構わず、四面楚歌のお前を信じてくれた人を、僕には信じられないという。ベッドの下の箱にラチナムを貯め込む方が、大運ある人を喜ばせるより大事だなんてという。ついに、わかったよ、貸してやるよとノーグは言った。ありがとう恩に着るよ、さすが親友だ、金はどこだいというジェイク。地球人って奴はとつぶやくノーグ。 ※9ベイジョーの船が着艦した。司令室にやってきたのは、カイ・ウィン※10とキラだ。ディープスペースナインへようこそというシスコに、ありがとうございますというウィン。キラにもう行っていいわという。失礼しますといい、部屋を出ていくキラ。少し歩きませんか、お嫌かしらとウィンは言った。 プロムナードの2階にいる2人。どうかしましたかと聞くシスコ。どうもしませんけど、あそこに店がありましたね、おかみさんがベイジョーのタペストリーやアンティークを売っていたというウィン。カンドラ・ヴィルク※11なら2ヶ月前にコリダン※12星系の中立国へ行きましたというシスコ。ここ何ヶ月かで大勢の人がDS9を出て行きましたね、時には見捨てられたような気持ちになることもあるのではないですかとウィンは言う。申し訳ありませんがが、忙しいので御用件を早くおっしゃって下さいというシスコ。ウィンはドミニオンの代表とここで会う約束なんですと言った。どういう目的でと聞くシスコに、わかりません、向こうから会いたいと言ってきたのですというウィン。反対ですかと聞かれ、ドミニオンは陰謀・策略にかけては悪名高いですから心配ですねというシスコ。そういう駆け引きなら私もまんざら素人ではありません、今ベイジョーは微妙な立場にいますというウィン。惑星連邦とドミニオンとの対立はいつ戦争が始まるかもしれないほどになっています、一つ間違えればベイジョーは滅んでしまうかもしれませんという。確かにその意見には同感ですが、ベイジョーを守るために全力を尽くす、それだけは約束しますというシスコ。ウィンはうなずき、預言者たちの御加護をといい歩いて行った。 オークションが行われている。みなさんよろしいですが、延べ棒1枚に板3枚、そちらのレディに偶発主義※13の後でマトーイアン※14の前の時代の、こんな素晴らしいブロンズの彫刻を持って行かれてもいいんですかというクワーク。めったに手に入りませんという。ボリア人が手を挙げた。棒1本板4枚であなたのものです、クリンゴンの御家庭にもぴったりですとクリンゴン人の女性にいう。お忘れなく、今回の収益金はベイジョーの戦争孤児基金へ寄付されます、手数料は除いて、戦争で親を亡くしたかわいそうな子供たちが皆さんの援助を期待しているんですと話す。首を振るクリンゴン。仕方ない、延べ棒1枚に板3枚で、そちらのお顔の青い紳士のお買い上げというクワーク。パラパラと拍手が起こる。次の品物はロット48、前スラック※15時代のヴァルカンの腕輪が入ったアンドリアン※16のチェスト、6世紀のベイジョーのマンダラ※17、23世紀のイオントランステーター、1951年の地球のウィリー・メイズのベースボール・カードだ。ではまずラチナムの延べ棒1本から始めましょうというクワーク。早速ジェイクが棒1本と声を上げる。だがクワークが棒1本板5枚というと、後ろに立っていたベイジョー人のヴェデクが手を挙げた。心配するな、棒2本で引き下がるさとジェイクに言うノーグ。何でわかるんだと聞くジェイクに、フェレンギ人だからさという。棒1本板10枚に手を挙げるノーグ。1本15枚にうなずくヴェデク、そして1本20枚で受けるノーグ。しかし、別の男※18が棒2本だと言った。一斉に客がその男を見る。棒2本板5枚ではといわれ、ヴェデクはあきらめた。いったろと耳打ちし、手を挙げるノーグ。男は棒3本だといった。ジェイクは負けじと棒4本という。驚くノーグ。だが男は、棒10本という。これはこれは、棒10本のお声がかかりましたというクワーク。どうすればいいと言うジェイクに、あきらめろ、もう金がないというノーグ。クワークはジェイクにまだ続けるかいと声をかけるが、あきらめるしかない。落札、そちらの紳士のお買い上げというクワーク。男はすぐに店を出ていった。ロット49、20世紀の地球人類文明を代表する素晴らしい絵画ですというクワーク。ベースボール・カードは箱の中にしまわれ、持っていかれてしまった。キャンバスには黒いヴェルヴェット※19を使用し、アクリル絵の具で描かれたこの絵は元々火星植民地※20の旗として使われた物です、とクワークが説明を続ける。 |
※8: DS9第60話 "Heart of Stone" 「可変種の定め」より ※9: 名称不明のシャトルのほか、イェーガー級 (イントレピッド級変形) の船が見えます
※10: Kai Winn ※11: Kandra Vilk
※12: Coridan
※13: Eventualists
※14: Matoian
※15: Surak
※16: アンドリア人 Andorian ※17: mandala ※18: (ブライアン・マーキンソン Brian Markinson TNG第165話 "Homeward" 「滅びゆく惑星」のヴォリン (Vorin)、VOY第13話 "Cathexis" 「幽体離脱」などのピーター・ダースト (Peter Durst)、第14話 "Faces" 「二人のトレス」のスラン (Sulan) 役) ※19: ヴェルヴェット絵画 velvet painting
※20: Martian Colonies |
カードを欲しかったのはわかる、でも仕方がないというノーグ。新しい靴とか、ほかの物でも元気付ければという。靴というジェイク。どこが悪いと聞くノーグに、悪くはないけど無意味だ、あげたいのは普通の物じゃなくて特別な物なんだというジェイク。ウィリー・メイズのカードをあげたい、これは天命だよという。あのカードは父さんに渡る運命なんだというジェイク。ベースボール・カード1枚にそこまで思い入れなくてもいいと思うというノーグ。カードなんかじゃない、思い入れてるのは父さんだよとジェイクはいった。困った時いつでも励ましてくれた、今度は僕が励ます番だという。喜ばせたい、頼むよ、あのカードが欲しいんだというジェイク。ノーグはうなずき、わかった、当たって砕けろだなといった。 落札した人たちが、品物を受け取っている。モーンは先ほどの絵を買ったようだ。箱を抱えて出てきた、あの男に声をかけるジェイクとノーグ。お話があるんですがというジェイクに、誰の手先だと聞く。違いますというジェイク、ビジネスのことでご相談をというノーグ。興味ないねという男。話を聞いてもいないのにというジェイク、ベースボール・カードを買いたいんですというノーグ。何も悪いことはしていないんだから、君たちに付きまとわれる覚えはない、法律も破っていないという男。自然の摂理は破るがと言った。だから私には近づくなといい、ターボリフトに乗ると居住区へ行くように命令した。閉まる扉。 ドミニオンの戦艦が到着した。出迎えるシスコ。エアロックから降りてきたのは、ジェムハダーを護衛に付けたヴォルタ人、ウェイユン※21だった。シスコ大佐、またお会いできて言葉にできないほど嬉しいという。私はそうでもないというシスコ。ウェイユンは笑い、冗談を言うなら機嫌がいい証拠だ、私たちの関係もやっと対立から友情へ発展してきたみたいですねという。違う、誤解するといけないからはっきり言っておく、私はドミニオンもドミニオンの目指すものも君も嫌いだとシスコは言った。お愛想を言うのはやめて、仕事の話に入ろうという。今の言葉でどんなに傷ついたか、私はディープスペースナインも好きだしあなたも好きなんですというウェイユン。カイ・ウィンと話がつけばこれからはあなたと頻繁に会えるようになりますからねという。歩き出すシスコについていくウェイユン。 レプリマットにいるジェイクのところに、ノーグが駆け寄る。連絡があったぞという。落ち込んでいるジェイクは、誰と聞く。ベースボール・カードを買ったガイガー博士※22さ、部屋に来てくれって、取り引きに応じてもいいといっているという。嘘だろというジェイク。1時間前にメッセージが入ってた、18時に部屋に来てくれというメッセージが入ってたというノーグ。後10分だ。すぐに向かう2人。 廊下。お前はだまってろ、交渉が下手だからなというノーグ。黙ってみてろ、取り引きのプロに任せろと笑う。ドアを開けて中に入った。 2人は中を見渡した。そこにはところ狭しと、何やらわけのわからない機械がたくさん並べられている。早く中に入ってくれ、精密だから機械には触らないようにというガイガー。君たちのことは調べた、シスコ大佐の息子さんとバーのクワークの甥子さんだねという。私は昔ながらの死生観に固執するグループから、何度も命を狙われているものでねというガイガー。その手先でないとわかった以上、ウィリー・メイズのベースボール・カードを譲ってもいいという。喜ぶ2人。オリジナルパッケージはついていなかったがというガイガーに、結構です、では値段の交渉に入りましょうというノーグ。だがガイガーはお金では売らないといった。カードが欲しいなら、ここにある物を揃えてきてくれと言いパッドを渡す。そこに書かれていたのは「生理的食塩水内に存在する嫌気性細菌の代謝産物※23」を2リットル、「ネオジミウムパワーセル※24」などだった。こんなものどこで手に入れるんですというジェイク。司令官の息子と士官候補生ならなんとかなるだろう、私みたいな一般人には無理でもねというガイガー。こんなにたくさん、すぐには無理ですというジェイク。ノーグは待って下さいといい、これで何をするつもりなんですと聞いた。どういう目的で使うかわからないのに、機器類や医療物資を渡すわけにはいきませんという。それもそうだな、では2人に一つ質問をしよう、君たちは死にたいかとガイガーは聞いた。いいえと答える2人。当然だ、死体となって棺に納められ土に埋められなければならない、またなぜ気化されガスとなって宇宙に吹き飛ばされなければならないというガイガー。そんな必要はない、私は全生涯を死の研究に捧げてきた、そしてわかったのは死とは細胞が退屈する結果だといった。顔を見合わせるジェイクとノーグ。細胞は君が生まれてから、単調で同じ仕事を毎日続けていると話すガイガー。代謝して分裂、誰だって飽きてしまう、そしてある日細胞は嫌になってしまう、つまり死ぬほど退屈しきった細胞は文字通り死んでしまうという。君も死ぬわけだと言った。またえらく斬新な理論ですねというノーグ。死の謎に最初に迫ったのはアンドロス3号星※25のバスキン博士※26だった、細胞を飽きさせないためミトコンドリアからヒントを得たゲームを細胞に教えたというガイガー。だが博士は研究が完成する前にシャトルの事故で亡くなった、表向きはねという。昔ながらの死生観に固執するグループは研究を妨害した、私は運命を告げる鐘が響き渡るのを聞いたというガイガー。それから15年研究を続け、科学者仲間からは馬鹿にされ異端児扱いされながら、必要な材料を集めるため銀河中を駆けずり回ったという。おいてあるカプセルに触れ、これだ、細胞を覚醒させるためのエンターテイメントカプセル※27だと言った。その働きはと聞くジェイク。よく聞いてくれた、このカプセルは生命維持に不可欠なエネルギーをクロモエレクトリック波長で伝達することで全ての細胞の核に若返りの刺激を与えるように設計されている、毎日8時間カプセルに入れば細胞は退屈しなくて済むというガイガー。老化せず、その結果死ぬこともないわけだという。この不老不死こそが私の長年の研究の目的だとガイガーは言う。相談していいですかと聞くジェイクにもちろんだという。少し後ろに戻り、どう思うとノーグに聞くジェイク。わからない、細胞科学の専門家じゃないし、でも正直言ってまゆつばものだよというノーグ。それらしい説明だったけど細胞のエンターテイメントだ、どうかしてるよなというジェイク。でも博士はカードを持ってる、研究を手伝わなくちゃという。やめておいた方が無難だぞというノーグ。父さんをがっかりさせる気かというジェイクに、何を言ってる、大佐は何も知らないんだぞというノーグ。おかしいよという。僕は正気だ、少し思いつめてるだけさというジェイク。少しかと聞くノーグだが、ジェイクはガイガーにわかりましたと言った。やりますといい、手を差し出すジェイク。握手で数え切れない細菌が移るんだぞ、殺す気かというガイガー。承知ならうなずいてという。ジェイク、ノーグとも首を縦に振った。 |
※21: Weyoun DS9第117話 "Ties of Blood and Water" 「父死す」以来の登場 ※22: Dr. Giger ※23: anaerobic metabolites
※24: neodymium power cell ※25: Andros III ※26: Dr. Bathkin ※27: cellular regeneration and entertainment chamber |
仕事をしているオブライエン。カーデシアのフェイズコイルインバーターの、ネオジミウムパワーセルが欲しいんですけどどこにあるか知ってますと尋ねるジェイク。随分変わった部品だな、何に使うんだというオブライエン。実はパワーセルと交換でというノーグだが、ジェイクは内緒なんですという。古いやつがどこかにあるが、悪いが今は探してる暇はないと歩いていくオブライエン。何いってるんだ、大佐にプレゼントをあげるから探してるって言えばいいだろというノーグ。内緒にして驚かせたい、言ったらおしまいだ、チーフに言えばチーフからケイコ、ケイコからダックスというジェイク。理由を言わなきゃ助けてくれっこないだろというノーグ。見てろ、人と取り引きする時は相手の心を動かすことが大事なんだという。今仕事のほかにやりたいことありますかとオブライエンに尋ねるノーグ。たくさんあるさと答えるオブライエン。たくさんって言っても、特にしたいことがあるでしょう、ホロスイートへ行くなんてどうですというノーグ。いいねえというオブライエン。カヤック※28で急流下りなんていかがです、何週間もカヤックに乗ってないですよね、誰にも邪魔されず、仕事から解放され、ただ一人川に挑むと話すノーグ。オブライエンは仕事の手を休め、それを聞いている。デッカー※29が病気にならなきゃいまごろそうしてたが、しかしこのEPSレギュレーターを調整し直さないことには、ステーションの人工重力グリッドに支障が出てくるんだというオブライエン。でもほかの人がやったらだめなんですか、たとえば僕らとかというノーグ。代わってくれるのかと聞くオブライエンに、もちろんですというジェイク。深く考えないで、カヤックに乗ってらっしゃいというノーグ。ありがとう助かるよといい、道具を渡すオブライエン。パワーセルですけどというノーグに、場所はすぐわかると思う、部屋に届けておくよといった。どうぞよろしくというジェイク。ノーグはお前が調整、俺がスキャンだと言った。作業にかかる2人。 医療室。生理的食塩水内に存在する嫌気性細菌の代謝産物を5リットル、何に使う気なんだと聞くベシア。それは言えないんです、ある人へのプレゼントでというノーグ。飲まないんだろというベシアに、まさか、飲まないとは思いますけどというジェイク。今は忙しいんだよと言うベシア。一つお聞きしていいですか、今仕事のほかに何かやりたいことありますと尋ねるジェイク。だがベシアは一言、ないと言った。5ヶ月前に始めたリサーチの結果がまとまりそうなんだ、今はこの仕事に集中してるんでねという。ジェイクが聞いたのはドクターの顔が暗いからですよというノーグ。確かに最近ちょっと落ち込みがちかもしれないなと言うベシア。そこでお聞きしますが、もしこれをもらえたら嬉しいなというものがあるとしたら、何でしょうかと聞くノーグ。わからんねというベシアに、一つくらいあるでしょうという。クカラカ※30だ、とベシアは言った。何ですというジェイクに、クカラカだ、リータが気に入って持って行ったんだが、ずっと返してくれなくてねという。クカなんですというノーグに、クカラカだ、取り返してくれたら生理的食塩水内に存在する嫌気性細菌の代謝産物5リットルは用意してあげようというベシア。お聞きしたいんですが、クカラカって何ですというジェイク。 テディベアを抱いて、リータ※31が部屋で寝ている。ノーグはゆっくりと手を伸ばし、そのクカラカを取ろうとする。だがなぜかリータはノーグの手をつかんだ。ノーグはリータの耳に息を吹きかけた。そして動いた隙にクカラカを取り上げる。コンジットの穴から出ていくノーグ。 ウィンに飲み物を渡すシスコ。ウェイユンから驚くべき提案がありました、ドミニオンはベイジョーと不可侵条約を結びたいというのですというウィン。ベイジョーを連邦から切り離そうとしていますというシスコ。失礼ですがそれはあなたがなさったことでしょう、6ヶ月前にあなたはベイジョーは連邦に加盟しない方がいいとおっしゃったというウィン。お忘れですか、ベイジョーは自立すべきだと、おかげで孤立していますという。ベイジョーが連邦の一員ではなくても、宇宙艦隊はベイジョーを守りますというシスコ。侵略を黙ってみているようなことはしないのでご安心をというと、一人のジェムハダーにもベイジョーの土を踏ませないと約束してくれますかと聞くウィン。艦隊の全兵力で私たちの星を守って下さいますか、ほかの星を犠牲にしてもという。例えばヴァルカンや、アンドー※32や、ベレンガリア※33や、あるいは地球が危うくなったとしてもというウィン。約束はできないというシスコ。当然でしょうね、私の迷いもおわかりでしょうというウィン。連邦と同盟しドミニオンと対立の道を選べば、戦争になった時まっさきに攻撃されるかもしれないという。しかし連邦を捨てドミニオンに走れば、ドミニオンの属国にされてしまうかもしれないというシスコ。できればどちらも避けたいのです、預言者たちにも聞いてみたのですがまだ祈りに答えはありませんというウィン。来る前に知恵の発光体※34を訪れましたが、何も言ってくれませんでしたという。あなたは選ばれし者です、ベイジョーが苦難を迎えた時私たちを導くために遣わされた方です、私はどうすべきか教えて下さい、どうしたらベイジョーを救えるのかとシスコにいった。私の意見ですかというシスコに、うなずく。時間稼ぎです、とりあえずウェイユンには帰国して閣僚と相談してとか、熟慮して返答するとかいえばいいというシスコ。とにかく時間を稼ぐんですという。時間、何の時間というウィン。わかりませんが、今は平和ですというシスコ。戦争になるまではベイジョーの選択肢が多い方がいいという。私に対して不満をお持ちなのは承知しています、だが今回は私を信じて下さいとシスコは言った。ウィンはシスコの耳をつかみ、そして離した。選ばれし者よ、運命をあなたの手に委ねましょう、預言者たちと共に歩みましょうといい、ウィンは部屋を出て行った。 大きな機械を部屋に運んできたジェイク。カプセルが開き、中からガイガーが出てきた。細胞がリフレッシュされ、まあまあいい気分だ、しかし5時間では足りなかったようだという。頼まれた半分は揃いましたというジェイク。よしいいぞ、代謝産物はどうしたというガイガー。もうすぐ手に入ります、クマを取り戻したのでというジェイク。話せば長いという。機械から部品を取り、自分の装置に取り付けるガイガー。不気味な低音が鳴り始めた。いい音だろ、これが不老不死の音だというガイガー。 その時、上の部屋ではジェムハダーが床を調べていた。床に耳をつけ、下の部屋で何をしているんだというウェイユン。 ジェイクたちの部屋。パッドで考え事をしているジェイク。オペラが大音量で聞こえている。ノーグ、いい加減にしろ、仕事しているというジェイク。ウォーフのオペラを全部調べて、ハーモニーに歪みがないかどうか調べてるんだというノーグ。音を小さくしろよ、キラが農業代議員大会でするスピーチを書いてるところなんだというジェイク。ウォーフが聞く音量の82デシベルで聞けっていわれてる、だけどなぜディファイアントのエレクトロプラズマコンジットが2メートル必要かを正直に話せば、すぐに譲ってくれるだろうから静かにできるんだろうけどねというノーグ。話すわけにはいかないといい、ジェイクはオペラを止めた。聞いてくれないかといい、パッドの文章を読み始める。「ご紹介ありがとうございます。また大会にお招き頂きありがとうございます。水資源の開発という問題はみずみずしい気持ちで論じていくべき議題だと思います。」面白いだろといわれ、ノーグはいやといった。そしてまたオペラを流す。ちょっと聞いただけさというジェイク。 いろんな部品を持って通路を歩いてくる2人。ガイガーの部屋のチャイムを押すが、返答がない。どうせまた細胞エンターテイメントカプセルに入ってるんだろというノーグ。ジェイクはロックされてないことに気づいた。ドアを開けると、部屋の中には何もなかった。 |
※28: kayaking オブライエンの趣味。DS9 "Heart of Stone" など ※29: Decker
※30: Kukalaka
※31: Leeta ※32: Andor
※33: バレンガリア Berengaria
※34: Orb of Wisdom |
ガイガー博士と言う人がその部屋に泊まっていたという記録はありませんというオドー。いたんだよというジェイク。昔ながらの死生観に固執するグループに捕まったのかもしれないというノーグ。誰ですってというオドー。僕たちも知らないけど、ガイガー博士の細胞エンターテイメントカプセルを狙ってるらしいというジェイク。何ですってというオドー。体の細胞が退屈しないようにする機械なんだ、ミトコンドリアのゲームを教えて楽しませれば細胞は死なず、人間も永遠に生きられると説明する。ははあとうなずくオドー。 保安室を出る2人。オドーは虚偽の通報で捜査妨害したとして、本気で僕たちを起訴する気かな、アカデミーに知れたらまずいというノーグ。脅かしただけだろというジェイク。ジェイクは2階を見上げ、ノーグ見ろよという。カイ・ウィンだ、話してる相手を見ろよという。オークションでジェイクたちと対決したヴェデクだ。何を考えているんだ、俺は協力しないからなというノーグ。わからないのか、ヴェデクがあのロットを競ったのは古いベイジョーのマンダラがあったからだというジェイク。カイに命令されたが、でも競りに負け、カイは激怒しただろう、カイ・ウィンは怒らせると恐い人だからねという。何が言いたいんだ、マンダラを手に入れるため博士を誘拐したって言うのかというノーグ。つじつまはあってるぞというジェイク。やっぱりどこかおかしいよというノーグ。行こうというジェイクに、どこへ行くんだという。地球のことわざを一つ教えてやろう、「虎穴にいらずんば虎児を得ず」というジェイク。虎だの、ガイガーだの、クマだのというノーグ。ウィンはヴェデクと別れた。逃がすかいというジェイク。 廊下を歩いているウィンとウェイユン。今回の話し合いが実りあるものになることを祈っていますというウェイユン。ところで、お帰りになったら首相にお会いになって、不可侵条約締結を勧めて頂けますかと聞く。何を勧めるかはここではまだ口にできません、ご理解下さいというウィン。もちろん理解しています、出過ぎたことをお聞きしてというウェイユン。共通の利益があることを認識しただけで今は十分です、それにしても私たちはとてもよく似ているという。ウィンはウェイユンの耳をつかみ、いいえ、どこも何一つとして似ていませんといい歩いて行く。苦笑いをするウェイユン。 ウィンが歩いていった先には、険しい顔をしたジェイクとノーグが待っていた。私に何か用ですかと聞くウィン。話がありますというジェイク。 カイ・ウィンが強盗と誘拐を働いたと、と怒るシスコ。そうは言わなかったよというジェイクに、ほのめかしただけかという。その通りですというノーグ。冗談を言ったつもりか、全然おかしくないぞというシスコに、すみませんという。事情を詳しく話してもらおうかというシスコ。そもそもはクワークおじのバーでオー…といおうとするノーグをさえぎり、2人で飲みすぎて酔っ払ったんだというジェイク。嘘をついても仕方ないだろとノーグに言う。大佐、違います、僕のいうことが本当ですというノーグ。候補生、気を付けというシスコ。酔っただと、お前たちのことは信用していたのにひどく裏切られた気分だ、追って指示があるまで自室謹慎を命じた。下がってよろしいというシスコ。 何で嘘をついたんだというノーグ。カードのことを知られたくなかったんだというジェイク。そりゃそうだ、言えば大佐はきっと許してくれたろう、大佐のためにがんばっている僕たちに感謝感激してくれたろうというノーグ。でもそれじゃ困るんだもんなという。2人はターボリフトに乗り、居住区へ行くように命じるノーグ。 カードが手に入れば誤解は解けるよというジェイク。友人としてはっきり言うけど常軌を逸している、もうちょっと考えてくれというノーグ。カードにのめり込みすぎだという。その瞬間、2人は転送された。 転送先の部屋。何が起きたんだというノーグ。そこには銃を持ったジェムハダーたちがいた。 |
ドミニオンの戦艦。ウェイユンが部屋にやってきた。ノーグとジェイクの前に座る。私馬鹿に見えますと尋ねるウェイユン。首を振る2人に、わかっているなら結構、君たちとエライアス・ガイガー博士※35との関係はどういう性質のものですかと聞く。他人ですよ、父のために博士のベースボール・カードが欲しかったんですというジェイク。父はステーションの司令官でしてという。お父上なら知っています、それからというウェイユン。それだけです、研究に必要なものを集めてくれば、カードを譲ってやるっていわれてというジェイク。ものは揃えたんですが、博士は3時間前に姿を消してしまってという。ウェイユンは部下のジェムハダーに合図した。部屋を出ていくジェムハダー。それじゃ君たちがこの22時間にしたことは何の罪もないというのですかというウェイユン。私の部屋の真下でガイガー博士が分極素粒子※36を使った実験をしていたことも偶然なんですか、ついでにもう一つ説明して欲しいのは君たちはDS9の司令部スタッフと個別に接触を図ったという。うなだれるジェイクたち。私と別れた直後のカイ・ウィンとエアロックで会ってもいる、今すぐ、素直に話した方がいいですよというウェイユン。全て単純な誤解です、何もやっていませんよ、あなたが言うような陰謀には加担していませんというジェイク。箱を持ったガイガーが連れられてきた。2人を見るなり、私を売ったのか、昔ながらの死生観に固執するやつらどもだなという。研究の秘密は絶対に渡さんぞというが、ジェムハダーに囲まれ箱を渡した。やはり秘密があったわけですか、友達に秘密があるのはよくない、私は友達ですよというウェイユン。箱を開ける。何とかしろよというノーグ。ジェイクはわかったといい、真実を話すという。聞いてますというウェイユン。これは重大機密ですが、こうなった以上仕方ありませんというジェイク。僕たちは艦隊の諜報員ですと言った。馬鹿野郎というノーグに、仕方ないだろ打ち明けるしか、僕たちはその写真の男を捜査していたんですという。昨日まではその男、ウィリー・メイズは、どんな歴史上の記録にも載っていませんでしたというジェイク。ところがある瞬間突然そのカードがステーションに出現し、同時にメイズの彫像がニューヨークのクーパーズタウンにある野球殿堂※37に現れましたという。理由は一つ、その男は未来から来た男なんですと言った。タイムトラベラーかというウェイユンに、そうです、今のところ男の手がかりはそのカードだけなんですというジェイク。何をするつもりなのか、何をしたかつき止めるのはそのカードが頼りです、銀河系の未来を守るためにも追跡して捕まえなければという。信じましょうとウェイユンは言った。ほんとにというノーグに、シスコ大佐にカードをあげたかったという、はじめの話ですよという。笑い、さすがですねというジェイク。それでも一つ疑問が残る、あなたは何をしていたんですかとガイガーに尋ねるウェイユン。ご心配なく、不老不死の研究をしていただけですからというノーグ。私も創造遺伝学の知識はありまして、ぜひあなたの理論をお聞きしたいものだというウェイユン。説明するには時間がかかるが、まず一つお聞きしよう、あなたは死にたいかとガイガーは言った。ウェイユンが答える前に、僕たちはもういいですかというノーグ。もちろんだよというウェイユン。どうもといい立ち上がる2人に、ウェイユンは忘れ物をしていますよと言った。 大佐日誌、宇宙暦50929.4。2日前、ステーションは墓場のようだった。部下が一時にあれほど元気を失ったのは初めてだった。カヤックを終えホロスイートから出てくるオブライエン。しかしどういうわけか、再びステーションに活気が戻ってきた。あたかも誰かが古い家の窓を開け放ち、新鮮な空気を入れたかのようだ。クカラカが戻ってきたベシア。なぜみんなに活気が戻ったのかは謎だ。部屋中を探すリータ。とはいえ事態が変わったわけではない。ドミニオンの脅威は大きく、カーデシアはステーション奪回を狙っている。スピーチし終え拍手を受けるキラ。水平線には黒雲が広がっている。なのになぜこんなに楽しげな雰囲気なのだろう。ディファイアントでオペラを聴くウォーフ。だがその理由は大したものではなく、ずっと昔に父が教えてくれた単純なものかもしれない。カプセルに入り、ガイガーの説明を受けるウェイユン。たとえ闇に閉ざされても、人は必ず何か喜びを見つけ出し、微笑みを取り戻せるものだ。 そしてベースボール・カードを見るシスコ。ノーグと握手をし、ジェイクと抱き合った。 |
※35: Dr. Elias Giger 名の「エライアス」は訳出されていません
※36: ポーラロン (ポラロン) 粒子 polaron particles ※37: Baseball Hall of Fame |
感想
カードのために四苦八苦するジェイクとノーグの2人。何やら博士が登場し大きな事件に発展すると思ったのですが、誘拐されても結局最後まで小さなままでした。とはいえそれで内容がつまらないものではなくかなり楽しめるコメディ調の話で、それは最後のシーンに集約されています (一言もセリフのないリータ!)。ガイガーの「細胞エンターテイメント」や、ジェイクの「歴史に突然出現した選手」という突拍子もない話は、ST自身を皮肉っているようで楽しめます。さて次回はついに…。 |
第122話 "Empok Nor" 「眠れるステーション エムポック・ノール」 | 第124話 "Call to Arms" 「DS9撤退の日」 |