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エンタープライズ エピソードガイド
第72話「デグラの決断」
The Forgotten

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・イントロダクション
※1※2アーチャー:「状況は暗い。それは否定できん。」
発着ベイ。
アーチャー:「だがエンタープライズは、簡単に根を上げる船じゃない。…今までも期待以上の働きをしてきた。」 士官や MACO が集まっている。みな汚れ、疲れ切った表情だ。「君たちも同様だ。…心から礼を言う。…殉職した 18名のクルーにも言いたかった。…彼らもこのミッションの重要度を理解し、リスクを受け入れた。…このデルフィック領域では何が起こるかわからん。…頼れるのは己自身だけだ。…だが我々はこのミッションを、必ず成功させてみせる。…地球の人々そして 18名の、仲間のために。」


※1: このエピソードは、TNG ラフォージ役レヴァー・バートンの監督作品です。ENT で担当した 9話のうち、第62話 "Similitude" 「ライサリア砂漠幼虫」以来 7話目となります (参考)

※2: あらすじとして第2シーズンの第52話 "The Expanse" 「帰還なき旅」を含め、エピソード放送順に第53話 "The Xindi" 「トレリウムD」、第57話 "Impulse" 「幽霊船」、第63話 "Carpenter Street" 「デトロイト2004」、第70話 "Azati Prime" 「爬虫類族の攻撃」、前話 "Damage" 「球体創造者」の内容が使われています。あらすじ部分に登場している球体創造者役の斎藤恵理さん、人間ズィンディ役の竹田雅則さんもクレジットされています

・本編
作戦室のタッカー。「Cデッキ、6・7セクションで遺体を発見。…テイラー※3とカマタ※4です。」
トゥポル:「これで全員です。」
アーチャー:「武器の復旧状況は。」
「リード大尉によれば…前方フェイズ砲および、船尾の魚雷発射管が使用可能です。…防御プレートは、80%。」
「それでいこう。」
タッカー:「時間を下さい。もっと、修理する時間が必要です。」
トゥポル:「デグラと合流するのは、今から 10時間後です。」
アーチャー:「遅れるつもりはない。」
タッカー:「満身創痍の我々を、故意におびき寄せ攻撃する気かも。」
「決定事項だ。…仕事は山ほどある、早くかかりたまえ。」
「了解。」
アーチャーはタッカーを呼び止めた。「少佐。…テイラーは君の部下だったな。」
タッカー:「EPS 制御の専門で、優秀でした。」
「……遺族に手紙を書いて欲しい。」
「ああ…直属の上官は、ロストフ※5です。」
「君が書け。」
「…船の一大事です、そんな時間はありません。」
「短くても構わん。…遺族には事実を知る権利がある。」
「…了解。」

医療部員とパッドを見ていたフロックスは、トゥポルがやってきたのに気づいた。「…うーん。ん? ありがとう。」
医療部員:「いいえ。」
トゥポル:「時間を改めます。」
フロックス:「ああ、おかけ下さい。ハンド・スキャナーで診ましょう。チャンバーはまだ故障中だ。タッカー少佐が、ここの修理チームを連れて行ってしまいましてねえ。兵器室の方が『優先』だそうです、ハ。少佐が火傷をしたときにもう一度優先順位を聞いてみましょう、ハハー。…ああ、禁断症状はもう出ていませんか?」 トゥポルを調べた。
「ないわ。」
「トレリウム痕跡を検知しただけです。異常なしと言ってもいい。…いいニュースですよ? …問題でも。」
「…感情が、どんどん……制御できなくなってきてるんです。…今まで感情を抑制してきたテクニックが効かなくて…。」
「……地球には魔法のランプから放たれてしまった『魔神』が、その…危険を巻き起こす寓話が、あります。…一度放たれたら、元に戻すのは至難の業だ。」
「この感情は二度と抑制できないと。」
「トレリウムを 3ヶ月使い続け、神経経路にもたらしたダメージは重大です。二度と、抑制できない可能性もある。」
目に涙を浮かべるトゥポル。

ブリッジのメイウェザー。「間もなく座標に到着。予定通りです。」
リード:「…船影はありません。」
アーチャー:「…ホシ。」
サトウ:「全周波数スキャン。応答ありません。」
メイウェザー:「遅れてるんでしょう。」
いきなり船が揺れた。
アーチャー:「戦術警報!」
トゥポル:「空間のひずみです。…密集エリアに入りました。」

機関室にも音が響き、ワープコアから電流が発生する。
タッカー:「タッカーからブリッジ! ランデブーは危険です!」

アーチャー:「待機しろ、トリップ。」
リード:「Bデッキで負傷者発生。」 火花が飛ぶブリッジ。「まだ船はいません。」
「…脱出しろ。」
メイウェザー:「了解。」
トゥポル:「…船長。」
突如、デグラの船が姿を現した。
サトウ:「通信を受信しました。デグラです、ついてくるようにと。」
うなずくアーチャー。
デグラの船は再び消えた。後を追うエンタープライズも空間から消滅する。
アーチャー:「見失うなよ?」
メイウェザー:「了解。」

遮蔽フィールドを出る 2隻。その先には球体があった。
サトウ:「呼びかけてます。」
デグラ※6:『…よく来てくれた。…話が山ほどある、だが時間がない。すぐにこちらへ。』
デグラの映像は終わった。

デグラの船はエンタープライズとドッキングしている。
デグラ:「爬虫類族はあんたを殺す気だった。」
毛長ズィンディ※7:「デグラが水棲族を説得し、君を解放した。」
アーチャー:「船への攻撃をやめさせたのもあんたか?」
デグラ:「…爬虫類族は不満そうだったがな。」
「なぜそんなリスクを。」
「…あんたの話が本当なら、我々に危険が迫っている。」
「私は嘘などついていない。」
毛長ズィンディ:「…失礼だが、それだけじゃ評議会は説得できん。…目の前でタイムトラベルをしてみせれば別だがな?」
「いや、それはちょっと…難しいな。……私の船に来てくれ。証拠ならそこにそろっている。」
「…いいだろう。」
「だが、その前に知っておきたいことがある。」
「というと?」
「兵器が発射されるのはいつだ。」
デグラ:「…正確な日時はまだ決まってない。」
「大体でいい、いつ頃だ。」
毛長ズィンディ:「評議会次第だ。」
「君らを助けたい。だがそれは、地球の安全が確保されればの話だ。」
デグラ:「兵器は数日の間は発射されん。…早く証拠を、見せてくれ。その後でこちらも手を尽くす。」

荒れた食堂で、食料パックやカップが配られている。「ありがとう。」
手にするトゥポル。タッカーがいるテーブルに置き、倒れた椅子を起こした。
タッカー:「それは。」
トゥポル:「…ペパロニピザ※8です。」
「うーん。ペパロニを取れば食える。」
トゥポルはタッカーが持っているパッドに気づいた。「被害報告?」
タッカー:「いや…テイラーの両親に手紙を書けと船長が。」
「きっと御両親は感謝を。」
「…娘が死んで、何を感謝するっていうんです。」
「…最後に眠ったのは?」
「さあ。攻撃前かな。」
「2日前ですよ。」
「じゃあ 2日、眠ってない。」
「……部屋へ戻って、寝た方がいいわ。」
「俺だって寝たいよ。」
「…命じましょうか。」
「この船は、盗んだワープコイル※9で辛うじて飛んでる状態だ。手紙も書かなきゃならんし。」
大きな音が響いた。
タッカー:「今度は何だ!」
倒れたカップからコーヒーがこぼれる。

血を流したクルーが倒れている。
廊下を走るクルーは、消火器を使う。「火事だー!」
駆けつけるタッカー。「一体何があった! おい、大丈夫か。」 トゥポルと共にクルーを起こす。
タッカーはコンソールに近づいた。「おい機関室! 補助冷却ラインを閉じろ、Eデッキの…セクション12 と 14 だ。」
機関部員:『了解。』
吹き出していた気体は収まった。
タッカー:「タッカーから医療室、Eデッキで緊急事態。セクション12 だ。」
フロックス:『すぐに向かいます。』
モニターを見るタッカー。「…リアクターは無事だ。…起きててよかった…。」
だがエンタープライズの外壁には小さな穴が空き、そこから青い炎が噴き出していた。


※3: Taylor
ENT第11話 "Cold Front" 「時を見つめる男」でテイラーというクルーが言及されていますが、その時のセリフでは給仕だと思われる人物でした。複数いたんでしょうか

※4: Kamata
階級は乗組員 (吹き替えでは乗務員) と後で言及されます。日本人?

※5: Rostov
マイケル・ロストフ (Michael Rostov)。ENT第22話 "Vox Sola" 「漂流生命体の叫び」などに登場

※6: Degra
(ランディ・オグルスビー Randy Oglesby) 前話 "Damage" に引き続き登場。声:木村雅史

※7: Xindi-Arboreal
(リック・ワーシー Rick Worthy) 前話 "Damage" に引き続き登場。声:遠藤純一

※8: pepperoni pizza

※9: 前話 "Damage" より

冷凍されていた爬虫ズィンディの遺体が引き出される。
デグラ:「ダムロン※10だ。」
アーチャー:「知り合いか?」
「同僚だ、一応な。」
「地球にいた一人だ。過去のな。」
毛長ズィンディ:「地球で見つけ殺したわけか。」
「人口の大半を滅ぼす生物兵器を放とうとしていた。」
デグラ:「彼らは毒物が、地球人により効果的だと考えていた。…だが評議会に拒まれ、その後すぐに姿を消したのだ。」
3つの遺体を収納するアーチャー。「そして彼らは評議会の許可なしに作戦を進めたわけだ。」
毛長ズィンディ:「だが幸いにも君が止めた。時間をさかのぼってな?」
「だから言っただろ? 助けがいた。彼らと同じだ。」
「これだけじゃ信じられん。…ダムロンが過去にいたとなぜわかる。」
「…証拠はまだある。」 遺体安置室※11を出ていくアーチャー。

ドアのロック機構が解除された。貨物室の一部が開く。
中に置かれたコンソールを操作するアーチャー。開いていく機械を目にし、デグラは毛長ズィンディを見た。
操作を続けるアーチャー。機械が起動し、中から筒が出てきた。
それを渡すアーチャー。「生物兵器だ。…毒は中和したが、ドクターがサンプルを保管している。」
デグラ:「これは確かに、ズィンディのテクノロジーだ。だが念のため、エンジニアに見せたい。」
「…ぜひ呼んでくれ、好きに調べて構わん。」
毛長ズィンディ:「これでは爬虫類族が評議会に逆らった証明にしかならん、そんなことは予想範囲内だ。あんたは我々が、異次元の異星人に欺かれてるとも言っていた。その証拠はどこにある。」
アーチャーは筒を納め、ドアを閉めた。「来てくれ。」

廊下で話すタッカー。「マグネシウムカバーに亀裂が入ってる、だから裂けたんだ。」
機関部員※12:「ちゃんと調べました。」
「じゃあ怪我した奴にそう言ってこい! 全部調べ直しだ。」
「了解。」
フロックスが近づく。「少佐?」
タッカー:「いま忙しいんだ。」
「そのようですね、もう 2日も寝てないらしい。」
「…トゥポルが言ったんだな。」
「心配してるんですよ?」
「そりゃありがたいが、この船を何とかもたせなきゃならないんだ。」
フロックスは肩に触れた。「いま、あなたに倒れられたら状況はもっと悪くなります。」
タッカー:「心配はわかった、俺は仕事に戻る。」
「そうはいきません。」
「…どうして。」
「ドクター命令です。…明朝、0500 (まるごまるまる) 時まで持ち場には戻らないように。」
「6時間もか!?」
「どうか保安部員を呼ばせないで下さい。」
通信が入る。『アーチャーからドクター。』
フロックス:「はい船長。」
『医療室へ来てくれ。』
「すぐ行きます。…さあ少佐?」
タッカー:「2時間なら従おう。」
「6時間と言ったはずです。」
「3時間以上持ち場を離れたらエンタープライズはおしまいだ。」
「4時間、もう譲れません。」
「…わかった。…車のディーラーにでもなれよ。…早く行け。」
「わかっています。」
「そいじゃ、おやすみ!」
歩いていくタッカー。2人は再び顔を見合わせた。
フロックス:「フン。」

船体から噴き出す炎は、激しくなった。

球体創造者の写真が、医療室のモニターにいくつも表示されている。
アーチャー:「ポッドで、漂っていた※13。この種族に見覚えは?」
毛長ズィンディ:「会ったことがある。」
デグラ:「なぜ死んだんだ?」
アーチャー:「何らかの、細胞崩壊だ。…ポッドを出た途端始まった。」
「ここの大気が合わなかったのだな。」
フロックス:「この宇宙がと言った方がいいでしょう。」 細胞の図を表示させる。「彼の種族は異次元に生きている。…自然の法則が異なり、ここでは生きていられないのです。」
アーチャー:「だから球体を造ったんだ。この宇宙を彼らに適応させるためにな。」
「彼は、進行状況を試すために送られたんでしょう。」 消えていく細胞。
デグラ:「成功したら、我々はこの領域で生きられなくなると?」
「…どの種族もです。」
アーチャー:「…我々は彼らを阻止せねばならん。地球を攻撃してる場合じゃない。あんたたちの将来のためにも。」

制服のまま横になっていたタッカーは、目を覚ました。汗をかいている。

廊下を歩いてきたタッカーは、半開きのドアを開けて部屋に入った。壊れた写真立てを目にする。
女性の声。「眠れないんですか?」
写真立てを落とすタッカー。後ろにクルーが立っていた。
タッカー:「テイラー※14。…死んだはずだ。…ここは減圧されてた。密閉部があったのか?」
テイラー:「いいえ?」
「じゃあなぜ…。あ…そうか。…夢か。」
「手紙は、進みました?」
「まだこれだけだ。…『残念なお知らせです。』」
テイラーは微笑んだ。「ひどいじゃないですか。」
タッカー:「現実じゃないんだ。敬語なんか使うな。」
「悩むことないわ? 船長だって短くていいって言ってたし。……何も浮かばないの?」
「それならまだいい。」
「私は 3年間ここで勤務したわ。サラトガ※15から私を引き抜いたのはあなたよ? ブロディ船長※16はカンカンだった。」
「もう忘れたよ。」
「私はいつか優秀なチーフエンジニアになると言ったわね。」
「なれるよ。……なってた。」
「だったら両親にそう伝えて? ロストフのイタズラについても伝えて欲しいわ、みんな見逃したインジェクターアセンブリーの欠陥を私が見つけたことも。私の熱心な勤務態度も。あなたがどんなに信頼してたかも。…私を見て?」
タッカーは顔を上げた。
テイラー:「私を、忘れないで。そんなに贅沢な望み?」
タッカー:「ああ。」
「なぜ。」
部屋から逃げようとするタッカー。外に出られない。
テイラー:「どうして!」

タッカーは起き上がった。ライトをつける。
ため息をつき、顔を押さえた。

デグラの船に戻った毛長ズィンディ。「あのマシンが爬虫類族のものだと証明されただけだ。」
デグラ:「クロノメーターのひずみも証明された! タイムトラベルだ。」
「細工されていたのかもしれん…」
「彼を頭から疑ってかかるな。」
「あんたこそ頭から奴の言うことを鵜呑みにしてるじゃないか。…確かに、あの証拠には興味を引かれる。だが人間は信用ならん。その点未来からのお告げには何度も救われた。評議会も信用してる。」
「あの異星人がただの人助けで協力してると?」
「そこまで馬鹿じゃない。評議会に対し、彼女が怪しいと説得するには証拠が少なすぎると言っているだけだ。」
「…アーチャー船長が待っている。」
「証拠が足りん。」
「球体について、いろいろと説明して欲しいとのことだ。」 ドアを開けるデグラ。
「デグラ。…兵器製造に疑問をもっているのはわかるが、今回の件と混同するな。」
何も言わずに出ていくデグラ。

司令センターのトゥポル。「データベースの、復旧を図っているところです。」 乱れたままのモニターの映像。
デグラがいる。
タッカー:「あんたの仲間のせいだぞ。」 後ろで作業している。「もう一度。」
球体の配置図が映し出される。
タッカー:「光学サブプロセッサーをリセットしよう。少しは直る。…この前あんたたちが、製造してる兵器を見たよ。さすがだな、感動したね。…とても、真似できんよ。地球を吹っ飛ばすにはこの船、千隻は必要だ。…今度、地球を攻撃した偵察機のデータを見せてくれ。」
トゥポル:「解像度を上げて下さい。」
星図がはっきりした。
タッカー:「…生で見たんだろ? 爆風が上がるのをさ。…すげえや。さぞ興奮しただろうな。そりゃ…あれだけの規模、燃やしたんだからな。フロリダを。…あんたが破壊した場所の名前だよ。フロリダだ。」
トゥポル:「…少佐。」
「町が燃え上がるのを見たか? 家や、人が消えていくのを。…俺の妹もいたんだ。」
「少佐!」
アーチャーが来た。無言のデグラ。
アーチャー:「修理は進んだのか?」
タッカー:「あと 2、3分で終わります!」
「…終わるまで、私と作戦室に行ってよう。」
外に出るデグラ。
アーチャーはタッカーを見た。「急いで終わらせてくれ。」
タッカー:「了解。」
アーチャーも続く。
トゥポル:「…船長はデグラの信頼を得ようと必死なのです。」
タッカーも出ていった。

青い炎が噴き出す部分で爆発が起こり、ついに大量の緑色の物質が流れ出し始めた。

司令室のタッカー。「ワーププラズマ・コンジットです。」
トゥポル:「センサーのオフライン時に破裂したんでしょう。」
デグラ:「我々が、力を貸そう。」
タッカー:「いや結構。」
アーチャー:「メインプラズマの供給を断つ。」
「レギュレーターは使えません。手動で閉じるならここと、ここですが。外からしか行けない。」
リード:「火元のすぐそばだ。」
揺れた。
タッカー:「行くしかない。急がないと、リアクターまで広がるぞ。」
アーチャー:「行ってこい!」
「独りじゃ無理です。」
リード:「私が。」
向かう 2人。

プラズマが噴き出す場所に、環境服を着た 2人が近づく。


※10: Damron
ENT "Carpenter Street" では、名前は判明していませんでした

※11: 初登場と思われます

※12: Engineer
(セス・マクファーレン Seth MacFarlane ENT第91話 "Affliction" 「クリンゴンの苦境」のリヴァーズ少尉 (Ensign Rivers) 役 (同一人物?)。米国のアニメ「ファミリー・ガイ」 の創作者 (クリエイター) 兼声優によるカメオ出演で、スタートレックのファン) 声は毛長ズィンディ役の遠藤さんが兼任

※13: ENT第66話 "Harbinger" 「新たなる脅威の兆し」より

※14: Taylor
(Kipleigh Brown) 名前は後でジェーン (Jane) と言及されます。階級の乗組員が言及される個所がありますが、訳出されていません。声:森夏姫

※15: Saratoga
後の時代には U.S.S.サラトガが映画 ST4 "The Voyage Home" 「故郷への長い道」 (ミランダ級、NCC-1937) および DS9 パイロット版 "Emissary" 「聖なる神殿の謎」 (前述のとは形状が異なるミランダ級、NCC-31911) に登場しています

※16: Captain Brody

2人の先には、穴の空いた船体が広がっている。
磁力ブーツで、格子状の部分を渡っていくタッカーとリード。
熱さに顔をゆがませるタッカー。「パネルを開けろ。…俺が止める手順を言う。」
リード:「もう一つは。」
「向こうだ。」
位置につく 2人。
リードはプラズマに近い方だ。ボタンを押した。
パネルを叩くリード。
タッカーの方はすぐに開いた。「まず最初に非常用補助ポートを開けてくれ。…俺が補助ラインから完全に圧力を抜くまで閉じるなよ。」
叩き続けるリード。

リードの声はブリッジにも流れいてる。『少佐、問題発生です。…熱で金属が曲がったようで、パネルが開きません!』

タッカー:「プラズマトーチを使え! すぐそっちに行く。ポートの、連動装置を外すとこだ。」 回転させる。
リードはプラズマトーチを取り出し、パネルの縁を焼き切り始める。「こりゃ時間がかかりそうだ。」

タッカー:『補助リレーを焼かないように気をつけてくれよ。』
警告音が鳴る。
トゥポル:「マニホールド圧上昇。リアクターシールドに燃え移るまで、6分もありません。」
アーチャー:「おいトリップ、もう 6分を切ったぞ。」

タッカー:「わかりました。」
プラズマが一段と大きく噴き出した。
タッカー:「大丈夫か、マルコム。」
リード:「…ええ、何とか。」 トーチを使う。

サトウ:「船長。大尉のスーツ内の温度が、44度を超えています。」
トゥポル:「火に近づきすぎです、宇宙服でも耐えきれません。」
アーチャー:「マルコム、エアロックに戻れ。」

リードはプラズマを見た。「もうすぐ終わりますから。」
アーチャー:『命令だ。』
タッカー:「戻れマルコム、後は独りでできる。」
リードは作業を続け、プラズマトーチを納めた。
タッカー:「主要補助ポートを開いてるとこだ。あと 2個所で終わるからな。」
取り外すリード。パネルは宇宙空間に浮き上がっていく。

サトウ:「46度です。」
アーチャー:「マルコム。」

リード:「すいません船長…もう少しなんです。」
リードの目がかすむ。タッカーの姿が見える。
タッカー:「戻れマルコム、俺が終わらせる。」
リード:「時間がありません、進めて下さい! こっちは私が閉めます!」
「あと 2、3秒だ。最後のポートを閉めてるぞ。」
プラズマが小さくなり始めた。

トゥポル:「前方バルブ閉鎖。」

朦朧としているリード。
タッカー:「いいぞマルコム、時計回りに 90度回せ。」
指示されたとおりにするリード。
タッカーが近づく。プラズマは完全に収まった。
タッカー:「よくやった。マルコム? …マルコム! タッカーからドクター、エアロックに急いでくれ。」

ブリッジを出るアーチャーとデグラ。

リードは環境服を脱がされている。
フロックス:「急いで体温を下げないと。医療室へ。」
アーチャー:「大丈夫か。」
うめくリードは、連れて行かれた。タッカーは無言だ。
デグラ:「…無事だといいが。」
タッカーはデグラを見た。出ていくアーチャーとデグラ。
タッカー:「見え透いた嘘を言うな。」
アーチャー:「トリップ。」
「700万も殺したんだ、あと一人死のうがどうってことないだろ。」
「もうよしたまえ。」
「一応限度があるのか?」
「よせと言ってるんだ!」
「…はい船長。」
デグラは一瞬立ち止まったが、そのまま環境服室を後にした。

球体の星図。
アーチャー:「球体の総数は 59個だ。」
デグラ:「いや、78 だ。現時点では。」
「78?」
「我々の方が、研究歴は長い。」
「……タッカーのことは謝る。」
「……私の兵器で被害を受けた、人間に…会うとは思ってもいなかったよ。だがあの時は必要不可欠だと信じていたんだ。」
「ああ。…以前にもこういう会話をしたことがある。」
「そうだな。共に収容所から、『脱走』したときだ※17。」
「うん。」
「爬虫類族の話は、一点だけ正しかったな? あんたたちには、人を欺く才能がある。」
「…記憶を消したりしなければ、もう少し信用してもらえてたか。」
「かもしれんな。…彼らは各々亜空間で連絡し合っているが、球体内についてはまだあまりわかっていない。」 球体の図が拡大されている。
「いいデータがある。」 アーチャーが司令センターのコンソールを操作すると、球体の内部構造に切り替わった。
「…どこでこれを手に入れた。」
「我々が最初に見た球体だ。外殻にヒビが入ってた。」
「中に入ったことなど一度もない。このデータは、軍用船にしては非常に精密に取れている。」
「この船は探査船だ。軍用船なんかじゃない。」
「…戦いに勝てれば、また戻れる。」

大きな魚を持った写真が飾られている。
タッカー:「録音開始。テイラーご夫妻殿。ご息女の殉職、心より遺憾に思います。…優秀な機関士である…ご息女を、勤務中に失い…録音停止。削除だ。」 ため息をつき、座る。「録音開始。…テイラーご夫妻殿。ジェーンの上官として、彼女の殉職を心から遺憾に思います。優秀な機関士であり、仕事も熱心で…」
リードの通信が流れる。『戦術警報、全員配置につけ。』
自室を出るタッカー。

ブリッジに戻るアーチャー。「報告を。」
トゥポル:「船を感知しました。遮蔽バリアを通っています。」
「スクリーン。」
一隻のズィンディ船が映し出された。
リード:「爬虫類族です。」
アーチャー:「招待した覚えは。」
デグラ:「ワープ痕跡は完全に消してある。なぜ見つかったのか見当もつかん。」
2隻に近づく爬虫ズィンディ船。


※17: ENT第66話 "Stratagem" 「策略」での件を指していますが、これまで "Azati Prime" も含め、アーチャーが詳しい経緯を説明したシーンはありませんでした。描かれていない部分で、いつのまにか話していたということのようです。さらに吹き替えでは「そうだな」 ("That's right.") の部分が「覚えてるよ」と訳されていますが、これだとデグラが策略のことを記憶していた、もしくは思い出したと取ることもできるため、ちょっと不適切でしょうね

デグラの船のスクリーンに、爬虫ズィンディの士官※18が映し出されている。『デグラはどこだ。』
毛長ズィンディ:「微妙な交渉ごとに巻き込まれている。」
『人間どもとか? …もちろん評議会の許可は取ったんだろうな。』
「評議会は生物兵器を許可していないが、あんたの仲間は勝手に創っていたぞ。」
『ただちに人間の船から離れるのだ。』

エンタープライズ。
スクリーンの毛長ズィンディ。『奴はその船を拿捕する気だ。従わなければ我々も破壊される。』
デグラ:「待機しろ。」
『デグラ!』
「いいから、待機するのだ。」
リード:「…勝てる見込みはありません。とても無理です。」
アーチャー:「……君の装備は。」
デグラ:「私に爬虫類族船を攻撃しろと言うのか!」
「協力し合えば、奴を封じ込められる。」
リード:「武器を装填!」
「…爬虫類族船には、乗ったことが。」
デグラ:「パワーシステムを、いじったことがある。」
リード:「なら弱点を知ってるな。どこを狙えばいい。」
「あの船は重装備で固めてる。」
アーチャー:「だが攻める価値はある。」
「彼らはズィンディだぞ! この私に、同胞を裏切れと言うのか!」

デグラの船は、エンタープライズから離れた。爬虫ズィンディ船へ向かう。
爬虫ズィンディ:『右舷のドッキングポートに来い。』
デグラ:「約束してくれ。私の部下を罰さないと。」
『評議員として、相応の扱いはする。』
通信は終わった。毛長ズィンディと顔を見合わせるデグラ。

メイウェザー:「爬虫類族船に接近。」
その時、デグラの船はズィンディ船を攻撃した。
リード:「シールドジェネレーターを破壊。」
アーチャー:「発射。」
光子性魚雷を撃つエンタープライズ。反撃する爬虫ズィンディ船。
さらにフェイズ砲がエンタープライズから発射される。
アーチャー:「回避行動を取れ。…発射、兵器を狙え!」
2隻から攻撃を浴びるズィンディ船。
リード:「武器ダウン。デグラの狙いは、正確だったようです。」
アーチャー:「デグラに呼びかけろ。」
「…船長! デグラが攻撃を!」
デグラの船は更にビームを発射し続ける。爬虫ズィンディ船は爆発した。
トゥポル:「爬虫類族船は、破壊されました。」
サトウ:「船長、デグラからです。」
デグラ:『…逃がせば評議会に、我々の関係を通報していただろう。選択の余地はなかった。』 後ろに毛長ズィンディが見える。

貨物を持ってくるトゥポル。「ロストフにここだと聞きました。」
廊下で作業しているタッカー。「明日から士官室の、修理が始まるんだが…どうにもパワーが戻らない。もう一時間もリレーと格闘してます。」
トゥポル:「…これを使って下さい。…ポータブル・パワーセルです。」
「ズィンディからの贈り物ですか。…礼儀正しいもんだ。」
「何か力になれることは。」
「死者を生き返らせて欲しい。テイラーなら、朝飯前だったはずだ。だがもう彼女はここにいない。カマタ乗務員もです。…マーセル少尉※19も、ほかの 15人のクルーたちも。」 タッカーはポータブル・パワーセルを蹴った。「俺はパワーセルなんかが欲しいんじゃない! …テイラーはそこで倒れてた。部屋を出たとこだ。持ち場に行こうとしてたんだろ。もう数メートル行ってたら。どうして手紙なんか書けますか。…録音を始める度に…俺の声が言う。彼女がどんなに優秀だったか。どんなに…才能があったか。そして、我に返る。頭にあるのはテイラーじゃない。…エリザベスだ。…多くの人間が死んだ。…妹はあの 700万人の中の…一人に過ぎない。だからこの、9ヶ月の間…自分に言い聞かせてたんだ。…あいつだけが特別じゃないって! …でもあいつは妹なんだよ。…俺の大事な…。」 泣く。
トゥポルも悲痛な表情を浮かべ、タッカーの肩に手を置いた。
手を重ねるタッカー。「ヴァルカン人がうらやましい。」
トゥポル:「私達が同僚や友の死を、悲しまないと思いますか。…そんなことない。…でも一度感情に溺れたら…飲み込まれてしまうんです。…あなたの方がうらやましい。」
タッカーは声を上げ、うなずいた。

エンタープライズは再びデグラの船とドッキングしている。
デグラ:「評議会と話して欲しい。あんたがもってる証拠を見せれば、彼らも信じるだろう。」
アーチャー:「…爬虫類族もか?」
「むしろ、水棲族の方が心配だ。得体が知れん。だが説得できれば…過半数の支持が得られる。……評議会場の、座標だ。」
データパッドを受け取るアーチャー。「6光年も離れてるじゃないか。数週間かかる。」
デグラ:「近道がある、亜空間トンネルだ。…ここから 0.5光年弱の星雲にある。そこに、入り方も指示しておいた。3日後に出口で会おう。」
「兵器の発射に間に合うか。」
「…遅らせるよう、あらゆる手を尽くそう。」
アーチャーはうなずいた。
作戦室を出て行くデグラ。「星雲には、注意が必要だ。敵対種族が、近づく船に攻撃を仕掛けてくる。」
アーチャー:「気をつけるよ。」 近づき、手を差し出した。握手するアーチャー。「では 3日後に会おう。」
「3日後に。」

デグラの船は、エンタープライズと離れた。

自室のタッカー。「録音開始。…テイラーご夫妻。これを読む頃には、ジェーンの訃報が届いてることでしょう。親しく働いた者として、改めてお悔やみを申し上げます。…正直、なかなかこの手紙が書けませんでした。忙しいからと、自分に言い訳をしてたんですが…それは違います。ジェーンのように若く前途のある、人物の死に…向き合えなかった。…今なら向き合えます。彼女は私にとって、とても大切な人でした。優秀な機関士であり、友でもあった。彼女のことは忘れません。」
窓には流れる星の軌跡が見えている。
タッカーは手にしていた写真を置いた。それはエリザベスのものだった。
写真に手を触れたタッカー。「さよなら、エリザベス。」


※18: 爬虫類船長 Reptilian Captain
(ボブ・モリシー Bob Morrisey ENT第40話 "Stigma" 「消せない汚名」のドクター Strom (Dr. Strom) 役) 声:白熊寛嗣。当然爬虫ズィンディの司令官ではありませんが、声優は同じです (爬虫類族はこの方ばっかりですね)

※19: Ensign Marcel

・感想
ズィンディのデグラと歩み寄りを見せるアーチャーと、クルーそして妹の死に向き合うタッカー。つなぎのエピソードと言ってしまえばそれまでですが、間延びもなくそつなくまとめられた印象です。この辺は俳優監督の面目躍如といったところでしょうか。
エンタープライズはボロボロのままですが、ここまでくれば「なかったことにする」手法は使わない・使えないことは明白であり、その点も評価したいですね。


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