冷凍されていた爬虫ズィンディの遺体が引き出される。
デグラ:「ダムロン※10だ。」
アーチャー:「知り合いか?」
「同僚だ、一応な。」
「地球にいた一人だ。過去のな。」
毛長ズィンディ:「地球で見つけ殺したわけか。」
「人口の大半を滅ぼす生物兵器を放とうとしていた。」
デグラ:「彼らは毒物が、地球人により効果的だと考えていた。…だが評議会に拒まれ、その後すぐに姿を消したのだ。」
3つの遺体を収納するアーチャー。「そして彼らは評議会の許可なしに作戦を進めたわけだ。」
毛長ズィンディ:「だが幸いにも君が止めた。時間をさかのぼってな?」
「だから言っただろ? 助けがいた。彼らと同じだ。」
「これだけじゃ信じられん。…ダムロンが過去にいたとなぜわかる。」
「…証拠はまだある。」 遺体安置室※11を出ていくアーチャー。
ドアのロック機構が解除された。貨物室の一部が開く。
中に置かれたコンソールを操作するアーチャー。開いていく機械を目にし、デグラは毛長ズィンディを見た。
操作を続けるアーチャー。機械が起動し、中から筒が出てきた。
それを渡すアーチャー。「生物兵器だ。…毒は中和したが、ドクターがサンプルを保管している。」
デグラ:「これは確かに、ズィンディのテクノロジーだ。だが念のため、エンジニアに見せたい。」
「…ぜひ呼んでくれ、好きに調べて構わん。」
毛長ズィンディ:「これでは爬虫類族が評議会に逆らった証明にしかならん、そんなことは予想範囲内だ。あんたは我々が、異次元の異星人に欺かれてるとも言っていた。その証拠はどこにある。」
アーチャーは筒を納め、ドアを閉めた。「来てくれ。」
廊下で話すタッカー。「マグネシウムカバーに亀裂が入ってる、だから裂けたんだ。」
機関部員※12:「ちゃんと調べました。」
「じゃあ怪我した奴にそう言ってこい! 全部調べ直しだ。」
「了解。」
フロックスが近づく。「少佐?」
タッカー:「いま忙しいんだ。」
「そのようですね、もう 2日も寝てないらしい。」
「…トゥポルが言ったんだな。」
「心配してるんですよ?」
「そりゃありがたいが、この船を何とかもたせなきゃならないんだ。」
フロックスは肩に触れた。「いま、あなたに倒れられたら状況はもっと悪くなります。」
タッカー:「心配はわかった、俺は仕事に戻る。」
「そうはいきません。」
「…どうして。」
「ドクター命令です。…明朝、0500時まで持ち場には戻らないように。」
「6時間もか!?」
「どうか保安部員を呼ばせないで下さい。」
通信が入る。『アーチャーからドクター。』
フロックス:「はい船長。」
『医療室へ来てくれ。』
「すぐ行きます。…さあ少佐?」
タッカー:「2時間なら従おう。」
「6時間と言ったはずです。」
「3時間以上持ち場を離れたらエンタープライズはおしまいだ。」
「4時間、もう譲れません。」
「…わかった。…車のディーラーにでもなれよ。…早く行け。」
「わかっています。」
「そいじゃ、おやすみ!」
歩いていくタッカー。2人は再び顔を見合わせた。
フロックス:「フン。」
船体から噴き出す炎は、激しくなった。
球体創造者の写真が、医療室のモニターにいくつも表示されている。
アーチャー:「ポッドで、漂っていた※13。この種族に見覚えは?」
毛長ズィンディ:「会ったことがある。」
デグラ:「なぜ死んだんだ?」
アーチャー:「何らかの、細胞崩壊だ。…ポッドを出た途端始まった。」
「ここの大気が合わなかったのだな。」
フロックス:「この宇宙がと言った方がいいでしょう。」 細胞の図を表示させる。「彼の種族は異次元に生きている。…自然の法則が異なり、ここでは生きていられないのです。」
アーチャー:「だから球体を造ったんだ。この宇宙を彼らに適応させるためにな。」
「彼は、進行状況を試すために送られたんでしょう。」 消えていく細胞。
デグラ:「成功したら、我々はこの領域で生きられなくなると?」
「…どの種族もです。」
アーチャー:「…我々は彼らを阻止せねばならん。地球を攻撃してる場合じゃない。あんたたちの将来のためにも。」
制服のまま横になっていたタッカーは、目を覚ました。汗をかいている。
廊下を歩いてきたタッカーは、半開きのドアを開けて部屋に入った。壊れた写真立てを目にする。
女性の声。「眠れないんですか?」
写真立てを落とすタッカー。後ろにクルーが立っていた。
タッカー:「テイラー※14。…死んだはずだ。…ここは減圧されてた。密閉部があったのか?」
テイラー:「いいえ?」
「じゃあなぜ…。あ…そうか。…夢か。」
「手紙は、進みました?」
「まだこれだけだ。…『残念なお知らせです。』」
テイラーは微笑んだ。「ひどいじゃないですか。」
タッカー:「現実じゃないんだ。敬語なんか使うな。」
「悩むことないわ? 船長だって短くていいって言ってたし。……何も浮かばないの?」
「それならまだいい。」
「私は 3年間ここで勤務したわ。サラトガ※15から私を引き抜いたのはあなたよ? ブロディ船長※16はカンカンだった。」
「もう忘れたよ。」
「私はいつか優秀なチーフエンジニアになると言ったわね。」
「なれるよ。……なってた。」
「だったら両親にそう伝えて? ロストフのイタズラについても伝えて欲しいわ、みんな見逃したインジェクターアセンブリーの欠陥を私が見つけたことも。私の熱心な勤務態度も。あなたがどんなに信頼してたかも。…私を見て?」
タッカーは顔を上げた。
テイラー:「私を、忘れないで。そんなに贅沢な望み?」
タッカー:「ああ。」
「なぜ。」
部屋から逃げようとするタッカー。外に出られない。
テイラー:「どうして!」
タッカーは起き上がった。ライトをつける。
ため息をつき、顔を押さえた。
デグラの船に戻った毛長ズィンディ。「あのマシンが爬虫類族のものだと証明されただけだ。」
デグラ:「クロノメーターのひずみも証明された! タイムトラベルだ。」
「細工されていたのかもしれん…」
「彼を頭から疑ってかかるな。」
「あんたこそ頭から奴の言うことを鵜呑みにしてるじゃないか。…確かに、あの証拠には興味を引かれる。だが人間は信用ならん。その点未来からのお告げには何度も救われた。評議会も信用してる。」
「あの異星人がただの人助けで協力してると?」
「そこまで馬鹿じゃない。評議会に対し、彼女が怪しいと説得するには証拠が少なすぎると言っているだけだ。」
「…アーチャー船長が待っている。」
「証拠が足りん。」
「球体について、いろいろと説明して欲しいとのことだ。」 ドアを開けるデグラ。
「デグラ。…兵器製造に疑問をもっているのはわかるが、今回の件と混同するな。」
何も言わずに出ていくデグラ。
司令センターのトゥポル。「データベースの、復旧を図っているところです。」 乱れたままのモニターの映像。
デグラがいる。
タッカー:「あんたの仲間のせいだぞ。」 後ろで作業している。「もう一度。」
球体の配置図が映し出される。
タッカー:「光学サブプロセッサーをリセットしよう。少しは直る。…この前あんたたちが、製造してる兵器を見たよ。さすがだな、感動したね。…とても、真似できんよ。地球を吹っ飛ばすにはこの船、千隻は必要だ。…今度、地球を攻撃した偵察機のデータを見せてくれ。」
トゥポル:「解像度を上げて下さい。」
星図がはっきりした。
タッカー:「…生で見たんだろ? 爆風が上がるのをさ。…すげえや。さぞ興奮しただろうな。そりゃ…あれだけの規模、燃やしたんだからな。フロリダを。…あんたが破壊した場所の名前だよ。フロリダだ。」
トゥポル:「…少佐。」
「町が燃え上がるのを見たか? 家や、人が消えていくのを。…俺の妹もいたんだ。」
「少佐!」
アーチャーが来た。無言のデグラ。
アーチャー:「修理は進んだのか?」
タッカー:「あと 2、3分で終わります!」
「…終わるまで、私と作戦室に行ってよう。」
外に出るデグラ。
アーチャーはタッカーを見た。「急いで終わらせてくれ。」
タッカー:「了解。」
アーチャーも続く。
トゥポル:「…船長はデグラの信頼を得ようと必死なのです。」
タッカーも出ていった。
青い炎が噴き出す部分で爆発が起こり、ついに大量の緑色の物質が流れ出し始めた。
司令室のタッカー。「ワーププラズマ・コンジットです。」
トゥポル:「センサーのオフライン時に破裂したんでしょう。」
デグラ:「我々が、力を貸そう。」
タッカー:「いや結構。」
アーチャー:「メインプラズマの供給を断つ。」
「レギュレーターは使えません。手動で閉じるならここと、ここですが。外からしか行けない。」
リード:「火元のすぐそばだ。」
揺れた。
タッカー:「行くしかない。急がないと、リアクターまで広がるぞ。」
アーチャー:「行ってこい!」
「独りじゃ無理です。」
リード:「私が。」
向かう 2人。
プラズマが噴き出す場所に、環境服を着た 2人が近づく。
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※10: Damron ENT "Carpenter Street" では、名前は判明していませんでした
※11: 初登場と思われます
※12: Engineer (セス・マクファーレン Seth MacFarlane ENT第91話 "Affliction" 「クリンゴンの苦境」のリヴァーズ少尉 (Ensign Rivers) 役 (同一人物?)。米国のアニメ「ファミリー・ガイ」 の創作者 (クリエイター) 兼声優によるカメオ出演で、スタートレックのファン) 声は毛長ズィンディ役の遠藤さんが兼任
※13: ENT第66話 "Harbinger" 「新たなる脅威の兆し」より
※14: Taylor (Kipleigh Brown) 名前は後でジェーン (Jane) と言及されます。階級の乗組員が言及される個所がありますが、訳出されていません。声:森夏姫
※15: Saratoga 後の時代には U.S.S.サラトガが映画 ST4 "The Voyage Home" 「故郷への長い道」 (ミランダ級、NCC-1937) および DS9 パイロット版 "Emissary" 「聖なる神殿の謎」 (前述のとは形状が異なるミランダ級、NCC-31911) に登場しています
※16: Captain Brody
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