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エンタープライズ エピソードガイド
第98話「最後のフロンティア」
These Are the Voyages...

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・イントロダクション
※1尋ねるメイウェザー。「ブラジルへはいつ戻るの?」
サトウ:「調印式終わって、何週間かしたら。レセプションもあるし。それに、言語データの整理に一週間はかかるから。」 どちらも制服の左胸には自分の名前※2が書いてあり、右腕には宇宙艦隊の記章がある。
「船に 10年※3乗った後じゃ、あの湿気に慣れるのに相当かかるだろうな。」
「虫にもね?」
操舵席のそばにあるコンソール※4を操作するリード。「船長はスピーチするんだっけ?」
トゥポル:「いま格闘中です。」
メイウェザー:「スピーチ嫌いですからねえ?」
リード:「名誉や名声を得ることを、徹底的に避けたがる。」
トゥポル:「本当に。」
サトウ:「コクレインのワープ航法発見に匹敵する名誉なのに。」
アーチャーが作戦室から出てきた。パッドを持っている。「テラライトの解放者ってどう発音するんだ? チャラッシュ?」
サトウ:「シャラッシュ※5です。」
アーチャー:「『シャラッシュ』。サンキュー?」
リード:「順調で?」
「何を言っても名誉を欲しがってるようだ。」
トゥポル:「船長。ダグラス提督※6が、船の退役手続きの承認をと。」
「憲章の調印式が済んでからにしてくれ。エンタープライズの葬式準備はそれからだ。」
通信が流れた。『上級士官はブリッジへ出頭せよ。』
それに応じ、ブリッジにいた人物が声を出す。「プログラム一時停止。」
すると、アーチャーたちの動きが止まった。
端のコンソールにいたのは、22世紀の制服を着たウィリアム・トーマス・ライカー※7だった。「ここまでを保存してくれ。」
コンピューター※8:『プログラム保存。』
「…終了。」 周りの映像が全て消え、ホログリッドが姿を現した。
ライカーの制服は、24世紀のものに戻る。
ホロデッキ※9を出ていくライカー。


※1: このエピソードは、ENT 最終話です。TNG 以降とは異なり、2時間エピソードではありません (本国での初放送時は前話 "Terra Prime" 「テラ・プライム(後編)」に引き続き放送されましたが、直接はつながっていません)

※2: 「T. MAYWEATHER」、「H. SATO」というように、全員に入ってます…。MACO は当初から左肩についていました

※3: 西暦 2161年、今までの第4シーズンからすると 6年後ということになります

※4: ENT第73話 "E2" 「エンタープライズ2」の未来のエンタープライズや、ENT第91話 "Affliction" 「クリンゴンの苦境」などのコロンビアのブリッジにもあったもの。コンピューター画面内のボタン配色やデザインも、TOS の時代に近づけたものになっています

※5: Shallash

※6: Admiral Douglas

※7: William Thomas Riker
(ジョナサン・フレイクス Jonathan Frakes DS9第55話 "Defiant" 「奪われたディファイアント」などのトーマス・ライカー (Thomas Riker) 役。ドラマ「ロズウェル」の「死因の謎」では ENT とのクロスオーバーとして、ジョン・ビリングズレーと共に本人役で出演しました) TNG レギュラー。(公開上は) 映画第10作 "Star Trek Nemesis" 「ネメシス/S.T.X」以来の登場。VOY第34話 "Death Wish" 「Q1, Q2」でも。名札も "W. RIKER" となっています。声:大塚明夫 (当時と統一)

※8: コンピューター音声 Computer Voice
(メイジェル・バレット Majel Barrett) ENT第95話 "In a Mirror, Darkly, Part II" 「暗黒の地球帝国(後編)」でもディファイアントのコンピューターを担当

※9: ドアは当時の設計図を元に、新たに再現されています。グリッドは CGI 合成

・本編
U.S.S.エンタープライズ NCC-1701-D※10
ライカー:『副長個人日誌、宇宙暦 47457.1。以前の上官プレスマン提督※11の予期せぬ出現で、複雑な立場に追い込まれている。カウンセラーによれば、昔のホロプログラムに解決策が隠されているかもしれないとのことだ。』
テン・フォワード※12にいるディアナ・トロイ※13。「本当に何も話さなくていいの?」
ライカー:「話せることは話した。」
「約束についての話?」
「約束じゃない。命令だ。」
「それで、ホロデッキでは何か学べたかしら。」
「まだ何も。何日か前にさかのぼってみたが、何が役立つのかさっぱり。」
「…そのためにこうしてカウンセラーがいるんでしょ?」
微笑むライカー。

廊下※14を歩くライカー。「リードは背が低かったよ。」
トロイ:「プログラムのせい?」
「いや、そうじゃない。実物より、私が大きく思い込んでただけだ。」
「…アンドリア人からは?」
「まだだ。」
「全てはアンドリア人の通信が入ったとこから始まるの。それから、シェフの後任を引き継ぐといいわ。」
「なぜ。」
「あの頃の宇宙船にカウンセラーはいなかったけど、初代エンタープライズのシェフは近かったみたい。ほとんどのクルーが相談をもちかけてるわ。」
「覚えとくよ。」
「夕食どう?」
「いいね。じゃ後で。」
「はい。」 ターボリフト※15に入るトロイ。

驚くアーチャー。「そんなバカな。シュランは 3年前に死んだはずだ。」
サトウは呼びかけに応じ、操作した。アーチャーを見る。
スクリーンを見るアーチャー。「夢じゃなさそうだな。」
シュラン※16が映っている。『すまんな、ピンクスキン。だが周囲に、俺の死を信じさせる必要があった。』
アーチャー:「私にもか?」
『昔のこととは言え、あんたは俺に借りがあるはずだ。』
「覚えてるよ? だが今はタイミングが悪い。…我々のゆき先を?」
『軍はとっくに離れたが、連合をもちかけられたことは聞いている。』
「憲章ができた。地球へ調印に向かうところだ。」
『調印式は 3日後だ。俺の計画が終わってからでも間に合う。』
再び昔の制服を着たライカーが、隅で話を聞いている。
アーチャー:「フン。すまんが、いま回り道をするなど論外だ。」
シュラン:『俺の子供が連れ去られた! 誘拐だ。あんたは、俺に借りがある。』
「子供がいたのか。」
『ジャメル※17が 5年前に産んだ、娘だ。だが奴らに。』
「誰だ。」
『昔の仕事仲間だ、話せば長い。そっちに行って、説明しよう。』
「……ランデブーコース。」
ライカー:「コンピューター、一時停止。」
アーチャーたちの動きが止まった。
ライカー:「一時間後を再生。観察モード※18にスイッチ。」
クルーの位置が変わり、アーチャーが消えた。
ライカーの姿は、本来の制服に戻る。ブリッジの中を歩いていく。

作戦室で話しているシュラン。「帝国防衛軍の指揮官時代より、民間人になった今の方が危険にさらされるとは。」
ライカーがドアを通り抜けた。
アーチャー:「なぜ軍を去ったのか未だに理解できん。ヒーローだったろ?」
シュラン:「家族のために決まってる。ずっと信じてた、変化はいいことだと。…愚かだったよ。」
「なぜ死を偽装した。」
「いくつか選択を間違えてな。悪い連中に引っかかった。問題のあるベンチャービジネスに関わってる連中だ。…奴らにある物を盗んだと責め立てられ、昔の軍人仲間の力を頼って死んだと思わせ、行方をくらましたんだ。効果はあった。…3年近くは。」
「だが見つかった。」
「半年前だ、それ以来転々としてたが…ある真夜中、娘を連れ去られた。俺はすぐ隣の部屋で、眠ってたんだ。…俺のせいだよ! もう一週間経つ。奴らは、ある物を返さないと娘を殺すと。」
「だったら返せばいいだろ…」
「もってないんだよ! 言いがかりだ。」
「それで作戦を?」
座って見ているライカー。
シュラン:「全財産を注ぎ込むことになったが、とうとう娘が連れて行かれた場所を突き止めた。貿易基地の、ライジェル10号星※19だ。」
アーチャー:「ライジェルに?」
「俺は連中のことを知り尽くしてるんだ。…必ず出し抜く自信がある。だが、少なくとも 7人は必要だ。力を貸して欲しい。…娘を助けてくれ。」

アーチャーの部屋にいるトゥポル。「彼は犯罪者だと御自分で言ったはずです。」
アーチャー:「悪い仲間と付き合いがあっただけらしい。犯罪者とは言えんよ。」
「調印式に遅れれば、計り知れない影響が…」
「シュランがいなければ、ズィンディの兵器内に行けなかった※20。忘れたのか? …連合が掲げる友情と忠誠は、今まさにシュランが必要としていることだ!」
「信用なりません。」
「君は決してアンドリア人を信じない。ヴァルカン評議会の方が頭が柔らかいよ。…彼らは連合に理解を示してる、君はシュランを疑っても何もできん。…10年前、私は君を信じてなかった。それどころかヴァルカン人全員をだ。君はそれを克服させてくれた。…シュランについての君の見解はわかったが…私は彼を裏切ることはできない。わかってくれ。」
「努力します。」
「…それから…時間のある時食堂へ。シェフが、最後の晩餐のメニューを考えてくれている。…全員の好物を知りたいらしい。」
ライカーはドアの前に立ち、2人の話を聞いている。
トゥポル:「クルーは 83名いるんですよ?」
アーチャー:「寄ってやれよ。」
出ていくトゥポル。
ベッドの上に乗ってきたポートスとじゃれるアーチャー。「お前には、6種類のチーズを用意してくれるそうだ?」

シェフが食材を刻んでいる。
トゥポル:「お心遣い感謝しますが、私に特別な食事は必要ありません。」
シェフは、ライカーだった※21。「見てくれ。もうプロミークのスープ※22を作ってるんだ。あとは好きな根菜を入れるだけ。」
トゥポル:「でしたらシェフにお任せします。」
「座らないか。少し話そう。…今夜はアンドリアのキャベツスープ※23を作ることになるらしいな。」
「シュランのシャトルを収容するのに 5時間かかりました。…その上ライジェルへ立ち寄れば、少なくとも一日はかかります。」
「だが娘のためだろ?」
「…あなたの知らないことなど何もなさそうね。」
「ジョナサンは哀れみ深い。わかってるだろ。」
「そのおかげで、我々は何度危機に陥ってきたか。…調印式に間に合うんでしょうか。」
「間に合うさ。私の勘は当たる。どうぞ?」 お茶を差し出すライカー。
「ありがとう。」
「フロックスがエドシアのコバンザメ※24を寄付してくれた。」
「何です?」
「ナマズもどきだよ。味も近いといいが。タッカー少佐はナマズが好きでねえ※25。恋しい?」
「今朝会いました、プラズマアレイの調整で。」
「そうじゃない。」
「…特別な意味で言っているのだとしたら、それは 6年前のことです。」
「答えになってないぞ? 恋しいか?」
「ヴァルカン人は、人を恋しがりません。」
「すまない、忘れてたよ。…それで、彼も調印式の心配を?」
「船長には逆らわない人だから。」
「だからといって、ただのイエスマンとも思えん。」
「彼は心の底から船長に同意しているんです。…信頼してるの。」
「…剥いてくれるかい?」
ニンジンを手にするトゥポル。「以前は命令に従うことが、何より大切だと考えていました。」
ライカー:「今は?」
「…地球人は時として、直感に従うことがある。…実に非論理的ですが、それも大切だと思うようになりました。」
「…コンピューター、一時停止。…ありがとう。」 動きを止めたトゥポルの、頬にキスするライカー。


※10: CGI。Gabriel Koerner 製作

※11: Admiral Pressman
エリック・プレスマン (Erik Pressman) のこと。TNG第164話 "The Pegasus" 「難破船ペガサスの秘密」より。なお宇宙暦も同エピソードで言及された数字と全く同じです。同時期を表す場合も、少しはズラすのが通例ですが…。そもそも本来はエンタープライズが小惑星内に閉じ込められ、ライカーが真相を話した後の宇宙暦なので、時間的にも全然合っていません。安易に同じ数字にしてしまった感がのこります

※12: ザクドン人や数人のフェレンギ人がおり、明らかにピカードらしい後ろ姿も一瞬映ります。というのは、この冒頭シーンのみ TNG第72話 "Menage a Troi" 「愛なき関係」の映像が使われているためです。そのため、TNG "The Pegasus" 時点での設定とは矛盾する点があります (階段部分のライトがなかったり、まだ旧式の制服を着ている下級士官が数人いる)。ラクサナとトロイがいた部分に、ライカーと (現在の) トロイが置き換えられています。ほんの一瞬ですがピカードの前にいるデータも見えるようです。その上、左の方に当時のライカーが座っているのがわかります (つまりライカーが 2人!)。以降のライカーとトロイがアップになって話すシーンはもちろん新録で、テン・フォワードの一部のセットが新たに再現されています。テーブル類や壁のライト、立体チェスは当時のものだそうです。なおアップになる前後を比較すると、壁の模様が左右反転していたり、端の鏡の部分が単なる黒いガラスになったりしています

※13: Deanna Troi
(マリーナ・サーティス Marina Sirtis 映画 "Spectres" (2004) で、リンダ・パクと共演) TNG レギュラー。(公開上は) 映画 "Star Trek Nemesis" 以来の登場。VOY第130話 "Pathfinder" 「遥か彼方からの声」などにも。声:高島雅羅 (当時と統一)

※14: 当時の設計図を元に、新たに作り直した再現セット。ただし天井と壁のつなぎ目部分は、光り方が当時と異なっています

※15: 少ししか映りませんが、明らかに当時のエンタープライズ-D のものとは異なります。予算節約のため、映画 (つまりエンタープライズ-E) のが使われたそうです。トロイと入れ違いになるクルーは、ブラノン・ブラガのアシスタントである Terry Matalas

※16: Shran
(ジェフリー・コムズ Jeffrey Combs コムズは DS9 の最終話 "What You Leave Behind" 「終わりなきはじまり」にも出演しました) ENT第90話 "The Aenar" 「氷窟の民」以来の登場。第5シーズンではシュランをエンタープライズのクルーにするという案もありました。シャトルの内装は、昆虫ズィンディ・シャトル (ENT第69話 "Hatchery" 「トゥポルの反乱」など) を改装したものです。声:中村秀利

※17: Jhamel
ENT第90話 "The Aenar" で登場したイーナー

※18: このような設定が登場したのは初めて。単に今までは使う機会がなかっただけでしょうね

※19: Rigel X
ENT パイロット版 "Broken Bow" 「夢への旅立ち」より

※20: ENT第76話 "Zero Hour" 「最終決戦」より

※21: シェフは ENT "Broken Bow" をはじめ何度も言及されましたが、登場したことはありませんでした。ただし ENT第38話 "The Catwalk" 「嵐を告げる男達」で、顔は出していませんがエキストラが演じています。TOS カーク役のウィリアム・シャトナーを出演させる案として、シェフ役というのも考えられていました。NCC-1701 のシェフも登場したことはありませんでしたが、TOS第8話 "Charlie X" 「セイサス星から来た少年」では、ジーン・ロッデンベリーがシェフの声だけを演じました

※22: プロミーク・スープ plomeek broth
ENT第4話 "Strange New World" 「風が呼んだエイリアン」など。この個所の吹き替えは「プロミークのスー」と聞こえます

※23: Andorian cabbage soup

※24: Edosian suckerfish
ENT第38話 "The Catwalk" 「嵐を告げる男達」などでエドシアン・ナメクジ (Edosian slug) が言及

※25: ENT第12話 "Silent Enemy" 「言葉なき遭遇」など

エンタープライズ-D。
コンピューターに、「U.S.S.ペガサス乗員名簿」と表示されている。
クルーの情報が順番に映されていく。ロナルド・ムーア中佐※26、ドーン・ヴェラスケス大尉※27、エリック・モッツ乗組員※28、アンディ・サイモンソン乗組員※29、フィル・ウォレス少尉※30
観察ラウンジ※31で操作しているのは、ライカーだ。
トロイがやってきた。「ここにいたの? …知ってる人?」
ライカー:「昔ね。」
「ペガサスの?」
「フィル・ウォレス。ハンドボールの名手だ。昇進が近かった。」
「何人亡くなったの?」
「80人中、71人。」
「船は破壊されてはいなかったのよね?」
「71人が死んだことは変わらない。」
「罪の意識を? 自分のせいだと思って悩んでるの?」
「君の診断はどうだ。」
「…悩みはほかにある。船の捜索に関するわ。」
「話題を変えよう、いいね。」
「いいわ? …ホロデッキの様子はどう?」
「アンドリア人とライジェルへ向かった。」
「悩みの解決策は見つかったか聞いてるの。」
「助言通りシェフになってみたよ。トゥポルと話した。」
「タッカー少佐とは?」
「まだ機関部には行ってない。NX-01 には?」
「ホロは一度も。」
「じゃ実物には。」
笑うトロイ。「博物館で乗ったかしら。…ほかの船とゴッチャになってるわ。」
ライカー:「いい機会だ。…一緒に行こう。」
「一時間後に予約が。」
「十分戻ってこられるよ。おいで。」

NX-01 の作戦室にいるライカー。「ずいぶん狭いなあ※32。」
トロイ:「200年でだいぶ変わったのね※33、頭気をつけて!」 笑う。
梁に頭をぶつけそうになるライカー。「水槽がない。」
トロイ:「アーチャー、水槽がなくてよく耐えられるわね。」 ドアの前に立つ。自動で開かないことを不思議に思う。
ライカー:「失礼?」 代わりにスイッチを押した。

無人のブリッジに入るライカー。「だが犬を飼ってる。」
トロイ:「…そう、思い出した。三銃士の一人。」
「ポートスだ。」
船長席に座るトロイ。「うわ、快適。」
ライカー:「副長の席はないらしい。」
「アーチャーはほかの誰かが自分の席に座っても、ピカード艦長ほどイライラしないんじゃない?」 トロイはトゥポルの席のスイッチを押した。スコープが出てくる。「これ写真で見たことがある。」
「カークの船にもあった。」

ライカーは廊下を歩く。「こっちが機関室。」
トロイ:「船ってやっぱりクルーがいないと味気ないわ。」
「コンピューター、適宜クルーを追加。観察モード。」
クルー数名が現れた。
トロイ:「こうでなくちゃ。」

機関室のリード。「覚えてます? ライジェル10号星は、非常に不快な星だった。シュランの計画だって、そう上手くいくとは思いません。」
タッカー:「調印式が迫ってるのに、船長が無茶するわけないだろ。」
「気に入りませんね。…何をしてるんですか。」
「ここは半年ごとに掃除が必要なんだ。デューテリウムの、フィルターは。」
機関部員※34:「あと、3つです。」
「よし。急いでくれ。」
「わかりました。」
リード:「なぜ今さら。来週には、引退するっていうのに。」
タッカー:「俺が組み立てたんだ。できる限り、手入れを続けるよ。」 周りを見る。「…いい走りをしたろ。…終わる日がくるとはな。」
「…寂しいですね※35。」
うなずくタッカー。
リード:「船長はまた新しい船ができると。」
タッカー:「だろうな。」
「でも別もんだ。」
「…仕方ないさ。…行こう。」
トロイもライカーと一緒に機関室にいた。「切ないわ? タッカー少佐は二度ともうここに戻れない。」

司令室でモニターを見るアーチャー。「この、情報提供者は?」
シュラン:「全員犯罪者だが信頼できる。タラ※36は間違いなく、ここにいるらしい。」 指さす。「ここの 4階だ。アメジストは作ったか。」
トゥポル:「あなたに渡された写真は非常に不鮮明でしたが、複製の出来には自信があります。」
「奴らが俺に盗まれたと思い込んでるテネビアンのアメジスト※37は、無傷の一品だ。」
「スペクトル・マイクロメーターを使わない限りバレません。」
アーチャー:「相手は、何人いるんだ?」
トロイ:「コンピューター、一時停止。」 止まったアーチャーに近づく。「可愛いじゃない。」
ライカー:「おい、何する気だ。」
笑うトロイ。「アポに遅れるわ※38。あなたは残る?」
ライカー:「ああ、もう少し。」
「それじゃ。コンピューター、アーチ※39。」 トロイはホロデッキを出ていった。
「ライジェル10号星に着くのは?」
コンピューター:『16時間22分後です。』
「そこで再生。観察モード維持。」
アーチャーの位置が変わった。「静止軌道に入れ。」
メイウェザー:「了解。」 スクリーンにライジェル10号星が映っている。
「上陸班、出発ベイへ。」
タッカー:「船長、ちょっといいですか。…船長はここに。」
「足手まといか?」
「おわかりのはずです。生涯最高の日を控えてる。船長は、調印式の主役です。」
「気遣いは嬉しいが心配ない。」
「自分から危険に飛び込むことはありません。我々で、何とかしてきます。」
「初めて訪れたライジェルが、最後の星になるんだ。何かの縁だろ。楽しませてくれよ。」 アーチャーはリードやシュランと共に、ターボリフトに乗った。
タッカーも続く。

シャトルポッドを操縦するメイウェザーは、今度も寒冷地用の制服を着ている。「対流圏に突入します。ちょっと揺れますよ。」
ライカーは MACO として乗り込んでいた。
後部座席で話すトゥポル。「もう、シェフと話しましたか。」
タッカー:「…今朝、一番に。君は。」
「…あなたの話を。」
「…俺の?」
「私と。」
話を聞いているライカー。
タッカー:「どんな話?」
トゥポル:「…大した話では。」
「…言いかけてやめるなよ。」 少し揺れるシャトル。
「……私のこと想ってる?」
「…君を?」
「そう。」
「昔の話だ。」
「そんなこと聞いてない。」
「そうだな。…まあ、時々は。」
「…私はそういう感情とは無縁でした。」
「さすがはヴァルカンだ。」
「シェフと話して、もう会えなくなるかもしれないと思ったわ。」
「何言ってんだよ。」
「勤務先が変われば、もう連絡は。」
「いつだって取れるだろうが。…保証するよ、付き合いが途絶えることはない。変な心配するな。」
「…それでもやはりあなたが、恋しくなるでしょう。」
通信が入る。『アーチャーからシャトルポッド2。』
メイウェザー:「どうぞ、船長。」
『地上と話がついた。着陸する。私に続け。』
「了解。」
前にもう一隻のシャトルが見えている。

歩くシュランとトゥポル。シュランは箱を持っている。
前から異星人※40が姿を見せた。「そこで止まれ。」
囲まれる 2人。
異星人:「確か俺の記憶では、アメジストのありかなど知らんと言ってたはずだ。」
シュラン:「娘はどこにいる。」
「娘恋しさに記憶が戻ったか、え? シュラン。」
「娘はどこだ。」
「女房はどうしたんだ。そのヴァルカンは。」
「俺はお前の連れに干渉するつもりはない。」
「ケースを置いてふたを開けろ。」
トゥポル:「先に子供を渡してください。」
「まとめて撃ち殺すぞ?」
「そうなればケースが開くことはありませんよ。」
「女に交渉させるとは落ちたもんだ。」
シュラン:「聞こえたろ。」
合図する異星人。アンドリア人の女の子が連れ出されてきた。
シュランに近寄ろうとするが、止められるタラ※41
シュラン:「大丈夫か。」
タラ:「お腹空いた。」
異星人:「ケースを開けてもらおう。」
ロックを操作するトゥポル。ケースが開いた。
中には巨大な宝石が入っている。
微笑む異星人。「下に置け。」
シュランはアメジストを置き、異星人の方に押し出した。
異星人:「後ろへ下がれ。」
シュラン:「彼女に娘を渡せ。」
「いいだろう。お前は残れよ? 動けばこの娘を連れて帰る父親はいなくなる。」
しゃがむシュラン。タラは駆け寄り、抱き合った。
シュラン:「トゥポルと一緒に行きなさい? 守ってくれる。食べ物もくれるぞ。」
トゥポルを見るタラ。
シュラン:「言うことをお聞き?」
タラと手をつなぐトゥポル。シュランの肩に手を置いた。
うなずくシュラン。トゥポルとタラは歩いていった。
異星人:「後ろへ下がれ。」
従うシュラン。異星人はアメジストを手に取り、スキャナーで調べ始める。
その様子を、アーチャーが上から見ていた。隣のタッカーに向かってうなずく。
装置を操作するタッカー。
シュランは目に手をかざす。
調べ続ける異星人。「何をしてる。」
タッカーは装置を起動させた。
すると、アメジストが強力な光を発した。異星人たちは皆、目を覆う。
逃げ出すシュラン。まだ光を出し続ける宝石を投げ捨てる異星人。
シュランを追うが、前にフェイズ銃が浴びせられる※42
リード:「そこを動くな、動けば撃つ!」
上に気づく異星人。「撃てー!」
アーチャーやライカーも武器を向けている。
反撃する異星人。撃ち合いになる。
ライカーも撃っていく。次々と倒されていく異星人の一味。
異星人の武器が、タッカーのいた床に当たった。陥没し、ぶら下がるタッカー。
手を差し出すアーチャー。リードが銃で援護する。
アーチャー:「がんばれ!」
リードは異星人を倒した。
上りきるタッカー。「恩に着ます。」
アーチャー:「…いいって。」


※26: Commander Ronald Moore
映像効果監修者 Ronald B. Moore にちなんで。写真も本人です

※27: Lieutenant Dawn Velazquez
製作者にちなんで。同じく写真も本人

※28: Crewman Eric Motz
写真は製作助手の Eric Matsumoto

※29: Crewman Andy Simonson
乗組員の二人の階級は、略称が CM ではなく CN になっているような…。Crewman, Noncommissioned の略でしょうか。映像効果補にちなんで、写真も本人

※30: Ensign Phil Wallace
以上 5人は、いずれも古い (TNG 初期) 制服。写真はリック・バーマンのアシスタント、Doug Mirabello。

※31: 再現セット。当時より多少広くなっていますが、テーブルや窓の部分は当時のもの (映画ではエンタープライズ-E 用に改造されたそうです)。ただし植物や、変な丸い飾りがあるのは異なりますね

※32: 原語では「こっちの拘束室の方が広いなあ」

※33: TNG "The Pegasus" では、ライカーがプレスマンに同じようなセリフを言っています。吹き替えでは「12年経てば変わって当然です、違いますか」

※34: Engineer
(E・マイケル・フィンク E. Michael Fincke、マイク Mike とも。NASA の宇宙飛行士。隣にいる機関部員も (セリフはありませんが) 宇宙飛行士の Terry Virts です (NASA 公式サイト)。フィンクは国際宇宙ステーションに滞在中にスコット・バクラと会話し、6ヶ月の任務後にはロシア人宇宙飛行士のゲナディ・パダルカと共に「宇宙艦隊賞」を受け取っています (公式サイト))

※35: "All good things."
TNG 最終話 "All Good Things..." 「永遠への旅」より

※36: Talla
ENT第89話 "United" 「ロミュランの陰謀」で死んだ、シュランの恋人タラスにちなんでいるんでしょうね。吹き替えでは、なぜかそのまま「タラ

※37: Tenebian amethyst
ENT第10話 "Fortunate Son" 「復讐の連鎖」でテネビアのスカンク (Tenebian skunk) が言及

※38: 吹き替えでは残念ながら訳出されていませんが、原語では「遅れたらレッジ (Reg) が怒るわ」と言っています。レッジはレジナルド・バークレイのことで、TNG第69話 "Hollow Pursuits" 「倒錯のホログラム・デッキ」などに登場

※39: 本来アーチはホロデッキ内部から外部にアクセスするための装置で、退出するだけなら不必要なはず?

※40: Alien
(ジョナサン・シュマック Jonathan Schmock 映画「フェリスはある朝突然に」(1986)、ドラマではマルコム in the middle 「クリスマス・ツリー」(2003) に出演。「サブリナ」(1996) では構成を担当) 種族不明ですが、テネビアンかもしれません。声はデータ役の大塚芳忠さんが兼任。ライジェル10号星は ENT "Broken Bow" のロケ撮影とは異なり、第9ステージが使われています

※41: Talla
(Jasmine Anthony 映画「キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン」(2002) でデビュー。ドラマ "Commander in Chief" (05〜06)に出演)

※42: 天井の筒は、ENT "In a Mirror, Darkly, Part II" でディファイアントのジェフリーズ・チューブとして使われたもの

シャトルポッドから出てくる一行。
シュラン:「本当にいいのか、甘えても。」
アーチャー:「この船ならワープ4 で、お友達を引き離せる。」
「俺のシャトルは遅いかもしれんが、奴らはワープ2 がやっとだ。」
「ついでさ? 明日には母星に戻れる。奥さんにも連絡してそう伝えておくよ。」
「だから数時間で済むと言ったろ、船長?」 小突くシュラン。
「礼はいい。」
シュランは笑った。
アーチャー:「まずはフロックスに、娘さんを診てもらえ。」
タラ※43を抱き上げるシュラン。「仰せに従うよ。」
タラ:「ありがと、ピンクスキン。」
シュランは歩いていった。
タッカー:「私のせいで、さぞお疲れでしょう。」
アーチャー:「言うことを聞かずついてってよかったよ。」
「助かりました。でも、船長を危険にさらしてしまった。調印式を無にするところでした。」
「式はいつでもできるが、優秀な機関士は…早々育てられん。」
MACO として、2人を見ていたライカー。

デヴォリン星系の小惑星地帯に入った、エンタープライズ-D。
窓から小惑星が見える、トロイの部屋※44
通信が入る。『データ※45からカウンセラー。』
トロイ:「何、データ?」
データ:『宇宙飛行による私のポジトロニックネットへの長期的影響について、議論を再開したいのですが?』
「雨天順延にしてもらえない?」
『ああそれはもちろん構いませんが、ここは船の中ですし雨が降ってなど…※46』 ドアチャイムが鳴った。
「データ、後にしてくれる? どうぞ。」
ライカーだ。「こんな時間にすまない。」
トロイ:「どうしたの?」
「もうすぐペガサスが見つかる。」
「決断できないのね?」 座るように示すトロイ。「ホロデッキは?」
「アンドリアの娘を助けた。」
「そう。そっちも佳境に入ってるのね。」
「…絶対に秘密にすると約束してくれ。」
「当然だわ。」
「アルジェロン条約のことを。」
「2311年にロミュランの中立ゾーンの再定義を。」
「艦隊船が遮蔽装置を使うことも禁じられたろ。」
「ペガサスに?」
「艦隊保安部が極秘で開発したものだ。プレスマンは責任者だった。」
「だからロミュランより先に発見しようと。」
「71人が死んだ事故のとき、遮蔽装置を試していた。」
「…初耳だわ。」
「生存者は他言しないと誓わされたんだ。」
「12年間もその誓いを守って?」
「彼らは研究を再開しようとしてる。」
「ほんとに?」
「プレスマンがそう言ってた。明らかに、間違ってる。条約が破棄されかねん。」
「…ピカード艦長に言うべきだわ。」
「誓いは破れない。プレスマンは艦長より上官だ。」
「あなたが…安易な決断を下す人なら、ここまでこなかったと思う。今回もきっと正しい決断を下せるわ。」
「そうだといいが。」

厨房で料理を手伝っているリード。「とにかく粗野な男でねえ。田舎者って言われても、仕方ない。…アーチャー船長の、人を見る目を疑ったよ。」
シェフのライカー。「もう少し薄く。こうだ。」
リード:「ああ、わかった。」
「それで?」
「…第一印象って結構当たると思ってたんだが、そうとは限らなかった。…正直一ヶ月もつと思わなかったね、船長の友達でも。だけど、いま彼なしの探査は考えられない。」

ライカーは尋ねた。「トリップに惹かれたことは?」
サトウ:「…ちょっとあるかも。」
「うん。」
「タイプではないけど。」
「ん?」
「彼大学中退して、実地でエンジンのことをいろいろ学んだらしいわ。…言葉遣いもなってなくて。」 笑うサトウ。「子供の方がまだマシよ。…でも憎めないの。…男として可愛いと思う。内緒にしてよ?」
「ああもちろん。船長と彼の付き合いは。」

メイウェザー:「20年近いらしい。フロリダ沖で、船長にダイビングを教えてたとか。」
ライカー:「ああ、強すぎだ。ゆっくり丁寧に押して。」
「ああ、ごめん。」
「謝る必要はない。」
「ツーカーで何でもわかりあってる。付き合いが長いからだろうな。」
「ピカードを殴ったことは?」
「…誰を?」
「あ、アーチャー船長をだ。」
「ないんじゃないかな。タッカー少佐って、いざって時は正しい選択をするから。」
「ふーん。」
「これでいい?」
「大きすぎないようにたたんで。」

ライカー:「そうそう。」
フロックス:「よっと!」 笑う。「彼はいつも無理して、身体を酷使する。休養を命じたのも、一度ではありません。」
「休養を?」
「ええ、トゥポルの神経マッサージ※47も続けなかった。鎮静剤の世話になるよりいいのに。」
「だがそのマッサージで…」
「恋仲に。」
「ああ。」
「その通り。…一度、6時間睡眠を命じたものの交渉に負けて 4時間に減らしたことがありましたよ※48。」
笑うライカー。
フロックス:「頑固な青年です。」 こねるのを続ける。「…楽しいもんだ。」
「命令は絶対か?」
「無論です。」
「…そりゃどうかな。」

船長用食堂のタッカー。「この連合は、続くと?」
アーチャー:「そう願うよ、まだ未加盟の星が…何千とある。」 酒を飲んでいる。
「ヴァルカンと、アンドリアが手を組むとはね。」
笑うアーチャー。「テラライトとアンドリアの和解も驚きだ。このウイスキーはワープ5 の研究に着手した日※49、コクレインが父にくれたものなんだ。」 またグラスに注ぐ。
タッカー:「そして今日、ワープ7 を祝ってる。」
「次世代※50に乾杯。」
「…スピーチは?」
「私は、一夜漬け派でね。まだ 3日もある。」
「…あなたの人生最大の日のスピーチですよ?」
「君らのでもある。」
「列席者が会いたがってるのは…間違いなくあなただ。」
船が揺れた。
連絡するアーチャー。「アーチャーからブリッジ、どうした。」
ライカーもそばにいる。
トゥポル:『攻撃を受けています。小型船です。』
アーチャー:「相手は。」
『まだ不明です。』
さらに揺れが続く。
トゥポル:『侵入者警報!』

廊下を急ぐアーチャーとタッカー。
その前に、あの異星人が現れた。「シュランと子供を渡せ。」
タッカー:「奴らの船じゃ、追いつけないはずでは…」
アーチャー:「シュランにそう言ってくれ。」
後ろも阻まれた。
異星人:「言うことを聞かなければ殺す!」
アーチャー:「シュランは 6時間前に去った。遅すぎたな。」
「嘘をつくな! 奴のシャトルはまだあった。殺せ。」
タッカー:「待て、待ってくれ!」
アーチャー:「トリップ、口を出すな!」
「…そっちこそ。俺が案内してやる。」
「黙れ、船長命令だ…」
「シュランのところへ連れて行くよ…」
「トリップ!」
異星人:「だったらさっさと連れて行け。」
タッカー:「待て…この人は船長だ…」
アーチャー:「黙ってろ!」
「俺のボス※51だ、だがあえて命令に逆らう。」
「トリップ、もうやめろ!」
「いいか、船長を殺したら許さん。だが黙らせてくれないか。」
アーチャーは殴られた。倒れる。
歩き出すタッカー。
異星人:「待て、こいつをこのままおいてくわけにはいかん。」
タッカー:「気を失ってる。面倒は起こさんよ。」
部下に命じる異星人。「ここにいろ。…10分で戻らなきゃ、殺せ。」
タッカー:「船長を殺すなら、協力するつもりはない。10分じゃ短すぎる!」
「さっさと連れてかねえと、奴をぶっ殺すぞ?」
「わかった、わかったよ。…じゃ、いいアイデアがある。…シュランを呼べばいい。ここに呼ぶんだ。」
「…下手に動くな?」
「その目で見張ってればいい。ただの、通信ステーションだ。」 そばのドアを開け、中に入るタッカー。「保安プロトコルを解除するのに、ここを開きたい。いいか?」
「手は見えるところに出しておけ。」
「わかった。」 タッカーはパネルを外し、一本のケーブルを抜いた。「あとはこれを、あの中のリレーにつなげればいい。」 上を指さす。
異星人:「待て!」 部下に命じる。「…お前が開けろ。…中に武器があれば船長より先にお前が死ぬ。」
部下が開けた。特に異常はない。
タッカー:「満足か?」
異星人:「…続けろ。…急げ、グズグズするな!」
「…一つ、言い忘れたことがある。…そろって地獄に堕ちろ!」
タッカーはケーブルをつないだ。その瞬間、強烈な爆発が起こる。
異星人は皆吹き飛ばされ、炎が噴き出す。

アーチャーは目を覚ました。辺りに煙が漂う。
大きく壊れ、気体が噴き出す廊下。異星人たちが倒れている。
アーチャー:「トリップ。」 火花が飛ぶ。
奥へ進むアーチャー。ライカーはその様子を見ている。

医療技師※52。「反応なし。」
フロックス:「活性剤 2%増加。」
アーチャー:「ドクター!」
「プラズマの熱で、肺が焼けてしまっています。高圧チェンバー用意。」
ライカーも医療室にいる。
タッカー:「す、すいません。…あなたを…殴らせて…私は、ただあなたを…」 ひどい火傷だ。
アーチャー:「よくわかってる。…大丈夫だからしゃべるな。」
「式に遅れる…」
「いや、予定通り進んでる。スピーチを書く時間もあるぞ?」
「…よかった。…がんばって…」 タッカーの言葉が止まる。
警報が鳴る。
フロックス:「急いでチェンバーへ入れて! 」
運ばれるタッカー。
フロックス:「離れて!」
ベッドの上でタッカーはアーチャーに向かってウィンクし、微笑んだ。
そのままイメージングチェンバーに入れられる。ドアが閉じた。
アーチャーはフロックスを見た。


※43: タラの肌の色は、普通のアンドリア人に比べると緑っぽく見えます。イーナーとのハーフであるせいかも

※44: これも再現されたセット。最初に映る壺らしき置物は、TNG第70話 "The Most Toys" 「究極のコレクション」で、キヴァス・ファージョのコレクションにあったものの使い回し

※45: 声のみのカメオ出演ですが、きちんとブレント・スパイナー (Brent Spiner) が演じています。声:大塚芳忠 (当時と統一)。スパイナーがエリック・スン博士役で出演した ENT第80話 "Borderland" 「ボーダーランド」などでは、牛山茂さんでした

※46: 雨天順延=rain check で、単に延期という意味もあります。原語のデータのセリフは、「カウンセラー、お望みなら雨をチェックしても構いませんが、私の中に水は入っていないと保証…」

※47: ENT第53話 "The Xindi" 「トリリウムD」など

※48: ENT第72話 "The Forgotten" 「デグラの決断」より

※49: 原語では「ワープ5センター (Warp Five Complex) の起工式の日」。ENT第1話 "Broken Bow, Part I" 「夢への旅立ち(前編)」より

※50: the next generation

※51: 原語では先ほどライジェルで助けてもらった時にも「ボス」と言っており、こう呼ぶのは ENT "Broken Bow" 以来

※52: Med Tech
(Jef Ayres)

飾られている、スキューバダイビングの写真を手にするトゥポル。ほかの荷物の上に置いた。
たたまれた制服を手に取り、その匂いをかぐ。
アーチャーが部屋に入った。「手伝うか。」
トゥポル:「…大丈夫です。」
「ご両親に?」
「…お二人とも調印式には?」
「トリップは出席を望んでいたと言っておいた。」 アーチャーは微笑み、置いてある物を手にした。「…宝物だ。」
そのフランケンシュタインの怪物の人形を手にするトゥポル。「…お会いしたい。」
アーチャー:「両親に?」
「はい、お会いしたいです。」
「変わってるぞ? …トリップのユーモアがどこからきたかわかる。」
鏡に映るライカー。
トゥポル:「私の母※53も変わっていました。」
アーチャー:「そうだな?」
「…トリップは母を亡くした※54悲しみは、時が癒すと言っていた※55。でもそんなことはない。時と共に、悲しみは深まっています。…なぜあんなことを。」
「…時は全ての傷を癒すが、想いというものは遠ざかるほど募る。矛盾するが真実だ。…人の感情っていうのは、実に厄介なもんだよ。」
「だから必死に抑えるのです。」
「…船長という職に就いた頃、自分は冒険家だと思ってた。どんな危険も冒す価値があると思っていたんだ。宇宙深く進めば進むほど何かがあると信じていた。荘厳で、気高い何かがあると。…だがトリップを失った今、スピーチをしなければならないとはな。今までどんなに有意義であったか。」
「トリップは言うはずです。有意義だったと。」

厨房のライカー。
やってきたのはタッカーだ。「揚げパンつきナマズフライがいい。」
ライカー:「船長はちゃんと伝えてくれたらしい。」
笑うタッカー。「近々本物を食べるからな。みんなで、モビール※56に行く。」
ライカー:「そりゃ腕が鳴る。」
「船長は、ミートローフだろ?」
「まだ聞いてない。」
「トゥポルもまだ? あいつは言わないよ。保証する。」
「もうプロミーク・スープを作ってる。彼女には…」 鍋を見るライカー。「最後の食材を選んでもらうだけだ。シュランを乗せるんだって?」
「驚いたよ。…てっきり死んだと。」
「船長、時間に遅れないか?」
「それは、調印式にってこと? いやあそれはありえないね、絶対。…この、ニンジンもらっていい。」
「皮剥いてないぞ。」
「構わない。」 かじるタッカー。「船長は認めなくても、これはすごいことなんだ。…この憲章に調印できるってことはさ、誇りをもつべきだ。」
「ジョナサン・アーチャーの大ファンみたいだな。」
「…心から信用できる人は、5人もいない。…信用って言っても、『嘘をつかない』とか『金を盗まない』とか、そんな低レベルじゃなく…絶対に俺を傷つけないとか、何があってもいつも俺のそばにいてくれる、そういう信用だ。ああ、そういう人いる?」
「ああ。…2人かな?」
「…行くよ、任務の前に荷造りしなきゃ。」 出ていくタッカー。「で、結論は出たの。」
動きを止めるライカー。「…何の?」
タッカー:「ほかの船に移るか、バークシャー※57にレストランを開くかさ?」
「まだ決めてないんだ。君どう思う。」
「…さあね。」
2人は笑った。
タッカー:「きっと正しい選択をするよ。」 ニンジンを持って出ていった。

広大な式場には、星々をかたどった青い紋章が掲げられている。
上の方の席に、リードがいた。「ほんとにこの席でいいのか?」
メイウェザー:「はい。」
「VIP席には見えないがなあ。」
サトウ:「式の全体が見られるように、提督が配慮してくださったのよ。」
「フン、アンドリアとテラライトの区別もつかない。」
メイウェザーに尋ねるサトウ。「ねえ、スティルウェル船長※58に返事は?」
メイウェザー:「もう少し待ってもらう。アーチャー船長が今後を決めるまで。」
その後ろの通路では、トロイが中を見渡していた※59
リード:「新しい船の船長になるに決まってる※60。ワープ7 の魅力には逆らえないよ。」
サトウ:「提督になる話もあるそうよ?」
メイウェザー:「それはないよ。座っていられる人じゃない。」
リード:「船長についてくのは正しいよ。俺もそうするつもりなんだ。」

礼服姿のアーチャーは、パッドを読みながら歩いていた。
ボタンを直そうとするトゥポル。「じっとしてください。もっと早く終わらせていたら、暗記する時間だってたっぷりあったでしょうに。」
アーチャー:「昔もよく言われた。」
フロックス:「18 もの星々から高官が出席しています。ヘヘ、いい兆しだ。この連合が更に広がっていくのも、時間の問題でしょう。誇りに思うべきですよ?」
「このスピーチを無事に終えられたらか?」
「…違います、そうじゃない。」
「ああ、わかってるよ。光栄だが、私の手柄じゃない。」
トゥポル:「なぜ地球人は、当然の名誉を受けることを拒むのです? …謙虚であることは、時として実に非論理的です。」
クルーのビリー※61が来た。「船長、お時間です。」
フロックス:「3人の妻を待たせてるので、もう行きます。…幸運を祈ってますよ、船長。」 アーチャーの肩に手を置く。「だが、あなたがヘマをするわけがない。」 微笑み、唇を上まで曲げる。
アーチャー:「ありがとう。」
歩いていくフロックス。
アーチャー:「君ももう行けよ。私の無様な姿を見逃すぞ?」
トゥポル:「船長さえよろしければ、ここで控えています。」
「人混みが嫌いなんだろ? …うん。」
階段を上っていくアーチャーに、トゥポルは言った。「…あなたは…やはりヒーローです。」
一度は上を見たアーチャーだが、戻ってきた。トゥポルを抱き締める。
再び上り出す。その先に広がる式場から、盛大な拍手が聞こえてきた。

中央に向かってアーチャーが歩くのが、小さく見える。脇には宇宙艦隊の士官が並んでいる。
リードたちも拍手する。
トロイに近づくライカー。
トロイ:「緊張してた?」
ライカー:「そりゃあするだろう。」
笑うトロイ。「その必要ないわ。このスピーチ学校で暗記させられたの。…この連合が後の惑星連邦につながるって、彼らに教えたいわ※62。」
ライカー:「ピカード艦長に話すよ。早く言うべきだった。」
「この辺で終わりにする?」
「そうしよう。コンピューター…終了だ。」
映像が消えた。ホロデッキを出る 2人。

小惑星帯を離れるエンタープライズ-D。
ピカード:『宇宙、それは最後のフロンティア。これは宇宙船エンタープライズ号が、任務を続行し…』

U.S.S.エンタープライズ NCC-1701※63
カーク:『未知の世界を探索して、新しい生命と文明を求め…※64

そしてエンタープライズ NX-01 が星雲へ向かう。
アーチャー:『人類未到の宇宙に、勇敢に航海した物語である※65。』※66


※53: トゥレスのこと。ENT第79話 "Home" 「ヒーローたちの帰還」など

※54: ENT第84話 "Awakening" 「陰謀の嵐」より

※55: ENT第86話 "Daedalus" 「亜量子転送」より

※56: Mobile

※57: Berkshires

※58: Captain Stillwell
製作助手・脚本の Eric A. Stillwell にちなんで

※59: この VIP席には、DS9第176話 "What You Leave Behind, Part II" 「終わりなきはじまり(後編)」のように、スタッフが何人も出演しています。リードの斜め後ろにいる提督は、製作総指揮のマニー・コト (エンタープライズの記章を着けているのは変という指摘もあります)。その後ろにいる民間人の女性と、隣の士官は脚本家のジュディス&ガーフィールド・リーヴス・スティーヴンス夫妻。ジュディスの隣にいる民間人の男性は、脚本家 Andre Bormanis。その隣の女性は、製作者アシスタントの Donna Rooney。さらに 2人隣の士官は、上級イラストレーターの Doug Drexler。メイウェザー右後ろの男性は、製作補 Dave Rossi。メイウェザー隣の女性は、補助会計士の Amanda Pooley。コトの 2人右隣の民間人は、雑誌 Communicator の編集者だった Larry Nemecek。その右隣の士官は、主にアンドリア人のエキストラを演じた Glen Hambly。リードの 3人右隣の男性は、VOY でエキストラのマッケンジー役だった Steve Carnahan

※60: 原語では「一ヶ月の給料を賭けてもいい」とも言っています

※61: Billy クレジットでは少尉 Ensign
(Solomon Burke, Jr.) ENT第20話 "Oasis" 「閉ざされたオアシス」でエキストラとして登場した機関部員

※62: このセリフをそのまま解釈すると、この調印式は連邦そのものではなく、前身となる組織のものとも取れます。実際 22世紀の人物は全く連邦とは言っておらず、一度シュランのセリフで「連合 (Coalition)」と呼ばれているだけです。ENT第96・97話 "Demons" & "Terra Prime" 「テラ・プライム(前)(後)」の惑星連合 (Coalition of Planets) のことかもしれません。ですが 2161年は従来から連邦の設立年とされており、式典で掲げられている紋章も連邦のものです。なお、同じ 2161年の場面は ENT "Zero Hour" でも登場しており、その際もダニエルスは「やがては数百の種族が加盟して惑星連邦が成立する」と言っています

※63: CGI。ENT第94・95話 "In a Mirror, Darkly, Part I and II" 「暗黒の地球帝国(前)(後)」で登場したディファイアントの、番号を修正したもの

※64: ピカードとカークの部分は、それぞれ当時のオープニング音源がそのまま使われています。原題の由来。英語と日本語における語順の違いや、訳語の違い (特に TOS) の問題があるため、日本版では昔のナレーションをそのままつなげるのは難しいと思っていました。先に公開された Super! drama TV のオンエア版では、残念ながら全てのセリフをアーチャー役の谷口さんが読み上げています。ですが DVD版のために新たに収録され、そちらでは順に麦人さんと矢島正明さんが無事担当されました (なお、TOS 当時のナレーションは若山弦蔵さん)。ただし、元の「谷口のみバージョン」にそのまま被せる形となっているためか、谷口アーチャーの出だしが原語より少し早くなっています (NX-01 が出る前に始まる)。訳語は基本的に TNG を踏襲していますが、「そは」→「それは」、「宇宙戦艦」→「宇宙船」の 2点は TOS 式

※65: "where no man has gone before" という締めくくりの部分は、このシリーズで最初に発せられたセリフでもあります (子供時代のアーチャー、"Broken Bow, Part I")。TNG ナレーションの "no one" ではない、TOS 式ですね

※66: その他の声優は駒谷昌男、高階俊嗣、奈良徹、森夏姫、松久保いほ

・感想など
ENT 最終話。冒頭から 6年飛ばすという荒技を見せつつ、それさえもホロデッキの映像だという驚きの展開です。正史上では 10年続かないと連邦設立の時期まで描けないので、最後だけ飛ばすというのは実に上手い手法だと思います。ただ、それを未来のホロ、しかも「難破船ペガサスの秘密」の裏話として描く必要があったのかは非常に疑問が残るところです。
TNG レギュラーの出演も、エンタープライズ-D も、再現されたセットも、確かにファンには嬉しいもの。ですが元となった名作「ペガサス」に、補足が必要だったとはおよそ思えません。ライカーとトロイを出すなら、現時点で描かれている最後の未来、つまり U.S.S.タイタンで描いてもよかったと思います (それなら 10年前を演じなければならない、二人の外見的にも矛盾しませんし)。そもそも第4シーズンは TOS ネタを基本として描いてきたのに、最後だけ TNG 主眼になってしまうのも違和感。バーマンとブラガが今シーズンで唯一脚本になっていますが、結局 TNG の成功から脱却できなかったのを皮肉にも象徴しているような気がします (「ペガサス」の脚本は、極めて高い評価を得ているリメイク版「ギャラクティカ」を手がけるムーアだというのも…)。少し形を変えて、実現することがなかった 40周年記念エピソードなどとして作っていれば、受けも全く違っていたんでしょうけどね。
演じているトリニアー自身でさえ疑問を呈している、タッカーの死。前回までの展開があっさり否定される、トゥポルとの関係。以前の描き方に戻ってしまった、日陰レギュラーの出番の少なさ。飛び道具とも言える最後のナレーションは別格にしても、やっぱり最終話は 2時間エピソードが必要ですね。直前の「テラ・プライム」の方が適しているともいえますが、それが最後ではやはり微妙ですし…。TNG 以降の最終話は (TOS も映画 ST6 と考えれば)、奇しくもシリーズ全体の出来を最も端的に表しているような印象を受けます。なお監督の Allan Kroeker は、DS9・VOY に続いて 3シリーズ連続で最終話を演出しました。

最初から最後まで完全版ガイドで仕上げたシリーズは、ENT が初めてとなりました。第1・2シーズンは回帰を狙って失敗、第3シーズンは転換を図ったものの大火傷、第4シーズンはファンの受けはよかったのにわずか 22話で打ち切りと、散々だったようにも思えます。でも少なくとも最終シーズンは単なるファン狙いに終わらず、ストーリーの質との合致に成功したエピソードがとても多かったですね。TOS とつなげながら、時には TNG・DS9 ネタまで使って (多少強引ながらも) レベルを引き上げたスタッフ陣には素直に感謝したいです。特に新しい脚本家の活躍が目立ちました。前シーズンで終わっていたら、それこそかつての TAS のように非正史扱いの憂き目に遭いかねませんでした。マニアと初心者の両立というシリーズものが抱える問題を、現在進行中の次の映画でも上手く料理してくれることを願います。
最後に第4シーズンの日本語版について。最初から従来のサブレギュラー声優が軒並み変更されていたり、使い回しが非常に多いことが残念に思いました (三部作A で中心キャラを演じていた声優が、B ではサブキャラ、C では雑魚…といった具合)。連続ストーリーがいくつも続いたりして、特に最終話などゲスト声優の起用に大変苦労しただろうということは、十分理解できるんですけどねえ…。


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